私にとって、このブログは闘病記録のようなものです。回復プロセスを含めた病状の記録と脳のリハビリを目的としています。自分の書いたものはその時々自分の心を映す鏡です。記事の内容もさることながら、書いた文章の不具合がその時々の病状を表していると考えています。この悪文見本市シリーズもその一環として掲載しています。
アルコールの急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)は、断酒を始めて3~6ヵ月で自覚するようになると言われています。その症状の一つ “思考プロセス障害” には、脳の働きにムラがある、頑なで諄(くど)い思考、因果関係を理解できないなどの症状が知られています。
私の経験からすると、その具体的現れは “遠回りする思考”、“助詞の使い方に混乱”、“修飾語の語順の誤り”、“時制の混乱” などからなり、大概が “慣用的な言葉の使い方(言い回し)を失念すること” と要約できると考えています。
今回もその具体的な現れと思われる悪文事例をご紹介します。いずれも脳がストライキを起す寸前の状態にあり、集中力に欠け、文案が錯綜する混乱の中で書いたものと思われます。
なお、現在掲載中のものはいずれも手直しした後の改訂版です。
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【事例41】
「 “空白” を生まない時間の過ごし方
時間ほど自分の意の儘にならないものは他にありません。如何に時間と折り合いをつけるか ―― これは如何に生きるかという人生最大のテーマに繋がる問題だと思います。このことに比べたらアルコールを断つことなど些細なことと思えてきます。まず、身近なところから手を付けてみませんか?」
↓
「 “空白” を逸らす時間の過ごし方
酒を断って1年ぐらいまでのアルコール依存症者にとって、“空白の時間” という言葉は特別な意味を持っています。「時間ほど自分の意の儘にならないものは他にない」この真理を嫌と言うほど味わわされる破目に陥るからです。かつては酒さえあれば何とかなるものと、さして気にもしなかった時間の空きのことです。が、酒を断った身となってみると、時間が空きそうというだけで怯えてしまうほどなのです。そのストレスでパニック寸前となり、つい再飲酒の誘惑にかられてしまう人もいるようです。そんな際どい心境など健常な人にはとても想像できないと思います。どうしたらいいのでしょう?」
「“空白” を逸らす時間の過ごし方」(2016.3.11投稿)より
表題からして、ちょっと無理がありました。誰にでも無為な時間は生じるもので、それを「生まない」は言い過ぎです。無為な時間は、できるだけ「逸らす」ぐらいが適当と考えました。
テーマが断酒後の “空白の時間” という極めて特殊かつ具体的なことのはずが、仰々しく重いテーマを想像させる書き出しになっています。このような考え方が “遠回りする思考” を表すものと考えています。一般論で書き出したことで、却って後続とのつながりが難しくなっています。“思考プロセス障害” のせいで様々な文案が飛び交い、決めきれなかったのだと思います。
ここは主題の核心にズバリ切り込むべきでした。書き出しが一般論で始まり遠回りしていることに投稿した後になって気付き、核心となるキーワード「アルコール依存症者にとっての “空白の時間” 」などを加えて修正しました。つくづく融通がきかない鈍な頭だと思い知らされました。
【事例42】
「“ハードウェア” と “ソフトウェア” の意味を十分理解できていないのですが、敢えて生体の器官に当てはめてみます。一定の機能を持っている器官(臓器)そのものを “ハードウェア” とし、器官の持つ機能の使い勝手の良さを “ソフトウェア” としてみます。一定レベル以上の機能さえ備えていれば問題ナシとする一般的な内蔵などの器官と異なり、脳は一定レベル以上の機能に加え、使い勝手の良さが要求される器官だと思います。むしろ使い勝手の良さこそが脳の生命線なのかもしれません。脳の頭のキレとか頭の冴えとかが使い勝手の良さに当るとも思いますが、 “ソフトウェア” としてみた場合、アルコール依存症からの回復とは何なのでしょう?アルコールでイカレた脳の、使い勝手の良さを備えた回復とはどんなものなのでしょうか? 脳の使い勝手のよさとは、・・・」
↓
「“ハードウェア” と “ソフトウェア” の意味が十分理解できていないのですが、敢えて生体の器官に当てはめてみます。・・・ 一定レベル以上の機能さえ備えていれば問題ナシとする内蔵などの一般的な器官と異なり、脳は一定レベル以上の機能に加え、使い勝手の良さが要求される器官だと思います。むしろ使い勝手の良さこそが脳の生命線なのかもしれません。頭のキレとか頭の冴えとかが脳の “ソフトウェア” に当ると思いますが、アルコール依存症から脳の “ソフトウェア” が回復するとはどういうことなのでしょうか? 脳の使い勝手のよさとは、・・・」
