人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

クリスティアン・ペッツォルト監督「東ベルリンから来た女」を観る 〜 東側で医師として残るか 西側に亡命して恋人と自由に生きるかで揺れ動く女医の決断

2021年08月31日 07時11分58秒 | 日記

31日(火)。月日の流れは速いもので、8月も今日で終わりです     とはいえ暑さが終わったわけではないので、明日からも気をつけましょう

ということで、わが家に来てから今日で2425日目を迎え、愛知県の大村秀章知事は30日の記者会見で、常滑市で29日に開かれた野外音楽イベント(約8千人分のチケットを販売)で、新型コロナ対策が徹底されず、酒類も提供されていたとして主催者に抗議する考えを示した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ルールを守らないイベントは 全体の規制強化に繋がる恐れがある 絶対やめるべき

 

         

 

昨日、夕食に「トンテキ」「生野菜とアボカドのサラダ」「冷奴」「大根の味噌汁」を作りました トンテキは柔らかく焼けて美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、早稲田松竹でクリスティアン・ペッツォルト監督による2012年製作ドイツ映画「東ベルリンから来た女」(105分)を観ました

物語の舞台は「ベルリンの壁」崩壊の9年前の東ドイツ。西側への出国申請を出したために東ベルリンの大病院から田舎町の病院へ左遷されてきた小児科医バルバラ(ニーナ・ホス)は、西側で暮らす恋人ヨルク(マルク・ヴァシュケ)と密会し西側へ出国する計画を進めていた    病院には、かつて致命的な医療ミスで地方勤務となり密告の義務を負う真面目な医師アンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)がいた 彼はバルバラに好意を寄せるが、彼女は彼に対し頑なな態度を取り続ける 病院に強制収容所から脱走し、髄膜炎を発症した少女ステラ(フリッツィ・バウアー)が連れて来られる。バルバラにだけ心を開くステラを彼女は献身的に治療し看護するが、ステラは強制的に施設に連れ戻される すると今度は、3階から転落して脳に血栓ができた少年マリオが運び込まれてくる マリオの開頭手術が決まるが、その日はバルバラが出奔する予定の日だった 自らの過去の過ちを告白し、密告の義務を正直に打ち明け、「医師として、病人であれば誰であろうと助ける」と言うアンドレの真摯な態度にバルバラの心は揺れ動く 最終的に出国を決意した彼女の前に、施設から逃亡したステラがぼろぼろの姿で現れ「この国から出たい」と告白する バルバラは東に残って医師としての責務を取るか、西側で恋人ヨルクとの新生活を取るか、真剣に悩んだ末に、密出国の待ち合わせの海岸にステラを連れていき、小舟で迎えに来た男にステラとお金を預けて見送る そして バルバラは、もう2度と会えないと思っていたアンドレの前に再び現われる

 

     

 

当時の東ドイツでは、一度政治的な理由で国から目を付けられると、秘密警察シュタージが抜き打ち的な家宅捜査を行い、不審な動きがないかどうかを監視するという実態が良く描かれています バルバラはヨルクの用意した逃走資金を遠くの土地の十字架の下に隠したり、自宅に持ち帰ってからはストーブの煙突に隠したりして発見を免れます 恐らく当時はこうしたことが実際に行われていたのでしょう 怪しい人物とレッテルを貼られるとシュタージから監視され、一般市民からも密告の形で監視される、現在の北朝鮮を思い浮かべます

バルバラは、最後は自分の代わりにステラを西側に出国させたわけですが、果たして、彼女は犠牲を払ったのだろうか? バルバラが最終的にヨルクでなくアンドレを選んだのは、アンドレが誰よりも自分を愛してくれていることを感じ、バルバラ自身もアンドレの真摯で誠実な人柄に惹かれたからではないか ステラの「この国から出たい」という言葉が、バルバラの決断のきっかけになったのではないか、と思います

さて、いつものように 気になるのは音楽です   映画の序盤で、ラジオから「フルトヴェングラーの演奏は深みがあります。彼の指揮で聴くと作品が初めて演奏されるように響きます」というナレーションの後、ベートーヴェンの序曲の冒頭部分が鳴り響きます   当時ドイツの指揮者と言えば世界的に名を轟かせたウィルヘルム・フルトヴェングラーを置いて他に誰もいません ラジオから流れて来た重厚な音楽は「エグモント序曲」だったか    わざわざこのシーンを入れたのは、ペッツォルト監督がフルトヴェングラーに特別の想いを抱いているからだろうか、と思わせます また、バルバラが勤める病院の廊下にはBGMとしてチャイコフスキー「弦楽セレナーデ」の第2楽章「ワルツ」が流れます そして、バルバラが自室で調律後のピアノで弾くのはショパン「ノクターン  ト短調 作品15-3」です たどたどしい演奏だな、と思ったらニーナ・ホス本人が弾いていました

今でこそ、ベルリンの壁は崩壊し東西ドイツは統一されることは歴史的事実となっていますが、この映画の舞台となった1980年の時代にバルバラと同じ立場で東ドイツで暮らしていたら、どういう行動を取っただろうか? そういうことを考えさせる映画でした

本作は第62回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞しています

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石上真由子 ✕ 東京ハルモニア室内オーケストラのチケットを取る / 小野寺史宣著「ライフ」を読む ~ 淡々と物語が進むがジワジワと感動が湧いてくる佳作

2021年08月30日 07時11分32秒 | 日記

30日(月)。マンションとして契約しているケーブルテレビの回線設備が老朽化したため 管理組合定期総会での決定を受けて リニューアルすることになりました まず共用部の設備の交換・改修工事が行われ、次いで個々の家庭の設備の交換が行われました。そのため20日、21日、29日の3日間、工事の人が家に来て下見をして作業を行いました その際、ケーブルテレビのオプションとして「ネットフリックス」が1か月無料で観られるというので、申し込みました 昨日、さっそくアクセスしてみたら「愛の不時着」もあるし「男はつらいよ」もあるし「孤狼の血」もあるし、なんか面白そうです 映画館で観る作品とは異なり、ネットフリックスだけでしか観られない作品も結構ありそうで 期待が膨らみます   私は ①コンサート ②映画鑑賞 ③読書 の3つの目標を掲げていますが、ネットフリックス鑑賞は4つ目の目的にはせず結果だけが残ることになりそうです ネットフリックスで映画を観たら「②映画鑑賞」ではないか、と思われるかもしれませんが、私の基準では「映画館に行って観るのが映画鑑賞」なので 明確に区別します どちらにしても、ますます忙しくなりそうで 困りました

ということで、わが家に来てから今日で2424日目を迎え、菅首相の総裁任期満了に伴う自民党総裁選(9月17日告示、29日投開票)で、立候補者の出馬準備が加速する中、福島県内でも投票の準備が始まったが、現職議員と党本部幹部らが並ぶ「2連ポスター」で菅首相とのツーショットを選んだ国会議員はいなかった  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     内閣支持率が3割を切った”政権末期症状”だから  誰も近づこうとしないと思うよ

 

         

 

昨日、散歩がてら(電車に乗って)東京文化会館のチケットサービスに行って、10月24日(日)14時から東京文化会館小ホールで開かれる「東京ハルモニア室内オーケストラ  第63回定期演奏会」のチケットを取りました 石上真由子さんは8月14日に開催された「読響  三大協奏曲」公演でメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」を鮮やかに弾いたお姉さんです あの時の自然で美しいヴィブラートが忘れられません 大好きなメンデルスゾーンの室内楽とベートーヴェンの中期のクァルテットの組み合わせというプログラムにも惹かれました 楽しみが一つ増えました

