goo blog サービス終了のお知らせ 

ぶきっちょハンドメイド 改 セキララ造影CT

ほぼ毎週、主に大人の童話を書いています。それは私にとってストリップよりストリップ。そして造影剤の排出にも似ています。

Aの物語ー検討ー

2019-07-05 06:00:00 | 大人の童話
町の賑わいが届く中、王宮では使用人達其々に小さなピンが贈られ、山盛りのお菓子も振る舞われていた。
王妃は猫を膝に乗せ、不思議な紙の上に書かれた、使用人達からのお祝いの言葉を一言づつ読み、聞かせていた。
王が左手に顎を乗せ、その様子を見つめていると、三人の従兄弟とその妻二人がお祝いに訪れた。
子も兄弟も持たない王にとって、一番気のおけない彼らと、和やかに昼食会が始まった。

「乾杯!」の声を発したのは、広い牧場を持つ一番年かさの男だった。その横には、ふくよかな笑顔が似合うその妻が、その隣には少し荒れた指先を持つ一番年若い男が、座っている。
向かいの席では、農場を営む日に焼けた夫妻が微笑んでいた。
テーブルには、薄く削いだ肉の薫製や、擂り潰した魚に野を入れ、蒸し固めたもの。野菜と豆の甘酢漬けなど、堅実な料理が並んでいる。
王妃は牧場を営む夫妻に声を掛けた。
「とても軽くて温かそうな外套をありがとう」
「以前王から賜った、山羊達の毛で工夫しました。今までのものと格段に違います」
嬉しそうに話す男に、王が答えた。
「それは素晴らしい。国と人々の為にも有難う」
王妃は次に年かさ夫妻に顔を向けた。
「沢山の木の実をありがとう。随分よく干せているのですね」
「新しい干し方をしたのです。王から頂いた膏薬が農夫達の手荒によく効いて、色々と試みることが出来ました」
王は少し間を置いて、男を見つめた。
「尽くした力に無理を申すが、備えになるものなので、その成果を皆に分けて貰えないだろうか」
「では早速、農場主の集まりを通じて広めて参ります」
「本当に有難う。私はいつも皆に助けられている」
「光栄です」
誇らしげな男に微笑んでから、王妃は一番年若い男に礼を言った。
「沢山の丸薬をありがとう。薬を作るのは、とても気を使うものなのでしょう」
「体の弱い妻の為に始めたのですが、王から度々賜った薬草のお陰で、充実したものとなりました」
「それは貴公が心を尽くしたからであろう」
王はゆっくりと杯を半分干して、従兄弟達を順に見つめた。
「私が王位を退くこととなったら、そなた達の誰かが、王座に着いてくれないだろうか」
客達は一様に息を呑み、顔を見合せた。
そして其々、口を引き結び、首を傾げ、俯いて考え込んだ。
最初に口を開いたのは、農場を営む従兄弟だった。
「私は農園の者達を纏めることで手一杯です。国は私の手に余ります」
きっぱりと言った。
次は一番年かさの男だった。
「私は羊やラマを飼い育て、日々工夫することが性に合っております」
一番若い従弟は、胸元に片手を当てた。
「私は妻を少しでも健やかに保つことが、一番大切な男です。とても王の器ではありません」
「そうか。皆が自身の場所で、国を支えてくれているのだな。では、息子達はどうだ?」
一番年かさの男が答えた。
「この布を作り上げたのは、次男なのです。あれは黙々と積み重ねて行くことを好みます。私は息子にしたい事をさせてやりたい。長男は陛下もご存知の通り出奔し、家督とは無縁です」
「あれは面白い男であった。そなたの三人の息子達は?」
農場を営む男に、迷いは無かった。
「私の息子達は王の器ではございません。親としてではなく、一貴族として、彼らを王座似合う着かせる訳にはいきません」
「そうか…」
王は長く息を吐き、口元に笑みを浮かべた。
「率直に話してくれて有難う」
客達の肩から力が抜けた。
「このテリーヌは、本当に美味しゅうございます」
農場主の妻が明るく言った。
「そうですわね」
農場主の妻が同意した。
……..............................................................



不思議な柄の紙

材料  スクラッチアートセット(ダイソー)
    化粧筆(削りかすを払うのに便利)
    下書き用の紙とシャープペンシル

大まかにデザインを決める
モチーフを幾つか描いてみる
実際に削る
色の出方に合わせて、臨機応変にデザインを変えて行く


    










 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。