「アルコール依存症の回復イメージ」(2016.3.18投稿)より
この記事全体の(書き出しに当る)冒頭部分です。問題箇所を下線で示しました。どう論じるべきか相当苦労していたことがお分かりと思います。
最初の下線部が “不自然な助詞の使い方” に当たります。日本語の慣用的な使い方としては、“が” の方が普通と気付くハズです。こんなことにも迷っていました。
次の下線部が “修飾語の語順の誤り” です。“書きことば” では、修飾語の語順に特有のルールがあります。「長い修飾語を先に、短い修飾語を後に」という語順のルールです。“器官” の修飾語の語順では、この基本的なルールが守られていません。“話しことば” 流に、大事なことから先に切り出すやり方になっています。気持ちに余裕がないため、醒めた目で点検できなかったのだと思います。
後半の下線部では、“ソフトウェア” という概念が十分に理解できていないまま、強引に考えをまとめようとしています。論理の整合性を図ろうとして、必要以上の繰り返しで諄(くど)い表現になっています。自分の言葉で自分なりに表現しようと試みると、必ずといっていいほど考えがまとまらなくなります。自分の言葉で自分なりに表現するというのは、想像以上に苦労が伴う作業です。
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【急性離脱後症候群(PAWS)】
症状は、断酒開始後3~6ヵ月目で最も強くなり、6ヵ月~2年で回復する。
○ 思考プロセス障害(脳の働きにムラがある、頑なで諄(くど)い思考、
因果関係を理解できない)
○ 情動障害(情動の揺れ)
○ 記憶障害(短期記憶の障害)
○ 睡眠障害
○ 身体的協働性に問題
○ ストレス感受性に変化(おそらく認知障害“認知のゆがみ”の意味:筆者追記)
(アルコール依存症専門クリニック教育資料より)
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アルコールの急性離脱後症候群(Post Acute Withdrawal Syndrome:PAWS)は、断酒を始めて3~6ヵ月で自覚するようになると言われています。その症状の一つ “思考プロセス障害” には、脳の働きにムラがある、頑なで諄(くど)い思考、因果関係を理解できないなどの症状が知られています。
私の経験からすると、その具体的現れは “遠回りする思考”、“助詞の使い方に混乱”、“修飾語の語順の誤り”、“時制の混乱” などからなり、大概が “慣用的な言葉の使い方(言い回し)を失念すること” と要約できると考えています。
今回もその具体的な現れと思われる悪文事例をご紹介します。いずれも脳がストライキを起す寸前の状態にあり、集中力に欠け、文案が錯綜する混乱の中で書いたものと思われます。
なお、現在掲載中のものはいずれも手直しした後の改訂版です。
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【事例41】
「 “空白” を生まない時間の過ごし方
時間ほど自分の意の儘にならないものは他にありません。如何に時間と折り合いをつけるか ―― これは如何に生きるかという人生最大のテーマに繋がる問題だと思います。このことに比べたらアルコールを断つことなど些細なことと思えてきます。まず、身近なところから手を付けてみませんか?」
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「 “空白” を逸らす時間の過ごし方
酒を断って1年ぐらいまでのアルコール依存症者にとって、“空白の時間” という言葉は特別な意味を持っています。「時間ほど自分の意の儘にならないものは他にない」この真理を嫌と言うほど味わわされる破目に陥るからです。かつては酒さえあれば何とかなるものと、さして気にもしなかった時間の空きのことです。が、酒を断った身となってみると、時間が空きそうというだけで怯えてしまうほどなのです。そのストレスでパニック寸前となり、つい再飲酒の誘惑にかられてしまう人もいるようです。そんな際どい心境など健常な人にはとても想像できないと思います。どうしたらいいのでしょう?」
「“空白” を逸らす時間の過ごし方」(2016.3.11投稿)より