 

     

 

         

 

小野寺史宣著「ライフ」(ポプラ文庫)を読み終わりました 小野寺史宣(おのでら ふみのり)は千葉県生まれ。2006年「裏へ走り蹴り込め」でオール読物新人賞を受賞。2008年「ROCKER」でポプラ社小説大賞優秀賞を受賞 「ライフ」は2019年本屋大賞受賞作「ひと」が良かったので買い求めたものです

27歳の井川幹太は高校時代に父親を亡くし、母は再婚して別の家庭にいる 彼は勤めていた会社を辞め、コンビニでアルバイトをしながら荒川沿いのアパートで静かに暮らしていた。ところがある日、上の部屋に戸田という騒がしい男が引っ越してきて、幹太は毎日騒音に悩まされる 戸田には2人の幼児がいるが、浮気がばれて妻から家を追い出され、一人で住んでいるのだった ひょんなことから戸田と会話をするようになった幹太は、最初は迷惑に感じていたが、開けっぴろげな戸田に次第に親近感を覚えるようになり、彼の子供たちの世話をするまでになる それまで、独りで気楽に生きていけばいいや、と考えていた幹太だったが、他人から頼られる喜びを経験するようになる 幹太はパンが好きなので、一度は製パン会社に就職したが 営業に回され やる気を失い 辞めたことがあった    3月下旬、幹太が河川敷を散歩していると、製パン工場らしき建物を発見する ネットで調べてみたら「社員募集」の告知が載っていた。仕事の内容はパンの製造だった 幹太の目の前に自分の好きな仕事への道が開けていた

 

     

 

先日読んだ「ひと」もそうだったけれど、この「ライフ」も、とくに大きな事件が起こるわけではなく、物語が淡々と流れていきます それでいて、そこはかとなくジワジワと感動が押し寄せてきます それと、小野寺史宣の作品は、一人一人の登場人物を大事に扱っているのが大きな特徴です それは名前を紹介するときの説明に表れています 例えば、戸田と幹太の会話にこういうのがあります

戸田「前にオリンピックのメダリストが言ってて、確かにそうだと思ったんだけど、銀メダルって、最後の試合で負けてもらうメダルなんだよ

幹太「そうなりますね

戸田「おれ、ガキのころ空手をやっててさ、大会に出たりしてたわけ。けど、その大会でもらえるメダルがいつも銀なのよ 小四小五小六と毎年同じ相手に負けて、銀。そいつが常に金。名前まで覚えてるよ。カザオカタツマ。風の岡に立つ真実の真で、風岡立真。名前からしてスターじゃね?金メダリストじゃね?」

幹太「かっこいいですね

一人一人の登場人物の名前がこのように一字一句解説されています

ところで、幹太は戸田の騒音に悩まされていることを本人に伝えようとしますが、なかなか言い出せません 戸田一家と交流が始まると、さすがに言いやすくなると思っていたのに 今度は仲が良くなり過ぎて言い出せません    しかし、最後に戸田一家がいよいよ引っ越すことになった時、遂に幹太は戸田に忠告します    何を今さらですが、幹太は「たいていの人は知らない人と もめたくないから我慢する    でも、何かのきっかけで一気に爆発してトラブルになる。今度引っ越し先で同じように騒音をまき散らしたら、良心的な人ばかりとは限らない 知らない人に怒鳴り込まれたら子供たちが怖がるだろう」と忠告します こういうところにも、筆者の優しさが表れています

読後感が爽やかな小説です。お薦めします

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ヴァィグレ ✕ 戸澤采紀 ✕ 読売日響でドヴォルザーク「ヴァイオリン協奏曲」、ベートーヴェン「交響曲第5番」、モーツアルト「フィガロの結婚」序曲を聴く ~ 読響 第239回土曜マチネーシリーズ

2021年08月29日 07時05分03秒 | 日記

29日(日)。わが家に来てから今日で2423日目を迎え、米国家情報長官室は27日、新型コロナウイルスの発生源に関する調査報告書の要旨を公表したが、①動物から人間に感染②中国のウイルス研究所からの流出の2つのうちどちらかを結論づける決定的な証拠を得られず、特定できなかったと説明した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     発生から1年半も経って調べても無駄だろ  中国はとっくに不利な証拠は隠してる

 

         

 

昨日、東京芸術劇場コンサートホールで読響「第239回土曜マチネ―シリーズ」公演を聴きました   プログラムは①モーツアルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲、②ドヴォルザーク「ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53」、③ベートーヴェン「交響曲第5番 ハ短調 作品67」です 演奏は②のヴァイオリン独奏=戸澤采紀、指揮=セバスティアン・ヴァィグレです

 

     

 

会場は9割近く入っているでしょうか コロナ禍の影響で多くの外国人指揮者が来日を控えている中、セバスティアン・ヴァイグレは一貫して読響常任指揮者としての役割をきちんと果たしています 右を向いても左を見ても日本人指揮者という中で、今や貴重な存在となっています それが9割近くの集客力に繋がっているのでしょう

弦楽器は10型で左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの読響の並び。コンマスは長原幸太です

1曲目はモーツアルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲 K.492です このオペラはウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756‐1791)が1785年から翌86年にかけて作曲、1786年にウィーンのブルク劇場で初演されました

ヴァィグレの指揮で演奏に入りますが、速めの軽快なテンポによるワクワク感に満ちた演奏で、オペラ指揮者としての存在感を示しました

2曲目はドヴォルザーク「ヴァイオリン協奏曲 イ短調 作品53」です この曲はアントニン・ドヴォルザーク(1841‐1904)がヨーゼフ・ヨアヒムの依頼により1879年に作曲(80年と82年に改訂)しましたが、ヨアヒムは82年に試演しただけで公開演奏をしませんでした その後、1883年10月14日にプラハで公開初演されました 第1楽章「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ」、第3楽章「フィナーレ:アレグロ・ジョコーソ・マ・ノン・トロッポ」の3楽章から成ります
ソリストの戸澤采紀(とざわ さき)は2016年の日本音楽コンクールで最年少(15歳)で優勝、2017年のティボール・ヴァルガ国際コンクール第2位(最高位)など数々のコンクールで入賞を果たしています 彼女は現在、チェルカトーレ弦楽四重奏団の一員としても活躍していますが、東京シティ・フィルのコンマス 戸澤哲夫氏の娘さんであることは良く知られています

弦楽器は12型に拡大します 葡萄色に銀のラメを配した爽やかな衣装の戸澤采紀が登場、さっそくヴァィグレの指揮で第1楽章に入ります 冒頭の決然とした音楽が曲の幕開けを宣言します 読響の集中力に満ちた演奏が素晴らしい すぐに戸澤の独奏が入ってきますが、艶のあるヴァイオリンの音色が美しく響きます 第2楽章ではオーケストラとの絡みの中で、独奏ヴァイオリンが叙情的な旋律を美しく歌います 第3楽章に入ると一転、リズム感に満ちた舞曲が快活に奏でられます ヴァィグレ ✕ 読響の面々がソリストをしっかり支えました

