団塊オヤジの短編小説goo

Since 11.20.2008・時事ニュース・雑学・うんちく・豆知識・写真・動画・似顔絵師。雑学は、責任を持てません。

「かぐや姫」とは何かを考える

2009-10-05 10:23:42 | 神話・御伽噺・民話・伝説

我が国最古の物語文学であり小説と言われている『竹取物語』。

今はもう昔のことになるが、竹取の翁と言う者がいた。野や山に分け入って竹を取り、竹を取りしては、いろいろな物を作るのに使っていた。名をさぬきの造といった。(いつも取る)竹の中に、根元が光る竹が一本あった。

11 不思議に思って近寄ってみると、筒の中が光っている。それを見ると、三寸ばかりの人が、とてもかわいらしい姿で座っている。翁が言うには、「私が毎朝毎晩に見る竹の中にいらっしゃることによってわかった。私の子におなりなさる運命の人のようだ。」といって、手に入れて家へ持ってきた。妻のおば12 あさんに預けて育てさせる。かわいらしいことはこの上ない。

とても幼いので、籠に入れて育てる。竹取の翁が竹を取っていると、この子を見つけてから後に竹を取ると、節と節との間の筒一つ一つに、黄金がはいっている竹を見つけることが度重なった。こうして翁は、だんだん裕福になっていく。

13 この子は、育てているうちに、ぐんぐん大きく成長していく。三ヶ月ほどになるころに、一人前の大きさの人になってしまったので、髪上げの儀式(成人した女子が髪を初めて結うこと)などあれこれ手配して、髪を結い上げさせ、裳(しょう)を着せる。帳台(ちょうだい:寝所)の中からも出さないで大切14 に養う。

この子の容貌の清らかで美しいことは世間に類が無く、家の中は暗いところもないほど光満ちていた。翁は気分が悪く、苦しいときも、この子を見ると苦しいこともやんでしまった。腹立たしいことも気が紛れてしまうのだった。翁は(黄金15 の入った)竹を取ることが長い間続いた。富豪の勢力家になった。

この子がとても大きくなったので、名を三室戸の斎部の秋田(あきた)を呼んでつけさせる。秋田は、なよ竹(しなやかな竹)の「かぐや姫」とつけた。このとき、三日間盛大に歌舞の宴を開いた。いろいろの歌舞音楽の演奏をしたのであった。男は分け隔てせずに誰でも呼び集めて、とても盛大に管弦の宴を開いた。

16 世界の男は、身分の高いのも身分の低いのも、なんとかしてこのかぐや姫を、妻にしたいものだ、結婚したいものだとうわさに聞いてどうしようもないほど称賛する。

  帝は、急に日を定めて、御狩りにお出かけになって、かぐや姫の家にお入りになって御覧になると、光が満ちあふれるように輝いて、美しい姿で座っている人がいた。「これだろう。」とお思いになって、近くお寄りあそばすと、逃げて入ろうとした袖をおとらえになったので、顔を覆ってそこに控えていたが、初めによく御覧になっていたので、比類なくすばらしくお感じになって、「放しはしないよ。」と言って、連れていらっしゃろうとすると、かぐや姫が答えて奏上(そうじょう:天子に申し上げる)する、「私の身は、もしこの国に生まれておりましたならお召し使いになってよろしいのですが、連れていらっしゃるのはとても難しいのではございませんでしょうか。」と奏上する。

帝は、「どうしてそんなことがあろうか。やはり連れて行こう。」と言って、御輿をお寄せになると、このかぐや姫は、急に見えなくなってしまった。あっけなく、残念だとお思いになって、本当に、普通の人ではないのだなあとお思いになって、

「それほどいやなのなら、お供としては連れて行かないよ。もとのお姿におなりください。せめてそのお姿だけでも見て帰ろう。」と仰せになると、かぐや姫は、もとの姿になった。

帝は、やはりすばらしいとお思いになるお気持ちを抑えきれない。こうして見せてくれた造麻呂(竹取の翁)にお礼をおっしゃる。そうしてお仕えしているもろもろの役人たちに、饗宴を盛大に催してさしあげる。

帝は、かぐや姫を残してお帰りになることを、満足ゆかず残念にお思いになったが、魂を残しとどめた気持ちがしてお帰りあそばした。御輿にお乗りになってから、かぐや姫に対して、帰るさの・・・帰途の行幸がもの憂く思われて、つい振り返ってしまって心が残る。私の言葉にそむいてあとに残るかぐや姫ゆえに。

