TANEの独り言

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我が青春の山<穂高〜槍 縦走>後編

2020-10-02 09:16:00 | 山行
緊張の続く大キレットを3人で進んでいきました。

その時の山行は、私が先頭を歩きペースを作る役目です。

先頭を歩く者は、パーティー全員のその日その時の体調に気を配り、歩くペースを調整していかなければなりません。

最後尾がリーダーで、全体の様子を後ろから見渡すことができるので、先頭がハイペースであればペースダウンの指示を出します。

今回の山行で最も緊張を強いられる北穂高岳、南岳間の大キレットを無事通過する事ができ、その後の行程で私の歩みはハイペースになり過ぎてしまったのです。

大きな山場を無事にクリアできたという達成感と安堵感で私の頭の中がいっぱいになり、後ろを振り返ることも忘れ、自分のペースでその日のテント場の槍ヶ岳を目指して歩いていたのでした。

仲間の歩みが遅くなったことに気付かず、私一人が先を歩き、徐々に仲間と離れてしまうかたちになったのです。

リーダーは、度々、私にペースを落とすよう指示を出しました。

指示が出た時、一旦ペースは落とすのですが、しばらくするとまた自分のペースで歩いていたのでした。

先頭を歩く者としてこれは決してやってはいけない行為です。

さらに言えば、山に登る者としては失格です。

あの時、仲間はどんなに辛く苦しかったか想像すると、今でも心苦しなりますし自分の行動が恥ずかしくなるのです。


それでも何とか3人とも無事に、槍の肩にあるテント場に到着することができました。

荷物を下ろし体を休めることで仲間の体調も次第に回復し、大事に至らなかったことは私たちにとって幸いでした。

あの時、何事も起こらなくてよかったと今でも思います。


槍ヶ岳山頂は天気に恵まれ、これまで縦走してきた穂高の峰々や、前年歩いた立山・薬師岳・黒部五郎・鷲羽岳・三俣蓮華の山々が見渡せました。

さらには、その年の夏に登った南アルプスの北岳・間ノ岳・農鳥岳や八ヶ岳の山々も見渡すことができたのです。



翌朝、テントの入り口を開けると、槍ヶ岳の尖った穂先がドンと目の前にあることが夢の様で感動しました。


実はこの時、台風が接近しており、明日中に上高地まで下山し、バス等交通機関の都合が合えば松本まで降りることを3人で話し合って決めました。

翌朝、まだ風も静かな早朝から上高地に向けて下山を始めたのでした。



足が棒になる“ という表現がありますが、まるで他人の足であるかのような感覚、ただ機械的に足が交互に出ていく感覚で3人で黙々と上高地まで歩いたのでした。


上高地から自宅までの帰路の記憶もまったくありません。


この40年前の山行を思い出すとき、私の中には穂高連峰から槍まで3人で無事歩き通せた達成感とともに、私の未熟さで仲間にキツイ思いをさせてしまった心苦しさとが交錯するのです。


私は無事家に帰り着き、引き出しに入れていた手紙を誰にも知られないように処分したのでした。


         < 完 >


*昨年の秋、私は40年振りに1人で穂高を訪ねました。
その時のことは6月に「憧れの地に向けて」と題し7回に分けてブログにupしています。
ぜひ、そちらも見てください🙇‍♂️



















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