本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

風にまいあがるビニールシート 森絵都

2007-01-28 | 小説

 第135回直木賞受賞作を掲載した昨年の9月号のオール讀物を図書館でみつけて読みました。そうか、この手なら受賞作をややはやく図書館で借りて読むことができるんだと、今更気がつきました。


 芥川賞だと私には、さっぱりわからないことが多いのですが、直木賞はかなり分かりやすいので、そこそこ楽しみにしているのですが、ちょっと物足りない感じがしましたが、世間の評価はどうなんでしょうか。

 

 確かに国連難民高等弁務官事務所で働く主人公という設定に、作者のやる気を感じます。そして、その女性が、帰国子女で英語はベラベラ、以前は外資系に勤めていたという経歴から想像できるイメージに反して、特に高い理想や上昇志向もないという設定も、とても面白いと思いました。

 

 主人公は、この東京の事務所でスタッフとして働いている。同じ事務所で知合ったエドというアメリカ人と結婚したが、殆どがフィールド(被支援国)に行って、年に10日程しか一緒に過ごせない。日本にいる彼女と、この世の地獄で仕事をする彼との間には、当然のように溝ができてしまい、結局は離婚するのですが、その後、彼はフィールドで命を落とします。その彼の遺志を最後に彼女は理解し、自分もフィールドに出る事を決心するというお話です。

 

 いろんなエピソードが織り込まれていますが、面白いなと思ったのは、設定だけでした。国連というとても大きな舞台装置を使って結局は、少女漫画的な展開で終わったなぁと言う感じでした。なんでこれが賞をとれるのかなぁ・・・・。でも最近、こういう少女漫画的な小説は確かに人気があるから、直木賞という性格上、”売れる本”という評価も必要なのかもしれませんね。

 

 選考者の評もいくつか掲載されていましたが、結構褒めている人も多く(受賞したんだから当然か)、けなしていたのは渡辺淳一氏のみでした。なんか、複雑・・・・。私のセンスは、頑固爺さん的なのでしょうか。


ロズウェルなんか知らない  篠田節子

2007-01-28 | 小説

 どこかで書評を読んで、読みたいなぁと思っていましたが、やっと図書館で見つけました。久しぶりの篠田さんの作品でした。

 

 東京から距離的には近いけれど、高速道路からは遠く、温泉も出ないし、これといった目玉のない田舎町の若くもない青年会のメンバーの、町おこし奮闘記です。派手さはないけれど、とても面白い小説でした。

 

 町おこしをするといってもこれといった目玉がなく、なかなかうまく行かない。ところが、ひょんなことから、UFOが出没する四次元空間おかしな噂がたち始め、インターネットで噂をかぎつけた若者がぽつりぽつりとやってくるようになる。最初はその噂に強烈な抵抗感を感じていた旅館きぬたやの息子靖夫もだんだんと乗り気になり、青年会は、様々な企画を実行に移していく。最初は雑誌で、次にテレビに取り上げられ、村の頭の古い年寄り達の意識も変わり始めた時、今度は世間からのバッシングが始まる。

 

 私小説は書かないと、何かのインタビューで応えていた篠田さんらしく、とても面白いところに目をつけて作品を作られたなぁと思います。田舎町をなんとか盛り上げようとする人たちと、文句ばかりいって実際には何もしようとしない年寄り。中央から予算を取ることしか考えない役所。そんな関係がとてもリアル。UFOで町おこしという少し喜劇的な要素やちょっとありえない設定と、背景のリアルさがほどよくマッチして、いい味に仕上がっています。

 

 しかし、会社という組織ではなく、それぞれの利害や目的が様々に違う”町民”という立場で、まとまってプロジェクトに取り組むのは本当に難しいのでしょうねぇ。そうおいう日本の田舎が抱えるジレンマが、喜劇風にかかれていることにより、何か希望が感じられるのです。

 

 そんなに甘いもんじゃないと、きっと当事者の方達はいわれるでしょう。でももし、魅力のある日本の田舎町が増えて活気づけば、日本はもっともっと面白くなるような気がしてきました。グローバル化なんてくそくらえです。


水曜の朝 午前三時   蓮見圭一

2007-01-26 | 小説

 友だちが貸してくれました。確か本屋の平積みの所に児玉清推薦といったポップが立っていたような気がします。

 

 恋愛小説です。昔、事情があって一緒になれなかった人との恋を、自分が死ぬ前に娘に語りたくて、テープに録音して残すのです。

 

 はっきりいってどこがよいのか分かりませんでした。娘の変わりに、テープを起こして手記の形にした婿の存在が面白いといえば面白いですが、殆ど出番はないし・・・。恋愛についても、さほど大恋愛というほどでもないし、誰に反対されたわけでもなく、自分が世間体と偏見で捨てた相手との関係を続け、まあそれは本人の勝手だからいいけれど、ここまで美化するようなものでしょうかねぇ・・・・。