お返事を、葎(むぐら:広い範囲に生い茂る雑草)はふ・・・葎がはい広がっている住居でも長年暮らしてきた私が、どうして玉の御殿を見る気になりましょうか。

これを、帝は御覧になって、ますますお帰りになる方向もわからないようにお思いになる。ご心中は、とても帰ることができそうにもお思いにならなかったけれども、だからといって、夜をお明かしになるわけにもいかないので、お帰りあそばした。

17 八月十五夜近くの月の夜に(縁側に)出で座っては、かぐや姫はとてもひどくお泣きになる。人の目も今はお隠しなさらずにお泣きになる。これを見て、親たちも「どうしたのですか。」と騒いで尋ねる。

かぐや姫は泣きながら話すには「前々から申し上げようと思っておりましたが、きっと心をお惑わしになるであろうと思って、今まで過ごして参りました。18 そんなに黙ってばかりいられようかと思ってうちあけてしまうのでございます。

私の身はこの人間世界の人ではありません。月の都の人です。それなのに前世からの宿命がありましたためにこの人間世界へ参上したのでございます。今はもう帰らねばならぬ時になりましたので、今月の十五日に、あの月の国から迎えに人々が参上することになっています。どうしても帰って行かなければなりませんので、お嘆きなさるのが悲しいのを、この春以来思い嘆いておりました。」と言ってひどく泣くのを翁は「これは、なんということをおっしゃるのですか。竹の中から見つけてさしあげましたけれど、けし粒の大きさでい19 らっしゃったのを私の背丈と同じ高さになるまでお育て申し上げた我が子を、誰がお迎え申せましょうか。絶対に許すものですか。」と言って「私の方こそ死んでしまいたい。」と泣き騒ぐ様は、とても堪えがたい様子である。

かぐや姫が言うには、「父母は月の都の人です。わずかの20 間というので、月の都からやって参りましたが、このようにこの国では長い年月を経てしまったのでございます。月の都の父母のことも覚えておりません。ここでは、こんなに長く楽しく過ごさせていただいて、お親しみ申し上げました。(月の都へ帰るのは)うれしい気持ちもいたしません。悲しいだけでございます。しかし、自分の意志からでなく、行ってしまおうとしているのです。」と言って、共々にはげしく泣く。使用人たちも、長年慣れ親しんで、別れてしまうのを、気だてなどが上品でかわいらしかったことを見慣れているので、(別れてしまったらどんなに)恋しかろうかと思うと耐え難く、湯水ものどを通らぬ状態で、翁・嫗と同じ気持ちで嘆き合うのであった。

 立っている人たちは、衣装の美しいことは、他に似るものもない。飛ぶ車を一台伴っている。薄い衣を張った傘をさしている。その中に王と思われる人がいて、家に向かって、「造麻呂、出て来い。」と言うと、勇ましく思っていた造麻呂も、何かに酔ってしまったような気分がして、うつぶせに倒れていた。言うには、

21 「おまえ、心おろかなる者よ、わずかばかりの善行を翁が成したことによって、おまえの助けにしようと、ほんのしばらくの間ということで下したのだが、長い年月の間に、多くの黄金を賜って生まれ変わったようになってしまっているかぐや姫は、罪をお作りになったので、こんなに賤しいおまえのところに、しばらくいらっしゃったのだ。罪の償いのために下界に下った期間が終わったからこうして迎えるのに、翁は泣いたり嘆いたりするが、できない相談だ。早くお出し申せ。」と言う。

翁が答えて申すには、「かぐや姫をご養育申し上げることは二十余年になりました。『ほんのしばらくの間』とおっしゃるので、疑問に思うようになりました。また別の所に、かぐや姫と申す方がいらっしゃるのでしょう。」と言う。

「ここにいらっしゃるかぐや姫は、重い病気にかかっておいでなので、とても出ていらっしゃることはできないでしょう。」と申すと、その返事はなくて、屋根の上に飛ぶ車を寄せて、「さあ、かぐや姫よ。けがれた所に、どうして長くいらっしゃってよいものか。」と言う。

