本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

ハチはなぜ大量死したのか ローワン・ジェイコブセン

2011-12-03 | ノンフィクション

 

だが、もうこれ以上何かを足すのはやめる時期にきているのかもしれない。

ハチはなぜ大量死したのか
クリエーター情報なし
文藝春秋

 少し前から、ミツバチの数が減っているということについて話題になっていて、本書についても読んでみたいと思ってはいたのですが、何となく時間がたって忘れていのですが、図書館で見つけた時はうれしかった。

 2006年、アメリカのある養蜂家が自分の飛び回っているハチの数が異様に少ないことに気付いたところから始まる本書は、「ハチはなぜ大量死したのか」という日本語タイトルもあって、ミステリー仕立てのように見えるのですが、小説と違って、読者が納得できるような明快な犯人はわからずじまいです。

 けれど、最後まで読めば、著者が犯人像としてぼんやりと浮かび上がらせたそのシルエットが指し示すのが、読者である自分自身のライフスタイルにあることに気づき、とてもショックを受けました。

 受粉媒介者としてのミツバチは、いつしかある種の農業にとっては無くてはならない、「家畜」になっていた。その効率の良さのために、より多くのミツバチが求められ、養蜂家は、さまざまな技術を開発して、ミツバチの大量生産を実現し、それを農家に「レンタル」するのが一般的になっていたのです。

 一方、農場では、害虫を駆除するために多くの抗生物質がばらまく。

 けれど、より多くの収穫を得るためにミツバチなどの特定の益虫だけは残しておきたい。

 だけど、それがいかに都合の良いことを言っているか明らかです。

 とはいえ、それであきらめてしまうのでは、現代社会で生き残ることはできないから、様々な工夫をして、短期的には影響がないように見えていたのですが、人間とは違ってミツバチの世代交代が速いため、直接その個体への影響がなかったように見えたとしても、生態としてはあきらかに影響を受けていたのです。

 農薬は、害虫をその場で殺し、死ななかったミツバチの体にとりついた残留農薬は何かしらの役目を果たし、ハチの行動をおかしくする。そして、効率的に設計された大量の仲間で込み合う養蜂用の巣で生活するハチに取りついたウィルスやダニなどを殺すこともできず、瞬く間に蔓延する。

 著者が書いているように、

 問題は、農場が現代的な経済システムに吸収されてしまったことにある。

 ということだと思います。

 その結果、農業経営者は今、会社経営者のように物事を考え行動するように迫られている。農業経営者がビジネスに聡くなるのは何も悪いことではないが、農場(少なくとも環境に気遣う農場)は、ほかの事業の様に運営することはできない。事業は無限に成長することを前提としている。

 けれども、生物システムの世界では、癌を除けば、無限の成長を続けるものなど存在しない。健康的な農場は自然のサイクルの中にある。つまり、順調な成長と順調な腐朽という、うまく維持されたバランスがとれているのだ。

 と、本書はミツバチの減少という現象を通じた、現代社会の矛盾と、危うさに対する警告書でもあります。

 

 「集団としての知性」と名付けられた章で、紹介されていたミツバチの習性は、本当に魅力的。

 女王蜂、育児蜂、内勤蜂(貯蜜蜂)、外勤蜂(採餌蜂)といった役割分担も、エサを見つけて巣に持ち帰った後、ダンスを踊って、その場所を仲間に知らせる方法など・・・・、これらはまさしく「知性」そのものです。

 集団にこれほどまでに美しいと感じさせる知性があるとしたら、私たち人間だって社会を作って生きる種なのだから、「集団としての知性」を持っていたはず。「個」を尊重することは、なんら間違いではないけれど、けれど、集団を軽視することで、失う「知性」があったということをじっくり考えてみる必要があるのではないでしょうか。

 誤解を恐れずに言うと、本書を読みながら「生まれてくる子供たちが、みんな寿命をまっとうする社会」が理想の社会なんだろうかと、ずっと問い続けていました。

 私たちは本当はもっと、「病気」や「死」を受け入れるべきものなのではないのでしょうか。

 そんな風に考えては見るものの、インフルエンザにかかりたくないから、毎年受ける予防接種をやめることさえできない私・・・。

 つい先日70億を突破したという地球上の人口、これだけの爆発が「順調な成長」であったとすれば、それは「順調な腐朽」がどこかで来るに違いない・・・。

 それは、たぶん多くの人が認識していながら、明日の事でないからなかなか、「経済性を無視」してまで、現状を変えることはできない・・・。

 ミツバチの世界を見ながら、現代社会の行く末を考えさせられました。

 読み終わって2日、まだまだ自分の中で考えがまとめられないで沸々としているところです。

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