 

 また、主人公は四条直美という女性。本人が語る若い頃の自分と、娘婿が子供の頃から見ていた彼女の姿が結びつかないし、その後、翻訳家、詩人として世に知られるようになったというその姿とも結びつかない。これほどまでに結びつかないと、そのことがテーマ?と思ってしまいます。

 

 文章は分かりやすいのに、さっぱり分からない小説でした。児島さんおすすめのポイントを教えてください。


クローズド・ノート 雫井脩介

2007-01-18 | 小説

 ああ、泣いてしまった。電車で読みながら、じわーっと来てしまいました。

 でも1日たってみると、なにがそんなに良かったのかなあと思えてくるから、どうなんでしょう。とりあえずラストシーンで泣かせるだけの話なんだろうか・・・・。

 

  教育大学生の佳恵はふとしたことで部屋の前の住人が残して行ったノートをみつけて少しずつ読むうちに、そこから勇気や力を貰っている自分に気づく。書き手は伊吹先生という小学校の新米教師。彼女が子供達に一生懸命に接する姿に、自分の先生になりたいという夢を再確認し、恋に悩みながらも前向きに向かい合う姿に、自分の恋の背中も後押しされるのです。そして、読み終わったとき、どうしてもその井吹先生に会いたくなり、先生の勤める小学校を訪ねるのですが。

 

  ミステリーではないのですが、最後は書かないほうがよいと思います。実は、前半は結構退屈といえば退屈なのです。大学生の何気ない生活だし、井吹先生のノートだって特に劇的なことがあるわけではない。だけど、なんとなく引かれるのですね。主人公のキャラクターもすごく親近感が持てるし。私が大学生だったら、かなり共感したんじゃないかなぁ・・・。

 

 しかし、伊吹先生の憧れの彼とはかなりいい感じなんだけれど、それでもどうも決め手がなくて、読み手である香恵ととシンクロして読み手である私もイライラしてしまうのですね。これが彼の目線で書いてみるとまた違うんでしょう。やや恋に臆病な伊吹先生にとっては、はっきり言葉でいわれないかぎりは、拡大解釈しないでいようというブレーキがかかってしまっているからねぇ。この辺、わかるなぁ・・・・。

 

 ところで、主人公は大の万年筆好き。万年筆なんて、最近本当に使わないけれど、この本を読んで1本いいものを買って、万年筆で日記を書きたいなぁ・・・・と思った私でした。

 


自壊する帝国 佐藤優

2007-01-14 | 小説

 年末から更新をサボってしまってました。今年は、数より質で読書したいと思います。質というのは読む本の質ということではなく、私の側の問題です。ただただ、読み飛ばすような本はやめて、じっくり考えるような本を読みたいと思っています。  

 

 ところで、今年のブログ1冊目はの本書は、ロシア外交官としてソ連の崩壊を見つめた著者によるノンフィクションです。この人は、鈴木宗男議員の事件の時に逮捕された人なのですねぇ。ちょっと悪人顔で、なんか印象はとても悪いですが、この本を読んでかなり印象が変わって来ました。

 

 実は著者と私は同じ大学の出身です。著者とは2歳しか違わないので、実はキャンパスですれ違っていたかもしれないのです。あのキャンパスで、こんなに真剣に学問をしていた人がいたんだ・・・・ということが、あまりにも自分と対象的で、無為に過ごしてしまった自分の学生時代を心から後悔しながら読みました。

 

 この本を書くことで著者は、現代日本人への警鐘としたいという意図があるようですが、あまりにも何も考えずに生きてきた私には、なかなかそれは汲み取れませんでした。それでも沢山沢山感じるところはありました。なかなかまとめきれないのですが、その中で、ロシア共産党第二書記だった、アレクセイ・イリイン氏の言葉が最もショックでした。

 

たとえば、「31アイスクリーム」だ。ロシアのアイスクリームは「エスキモー(チョコレートをコーティングした棒についたアイスクリーム)」、「スタカンチク(ウェハースのカップに入ったアイスクリーム)」で誰もが満足してい。しかしひとたび西側から三十一種類のアイスクリームが入ってくると、子供のみならず大人もみんなそれを欲しがる。車にしてもラジカセにしても欲望が無限に拡大していく。この欲望、を抑えることができるのは思想、倫理だけだ。社会主義思想は欲望に打ち勝つ力をずっと昔になくしていた。

 

 私は、思想や倫理が欲望に打ち勝つ力をもっているかどうか疑問ではありますが、しかしそれ意外に人間の欲望に打ち勝つ力を持っている存在があるとは思えません。東西冷戦は、様々な局面があったのでしょうが、人々の欲望を野放しにするかしないのかという面での戦いでもあったのだなと理解できました。そして、欲望に引きずられて、イデオロギーを失ったまま国家が向かう先はどこになるのか・・・・。不安ですね。