本が好き 悪口言うのもちょっと好き

読書日記です。っていうほど読書量が多いわけではないけれど。。。

知事抹殺 つくられた福島県汚職事件 佐藤栄佐久

2011-07-09 | ノンフィクション
知事抹殺 つくられた福島県汚職事件
佐藤栄佐久(前福島県知事) 著
平凡社

 著者の佐藤栄佐久氏は前福島県知事。

 5期目の任期途中、2006年9月、汚職疑惑が持ち上がり辞職、その後、逮捕され、2008年8月1審で有罪判決を受けました。

 2009年出版の本書は、もちろん今回の福島第一原発の事故を批判したものではなく、前半は知事としての自伝的な内容で、後半は汚職事件で逮捕され有罪判決を受けるに至る経緯で何があったかということをご自身で書かれたものです。

 佐藤氏の実弟が経営する会社の土地の売買をめぐっての事件で逮捕されたのち、やってもいない収賄を認めた裏にあった検察特捜の取り調べについての記述は、読んでいるこちらが苦しくなるような迫力です。

 もちろん、この本を読んだだけで、司法は有罪と認めたものを、冤罪であると言い切れるものではありませんし、実弟については、経営する会社の資金繰りが厳しいとはいえ、何故、このような事件に巻き込まれてしまったのかがはっきりとは書かれていませんし、どちらにしても脇が甘かったという点では落ち度があったのだと思います。

 とはいえ、特捜といえば、昨年無罪になった厚労省の村木厚子氏の事件があり、そのやり方のあざとさがいろいろ報道されていましたから、本書の佐藤氏の記述も、より真実味があります。

 そして、今回の福島第一原発の事故。

 佐藤氏は、福島県の原発の安全性を巡って、国とはかなり対立してこられた知事だったようです。

 国と保安院、そして事業者である東電がいかに信用できないかを身をもって経験されており、確かに、今読むからこそ、非常に説得力があります。

 今、様々に報道されている問題点と、何も違いません。

 少し違うのは、東電の姿勢はある程度(全面的ではないです)評価されている点で、真の問題は国にあると考えておられる点くらいです。

 やはりこの本は、今回の事故が無ければ、それほど話題にならなかったかもしれません。

 少なくとも、政治に興味のない私が、手にすることはなかったでしょう。

 しかし、特捜のでっちあげにしても、原発事故にしても、大きな話題になった時に初めておこったものではなく、おこるべくしておこっている。

 そして、どちらも国という権力をバックにするが故に、メジャーなマスコミはきっちりと批判せずにきたのだということがわかります。

 もちろん、著者の表現をかりれば、私たち国民が、「自分にかかわり合いがでてきて、はじめて関心をもつひとたち」だったことが、マスコミの姿勢にも現れているだけなのかもしれません。

 この本のカテゴリーを私はノンフィクションとしましたが、別の言い方をすれば政治家の自伝ですので、やはりどれだけのことをやってきたかということをアピールしたいという自己顕示欲を感じないこともありません。

 ですから、著者が巻き込まれた収賄容疑に関わっているのが、小沢一郎氏の疑惑でも名前のあがった水谷建設ということもありますし、できればこの話は、誰かジャーナリストがきちんと取材して書いてほしいと思いました。

 そして、関西在住者としてちょっと、気になったのは、

 「安全軽視は関西電力の企業文化」のようだ。

 という言葉、これ、怖い。

 九電のやらせメール事件もあり、日本の電力会社はいったいどうなっているのでしょうか。

 競争がないからこと、安全性などに十分お金をかけられるということではないんでしょうか・・・。

 それから、

 「安心は科学ではない。事業者と県民の信頼によって作られるものだ」

 原発は巨大技術であり、その細部までわれわれはうかがい知ることはできない。ならば、原発の何を信用すればよいのか。外部から見れば「原発を動かす人、組織、そして仕組」が信頼に足ると思われるものであることが必要なのだ。

 という言葉。

 原発を動かしたいと思っている人たちは、このことをもう一度考え直してほしいと思います。

 脱原発に国民の気持ちがながれていることを、推進派の人は、わかっていない素人が何をいっているんだという目線で見ているようですが、

 失ったのは信頼。

 それは、科学や技術では修復できない。

 この人が知事を続けていればどうなっていたか・・・などと考えても意味のないことですが、私たちがこの国の将来を考えるとき、もう少し地方の発する声に、真摯に慎重に耳を傾ける必要があるのだとつくづく思いました。

 

人気ブログランキングへ いつも応援ありがとうございます。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