戸澤采紀の演奏が素晴らしかったのは言うまでもありませんが、何より彼女がメンコンでもなく、ベトコンでもなく、ブラコンでもない”地味な”ドヴォルザークを選んだことが素晴らしい    この日の演奏は、ヴァイオリン協奏曲の中で正当に評価されていないドヴォルザークの作品の真価を聴衆に知らしめた熱演だったと思います    より多くのヴァイオリニストとオーケストラがこの曲を取り上げるよう熱望します

戸澤はバッハの無伴奏ヴァイオリン曲をアンコールに演奏、聴衆のクールダウンを図りました

 

     

 

プログラム後半はベートーヴェン「交響曲第5番 ハ短調 作品67」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770‐1827)が1807年から翌08年にかけて作曲、1808年にアン・デア・ウィーン劇場で、「交響曲第6番」「ピアノ協奏曲第4番」などと共に初演されました 第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アンダンテ・コン・モート」、第3楽章「アレグロ」、第4楽章「アレグロ ~ プレスト」の4楽章から成ります

ヴァィグレの指揮で第1楽章に入ります 冒頭から集中力に満ちた演奏が速めのテンポで繰り広げられます 松坂隼のホルン、蠣崎耕三のオーボエが素晴らしい 第2楽章を経て、第3楽章では中間部のチェロ ⇒ ヴィオラ ⇒ 第2ヴァイオリン ⇒ 第1ヴァイオリンへと受け継がれるフーガ風の演奏が力強く素晴らしい そして第4楽章に移るまでの緊張感と高揚感がたまりません 第4楽章では、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットに加え、ピッコロが存在感をアピールします そして、金管楽器ではホルンやトランペットとともにトロンボーンが大活躍します さらに弦楽器の渾身の演奏が加わって圧倒的なフィナーレを迎えました

ヴァィグレ ✕ 読響はドイツ的な重厚なサウンドで”苦悩から勝利へ”のドラマを描き切りました

 

     

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佐渡裕 ⇒ 新日本フィルの第5代音楽監督に / 白石和彌監督「孤狼の血 LEVEL2」を観る 〜 「孤狼の血」のピカピカのエリート刑事からギラギラのマル暴刑事に変貌を遂げた松坂桃季の名演技

2021年08月28日 07時14分55秒 | 日記

28日(土)。新日本フィルからのメール配信によると、「新日本フィルは第5代音楽監督として佐渡裕氏を迎えると発表した 任期は2023年4月から2027年3月までの4年間とし、それに先立つ2022年4月から1年間、ミュージック・アドヴァイザーとして新日本フィルの演奏会プログラミング等に携わってもらう」としています 上岡敏之氏の後任が宙ぶらりんだったので心配していましたが、楽団としてもこれで一安心でしょう 音楽監督が未定のままでは年間計画も立てにくいだろうし、寄付を募るにもやりにくいでしょうから 佐渡氏は集客力の点で一定の期待が持てると思います プログラミングでは フランスものや アメリカものが 今まで以上に取り上げられる可能性があるような気がします

ということで、わが家に来てから今日で2422日目を迎え、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会は、26日の自転車競技でロシア・パラリンピック委員会の選手が優勝した表彰式で、国歌の代わりにチャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」を使用する予定だったのを、誤ってパラリンピック賛歌を流したとして、選手に謝罪して式の一部をやり直したと発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     「星条旗」や「ラ・マルセイエーズ」や「君が代」でなくて良かった 危なかった!

 

         

 

昨日、夕食に「鶏の唐揚げ」を作りました 今回はちょうど2週間ぶりです。栗原はるみ先生のレシピによる「うまみ醤油」が沁み込んでとても美味しかったです やっぱり 唐揚げにはビールがつきものですね

 

     

 

         

 

昨日、TPHOシネマズ上野で白石和彌監督による2021年製作映画「孤狼の血 LEVEL2」(139分)を観ました

この映画は、柚月裕子の小説を原作に、平成初期の広島の架空の都市・呉原市を舞台に警察とヤクザの攻防戦を描いた白石和彌監督による「孤狼の血」の続編です 一匹狼の刑事・大上の死の3年後の呉原市を舞台にした物語が柚月裕子の小説から離れた映画オリジナルストーリーで展開します

3年前に暴力団の抗争に巻き込まれて殺害された伝説のマル暴(暴力団担当)刑事・大上章吾の跡を継ぎ、権力を背景に広島の裏社会を統率する刑事・日岡秀一(松坂桃季)の前に、刑務所を出て来た上林組組長の上林成浩(鈴木亮平)が立ちはだかる せっかくヤクザ同士の攻防戦が鳴りを潜めるようになったところに、「やられたらやり返す」主義の上林が登場したことにより、呉原市の危うい秩序が乱れていき 再びヤクザ同士の抗争が始まる 日岡は命を張って上林の暴走を抑えようとするが、上林の暴走は止められない

 

     

 

柚月裕子の小説「孤狼の血」を読んだことのある方には解ると思いますが、3年前に死んだ大上(おおかみ)刑事の名前は 孤狼つまり一匹狼(おおかみ)に因んで名づけられています   彼は警察内部の不正・腐敗の実態を実名入りでノートに書き残し、その存在を武器に警察上層部からの圧力を排除しながら、独りで暴力団の内部に食い込み暴力団同士の抗争を防いできました 彼が死ぬに当たりそのノートを受け継いだのが若き刑事・日岡でした それと同時に彼は大上から狼の絵を彫り込んだライターを受け継ぎます この2つが大上=狼から日岡が受け継いだ一匹狼の”血統”の象徴です

私がこの映画を観ようと思ったのは、柚月裕子の小説が好きだし、彼女の小説から派生した物語が、前作「孤狼の血」の監督であり 先日読んだ「映画評論家への逆襲」にも登場した白石和彌氏によって映画化されたからです

映画を観てまず驚くのは、前作「孤狼の血」では正義感の強いピカピカのエリート刑事だった日岡を演じた松坂桃季が、本作ではギラギラの精悍なマル暴刑事に変貌を遂げていることです 昨日の朝日夕刊に掲載されたインタビューで、松坂は「狼に育てられた犬というニュアンスを出したかったんです」と語っていますが、まさにそんな感じが良く出ていました また、本作は柚月裕子の「孤狼の血」と「凶犬の眼」をつなぐ位置づけにありますが、これについて松坂は「今回の終わり方も『凶犬の眼』に繋がる感じですよね。少なくとも僕は続けるために作り上げた。続編を求める声が上がればいいな」と語っています ここで松坂が「今回の終わり方」と言っているのは、田舎の駐在所の警察官に降格された日岡が「山で狼を見た」という少年の証言に基づいて村人たちと山狩りに行った時、彼だけが狼の姿を発見するがすぐに見失う、というラストシーンを指しています さて、日岡の駐在員から刑事への復活はあるのでしょうか? その鍵はあの「ノート」にあります

ところで、入口ゲートで入場者プレゼントとして「孤狼の血LEVEL2 トレーディング・カード・セット」を配布していました メタリックな袋の中には 4枚の登場人物のカードが入っていました どうやら全部で24種類のカードがあるようで、このカードを10種類以上集めると、抽選でスペシャルグッズをプレゼントすると書かれています しかし、冷静に考えてみると、最低3回観ないと10種類のカードは集まりません 一人で同じ映画を3回も観ますか? それでも、こういうグッズを集めている「カード ヲタク」がどこかにいるんでしょうね

