銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎 ジャレド ダイアモンド 草思社 このアイテムの詳細を見る |
銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎 ジャレド ダイアモンド 草思社 このアイテムの詳細を見る |
う・・・ またまたブログ更新の時間があいてしまいました。
読書量激減・・・。 いかんいかん。
そんな状態で、本書を2週間かかって読み終えた今、世界や、歴史に対する見方がちょっと変わったような気がして、ちょっとしんどかったけど、読んで良かったなぁと思っています。
あとがきによると、著者のジャレド・ダイアモンド氏は、生理学課に所属する医学部の教授であり、進化生物学者。分子生物学、遺伝子学、生物地理学、環境地理学、考古学、人類学、言語学にも詳しいと、目が点になりそうな人です。
本書は、ヨーロッパ人が、そしてヨーロッパ人の発達させたものが現代世界を席巻しているのだろうかという疑問に対する、壮大な考察です。
内容としては、
- 肥沃三日月地帯と呼ばれるメソポタミア地域でには、育てやすい野生の植物が比較的多かったため、早い時期に食糧生産が始まった。
- 食糧生産が始まり、人間が定住し始めると、人口が増える。また余剰食糧により、非食糧生産者(のちに王様や軍隊などになりますが)を養うことができるようになる。
- 定住社会で人口が増え、豚や牛などの家畜化が始まると、感染症が広がりだし、その免疫をもった人が増えていく。
- ユーラシア大陸は、横に長く、同緯度の地域が広いためある場所で栽培に成功したものが広がる地域が広かった。
- 中国も同様に早くから食糧生産を始めたが、統一王朝による支配が長かったため、外部からの影響を排除する傾向が強く、ある時期から発展が止まってしまった。それに比べてヨーロッパは統一されずにいたことが幸いして、常にお互いに影響を及ぼしあい、新しい技術が伝わりやすかった。
- 肥沃三日月地帯は、もともと乾燥地帯であり、農業化が進んだことにより、早くに砂漠化が進んでしまった。
これらの条件により、唯一ヨーロッパでのみ、現代に続くさまざまな技術が発達し、15世紀に、その造船と航海技術により新世界に乗り込んだときは、彼らは銃はもちろんだが、それ以上に、自分たちは免疫をもっている病原菌により、原住民の人口を激減させて、その地で独自に発展していた文化や言語を圧倒してしまった。
というようなわけで、結論として、現在の世界の現状をもたらしたのは、ヨーロッパ人が人種として生物学的に何かすぐれていたからではなく、さまざまな環境要因によるものである、という結論に導かれるわけです。
一部(多く?)のヨーロッパ系の人にとっては、あまりうれしくない結論だと思いますが、その人たちを除けば、かなりの人にとっては、言われなくても分かっているようなことですが、ここまで丁寧に、検証してもらえると心強いですよね。
ただし、
日本人が、効率のよいアルファベットやカナ文字でなく、書くのが大変な漢字を優先して使うのも、漢字の社会的ステータスが高いからである。
っていうことが書かれていたページ以降はさまざまな考察も、ホントかなぁ・・・なんて疑いの気持ちなしでは読めなくなっちゃったのも事実です。
カナ文字が女性用の文字から始まったことなどを考えれば、この文章の意味するところもわからないではないんですが、なんかこんな風に書かれるとちょっと待ったぁって言いたくなりませんか。
私などは単に感情的リアクションですが、ダイアモンド氏自身の知識がいくら広くて深くても、それぞれの分野オンリーでもっと深く研究されている方からみれば、それは違うでしょという突っ込みどころがたくさんあるのだと思います。
また、美しい結論ありきの出来レースにずっと付き合わされたような気がしないでもないです。
でも、たとえば量子の世界では勝手にふるまっている物質をマクロで見ると、きれいな法則が見えてくるというようなことが、人類の歴史を1万3千年というマクロからみることで見えてくる法則があるのかもしれないということに気づかせてくれたのが最大の収穫でした。
ところで、この本のタイトル、”病原菌”はいいとして、銃、鉄っていうのはそれほど重要なものとして取り上げられていたわけではないので、最後まで自分の読んでる本のタイトルが覚えられませんでした。(単なる老化現象かもしれませんけど)
でも、確かにこのタイトルじゃなかったら興味惹かれなかったかもしれないし、編集者(著者かもしれませんが)の策略にハマったかな。
いや、病原菌が、自分たちがより多くの人に感染して生き残るためにさまざまな症状を起こさせるように、魅力的なタイトルをつけるということが、本が生き残るための重要な戦略なんですよね。(私が本屋でこの本を手にしたとき、コイツはきっとくしゃみしたんだな・・・)