TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

インテリジェンス 武器なき闘争/手嶋龍一、佐藤優

2007年04月09日 | 読書とか
読み終えてまず誰かに話したくなったことは、日本のシンドラーと呼ばれる杉原千畝が救った約6,000人のユダヤ人の中のひとりに、モニカ・ルインスキーの祖父がいたということ…その程度かい!と突っ込まれるかもしれないが、どうも全般的に話が大き過ぎて実感がない。そこに拍車を掛けるのが両者の芝居がかった語り口。「ここはわたくしも、『自分はインテリジェンスに関する知識を少しだけ持ったジャーナリストにすぎません』と、ラスプーチン(佐藤氏のこと)風にお答えしておきますよ(笑)」といった随所に見られるやり取りのキツさも冷や汗ものだ。まあご大層でんな、という印象は大きい。

しかしテーマ自体は興味深い、というか日本って大丈夫なの?と思えることばかり。特に気になるのは、日本の情報収集の能力自体は劣っているわけではないのに、それを生かす仕組みができていないというあたり。その要因には世界情勢への疎さもあるのだろうし、また役所的な内向きの視線の弊害もある。情報活動というのは、実は陰謀や戦争のためよりも平和という状態を維持していくために重要なのではないだろうか。

またそういう点とは別に、国家の情報をめぐる話がどこかで人間心理とつながってくるのも面白い。たとえば「謀略で一番うまいやり方というのは、相手に全体像を組み立てさせることなんですね。ジクソーパズルを完成させた人がそれを喜んで飾るのも、そのせいでしょう」これなんか「謀略」を教育とか広告に置き換えても成り立つ。このお二人、語り口に多少の癖はあけれどちょっと気になる存在だなぁ。
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