 

     

     裏社会はこちら

     

     

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第18回ショパン国際ピアノコンクール本大会に日本人14人出場 / ジョナス・メカス監督「ロスト ロスト ロスト」を観る 〜 アメリカ実験映画のパイオニア的作品:早稲田松竹

2021年08月27日 07時13分49秒 | 日記

27日(金)。昨日の日経夕刊に音楽ジャーナリストの伊熊よし子さんが今年のショパンコンクールについて書いていました ショパン国際ピアノコンクールは5年に1度ポーランドのワルシャワで開かれますが、コロナ禍で1年延期となり第18回大会が今年10月3日から20日にかけて行われます 先日、151名の予備予選参加者のうち、本大会への出場資格者 87名が発表されました 伊熊さんは、日本からの本選出場資格者14名のうち”入賞が期待されている”小林愛実、反田恭平、牛田智大の3名にスポットを当てています そこで、どういう人たちが本選に進むのか「ぶらあぼONLINE」で調べてみました     同記事によると、出場資格を得たのは、中国22名、ポーランド16名、日本14名、韓国7名、イタリア6名を含む87名とのことです    アジア勢の活躍が顕著な大会となりそうです。本大会へ進む日本人演奏者14名は次の通りです

古海 行子(ふるみ  やすこ)

原 沙綾(はら  さあや)

五十嵐 薫子(いがらし  かおるこ)

今井 理子(いまい  りこ)

伊藤 順一(いとう  じゅんいち)

岩井 亜咲(いわい  あさき)

小林 愛実(こばやし  あいみ)  ※前大会ファイナリスト

京増修史(きょうます  しゅうし)

沢田 蒼梧(さわだ  しょうご)

進藤 実優(しんどう  みゆう)

反田 恭平(そりた  きょうへい)

角野 隼斗(すみの  はやと)

竹田 理琴乃(たけだ  りこの)

牛田智大(うしだ  ともはる)  ※浜松国際ピアノコンクール第2位のため、予備選考免除。

なお、本大会の審査員には、マルタ・アルゲリッチ、ダン・タイ・ソン、海老彰子、ネルソン・フレイレ、アダム・ハラシェヴィチ、ディーナ・ヨッフェなど18名が予定されているそうです

選考日程は、第1次予選=10月3日〜同7日、第2次予選=同9日〜同12日、第3次予選=同14日〜同16日、本選FINAL=同18日〜同20日で、入賞者披露演奏会が10月21日~23日に予定されています

さて、日本からの出場者は本選に進めるでしょうか  栄冠は誰の手に  10月はショパンコンクールから目が離せません

ということで、わが家に来てから今日で2421日目を迎え、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が25日、衆議院厚生労働委員会の閉会中審査に出席し、24日夜の東京パラリンピック開会式に出席するため、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が再来日したことについて「人々にテレワークを要請している時に、今回また来る。バッハ会長のあいさつが必要なら、なぜオンラインでできないのか」などと痛烈に批判した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     五輪の開会式での挨拶が超ロングで 不評を買ったことを 本人は知ってるのかいな?

 

         

 

昨日、夕食に「麻婆茄子」「生野菜サラダ」「冷奴」「舞茸の味噌汁」を作りました ひき肉を多めにしたのでボリュームたっぷりで美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、早稲田松竹でジョナス・メカス監督による1949~1963年、1976年製作アメリカ映画「ロスト ロスト ロスト」(モノクロ・カラー 3時間)を観ました

ジョナス・メカスはソ連とナチスに故郷リトアニアを追われ、アメリカに亡命しました メカスは言葉が通じない異郷で16ミリカメラを入手し、やがて本物の映画を撮るための練習として、日々の出来事をカメラに収めていきます 本作は後に”アメリカ実験映画のパイオニア”  ”アメリカのカウンターカルチャーの英雄”と言われるジョナス・メカスが1949年から約20年にわたる難民としての生活を綴った「映画日記」で、製作・監督・編集のすべてをメカスが手掛けています 本作は年代を追って6つのリールで構成されています

リール1と2は、1949年10月にニューヨークに着いたリトアニア移民のジョナスと弟アドルファスの、ブルックリンに住みついた後の50年〜2年のリトアニア移民たちのコミュニティの様子を写し出しています

リール3は、マンハッタンに移ったメカス兄弟が、本格的な映画撮影に取り組む様子が映し出されています

リール4は、メカスが当時コミットしていた反戦運動のニューズリールが収められています

リール5は、アドルファス・メカス監督の「ハレルヤ・ザ・ヒル」(1962年)のためのスクリーン・テストのフイルムが映し出されています

リール6は、メカスの「タイニー・ティム」「トゥワイズ・ア・マン」「フラハティ―・ニューズリール」の断片が収められています

 

     

 

まさに実験映画だと思いました    それぞれのリールに明確なストーリーがあるわけではなく、短いエピソードが音楽とともに断片的に現れては消えていきます 現代における「ビデオ・クリップ」の原点と言えるかもしれません

私の場合はどうしても音楽が気になります いくつかのリールの中で、ショパンのワルツやマズルカが使われていました リール5の弟アドルファス・メカス監督の「ハレルヤ・ザ・ヒル」のスクリーン・テストでは、バロックの祝祭的な音楽が使われていました 中でも一番気になったのは、リール4を中心に流れていたワーグナーの「パルジファル」風の神秘的な音楽です

実験映画なので、ストーリーがなく、先がまったく読めません したがって次から次へと映し出されるエピソードの断片に目を凝らして観るしかありません それで休憩なしの3時間は正直 辛いものがありました しかし、リール1で観たように、アメリカという国はメカス兄弟のような移民が集まって出来ている”合衆国”であるという事実に 改めて気づかされました

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芸劇ブランチコンサート「憧れのフランス音楽」を聴く~フォーレ「ファンタジー」、プーランク「クラリネット・ソナタ」、ドビュッシー「シランクス」他:竹山愛、伊藤圭、吉村結実、清水和音

2021年08月26日 07時09分33秒 | 日記

26日(木)。週に2~3回通っている整骨院のA院長から「非接触検温器」をいただきました 「いっぱいもらって困ってるんですよ。一つ持っていってください」と 私は「今日は調子がいいから病院に行くか」という後期高齢者ではありませんが、背中の痛みや腰痛や手の腱鞘炎等々で20年以上通院している”常連”だし、お中元・お歳暮は毎年欠かさず届けているので、図らずも その”効果”が出たのかな、と勝手に思うことにしました

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で2420日目を迎え、中国教育相は24日、周近平国家主席の政治理念「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」を学校で指導するための教科書ガイドラインを発表したが、ガイドラインは、周氏の思想を「現代中国のマルクス主義」と位置づけている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ヒトラー  スターリンに並ぶ独裁者だ  「現代中国を悪くす主義」と読み替えられる

 

         

 

昨日の夕食は「牛タン塩焼き&牛みすじ焼肉」「生野菜とアボカドのサラダ」「卵スープ」にしました 昨日は夕方 用事があり 忙しかったので、焼くだけで済む料理にしましたが、たまにはいいでしょう

 

     

 

         

 

