レンタルビデオで映画「パイラン」を見た。 これは、浅田次郎の短編小説「ラブ・レター」を原作として作られたチェ・ミンシク主演の韓国映画である。実はこの短編小説は何年か前に読んだことがあり、非常に印象に残った覚えがある。同じ短編集に掲載されていた「ぽっぽや」よりも面白いと感じた。ソン・ヘソン監督も私と同じことを感じたようである。この小説は実に男性心理をくすぐり、泣かせてくれるのだ。日本でも「ラブ・レター」というタイトル(そのまんま)で既に映画化されており、中井貴一が主演していた。私はこっちの方は見ていないのだが。主人公の男は、真面目そうな中井貴一が演じるよりは、チェ・ミンシクの方がずっと合っているだろう。 韓国を代表する名優の一人であるチェ・ミンシクの演技は言うにおよばず、パイラン役のセシリア・チャンがすばらしかった。彼女の演じたパイランは実に美しく、はかなげであった。この「はかなげ」という美意識は、日本人や韓国人を含むアジア人に共通したものなのだろう。 パイランは故郷の中国で両親をなくし、仁川に住む親戚を頼って韓国に来たが、親戚は既にカナダへ移住しており、あてがなくなってしまった。そこで、カンジェ(チェ・ミンシク)の弟分であるギョンスの働きにより、韓国で就労するために偽装結婚することになった。その偽装結婚の相手というのが、カンジェだったのだ。カンジェはうだつのあがらないチンピラで、弟分たちにも馬鹿にされるような存在であった。そんなカンジェが、わずかばかりの金のために、見たこともない中国人女性と書類上だけで結婚したのである。この二人はお互いに顔を見ることもなく、パイランは田舎の洗濯屋で働くことになった。しかし彼女は重病を患っており、寂しさに耐えながらも死んでしまう。そこで遺骨を引き取るため、カンジェとギョンスは田舎へ向かう。洗濯屋に着いたカンジェは、パイランが夫(カンジェ)のために書いた手紙を受け取ることになる。 これ以上書くとネタバレになってしまうのでやめておくが、この手紙というのが実に泣ける。私も実際に涙が出てしまった。パイランのカンジェに対する感謝の気持ちが、彼女の純朴さとともに伝わってくる内容であった。カンジェは決して、この手紙に書かれているようなやさしい男ではなかった。しかし男というのは、こういう美しく純粋無垢な女性に弱いもんである。ダメ人間の代表のようであったカンジェも、この一件で変わることになった。 この映画の結末は、救いようもなく暗いものであった。しかし、見ている私は希望を持つことができた。最後の最後になって、駄目人間のカンジェも本物の人生を見つけることができたからだ。チェ・ミンシクによれば、ここで言う駄目人間とはカンジェだけを指すのではない。「欠陥を持って生きている人々」を言うのだ。私も、その一人である。 ラストシーンの、ビデオの中で歌いながらレンズの向こうを見つめるパイランの笑顔が、私の脳裏にこびりついて離れない。私は今日、本当に美しい映画を見た。
・・・と思ったら、現実世界で日本人と韓国人が偽装結婚してやがった。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050227-00000037-kyodo-soci何やってんだー。偽装結婚は映画だけにしてくれ。タイミング良すぎ。
・・・と思ったら、現実世界で日本人と韓国人が偽装結婚してやがった。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050227-00000037-kyodo-soci何やってんだー。偽装結婚は映画だけにしてくれ。タイミング良すぎ。
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