ぶきっちょハンドメイド 改 セキララ造影CT

ほぼ毎週、主に大人の童話を書いています。それは私にとってストリップよりストリップ。そして造影剤の排出にも似ています。

ーRの物語ー出会い

2019-11-22 07:00:00 | 大人の童話
久々に飲み過ぎた。
足が少しふわふわする。
港町の細い通りで、子爵は思った。
夕方の飲み屋街は人影も疎らで、酔っているのは子爵と、道端に座っている酒浸りの男だけだった。
夕食にと入った馴染みの居酒屋で、いつになく急ピッチで、強い酒をあおってしまった。
亡くなった一人息子に、似た男を見たショックからだった。
ーそろそろ本気で跡取りを決めなければならないー
領地からの収入はささやかなもので、災害でもあれば持ち出しになってしまう。
貿易商であることと、切り離すことは出来ない。
子爵家の血を引き、商才のある者。
近い親類にはいない。
血とか言うのはもう古いのかもしれない。
それならば…………。
酔っている上に、考え事をしていたせいか、ぎりぎりで子供と擦れ違う。
と、懐に違和感があった。
手を入れると、財布がない。
振り向いた途端に、先程の子供が走り出した。
13、4才だろうか、身が軽い。
体力には自信があったが、50半ばの上、酔っている。
全力で走ったが、とても追い付きそうにない。
「スリだっ!捕まえてくれ!」
赤毛の子供を追い越す。若い男と行き違う。細身の女を視界の端に捉えて、腹が出た男の横を駆け抜ける。
それでもスリは遠ざかって、横の通りに入ってしまった。
ー無理か……ー
足が止まった。
その時。
「こちらです!」
高い声が響いて、振り向いた。
赤毛の子供が、若い男をうつ伏せにして、右肩を極めている。
子供は12、3歳だろうか、おまけに細い。
驚きながら小走りで戻ると、子供が言った。
「この人に何かを渡しました」
「放せよこのガキ!なんなんだっ、チビのくせして!」
若い男は悪態をつくだけで身動きがとれない。
「懐を探ってみて下さい」
子供は男の背中に片足を乗せ、腕を極めたまま、上体を少し捻り起こす。
「有難う」
罵詈雑言を聞き流し、子爵が男の懐に手を入れると、慣れた革の感触があった。
型押しされた家紋と、自分の名前を確かめると、男の顔の前にそれをかざした。
「これは確かに私の財布なのだが」
「知らねぇよ!さっきのガキが勝手にいれやがったんだ!」
「何の為に?」
「だから知らねぇってば!」
「お前の仲間だと考えれば、しっくりくるんだが」
「仲間だってんなら、このガキとだろう。そういやさっきのガキは、悪タレどものグループでよく見るツラだ。旦那にうまく取り入ろうって腹だろうよ!」
「そうなのか?」
視線にからかいの色を滲ませて、子爵は子供の顔をしっかりと見た。
顔立ちは整っていて、大きな瞳は長い睫毛で縁取られている。
そして、その眼差しに宿っているのは、鋼の光だ。
「私は船乗りで、昼に港に着きました。出港は五日後。悪巧みに加担するには、とても時間が足りません」
視線から『信用』だけを受け取ってさらりと流し、男を捕らえる役を子爵に替わった。
「と、いうことだ」
子爵は男の手首を握る手に力を込めた。
男がうめき声を出す。
「今回はこれで終わりだ。でも二度と、私に手を出すな」
「わかった。わかったから、放してくれ!」
子爵が手を放すと、男は素早く立ち上がって、手首を擦りながら言った。
「覚えてろよっ!このガキ!」
「待った!!」
走り出そうとする男の手を、子爵が再び捕まえる。
「何でそうなるんだ!?この子は関係ないだろう?」
「わかったよ」
答えを口元が裏切っていた。
ーこの子供は巻き込めないー
子爵がいくらかの金で解決しようと、手を動かしかけた時、子供が言った。
「ご心配なく。自分の身は自分で守れます」
振り向いた子爵を、微笑んで見返す。
ー大した矜持だー
「この子にも、手を出すなよ」
子爵は男を解放した。

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痩せた女のイヤリング。






材料
シルバーのイヤリング ぶら下がりタイプ 1組
スワロフスキービーズ 4㎜ アメジスト 2個
同色の毛糸 約50cm 又はフェルト用の毛 1つまみ
ビーズ 4㎜ 透明 4個
座金 8㎜ 4個
リング クリスタルガラス入り 4個
Tピン シルバー 2個

道具
中性洗剤(食器用洗剤等)
先の丸いペンチ


1 (毛糸はほどいてから)毛をなるべく短く千切る。

2 1の毛を2等分し、水で薄めた洗剤に浸して両手のひらの間で転がして、夫々丸く固める。

3 2を水でよく洗い、乾かす。

4 Tピンに、座金、3の玉、座金、リング、透明ビーズ、スワロフスキービーズ、透明ビーズ、リング、の順に通す。

5 Tピンの先をイヤリングの穴に通し、ペンチで丸める。