匿名さんから昨日のブログに「元新日本フィルの篠崎友美さんが東京交響楽団に移った」とあるが「東京都交響楽団の誤りである」、また8月19日付のブログに「小川響子さんは葵クァルテットのメンバー」とあるが「葵トリオの誤りである」というコメントをいただきました この指摘を読むまで、私は「東京都交響楽団」「葵トリオ」と書いたつもりでいました 念のため記事を見直して初めて誤りに気が付きました ブログアップに際しては特に固有名詞に気を付けて記述しているつもりですが、たまに このようなミスが発生してしまいます    推敲が足りないということだと思います 19日と昨日のブログの末尾に【訂正】を載せましたが、今後は今まで以上に推敲に力を入れ、ミスのないようにしたいと思います 今回のようなミスに気が付いた方は、すぐにコメントをいただければ嬉しいです

 

         

 

昨日、東京芸術劇場コンサートホールで「第31回芸劇ブランチコンサート ~ 憧れのフランス音楽」を聴きました プログラムは①フォーレ「ファンタジー」、②プーランク「クラリネット・ソナタ」、③ドビュッシー「シランクス」、④サン=サーンス「オーボエ・ソナタ」、⑤同「デンマークとロシアの歌による奇想曲」です 演奏は①③⑤のフルート独奏=竹山愛(東京シティ・フィル首席)、④⑤のオーボエ独奏=吉村結実(N響首席)、②⑤のクラリネット独奏=伊藤圭(同・首席)、③以外のピアノ=清水和音です

 

     

 

会場は通常配置ですが、結構な数の聴衆が入っています 休憩なし60分強のコンサートで2400円という低料金が受けているのでしょう

1曲目はフォーレ「ファンタジー」です この曲はガブリエル・フォーレ(1845‐1924)が、教授を務めているパリ音楽院の卒業試験の課題曲として1898年に作曲したフルートとピアノのための作品です

白のレース模様のエレガントな衣装の竹山愛が登場、清水のピアノ伴奏で演奏に入ります ゆったりとしたメランコリックな曲想から始まり、快速テンポの技巧的な曲想に移りますが、この切り替えが見事です

2曲目はプーランク「クラリネット・ソナタ」です この曲はフランソワ・プーランク(1899‐1963)が1962年に作曲、翌63年にベニー・グッドマンのクラリネット、レナード・バーンスタインのピアノにより初演されました 第1楽章「アレグロ・トリスタメンテ」、第2楽章「ロマンツァ」、第3楽章「アレグロ・コン・フオーコ」の3楽章から成ります

伊藤圭が登場し、清水の伴奏で第1楽章が快速テンポで開始されます 伊藤の演奏はひと言で言えば「軽妙洒脱」です テクニックは抜群です 第2楽章はメランコリックな曲想で、聴きながら「悲劇的な映画のBGMに使えそうだな」と思いました 第3楽章は高速テンポによる愉悦感に満ちた演奏が繰り広げられました

3曲目はドビュッシー「シランクス」です この曲はクロード・ドビュッシー(1862‐1918)が1913年に友人ムーレの劇「プシケ」の付随音楽として作曲した作品です 「シランクス」は牧神パンの持つ葦笛のこと。竹山愛の無伴奏フルートで息の長いフレーズを聴いていたら、「牧神の午後への前奏曲」を思い浮かべました 地に足がつかない浮遊感に満ちた音楽とでも言うべきか、独特の幻想的な雰囲気が良く出た演奏でした

いつものように曲間には、ホスト役の清水氏がゲストにインタビューをするのですが、例によって何を言っているのか聴きとることが出来ません マイクの使い方が下手なのか、最初のうちはゆっくりと話していても途中から早口になってしまうせいか、ほとんど聴きとれません 聴衆の中には話を聞いて笑っている人もいるので 聴きとることが出来る人もいるようですが、少数派のような気がします   それに、ホスト役はゲストから話を聞き出すのが役割のはずなのに、自分だけがペラペラしゃべって「シミズ カズネ・オン・ステージ」をやっていては進行役として失格です 「話し上手は聞き上手」という意味を理解してほしいと思います というわけで、ゲストたちの面白そうな話が ここでご紹介できないのが残念です

 

     

 

4曲目はサン=サーンス「オーボエ・ソナタ  ニ長調」です この曲はカミーユ・サン=サーンス(1835‐1921)が1921年に作曲した3つの木管楽器のためのソナタ(クラリネット、バス―ン、オーボエ」の一つです 第1楽章「アンダンティーノ」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「モルト・アレグロ」の3楽章から成ります

吉村結実が空色に銀のラメを配した鮮やかな衣装で登場、清水の伴奏で第1楽章に入ります 緩やかな第1楽章に次いで、牧神の吹く葦笛のような曲想の第2楽章が演奏され、快速テンポにより技巧的な演奏が展開する第3楽章に移ります 吉村のオーボエが良く歌っていました

最後の曲はサン=サーンス「デンマークとロシアの歌による奇想曲」です 柴田克彦氏のプログラム・ノートによると、この曲は1887年にフルート奏者タファネルらとペテルブルクへ演奏旅行を行う際に作曲され、ロシア皇帝アレクサンドル3世に献呈されました また、デンマークの歌が使われているのは、皇后が同国国王の娘だったからとのことです

竹山、吉村、伊藤がソリストとなって清水のピアノに乗せて演奏します 冒頭は3つの楽器によりファンファーレ風の華麗な音楽が奏でられ、次いでデンマーク民謡に基づくもの悲しいメロディーが変奏されます 3人それぞれの抒情的な演奏が素晴らしい 次いで、快速テンポで技巧的な演奏が続きフィナーレを迎えます

それにしても、サン=サーンスは3歳で作曲を始めて86歳まで生きたと言いますから、「神童」も長持ちしたものです 同じ「神童」のモーツアルトが36年弱の人生だったのに比べ、2倍以上も生きていたことになります しかし、サン=サーンスは生涯に300曲以上の作品を残したのに対し、モーツアルトはケッヘル番号が付いている作品だけでもサン=サーンスの2倍以上の600曲を超えています ついでに言えば、サン=サーンスは1921年没なので今年=2021年が没後100年、モーツアルトは1791年没なので没後230年に当たります

昨年=2020年はベートーヴェン(1770‐1827)の生誕250年ということで、コンサート等でベートーヴェンを中心とするプログラムが数多く組まれましたが、新型コロナの感染拡大を受けて壊滅状態になってしまいました 長引くコロナ禍のせいか、モーツアルトもサン=サーンスも、記念すべき周年イヤーは声高に喧伝されていないような気がします

 

     

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ニル・ベルグマン監督「旅立つ息子へ」を観る 〜 自閉症”スペクトラム”の若者とチャップリン「キッド」:ギンレイホール / 「セイジ・オザワ松本フェスティバル」全公演中止

2021年08月25日 07時18分54秒 | 日記

25日(水)。昨日、何気にツイッターをクルージングしていたら、元新日本フィルの首席ヴィオラ奏者・篠崎友美さんが7月に東京交響楽団の首席に就任していたという記事に出会いました ちっとも知りませんでした 知らない時に知らないところで世の中は動いているんだなぁと思いました また別のツイッターで、「セイジ・オザワ松本フェスティバル」の全公演が中止になったという記事に接しました 20年ほど前には毎年のようにA君の運転する車で松本まで”日帰り”で聴きに行ったものです 当時は「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」という名称で開催されていました 小澤征爾がサイトウ・キネン・オーケストラを振ったベルリオーズのオペラ「ファウストの劫罰」(1999年公演)はロベール・ルパージュのアクロバティックな演出とともに忘れられない公演です

ということで、わが家に来てから今日で2419日目を迎え、自民党の二階俊博幹事長は24日の記者会見で、菅義偉首相の党総裁選での再選を支持する考えについて「変わりはない」と述べ、首相続投が望ましいとの意向を改めて表明し、「誰々さんでは選挙を戦えないというのは大変失礼な話だ」と述べ、次期衆院選に向けて党内で浮上している首相交代論を牽制した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     失礼な話かどうかは 次期衆院選を戦ってみれば判ることだ 秋の選挙が待ち遠しい!

