ヒゲジイのアル中よもやま話

断酒を始めて早7年目。このブログは回復プロセスの記録と脳のリハビリを兼ねて綴っています。やはり、まだチョット変ですかネ?

食とアルコール(酒)

2016-05-13 20:05:05 | 病状
 これには盲点を突かれました。“食とアルコール” 通院中のアルコール依存症専門クリニックの教育プログラムで某日に出されたテーマです。テーマとしてはあっても良いものですが、寝た子を起すようなものなので、あえて出さないのかなと考えていたのです。ですから、文字通り不意を突かれた思いでした。

 食と酒は切っても切れない関係で、酒は太古の昔から食文化に深く根ざしているものです。私自身、いずれどこかで直面する問題だろうと頭の片隅にはあったので、当座はまともに考えなくてもよいことにしていたのです。会食などの機会がもしあれば、アル症だからすべてご法度だと辞退すればよい、いやいやそう簡単に割り切れないのではないか、・・・それが問われているのです。気持ちの整理をつけておくのに丁度いい機会と考えるようにしました。

 まず思い浮かべたのは、クリニックの真向かいにある “はし野” というこじんまりした割烹のことでした。正確に言えば、そこのメニューにある7000円のランチです。料金からして、そう目を見張るような食膳ではなく、中味はせいぜい松花堂弁当ぐらいが関の山と想像できるものの、昼飯としては高額です。やはり酒がなければ興醒めだろうと、私などはまず考えてしまいます。「あの料金だもの・・・、酒なしで、あのランチだけで心底楽しめるようなら、回復間違いなし。そうなんでしょう・・・ね?」患者の仲間内で以前、こんなふうに話題にしたことがありました。

 日頃の私の昼食は、決まったお弁当屋でとるのが現実です。ちゃんとしたお店でとることなど滅多にありません。サラリーマン時代の40~50歳代、すでにアルコール依存症と診断が下されていたのですが、その頃なら考えられないことです。その当時、昼飯に弁当など論外でした。朝は立ち食い蕎麦、夜は立ち飲み屋でしたので、せめて昼食だけは社外に出て、普通のお店のまともな食事をと考えていました。ですから、週毎に決まったお店に日替わりで通うようにしていました。

 今でも普通のお店で食事しようとさえ思えば、お金も時間も余裕で十分可能なのですが、しません。当初は弁当に味気なさもありましたが、慣れて来ると、今さら普通のお店に浮気しようなどとは思いません。おかずを細々(こまごま)揃えている弁当の合理性に、今では安心感さえ持っています。かつて偏執狂というほどのラーメン好きだったのに、今ではラーメン屋からもまったく足が遠のいています。何事にもすぐ癖になりやすく、習慣化しやすい性格だからでしょうか? 酒を断ってからというもの、少なくとも食の考え方では、現実的が一番になっているようなのです。

 夕食についても飲酒時代とは大きく変わっています。飲酒時代の休日の夕食といえば、好物の魚の刺身を酒の肴に、だらだら飲みながらというのがほぼ定番でした。文字通りだらだらと、いつまでも続いたものです。刺身がなかったら、イカの塩辛とか松前漬、味付けタコ、辛子明太子、アサリの酒蒸し、シシャモ、アスパラベーコン、ギョーザ、白菜キムチなどが好物でした。酒の肴そのものです。不思議なことに、焼き鳥、おでんの類は昔から好みません。

 酒を断ってからというもの、夕食の食卓から魚の刺身など、酒の肴の類がなくなりました。妻が酒を連想させないよう気を利かせているのでしょう。高齢者家庭の食卓は質素というのが定説ですが、我が家も質素・簡単で済ませています。それでも別に不満などありません。むしろ持病の糖尿病には、食事療法としても最適・最善だと納得してさえいます。

 精一杯の御馳走が食卓に並ぶのは、息子たちが孫を連れて遊びに来るときだけです。孫が男の子ばかりなので肉料理が中心です。時々は焼肉屋に家族そろって繰り出します。酒を断つ前は、脂っこさに辟易して、焼肉など大の苦手でしたが、今では平気で食べられるようになりました。妻に言わせると、誰よりも人一倍食べているそうです。酒を断って、味の好みが大きく変わったようなのです。

 御馳走と言えば、私としてはやはり会席料理を思い浮かべます。これも少し前のことですが、NHKの番組で京都のとある割烹について報じていました。6ヵ月前から予約でいっぱいになるほどの人気の店で、手の込んだ本格的な京料理では通に有名な店だそうです。店は客が14人ぐらいで満席となるカウンターだけ、主人の料理人は、料理の素材ばかりか食器や生け花、掛け軸など調度品にも神経を行き届かせているそうです。場所が南禅寺界隈とか言っていましたから、環境としても申し分ありません。さすがに興味津々で見ていました。

 その番組を見た時も、浮かんで来たのは「玄人が作った一級品の食膳を楽しむ? ひょっとしたら自分にもまだ機会があるのかも・・・。もしそうなったら酒ナシでいけるだろうか?」という妄想でした。そして、ふと気が付いたのです。65年も人生を歩んでいながら、会席料理にありつけたのは、せいぜい結婚披露宴と医者の接待ぐらいで、たかだか10数回に過ぎないことです。引退した身となっては、これからそんな機会など滅多にあるわけないのが現実で、もう無縁の世界と思う方が道理なのです。まさに杞憂で、もはや取り越し苦労などは、心配ご無用の身分なのです。

 現実的にみれば、一人で楽しむ食事ぐらいが、これからでも気楽にできる食の楽しみ方なのでしょう。実際、刺身を食べたくなれば、昼間スーパーで買って、一人で併設のイートイン・コーナーで食べています。また、たとえ弁当でもそれなりに満足できるようにもなりました。その一方で、家族そろって観光ホテルに宿泊し、私だけが酒ナシで夕食を済ませたこともあります。場違いな気分に襲われ、さすがに緊張感で楽しむどころではありませんでした。その点、一人だけというのはとても気楽です。

 こんなわけで、本格的な飲食店で食を楽しむことはまだ控えています。旅に出かけ食を楽しむことも控えています。そんな現状に自己憐憫を感じていないと強がってみても、一抹の侘しさは拭えません。これもすべてはアルコールという黒幕が潜んでいるからです。

 相手はアルコール、巧妙で、不可解で、強力なものです。脇が甘いと隙あらば、そこを容赦なく突いて来るのは見え見えです。脇を締めて掛らなくてはいけません。

 どうすればうまくいくか? 気負ってしまっては却って失敗するのが目に見えています。年金生活(者)ですから、支出は極力切り詰めるべき時です。かといってアルコールに怯え、食を楽しむこともなく、無難に済ましてばかりではさすがにシャクに触ります。適度な緊張感をもって行動に移せるものとなると、団体ツアーに一人で参加ぐらいでしょうか? その点、好物のカニなどは、飲酒時代でも身をほじくるのに夢中で、酒など眼中からなくなっていました。ですから、試運転にはカニ食べ放題ツアーなどが打って付けかもしれません。これもアルコールが仕掛けるワナなのかもしれませんが・・・。

 しばらくは妖しげな想像をたくましくし、イメージトレーニングを積むのもあっていい。久々に心が戦き、期待と不安が渦巻く気分を楽しんでいます。この記事を書いたお蔭で気持ちの整理ができました。私の強みも弱みも、何事にでもすぐに嵌り、癖になりやすい性格にあります。この癖のあることだけは忘れないように、心しておきさえすれば、・・・メデタシ、メデタシです?!


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