陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

シルバー世代のための映画 その2

2010-09-20 | 映画──社会派・青春・恋愛
去年(「シルバー世代のための映画」参照)に続き、敬老の日の映画特集をします。

去年の統計によれば、六十五歳以上の女性が人口の四分の一を超えた、とありました。
今年は統計上は六十五歳以上の男性が五人に一人の割合を突破。しかし、夏ごろから後期高齢者の不在が続々と明らかに。
今年は五年に一度の国勢調査の年でありますから、来年からの統計次第では、高齢者の比率が減るのではないかと噂されております。いずれにせよ、少子化は進み、急速な高齢化に変わりはないのでしょうが。

さて、この一年間で発表したレヴューのうち、素敵なお年寄りが活躍する映画を紹介します。高齢者が主役というだけでなく、老後の人生を考えさせるような映画も含んでいます。



「生きる」
黒澤明の代表作。末期癌を宣告された老境の役人が、残されたいのちの使い道を巡りさまよい、最後の生きがいに辿り着く。

「おくりびと」
失業した音楽家が、死を扱う職務に生きがいを見出す自己再生の物語。アカデミー賞外国語映画賞を受賞した話題の邦画。

「東京物語」
小津安二郎監督の名作ホームドラマ。東京で暮らす子どもたちを訪ねた老夫妻の哀しみをしみじみと描き出す。現代の高齢者孤立化、介護難民、都市の貧困、そして若い世代の格差問題を予見したかのような暗い世相ではあるが、家族ではない善意の結びつきに支えられることでかろうじて救われる。

「イル・ポスティーノ」
美しい海に囲まれたナポリの小島、亡命した老詩人と若き郵便配達夫とがはぐくんだ友情を描く。主演俳優の遺作としても知られる。

「おかえりなさい、リリアン」
六〇年を奪われた老女、個性をだめにされた母親。ふたりの女が、逃避行と同居生活でほんらいの自分に目覚める、ジェンダーフリーのドラマ。

「心の香り」
家庭の事情で異郷に預けられた少年が、京劇と祖父との交流を通じて成長していく。地味ながらも感動を呼ぶ中国映画。

「サイダーハウス・ルール」
トビー・マグワイア主演。孤児院で育った青年は、広い世界を知るために家を飛び出す。育ての親である老院長の隠れた思いやりが見える良作。

「さよなら子供たち」
ドイツ占領下、フランスの寄宿学校に忍び寄る戦争の魔の手。ルイ・マル監督の自伝的ドラマ。主役は子どもたちですが、罪なき児童を守ろうとした老いた校長の最後に、涙せずにはいられない。

「34丁目の奇跡」
少し気が早いけれど、クリスマスにお勧めの映画。感謝祭に湧く街に舞い降りたサンタを巡って、人々が起こす奇跡。名作「三十四丁目の奇蹟」のリメイク版。

「ダ・ヴィンチ・コード」
トム・ハンクス主演、ジャン・レノ共演。『最後の晩餐』に隠されたキリスト教のミステリーに迫るサスペンス。ここに出てくるお爺様は腹黒すぎます。

「チャーリーとチョコレート工場」
ティム・バートン製作、ジョニー・デップ主演の感動作。祖父の夢を継いで、少年はふしぎなチョコレート工場へと足を踏み入れる。お金で買えないものの価値を教えた母方の祖父と少年とのやりとりに感動しました。

「ニュー・シネマ・パラダイス」
映画館で育った少年と老いた映画技師との交流を描く名作。ラストシーンがあまりにも有名。

「灰とダイヤモンド」
ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督作品。ワルシャワ蜂起後の組織運動に与したレジスタンス青年の悲劇を描く。老いた政治家は古い体制の象徴であるけれども、けっして悪役に描かれてはいない。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」
映画で好感度の高い老人キャラといえば、やっぱりドクでしょう。ご存じ大ヒットタイムトラベルシリーズ三部作の完結編にして、西部劇風。ブラウン博士を救うため、主人公は百年前にタムスリップ。

「ハンニバル」
映画界で最強・最恐のご老体といいましたら、やはりレクター博士。アンソニー・ホプキンスは紳士をやらせても、狂人をやらせても上手い。

「やさしい嘘」
優しさのためにつく嘘は許されていいのかもしれない。ソビエト崩壊後の小国グルジア、祖母のためにやむにやまれぬ芝居をしつづける母娘の愛情を描く。フランス・ベルギー合作映画。



よく子どもっぽくて小うるさくないお年寄りを「可愛い」と形容しますが、なんとなく失礼な言い方のように感じます。老いた人にある誇りをそこで茶化しているような気もするのですね。

私の理想の老人像といえば、笠智衆のようなお爺さん、八千草薫のようなお婆さん。
高そうなスーツを着てるけど、年甲斐もない笑いをとっている老境の芸能人や顔に卑しさのある政治家がメディアでは目に尽きます。
アンチエイジングがさかんに叫ばれていますが、年を重ねて滲み出た品の良さというのは、やはり顔に現れてきますよね。見かけの若いこと、可愛いことだけが美しさではないと思われます。


【その他の特選映画レヴュー一覧】




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