 

         

 

昨日、夕食に「ひき肉と大根の甘辛煮」「生野菜とツナのサラダ」「冷奴」を作りました 「ひき肉〜」は初挑戦です。娘が「大根がちょっと固くない?」とクレームを付けてきましたが、「文句があるなら自分で作れ!」とは言わず、スルーしました 味は良かったので、次回はもっと柔らかく煮よう と一人密かに決心する父でした

 

     

 

          

 

昨日、ギンレイホールでイスラエルのニル・ベルグマン監督による2020年製作イスラエル・イタリア合作映画「旅立つ息子へ」(94分)を観ました

アハロン(シャイ・アヴィヴィ)は、自閉症”スペクトラム”の息子ウリ(ノアム・インベル)の世話をするため、売れっ子グラフィックデザイナーというキャリアを捨て、田舎町でのんびりと暮らしている 別居中の妻タマラは息子の将来を心配し、全寮制の特別支援施設への入所を決める 定収入がないアハロンは養育不適合と判断され、行政の決定に従うしかなかった しかし、入所当日、大好きな父との別れにパニックを起こした息子の姿を目の当たりにしたアハロンは、自分が息子を守ることを決意し、2人の逃避行が始まる かつての仕事仲間や弟を頼って旅を続けるが、妻からクレジットカードを無効にされてしまう  万策尽きたアハロンはウリと自宅に戻り、結局、ウリを施設に入れることにするが、ウリは入所者に暴力を振るう。アハロンはウリが暴力を振るう原因に思い当たる節があった

 

     

 

【以下、ネタバレ注意】

この映画は、息子のために人生を捧げる父親と、そんな父親の愛情を受け止める青年の絆を、実話に基づいて描いたヒューマンドラマです

なぜウリは暴力を振るったのか ウリはチャップリンが大好きで、いつも携帯用DVDプレーヤーで動画を観ていますが、彼が観ていたのは「キッド」でした この作品は、チャップリンが少年と組んで、少年が石を投げてガラスを割って逃げたあとに、チャップリンがガラス修理屋の恰好でやってきて、家主からガラス交換を頼まれて金儲けするという内容です 一種の詐欺ですね。アハロンは、「ウリはこの動画を観て、騒ぎを起こせば父親が来てくれると思ったに違いない。施設で暴力を振るえば父親が迎えに来てくれると思ったのだろう」と考えます ウリに訊くとその通りでした。彼は父親と一緒にいたかったのです とはいうものの、いつまでも父親の世話になっていては他人との会話も交流も出来ないので、アハロンは悩みます しかし、映画のラスト、施設の若者たちと会話をしているウリの姿を見てアハロンは踏ん切りがつきます それは子のウリにとっては親離れの、親のアハロンにとっては子離れの瞬間でした

この映画で特筆すべきはウリを演じたノアム・インベルの演技です 顔の表情、手足の動きをはじめ彼の行動のすべてが まさに自閉症”スペクトラム”を表しています  とても演技をしているとは思えないほどの自然な演技力に驚きます

この映画を観ていると、父親としてのアハロンの気持がとても良く伝わってきました 父親と息子の関係には言葉では言い表せない独特のものがあります

【訂正】(8月25日)

本文中に「篠崎友美さんが7月に東京交響楽団の首席に就任」とあるのは、東京都交響楽団の誤りでした。お詫びして訂正いたします

コメント (4)
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フィリダ・ロイド監督「サンドラの小さな家」を観る 〜 家庭内暴力、シングルマザーの貧困、厳しい住宅事情など、現代の社会問題に鋭く斬り込む作品:ギンレイホール

2021年08月24日 07時15分49秒 | 日記

24日(火)。わが家に来てから今日で2418日目を迎え、菅義偉首相は23日、自らが支援した小此木八郎元国家公安委員長が18万票の大差で敗北した横浜市長選について、「大変残念な結果だが、市政が抱えているコロナ問題とか、様々な課題についてご判断をされたわけであり、謙虚に受け止めたい」と述べた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     菅氏は「総裁選に出馬する考えに変わりはない」と述べたけど  それって謙虚なの?

 

         

 

昨日、夕食に「ポークカレー」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました     カレールーはいつも「ハウス バーモント」と「S & B  ゴールデン」(中辛)をミックスしています

 

     

 

         

 

昨日、ギンレイホールでフィリダ・ロイド監督による2020年製作アイルランド・イギリス合作映画「サンドラの小さな家」(97分)を観ました

サンドラ(クレア・ダン)は2人の幼い娘を連れてDV夫のもとから逃げ出した しかし、公営住宅は長い順番待ちで、ホテルの借住まい生活から抜け出せない そんなある日、サンドラは娘との会話から、小さな家を自分で建てるアイデアを思い付く インターネットでセルフビルドの設計図を探し出し、サンドラが清掃人として働いている家のペギーや建設業者エイドの協力を得て建設に取り掛かるが、執念深い元夫に妨害されてしまう

 

     

 

【以下、ネタバレ注意】

この映画は2人の幼い子供を持つ女性が、周囲の人たちの助けを借りながら、自らの手で小さな家を建てる物語です 家庭内暴力、シングルマザーの貧困、厳しい住宅事情など、現代の社会問題に斬りこみながら、自らの手で希望を見い出していく一人の女性を描いています 主役のサンドラを演じたアイルランドの女優クレア・ダンは、ダブリンに住む親友のエピソードから着想を得て、自ら企画・脚本を手掛けています

サンドラが家を建てたのは、清掃人として働いているペギー家の敷地ですが、ペギー家で内輪の完成祝いをしている時に、事件が発生します せっかく完成したばかりの家が燃えているのです 元夫の仕業でした。裁判で子どもの養育権を奪われた腹いせに、新築の家に火を放ったのです このシーンを観た時、クレア・ダンという人は只者ではないな、と思いました このシーンがなければ、「みんなで協力して造った家が完成しました。親娘3人は幸せに暮らしましたとさ。チャンチャン」で終わっていたでしょう サンドラは燃える家を見て泣き叫びますが、後日、元夫の母親から「息子の行為は許されない。息子は逮捕され収監された。あなたは自由の身だ」と言われ、また一からやり直す決心をします 苦労して建築した家は消失した。しかし最低限手放したくない娘たちは自分の手元に残った。娘たちがいれば生きる希望がある。サンドラはそう思ったに違いありません 私はこの映画を観て、「わたしは、ダニエル・ブレイク」のケン・ローチ監督を思い出しました 扱うテーマや映画化の手法がよく似ています

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鈴木優人 ✕ 福川伸陽 ✕ 東京交響楽団でモーツアルト「ホルン協奏曲第1番 & 第3番」、「交響曲第35番”ハフナー”」を聴く ~ 第46回モーツアルト・マチネ / 昨日は向田邦子の命日