閉じ込めてあった所〔塗籠〕の戸は、あっという間に、すっかり開いてしまった。格子もみな、人は開けないのに開いた。

嫗が抱いていたかぐや姫は、外に出て来た。とても留めることができそうにないので、ただ見上げて泣いている。

竹取の翁が心を乱して泣き伏している所に近寄って、かぐや姫が言うことに、「私のほうでも、心ならずもこうして帰って行くのですから、せめて昇るのだけでもお見送りなさってください。」と言うのだが、「どうして、悲しいのに、お見送りなんかいたしましょう。私をどうしろと言って、見捨ててお昇りになるのですか。いっしょに連れていらしてください。」と言って、泣き伏しているので、心が乱れてしまった。

「手紙を書き残して帰りましょう。恋しい時々には、取り出して御覧ください。」と言って、泣きながら書く、その言葉は、

 「この国に生まれたのでしたら、お嘆かせ申し上げないときまでおそばにお仕えいたしましょう。過ぎて別れてしまうことを、返す返すも、不本意に存じます。脱いで残して置く着物を形見として御覧ください。月が出ている夜には、見おこしてください。お見捨て申し上げて帰って行く空からも、落ちてしまいそうな気持ちがします。」と書き置く。

 天人の中に持たせている箱がある。天の羽衣が入っている。もう一つの箱には不死の薬が入っている。ひとりの天人が言うには、「壺にあるお薬をお召し上がりなさい。汚れたところのもの召し上がっていたので、御気分が悪いことでしょう。」といって、持って近寄ってきたので、少しおなめになって、少しを形見として脱いでおく着物につつもうとすると、側にいた天人がつつませなかった。

着物を、取り出して着せようとした。その時に、かぐや姫は、「ちょっと待ちなさい。」と言う。「天の羽衣を着た人は、心が違ってしまう、といいます。一言、言っておくべきことがあります。」といって、手紙を書く。

天人は「遅くなる」と言って、じれったがりなさるがかぐや姫は「情け知らずなことをおっしゃいまするな。」といってたいそう静かに、帝にお手紙を差し上げなさる。落ち着いた様子である。

「このように大勢の人をおつかわしくださりて、お引き留めなさいますけれど許さない迎えがやって参りまして、引き連れて行ってしまいますので残念で悲しいことでございます。宮仕えをいたさずじまいになってしましましたのを、このように複雑な身でございますので、納得できないときっとお思いなさっていらっしゃることでしょうが強情にもお受けせずじまいになりましたことを無礼なものと御心にとどめられてしまいましたことが心残りでございます。」と書いて、今はこれまでと天の羽衣を着るときになって、あなたさまのことをしみじみ懐かしく思い出すことよと書いて、壺の薬を添えて、頭中将を呼び寄せて献上させる。

中将には天人が受け取って渡す。中将が受け取ったのでさっと天の羽衣をお着せ申し上げたところ、翁を不憫だいとおしいと思っていたことも消え失せてしまった。この羽衣を着た人は悩みがなくなってしまったので空を飛ぶ車に乗り、百人ばかりの天人を引き連れて昇天してしまった。

 22 その後、翁と媼は血の涙を流して悲嘆にくれたが、何の甲斐もない。かぐや姫の書き残した手紙を読んで聞かせたけれど、「どうして命が惜しかろうか。誰のために長生きしようか。何事も無駄になってしまった。」といって、薬も飲まず、そのまま起きあがることもなく病気になって寝込んでしまった。中将は、武士たちを引き連れて内裏へ帰参し、かぐや姫を戦って止めることができなかったことを、こまごまと奏上する。

薬の壺にお手紙を添えて、帝に差し上げる。広げてご覧になり、たいへんしみじみとあわれにお感じなされて、お食事も召し上がらず、管弦のお遊びなどもなさらなくなった。

大臣・上達部をお召しになり、「どの山が一番天に近いか」とお尋ねあそばすとある人が奏上して「駿河の国にある山が、この都からも近く、天にも近こうございます。」と申し上げる。

これをお聞きあそばして もう二度と会うこともできないと思うと、悲しみのあまり流す涙に身も浮くほどであり不老不死の薬も何の役に立とうか。

-->

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「お好み焼き」と「もんじゃ... | トップ | 「槭」と「楓」と「紅葉」に... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

神話・御伽噺・民話・伝説」カテゴリの最新記事