『「不幸」に出会ったとき、どう向き合うか』
――「非運に処する道」 あるリンゴ園経営者の生き方
不幸との対決の仕方については、私が学生時代に読んだ文章のなかで、心に残っているものがあります。『次郎物語』の著者、下村湖人が書いた「非運に処する道」という題の文章のなかで紹介されていた話です。
そこには、若くしてリンゴ園の経営を営み、二十代でかなりの成功を収めた青年と、下村湖人が交わした問答が書かれています。
「リンゴ園の経営を始めてから、一番つらいと思ったことは、何でしたか」というという問いに対して、その青年は、「この仕事を始めた最初の年に台風に襲われ、せっかく育てたリンゴがむざむざと地面にたたきつけられるのを見て、今にも気が狂いそうでした」と答えています。
しかし、その青年は、自分の“考え方”を変えることで、その後は台風が来て被害が出ても、つらいと思わなくなったそうです。
「台風は自然現象だ。毎年吹くものと覚悟しなければならない。リンゴが吹き落されるのは天意にかなっていないからなのだ。天意にかなったリンゴなら必ず梢(こずえ)に残る。現に、どんなにひどい台風にも吹き落されないリンゴが、必ず幾つかあるではないか。私は、そう考え方を変えたのです」
やはり、こういう気持ちが大事なのです。自分の育てたリンゴを落とさないために台風を止めることはできません。この事業家にとっては、「台風が来ても落ちずに残るようなリンゴをつくりたい」と考えたことが、人生の一つの転機だったのかもしれません。
---owari---
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