ー桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!
これは信じていいことなんだよ。何故つて、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことぢやないか。ー
梶井基次郎の短編小説「櫻の樹の下には」の短編小説の冒頭の書き出しである。昔、確かにこの小説を読んだ記憶はあるのだけれど、もうすっすり忘れてしまった。梶井基次郎が書いた小説の中では、「檸檬 (れもん)」という短編が好きだった。名作である。
桜という、ある意味狂気を内包しているような妖美なものに惹かれた作家はほかにも大勢存在する。
坂口安吾もそうかもしれない。一時期、安吾の小説を貪り読んだ時期があった。名作「堕落論」は何度も読み返したし、彼の小説を原作とした、映画「不連続殺人事件」も個人的に好きな映画だった。
その安吾もまた、「桜の森の満開の下」という小説を残している。この小説も若い頃に読んだ記憶があるのだけれど、内容も含めて今では忘れてしまった。篠田正浩監督・岩下志麻主演で映画化もされていて、この映画も昔観ている。でもこれまた、その内容はすっかり忘れている。
いま、ちょうど青森市内は桜が咲き誇っていて、満開だと言っていい。一部では、風に揺られて散り始めている箇所も、少し見受けられるようになった。
ゴールデン・ウイーク突入時には、市内のほとんどの桜は散ることになるかもしれない。明日と明後日は雨も降るようだ。
それでも週末からゴールデンウイーク後半戦に掛けて、市内の予想天気は概ね晴れ。お日様マークが連続して点いている。
こうして、いつのまにか桜の季節は去り、暑い暑い夏がこの街にやって来るけれど、それさえも、あっという間に過ぎ去ってゆくに違いない。
輝く夏が終わったあとには寂しい秋が待っていて、その先に待ち構えているのは、冷たく寒い北国の長い冬だ。
人生は速い。光陰矢の如し。今今と今という間に今ぞ無く、今という間に今ぞ過ぎ行く 。
だから、こうしちゃあいられないんだ、本当は・・・。
憂いている暇なんてないはずなのに。
人間はその人の思考の産物にすぎない。人は思っている通りになる。
ただそれだけのことなんだ。