母に会いに行く時はいつも昼食の時間が終わった頃。安静時間になっているので館内は静かだ。母の部屋に入るといつも眠らず起きている。そろそろ来るころかなと思っているのかもしれない。いつも故郷の町の広報誌や仏教の本を見ている。私達を見るとすぐに起きようとするが、主人が「お母さん、ベット体操をしましょう」と言って、ベットの上で足を上げたり、手を上げたりと体操をする。日々の体操が効いたのか、この頃は足を上げたまましばらく止めておくことが出来るようになった。その後は車椅子に乗る。その動作が素早い。廊下に出て、手すりを持って、主人が見守りながら歩行練習をする。その間に、私はベットの側の本などを整えて、箪笥の上を拭いておく。
歩き終えた後はホールに出て、小さなお菓子と好きなコーヒーをあげる。コーヒーの好きな母はいつも「おいしい」と嬉しそうに言う。コーヒーを飲みながら、窓から見える庭のお花や木などの話をする。雪が降れば田舎の雪の話になったり、私の幼い頃の話や母が若い頃の話などをしてくれる。前の庭に大きなクロガネモチの木がある。青い実がなり、やがて赤くなり、鳥が食べに来る。大きな鳥がひよどりだとはわかるが、小さな鳥は名前がわからない。母は鳥が来るのをとても楽しみにしている。その赤い実もあっと言う間に食べられてしまった。昨年は食べる様子を見られたが、今年は見られなかった。遠くに見える家並みがどこかと聞く。団地の名前を教えてあげながら、桜の咲く頃に連れて行ってあげようと思う。庭には紅梅のしだれ梅の蕾が膨らんで来た。白モクレンの枝先も空に向かって伸びている。お花の好きな母には楽しみな季節が来る。今まで母とこんなにゆっくりとした時間があっただろうか、耳は遠くなったが、話が出来るのは幸せだ。夫は母との時間を大切に思ってくれているのか、席を外し、その間に鉢植えのお花に水をやったり、花瓶の水を替えたりしてしてくれている。帰る時間になり「また来るね」と言うと「ありがとう」と手を降る。娘が行くと「今日はお母さんは来ないのか」と私を待っているようだ。後半年で98歳になる母、骨折の手術後、退院した時はこのまま寝たきりになるかと心配していたが、老人保健施設はリハビリをして頂だけるのでここまで回復できた。母と私を支えてくれている夫にはどんな言葉でも言い尽くせないほど感謝している。このブログを読まない夫には伝わらないかな。
画像は庭に咲いた福寿草 花言葉 幸せを招く