温泉行きたい

いろいろあったので、生気を取り戻しに、温泉に行きたいなあと思う。温泉に行ったからといって、生気を取り戻せるとは限らないし、かえって疲労するだけなんじゃないかとも思えるのだけれど、遠くの山でも眺めながら、お湯に浸かって鼻歌でも垂れてみたいのだ。

それなりに、どこかいいところはないだろうかと、探してはみた。けれども、ここだというところは、なかなか見つからない。海辺よりも山際だろうということは、決めてあった。大きな風呂があって、露天風呂なんかもあればいい。部屋の窓からの眺めがよければいい。宿代はあまり高くないほうがいい。明かりはぼんやり灯りゃいい。といった具合に、希望は多々ある。

けれども、ひとりで泊まれる宿というのは、限られているようだった。泊まってみたい気のする宿には、２名様より、と書いてあって、内容的には、ここは連れ込み旅館ですよ、なんて謳っているようにも思えて、１名様には厳しい。温泉でふたり、温泉でひとり、両方ありだと思うのだけれど。

仕方ないので、ひとりで泊まれる宿の中から、探すことにした。けれども、ひとりで泊まるよりも、ふたりで泊まるほうが得、なんてことをそこに知ってしまえば、出し惜しみしたくもなるのだった。

それでも、温泉に行きたいのだから、奮発するしかない。ひとりで温泉宿に泊まるということは、ふたりで泊まるということよりも、贅沢なことなのかもしれない。けれども、人生はひとりよりもふたりのほうが楽しい気はするから、なかなかうまくいかないもんだ。