3月に入ってからテレビの天気予報でよく聞かれたのがこの「三寒四温」という言葉です。
気象予報士のほとんどの皆さんは、「三寒四温」を「寒い日が3日ほど続くと、その後4日間ぐらいは暖かい。これを繰り返しながら、だんだん暖かくなり、春へと向かいます」という意味で使われています。
しかし、この「三寒四温」という言葉は、本来は「冬季に寒い日が3日ほど続くと、そのあと4日ほど温暖な日が続き、また寒くなるというように7日周期で寒暖が繰り返される現象」のことを言います。
その証拠に、手紙に書く時候の挨拶は、2月(如月)が「三寒四温の時節」となっています。
また、俳句の歳時記においても「三寒四温」は「冬(晩冬)」の季語となっているのです。
それでは、なぜ、そのような差異があるのかと言えば、この「三寒四温」という言葉は、本来は日本の言葉ではなく、中国東北部や朝鮮半島北部で言われていた言葉だというのです。
昔から中国の東北部・朝鮮半島で冬にこの気象現象がよく見られて、このことをかの地で「三寒四温」と言いました。
この言葉が時を経て日本にやってくるのですが、実は日本では、冬場にそういう周期的に寒暖を繰り返すことがほとんどありません。言葉としてはあるが、気象としてはないという奇妙な状態にあるわけです。
日本の場合は立春を過ぎた頃の低気圧と高気圧の周期が似ているということで、春先の季語として少しずつ使われ始めました。低気圧と高気圧が交互にやってきて、少しずつ温暖な気候に変化していく様を表す言葉として使われ始めたのです。現代の日本では春先を表す言葉として使われることが多くなってきています。
本来の意味での中国・朝鮮半島での「三寒四温」の時期とは違うのですが、「寒い中に時々暖かい日がある頃」を指す言葉として、徐々に定着してきたと思われます。
多彩な季節感を、繊細に上手に言葉にしていくのは日本人の良さだと思います。そんなことも考えながら「三寒四温」という言葉を味わいたいと思いました。
この「三寒四温」という言葉と同様に、よく似た感じで勘違いして使われている言葉があります。それが、「五月晴れ」です。本来の意味は、「梅雨の時期の晴れた日」のことを言いますが、今は文字通り五月のすきっと晴れた日のことも言うようになりました。言葉は時代や場所とともに変わりゆくものと言えるのではないでしょうか。
さて、「三寒四温」という言葉、言葉の響きと俳句の七音であることから語呂合わせもよいので、日本人に好まれる言葉だと私は思うのです。
そして、水前寺清子さんの歌、「365歩のマーチ」にある歌詞のように、「三歩進んで二歩さがる」という徐々に人生の春を迎える気分が、日本人は大変好きなのではないでしょうか。
---owari---
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