2021年08月23日 07時16分17秒 | 日記

23日(月)。昨日、8月22日は作家・随筆家 向田邦子の没後40年の命日でした    昨日の日経朝刊 第1面のコラム「春秋」は彼女の手料理を紹介し、「昭和の庶民の食卓と人情を描いた名文家」を偲んでいます その一部をご紹介します

「ワカメを油でひすい色に炒め、かつお節をたっぷり投入。しょうゆで味付けする。美味である。ビールにも日本酒にもあう 体にも良さそうだ。実はこれ、相当いける口だった作家の向田邦子さんの随筆に登場する自慢の手料理だ いしだあゆみさんにも伝授した。後日、女優の美しい手の甲に小さな火ぶくれがあった コツはワカメの水気をよく切っておくこと。怠ると油がはねてやけどをしてしまう

向田和子編「向田邦子ベスト・エッセイ」(ちくま文庫)に収録の「『ままや』繁盛記」には、邦子さんが考えたレシピを含めた手料理を出す小料理屋「ままや」のことが書かれています 邦子さんは妹の和子さんを料理の修行に出し、赤坂に物件を見つけ「ままや」と名付け、和子さんに店の経営を任せます 「社長は妹で私は重役である、資金と口は出すが、手は出さない。黒幕兼ポン引き兼気の向いた時ゆくパートのホステスということにした」と書いています このエッセイは次のように閉じられています

「それにしても、夜原稿を書いていて店が気になって仕方がない。雨の日は特にそうである。ホステスとして出勤しようかなとウズウズする。ベンチを出たり入ったりする長嶋監督の気持がよく判るようになった」

名文です 残念ながら「ままや」はもうありません しかし、向田邦子さんの考えた手料理は作ることができます 今度、ワカメを材料にして酒のつまみを作ってみようと思います

なお、向田和子編「向田邦子ベスト・エッセイ」については、2020年4月22日付toraブログに感想を書いていますので、興味のある方はご覧ください

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で2417日目を迎え、新型コロナウイルス感染の急拡大を受け、三重県は21日、日本スポーツ協会と文部科学省に対し、三重とこわか国体(9月25日〜10月5日)の中止を申し入れたと発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     国体は2年連続で中止になっても 現政権はパラリンピックは予定通りやるだろうな

 

         

 

昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールで「第46回モーツアルト・マチネ」を聴きました プログラムはモーツアルト①歌劇「フィガロの結婚」序曲K.492,②ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K.447,③ホルン協奏曲第1番 ニ長調 K.412,④交響曲第35番 ニ長調 K.385 ”ハフナー”です 演奏は②と③のホルン独奏=福川伸陽、管弦楽=東京交響楽団、指揮=鈴木優人です

ミューザ川崎シンフォニーホールは、8月9日の「フェスタサマーミューザ・フィナーレ」以来 約2週間ぶりです。時の流れの速さを感じます

なお、神奈川県は現在、緊急事態宣言下にあるため入場制限(定員の50%)があり、当日券の販売は中止されています

 

     

 

オケは左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置。指揮台に代えてチェンバロが置かれています。コンマスは水谷晃です 弦楽奏者はコンマスを除く全員がマスクを着用しています トランペットの2人はナチュラル・トランペットを使用します。残念ながらホルンはナチュラルかどうか自席からは確認できません

1曲目は歌劇「フィガロの結婚」序曲K.492です この歌劇はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756‐1791)が1785年から翌86年にかけて作曲、1787年5月にウィーンのブルク劇場で初演されました

鈴木優人が”夏服”で登場、演奏に入りますが、彼は立ったままチェンバロを弾きながら指揮をします 明るく軽快な序曲を聴きながら、おそらくモーツアルトもこういうやり方でオペラを指揮したのではないかと思いました 確か 映画「アマデウス」でもそういうシーンがありました 清水太の固いマレットによるバロックティンパニがメリハリをつけて心地よく響きました

ところで、ン十年前のテレビ番組「題名のない音楽会」で、「オペラ序曲の曲当てクイズ」という企画がありました あるオペラの序曲の最初の音だけを聴いて、曲名を当てるのです 5人位いた回答者の中には東響コンマス(当時)の大谷康子さんもいましたが、回答者は全員首をひねっていました テレビを観ていた私は、「あっ、フィガロの結婚序曲だ」とすぐに解りました。なぜ解ったかというと、当時はまだクラシックを聴き始めてほんの数年で、オペラの序曲と言えばフィガロをはじめ限られた曲しか知らなかったからです 多くの序曲を知らないことが有利に働いたことになります。自慢にも何にもなりません

2曲目は「ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K.447」です モーツアルトは1783年以降、ウィーンでホルン協奏曲を4曲書いていますが、これらは彼と親交のあったホルン奏者ロイトゲープのために書かれました。第3番は1787年頃に作曲されたと言われています 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ロマンツェ:ラルゲット」、第3楽章「アレグロ」の3楽章から成ります

ホルン独奏の福川伸陽は今春までNHK交響楽団の首席ホルン奏者を務めていましたが、現在は東京音楽大学で准教授として教鞭をとるほか、フリーで活躍しています

福川が粋なベスト姿で登場します 新発売のCDジャケットの写真と同じスタイルとのことです。思わず「いよっ、ベストドレッサー」と叫びそうになりました 鈴木の指揮で第1楽章に入ります。譜面台には譜面が置かれていますが、彼は吹いている時は一切目もくれず、オケの演奏の時にチラ見するだけです。ほとんど頭に入っているのでしょう ホルンを吹いて、彼ほど安定感のある奏者はいないのではないか、と思われるほど技巧的には完璧で、音楽性も抜群です この楽章の終結部にはカデンツァがありますが、鈴木優人が作曲した「Sea Breeze Hayama」という曲だそうです 最初はホルン独奏で演奏しますが、途中から鈴木のチェンバロが軽やかに加わり、涼し気な音楽が奏でられました 牧歌的な第2楽章を経て、第3楽章に入りますが、愉悦感に満ちた軽快な演奏が展開します フィナーレで突然、福川がアドリブを仕掛けたのか、指揮の鈴木が慌てて両手で ✕ を表し、譜面通りに演奏を終結させました さながらモーツアルトとロイトゲープのようでした 鈴木も、福川も、コンマスも、オケのみんなも笑っていました これだから生演奏はやめられないのです

3曲目は「ホルン協奏曲第1番 ニ長調 K.412」です この曲は1791年(モーツアルトの死の年)に作曲されたと考えられています 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ロンド:アレグロ」の2楽章から成ります 通常の協奏曲は3楽章から成りますが、この曲が2楽章構成なのは、作曲途中でモーツアルトが死去したためではないかと考えられています

鈴木の指揮で演奏に入りますが、福川の演奏は洗練の極みです 鈴木 ✕ 東響のバックがしっかりソリストを支えました

 

     

 