表題からして、ちょっと無理がありました。誰にでも無為な時間は生じるもので、それを「生まない」は言い過ぎです。無為な時間は、できるだけ「逸らす」ぐらいが適当と考えました。
テーマが断酒後の “空白の時間” という極めて特殊かつ具体的なことのはずが、仰々しく重いテーマを想像させる書き出しになっています。このような考え方が “遠回りする思考” を表すものと考えています。一般論で書き出したことで、却って後続とのつながりが難しくなっています。“思考プロセス障害” のせいで様々な文案が飛び交い、決めきれなかったのだと思います。
ここは主題の核心にズバリ切り込むべきでした。書き出しが一般論で始まり遠回りしていることに投稿した後になって気付き、核心となるキーワード「アルコール依存症者にとっての “空白の時間” 」などを加えて修正しました。つくづく融通がきかない鈍な頭だと思い知らされました。
【事例42】
「“ハードウェア” と “ソフトウェア” の意味を十分理解できていないのですが、敢えて生体の器官に当てはめてみます。一定の機能を持っている器官(臓器)そのものを “ハードウェア” とし、器官の持つ機能の使い勝手の良さを “ソフトウェア” としてみます。一定レベル以上の機能さえ備えていれば問題ナシとする一般的な内蔵などの器官と異なり、脳は一定レベル以上の機能に加え、使い勝手の良さが要求される器官だと思います。むしろ使い勝手の良さこそが脳の生命線なのかもしれません。脳の頭のキレとか頭の冴えとかが使い勝手の良さに当るとも思いますが、 “ソフトウェア” としてみた場合、アルコール依存症からの回復とは何なのでしょう?アルコールでイカレた脳の、使い勝手の良さを備えた回復とはどんなものなのでしょうか? 脳の使い勝手のよさとは、・・・」
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「“ハードウェア” と “ソフトウェア” の意味が十分理解できていないのですが、敢えて生体の器官に当てはめてみます。・・・ 一定レベル以上の機能さえ備えていれば問題ナシとする内蔵などの一般的な器官と異なり、脳は一定レベル以上の機能に加え、使い勝手の良さが要求される器官だと思います。むしろ使い勝手の良さこそが脳の生命線なのかもしれません。頭のキレとか頭の冴えとかが脳の “ソフトウェア” に当ると思いますが、アルコール依存症から脳の “ソフトウェア” が回復するとはどういうことなのでしょうか? 脳の使い勝手のよさとは、・・・」
「アルコール依存症の回復イメージ」(2016.3.18投稿)より
この記事全体の(書き出しに当る)冒頭部分です。問題箇所を下線で示しました。どう論じるべきか相当苦労していたことがお分かりと思います。
最初の下線部が “不自然な助詞の使い方” に当たります。日本語の慣用的な使い方としては、“が” の方が普通と気付くハズです。こんなことにも迷っていました。
次の下線部が “修飾語の語順の誤り” です。“書きことば” では、修飾語の語順に特有のルールがあります。「長い修飾語を先に、短い修飾語を後に」という語順のルールです。“器官” の修飾語の語順では、この基本的なルールが守られていません。“話しことば” 流に、大事なことから先に切り出すやり方になっています。気持ちに余裕がないため、醒めた目で点検できなかったのだと思います。
後半の下線部では、“ソフトウェア” という概念が十分に理解できていないまま、強引に考えをまとめようとしています。論理の整合性を図ろうとして、必要以上の繰り返しで諄(くど)い表現になっています。自分の言葉で自分なりに表現しようと試みると、必ずといっていいほど考えがまとまらなくなります。自分の言葉で自分なりに表現するというのは、想像以上に苦労が伴う作業です。
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【急性離脱後症候群(PAWS)】
症状は、断酒開始後3~6ヵ月目で最も強くなり、6ヵ月~2年で回復する。
○ 思考プロセス障害(脳の働きにムラがある、頑なで諄(くど)い思考、
因果関係を理解できない)
○ 情動障害(情動の揺れ)
○ 記憶障害(短期記憶の障害)
○ 睡眠障害
○ 身体的協働性に問題
○ ストレス感受性に変化(おそらく認知障害“認知のゆがみ”の意味:筆者追記)
(アルコール依存症専門クリニック教育資料より)
今年も拙い記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。皆様、よいお年を!
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