脳のからくり (新潮文庫) 竹内 薫,茂木 健一郎 新潮社 このアイテムの詳細を見る |
竹内薫氏と言えば、『99%は仮説』で、理系オンチの私を本当に面白いと思わせてくれた作家ですから、脳の本好きの私にすれば、この本は見つけてしまった限り、買わないわけにはいかなかったのです。
本書は脳に関する”超”入門というコンセプトでまとめられており、素人が途中で挫折してしまわないため、各章を短めにまとめ、あまり専門的な話に踏み込まないように苦労されているのがよくわかりました。ですから、わかりやすい反面、”そこから先がおもしろそう”というところで、ぷちっと話が切れてしまい、物足りない~感も否めませんでした。
ちなみに、茂木健一郎との共著となってはいますが、実質は竹内氏の著作で、茂木氏は監修という立場で、最後の1章だけ寄稿されているのみです。
脳の話が、科学に弱い私にとっても、面白いのは、それが人間の”意識”を作っているところだからです。たとえば、胃が食物を消化する仕組みを科学的に説明されても、感心こそすれおもしろいとまではは思いませんが、人の”気持”の発生がそれと同列(といってはあまりに大雑把ですが)に説明されるなんて・・・。
科学は、”気持ち”を排したところにある、もっとも非情で無機質なイメージだったのに、脳の機能を媒介としてどんどん近づいてきている。
また、芸術も脳のなせる業ですから、脳の視点からの分析もありなんですね。本書で引用していた岩田誠という人の研究が、面白かったです。
人がものを視る時、網膜に映った像を脳は、”色彩”、”形態”、”空間”、”運動”の4つのモジュールに分けて認識し、それらを再度組み合わせてイメージを作り上げている。印象派以降の画家の中には、そのモジュールを意識的にコントロールしたイメージを描いているというのだ。たとえば、ピカソは、空間視モジュールを意図的に弱めており、モネは色彩モジュール以外を弱めているなど・・・。
うちもダーリンが画家のため、”視る”ということは、”記憶”とは切り離せないという認識をいつも聞かされていました。あー、プロの画家っていうのは、やっぱり視るということを客観的に捉えているんだなぁと感心しておりまいたが、こうやって脳の機能と絵画を結びつけて説明されると、またダーリンに対する尊敬の念が増すとともに、わけのわからない現代絵画も少し、こういう観点で見てみようかなという気持ちになりました。(多分それでも、私には説明されないとわからないでしょうが・・・)
ちなみに、本書内で、著者が別名で書かれている小説が引用されていましたが、こちらの方は、もうひとつ・・・ですね。