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ぶきっちょハンドメイド 改 セキララ造影CT

ほぼ毎週、主に大人の童話を書いています。それは私にとってストリップよりストリップ。そして造影剤の排出にも似ています。

楽園 Fの物語ー出発の朝はおまけ付きー

2020-09-12 22:00:00 | 大人の童話
次の朝、ルージュサンは、いつもの時刻に食堂の扉を開けた。
「お早・・・」
挨拶が途中で途切れる。
「お早うございますっ」
セランが爽やかな笑顔で、両手を広げ、出迎えたからだ。
ルージュサンは、思わず目を閉じ扉を閉めた。
「どうしたんですか?リボンの結び目でも気になりましたか?大丈夫。いつも通り美しいです。いえ、貴女は、どんな成りをしていても、いつでも究極に美しい」
セランの底抜けに明るい声が追ってくる。
ルージュサンは頭を抱えた。
見間違えであって欲しかった。
観念して扉を開けると、セランもすっかり旅支度だった。
「仕事はどうするのですか?」
「秋休み前の試験は、講師の方にお願いしました。そのまま秋休みに突入です」
「日数を減らす為に船ですよ。船酔いするのではないですか?」
「大丈夫。その前に貴女に酔い潰れている筈です」
「利用出来る時は利用しますよ」
「お役に立てるなら光栄です」
「容赦なく見捨てますよ」
「勿論。そうして下さい」
セランは爽やかな笑顔のまま、目尻を少し下げた。
「貴女は私に『休みは変わらない』と、嘘をつくことも、仕事の段取りをせずに、昨日出発することも、使用人の方の負担を増やして今朝早く出ることも出来ない。それが貴女の弱点です」
セランは手を組み、うっとりと宙を見た。
「ああ、一日中、貴女の側にいられるなんて」
その姿はまるで、祈りを捧げる美神の像だ。
何度見ても、美しいものは美しい。
何を言っても、変わらないものは変わらない。
呆れて諦め、受け入れるしかない。
そして完璧に美しい分、より、痛ましい。
ルージュサンは深く、溜め息をついた。