最後の曲は「交響曲第35番 ニ長調 K.385 ”ハフナー”」です 1782年にザルツブルク市長の息子ジークムント・ハフナーが貴族に叙せられたことに伴い、お祝いのセレナードを作曲しましたが、1783年にウィーンでの演奏会のために新たな交響曲が必要となったことから、このセレナードから行進曲を削除し、フルートとクラリネットを追加して交響曲に改作しました それがこの第35番の交響曲です。ちなみに、上でいう「セレナード」とはハフナー家の結婚式の前夜祭のために1776年7月に書かれた「セレナード第7番『ハフナー』(管楽器のためのセレナードK.250)とは違います 第1楽章「アレグロ・コン・スピリート」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「メヌエット」、第4楽章「フィナーレ:プレスト」の4楽章から成ります

鈴木の指揮で第1楽章に入ります 冒頭の力強い第1主題では舞台右のバロックティンパニとナチュラルトランペットの強烈な演奏が効いていました 鈴木は軽快なテンポで躍動感に満ちた演奏をオケから引き出します 第2楽章では弦楽器のアンサンブルが美しく響きます 第3楽章ではオーボエの荒絵理子、ファゴットの福士マリコの演奏が光ります 第4楽章ではオーケストラの総力挙げての推進力に満ちたアグレッシブな演奏が展開、ここでもバロックティンパニの演奏が心地よいリズムを刻みました

鈴木 ✕ 東響は強弱の差を大きくつけたメリハリのある演奏を展開し、愉悦感に満ちたモーツアルトの世界を繰り広げ、満場の拍手を浴びました

【補足】

文中に「福川伸陽は今春までNHK交響楽団の首席ホルン奏者を務めていたが、現在は東京音楽大学で准教授として教鞭をとるほか、フリーで活躍している」と書きましたが、正確には「3月末にN響を退団、現在は特別契約の奏者としてN響の舞台に上がっている。今後はソリストとしての活動の幅を広げる」ということです(9月18日付日経夕刊「文化往来」による)

 

     

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荒井晴彦、森達也、白石和彌、井上純一共著「映画評論家への逆襲」を読む ~ SNSで書きたい放題書いているバカな観衆と、映画会社の宣伝部に成り下がった映画評論家への逆襲

2021年08月22日 07時11分04秒 | 日記

22日(日)。わが家に来てから今日で2416日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は20日、モスクワでドイツのメルケル首相と会談し、会談後の記者会見でアフガニスタン情勢に関連し、「他国から政治行動の規範を押し付けることはできない」と述べ、人権尊重などでイスラム主義組織タリバンへの圧力を強める米欧を牽制したと  いうニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     その発言は 政敵を毒殺しようとしたことに対する批判への牽制と受け止めておこう

 

         

 

荒井晴彦、森達也、白石和彌、井上純一共著「映画評論家への逆襲」(小学館新書)を読み終わりました 共著と書きましたが、本書は 彼らが「ミニシアター押しかけトーク隊『勝手にしゃべりやがれ!』」と称して、コロナ禍に苦しむミニシアターに押しかけて開いた座談会が元になっています

荒井晴彦は1947年東京都出身。季刊誌「映画芸術」編集・発行人、若松プロの助監督を経て、脚本家としてデビュー 「Wの悲劇」「遠雷」「火口のふたり」などを手掛ける

森達也は1956年広島県出身。立教大学在学中に映画サークルに所属し、テレビ番組制作会社を経てフリーとなる 「A」「A2」「FAKE」「i 新聞記者ドキュメント」などのドキュメンタリーを手掛ける

白石和彌は1974年北海道出身。若松孝二監督に師事し、助監督を務める 「孤狼の血」で大きな話題を呼ぶ。今月「孤狼の血 LEVEL2」が公開された

井上純一は1965年愛知県出身。大学入学と同時に若松孝二監督に師事し、助監督として活躍、「誰がために憲法はある」などを手掛ける

朝日の書評によると、「4人は名うてのウルサ型」らしく、本書のタイトル「映画評論家への逆襲」にしても、帯にある「勝手に観るな、この映画はこう観ろ」にしても、読者を意図的に挑発しています 彼らの主張を端的に言い表しているのは荒井氏の次の発言です

「相撲、野球で解説するのは元力士や選手だけど、映画だけはその辺のバカが観ただけで語っている ある時期から新聞も週刊誌でも けなす映画評が載らなくなった 今は映画評論家は映画会社の宣伝部みたいになって、当たり障りのない作品の紹介と誉めだけになっている

荒井氏の発言から考えると、本書のタイトルは「SNSで書きたい放題書いているバカな観衆と、映画会社の宣伝部に成り下がった映画評論家への逆襲」と言い換えることが出来るかもしれません。その辺のバカな観衆の一人として、いまこの本を紹介しています

 

     

 

「はじめに」で井上氏は次のように書いています

「2019年の映画公開本数は1278本。その内の70%、約900本が全映画館のスクリーンのわずか6%を占めるだけのミニシアターでしか公開されない それがなくなったら、福島や沖縄やミャンマーやシリアや香港の雨傘運動や東京裁判のドキュメンタリーも劇映画も観られなくなってしまう そういう意味で、ミニシアターは民主主義の多様性を担保する、表現の自由の最前線、と言っても決して大袈裟ではないだろう

こうしたことから、彼らはミニシアターを救うため「SAVE the  CINEMA」運動を始め、その一環として座談会が行われ、本書の出版に至っているわけです

本書は次の7章から構成されています

第1章「『仁義なき戦い』は国家と戦争を告発する」

第2章「ポン・ジュノ監督、あるいは表現の時代の奇しき関係について」

第3章「若松孝二監督の伝説と生身」

第4章「憲法映画論、そして加害と被害をめぐるドキュメンタリーの核心へ」

第5章「デニス・ホッパーとアメリカン・ニューシネマ、または自由の行方について」

第6章「高倉健VSイーストウッド、顔に刻まれた男の来歴」

第7章「評論家への逆襲、さらに映画の闘争は続く」

上記のうち第1章については、私はほとんどヤクザ映画は観ていないので歯が立たないというのが実感です 第3章については、若松孝二という監督が日本の映画界で大きな存在であったことを初めて知りました 本書で一番面白いのはやはり第7章でしょう 2020年の「第94回キネマ旬報ベスト・テン」の第1位に選ばれた「スパイの妻」(黒沢清監督)などが俎上にあげられていますが、荒井氏らからケチョンケチョンにけなされています この作品に限らず荒井氏が主張しているのは、ディテールをきちんと描くことの大切さです 彼が例に挙げているのは、富永昌敬監督「パンドラの匣」(2009年)です。原作は太宰治による1946年の小説ですが、当時はバスといえばボンネットバスしかなかったのに、映画では鼻ペチャバスが走っていた これについて映画プロデューサーに指摘したら「だって、ないんです」という答えが返ってきた 「じゃあ、撮るな!」ってんだよ、と荒井氏はいきり立ちます これについて荒井氏は「映画を舐めている監督と、それを許している客がいる」と指摘します

また、監督と脚本家との関係については、「世間の人は映画って監督と役者だけで作っていると思っている。セリフも役者が自分で考えて言ってるんだと」「まず脚本があってそれを監督が映画化するという関係にある。ハリウッドの映画のクレジットは『 WRITTEN  AND  DIRECTED  BY  誰それ 』となっている。しかし、日本の場合は映画監督・脚本家の順番になっている。これはおかしい」と、もっと脚本家を重要視すべきであると語っています

普段、何気なく映画を観ていますが、映画の製作サイドからの捉え方・考え方を読むと、映画の観かたが変わってくるような気がします 映画ファンにはたまらない1冊です。お薦めします

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