朝顔の小さく仕舞ふ己が色
あさがおのちいさくしまふおのがいろ
天地人共に激変の8月が今日で往く。今先の3鉢の朝顔も小柄に終わりを
告げている。咲きだしの大きい花も終時の小さい花も無二の朝顔の色である。
唐辛子バブル期行きし国いくつ
とうがらしバブルきゆきしくにいくつ
庭先の一本だけの唐辛子が今年も真っ赤に色付いた。海外生産で派遣された国ごと
に自慢の唐辛子があった。辛さ自慢が現地人との融和の仲立ちをしてくれた。
猿股の命ながなが大昼寝
さるまたのいのちながながおおひるね
8月も残り3日。今日から小中学校は夏休みが終わり。雨日の長きを恨む無子ら。
反して残暑復活で昼寝が必要なこの頃。明治以来馴染みのサルマタあってこそだ。
野良猫に餌付けの野人つくつくし
のらねこにえづけのやじんつくつくし
日曜日の公園の緑陰はジョギングやウォカカーで結構な賑わいだ。中には太った
猫の一族もいる。糞を踏んだ人は餌やりの放浪者を詰るが動じない。人生様々だ。
遠雷や唾指かざす元農夫
えんらいやつばゆびかざすもとのうふ
日照り日に喜ぶ人と草木。なのに雨無し予報の空に遠雷が今日もはしる。すかさず
老農婦は指を舐めて空に上げる。グラウンゴルフで余生を生きる御仁の一人である。
塾の子のけふは補欠の神輿の子
じゅくのこのけふはほけつのみこしのこ
夏休みの終わる前。方々で大小の秋祭りがある。塾通いに軸脚を移した
小6も祭りに駆り出されたりしている。気になっていた庭木の消毒をする。
空蝉の蒼空に着地の心意気
うつせみのそらにちゃくちのこころいき
蝉の抜け殻が樹高の枝裏に散見されることが多い。どうしてあそこまで上ったのか不思議。
いやいや、彼らの本心は空を飛びたいのだろう。人間の空を飛んだ歴史に思いを重ねる。
けふ処暑の覚醒おそき陽の狂ひ
けふしょしょのかくせいおそきひのくるひ
「処暑」。暑さが止み新涼の初日で過去に狂いが無かった。が、昨日までの22日続きの
雨気が豹変して猛暑を告げる太陽が早朝より輝いている。やはり地球は可笑しいのだ。
どの家にも在りて古団地さるすべり
どのやにもありてこだんちさるすべり
一戸建ての団地の庭が古典的的な和風から林ふうに変ったのは平成になって
からだろうか。昭和族は家や庭を変えても、きっと百日紅は残しているようだ?