自分の誕生日に甲斐駒ヶ岳の山頂で富士山をはじめ南アルプスの山々・中央アルプス・北アルプス・八ヶ岳等々絶景を望む事ができました。
計画では甲斐駒ヶ岳の山頂で昼食を食べる予定でしたが、まだ正午には時間がありましたので『摩利支天』に向かいました。
直登コースと比べると風化した花崗岩の粒が登山靴の下でズルズルと滑ります。
滑りやすい下り坂を『摩利支天』に続く分岐まで小刻みのステップで軽快に下って行きました。
甲斐駒ヶ岳は多くの人で賑わっていましたが、『摩利支天』へ向かう人はごく少数でした。
40数年前、夏合宿で南アルプスに来た時に甲斐駒ヶ岳と並び登りたかったのが『摩利支天』でした。
『摩利支天』と言う名の響きと、山頂に2本の剣が祀られているという神秘的な雰囲気を纏った頂きを見てみたかったからでした。
風化した花崗岩の白い登山道を、64歳になった私は『摩利支天』に向けて一歩一歩足を踏み出しました。
誰も居ない静かな山頂は甲斐駒ヶ岳にも増して私を幸せな気持ちにしてくれたのでした。
『摩利支天』から見る富士山は、手前に鳳凰三山を配し、まるで厳かな “神” か “仏” の姿に見えたのです。
予想だにしていなかったその “眺め” を見ながら、厳かな気持ちで一人だけで誕生日を祝ったのでした。