本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

楽園のカンヴァス 原田マハ

2016-09-18 | 小説

「この作品には、情熱がある。画家の情熱のすべてが」

楽園のカンヴァス (新潮文庫)
原田マハ
新潮社

 ここ1年余り、いろいろな事情で本を読むのをサボってしまったので、久し振りに図書館に行って、本を借りても、なかなか読み切れない、読了するだけで精一杯という事が多く、レビューを書けない!

 リハビリが必要だ!と思って、選んだのがこの本でした。数年前に結構話題になっていた本ですが、リハビリにはぴったりの、読みやすさ、そして面白さでした。

  物語は、ルソー知られざる「夢を見た」という作品を巡って繰り広げられます。

 1984年、この作品の所有者であるスイス、バーゼルに住むバイラーという伝説のコレクターに招かれたルソー研究者のティムブラウンと早川織絵。MoMAにあるルソーの「夢」とほぼ同じ絵を見て驚いた二人に与えられたミッションは7章からなる物語を毎日1章ずつ読み、最終日に講評をするというもの。そして、優れた講評をした方に、この絵の取扱権利(ほぼ所有権と同じことらしい)を与えると。X線検査どころか、講評までの間はこの絵を見ることもできない。

 2人が読むことになった不思議な物語は、晩年のルソーと、「夢」そして「夢を見た」に描かれている女性のモデルと言われているヤドヴィガそして、ルソーの価値をいち早く見抜いたと言われているパブロ・ピカソを巡って繰り広げられます。

 当時、まだまだ評価が固まっていなかったルソーが、実は現代アートの先駆者であると信じていたティムですが、実は招待されたのは彼のボスで、名前が一字違いのトム・ブラウン。ルソーについての知識と情熱は自分の方が上と自負しているティムは、トムのふりをしてバーゼルに行っていたのですが、その彼に、いろんな人がコンタクトしてきて、実はこの絵の下にピカソの大作が隠れていると聞かされるのです。

 また、早川織絵にも秘密が・・・。ティムはこの絵を巡る謎に翻弄されながら、7日目を迎えるのですが・・・。

 

 と、あまり書くとネタバレになるので、内容の紹介はこのくらいで。

 とにかく、読み始めてすぐ気づくのは、著者の絵画への愛。

 そして、実在する1枚の絵から、こんな物語を作り上げる発想力に感嘆です。

 「画家を知るには、その作品を見ること。何十時間も何百時間もかけて、その作品と向き合うこと」

 本書の中の一節ですが、著者の原田マハ氏の経歴を見ると、彼女自身の思いが詰まっている言葉なのだろうと思います。

 MoMAで勤務されていたとのことだからその間に、ルソーの「夢」を何度も見て、彼女の中で発酵して、この作品に結付いたに違いない。

 絵は、本当に見るものを想像の世界、「夢」の中に引き込む力がひときわ強い芸術だと思います。

 色(=光)が多分、人間の記憶をすごく刺激するのに加え、言葉がないため、制約が少ない(もちろん、近代以前はそう言い切れない部分もありますが)。そう思ってみると、絵画の正統的な教育を受けていないルソーだからこそ打ち破れた壁だったのかもしれません。

 私自身、旦那が画家という事もあり、絵を見にいく機会は多いのですが、美術館では意外にじっくりと絵と向かい合うのは難しいのです。人も多いし、今しか見られないと思うと、一つ一つに時間を取っていられない・・・。

 それに、私自身が絵に対する感受性が低いんでしょうね。なかなか、絵の前を離れられないというほど惹かれる絵に出会うことができません。

 でも、絵そのものよりもむしろ、その背後にある美術史が面白いです。そして、画家の人生とその時代を感じながら一緒に絵を見るのを楽しんでいます。

 この本を読んで、また美術館に行ってみたくなりました。

 1つだけ辛口批評になりますが、「夢を見た」という架空の作品を巡る物語は、本当の話だったのではと思わせる技量十分なのに、ティムと織絵を巡る物語の設定が、やや安易で、ライトノベル的だったのです。

 今、本が売れないと言われている時代で、この辺りが売れ筋なのだと思いますので、仕方ないのかもしれませんが、私にとっては、せっかくの夢の世界に浸り始めたところで、時々、現実に引き戻されるという、ジェットコースター感が味わえない残念感が残った作品でもありました。

 

 
人気ブログランキングへ

『本』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« カラスの教科書 松原始 | トップ | 華氏451度 レイ・ブラッ... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

小説」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL