Willow's Island

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殺人の追憶

2005年03月22日 23時20分40秒 | 映画
今日はWOWOWで録画しておいた韓国映画「殺人の追憶」を見た。
この作品は去年に映画館で見ており、台湾製のDVDも買って、すでに何度も見ている。
しかしそのDVDは台湾製だけに中国語か英語の字幕しかついておらず、日本語の字幕
が付いているものは、映画館で見て以来だった。結局この映画を見るのはこれで
4,5回目だが、良いものは何度見ても良いのである。私が2004年に見た映画の中で
最も心に残った作品の一つだ。

これは1986年から1991年にかけて、韓国の華城(ファソン)で実際に起きた連続婦女暴行
殺人事件をもとにして作られた映画だ。犯人は9人の女性を残虐な手口で殺害しながら、
いまだに捕まっていない。映画において、ソン・ガンホキム・サンギョンの演ずる刑事たちは
何とか犯人を捕まえようと苦闘する。しかし犯人を逮捕できるまでには至らず、ついに中学生
の犠牲者まで出してしまう。そして刑事をやめた主人公は、最初の事件から17年経った
2003年においても、犯人はまだ生きており、普通に生活していることを知ってしまう、というのが
大雑把なあらすじだ。

この実際の事件を扱った映画は、2003年の韓国で大ヒットした。ヒットの要因はいろいろあると
思うが、まず作品性そのものが非常に高い、ということが挙げられる。脚本、演出、演技の
すべてが一流だ。それから、韓国人にとっては自分たちの80年代を思い起こす、という意味も
あったのだと思う。この映画に出てくる刑事たちは、無能というか野蛮というか馬鹿というか、
とにかくこれでは犯人を捕まえられないだろう、と思わせる者ばかりだ。80年代の韓国は、まだ
発展途上国であったことを思い出させる。当時はまだ灯火管制などの制度も生きており、
そのことが結果的に犯人を助けることにもなった。当時の軍事政権を暗に批判しているとも
受け取れる。韓国人はこの映画によって、かつての自分たちを自嘲気味に見つめなおしていた
のだ、と誰か(韓国人)が言っていたが、おそらく本当にそうなのだろう。しかしあの頃は発展
途上国であった韓国が、このような映画を作れるまでに成熟したことは、感動的でさえある。

この映画は、音楽も実に良い。日本人の岩代太郎が手がけたそうだ。彼の手による哀しみに
満ちた音楽は、この作品の主題ともいえる「喪失感」を感じさせて余りある。

現実の華城連続殺人事件は、まだ解決していない。犯人はまだ生きており、もしかしてこの
映画を見ていたのかもしれない。最後のシーンで、ソン・ガンホは呆然とした表情でカメラ目線
となるが、それは映画を見ているかもしれない犯人へ向けての視線、とのことだ。そう考えると
絶望的な気分になるが、まだこの事件の時効は完全に成立したわけではない。最後の事件が
起こったのは1991年4月であり、韓国では殺人の時効は15年であるため、来年の4月に
最終的な時効が成立することになる。それまでに、何とかして犯人が捕まってほしい。

この記事を読んで「殺人の追憶」を見ていない人は、ぜひ見てほしい。既に見たという人は、
日本でノベライズされたこの本も最高にすばらしかったので、ぜひ読んでほしい。(^^)

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