2 「区別と差別」について考える -2-
⑴ 「内心(欲求、感情、思考など)」と「行動(事象(現象):現実におきたできごと)」の関係 -2-
~※まだ「差別」のきちんとした定義はせず、《事例について検討しながら”きちんとした定義”を作っていく》という方法で進める~
【行動例1】~ある会社(民間企業)の社員採用の場で起きたできごと~
《採用試験の受験者は、日本人9人と在日韓国人1人(=Zと呼ぶ)だったが、結果として、Zだけを不採用にした。》
これは、「在日朝鮮人差別」か?
以下、Z=在日韓国人受験者、A=採用決定責任者(面接も担当)として、《「差別問題」になる可能性がある》いくつか不採用の場合について想定(シュミレート)する。
なお、どの場合も、《①テストの内容と結果も、②面接の観点・基準と結果も、すべて非公開(=採用関係者だけが知っている)になっている》として想定する。
【場合(ケース)1】 ①客観:共通テスト(=ペーパーテストなど)は不合格 + ②面接は合格、の結果 → 不採用。
※1 面接の内規に「国籍は問わない」と定められている。+ Aに”在日韓国人への差別心”がない、場合。
※2 Zの認識は、差別、非差別のどちらかになる。(不採用の理由は非公開だから)
【場合2】 ①テスト合格 + ②面接(※外国人不採用の内規あり:Zは知らない)不合格 → 不採用。
※1 Aの内心は関係ない。
※2 Zの認識は、差別、非差別のどちらかになる。(不採用の理由は非公開だから)
【場合3】 ①テスト合格 + ②面接(※外国人採用可の内規あり:Zは知らない)不合格 → 不採用。
※1 面接の状況=各観点・基準には合格していたが、Aの”在日韓国人への差別心”により、不合格とした。
※2 Zの認識は、差別、非差別のどちらかになる。(不採用の理由は非公開だから)
さて、上の1~3のうち、あなたは、どれが「差別」または「差別事象」だと思いますか?
【定義】「認識」=「認知」した「ものごと(事象)」について、自分の脳内で、「(ほぼ自動的:無意識に)解釈・思考・理解」し、《認知した事象がどんな事象であるか》が決まる(を決める)こと。
※1 「認知」=自分の感覚器官(目、耳、鼻…など)で受け取った情報が、脳に届いた状態。まだ、その情報についての理解はされていない。認識の直前段階。(学者により用語と定義はさまざまある。)
※2 認識までの過程・・・環境中の刺激(光、音、におい…など)→ 感覚器官 → 感覚神経から脳へ信号伝達 → 過去の記憶{概念}と照合し、解釈・思考活動を行う(ほぼ無意識) → 理解する(または理解できないことを理解する)。 ※思考訓練をした人は、認識活動をかなり意識的にできるようだ。つまり、過去の記憶だけにとらわれず根本的に思考する。その結果、「偏見」や「先入観」、自分の「感情」などの影響を(かなり?)取り除くことができるようだ。
※3 「感情」の強い関与・・・上記過程を理解すれば、”ヒトがする認識” が、それぞれの段階で、かなり簡単に”ゆがめられる(=変換される)”ことが分かる。特に、「感情」が、認識の前半段階の「解釈・思考」の際に大きな影響を及ぼすことは誰でもよく知っている現象。
「あばたもえくぼ」「坊主にくけりゃ袈裟(けさ)までにくい」「親がにくけりゃ子もにくい」・・・
【場合3】はみんなが「差別」だと思ったでしょうが、【場合2】についてはどうでしょう?
面接・採用者の内心がどうであろうと、民間会社の採用内規により”自動的に不採用”なのだから、どうしようもない。
では、《内規で「差別」しているから、差別だ》と言えるか?
また、《外国人不採用という内規を隠して(非公開にして)いたことが、差別だ》と言えるか?
…ことがそんなに単純でないことは、わかってもらえたと思います。
~つづく~
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