人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

原田慶太楼 ✕ オルガ・カーン ✕ 東京交響楽団でラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」、シベリウス「交響曲第7番」、藤倉大「Wavering World」を聴く

2024年03月31日 00時01分20秒 | 日記

31日(日)。月末を迎えたので、いつものように3月の3つの目標の実績をご報告します ①クラシック・コンサート=17回、②映画鑑賞=3本、③読書=9冊でした ①は本日の公演を含みます。②は腰痛悪化を防ぐため自粛したことにより大幅に減少しました。③は映画を観なかった分、多く読みました

ということで、わが家に来てから今日で3365日目を迎え、29日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、ロシアが同紙のエバン・ゲルシコビッチ記者を拘束してから1年に合わせ、1面で「彼の記事がここにあるべきだ」との見出しで中央部分に大きな空白を残し、抗議の意を示した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ジャーナリストを拘束するのは 強権主義的な野蛮国家と認めているようなものだ

 

         

 

昨夜、サントリーホールで東京交響楽団「第718回定期演奏会」を聴きました   プログラムは①藤倉大「Wavering World」、②シベリウス「交響曲第7番 ハ長調 作品105」、③ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18」です 演奏は③のピアノ独奏=オルガ・カーン、指揮=原田慶太楼です

 

     

 

オケは14型で、左奥にコントラバス、前に左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対抗配置をとります。コンマスは小林壱成です

1曲目は藤倉大「Wavering World」です この曲は藤倉大(ふじくら だい:1977~)がシアトル交響楽団からの依頼で、シベリウスの「交響曲第7番」と共演できる作品を求められたのに応じて作曲した作品です 本人のプログラム・ノートによると「シベリウスの創作背景を調査し、フィンランド神話と日本神話に興味を持った 特に天地分離のイメージが作曲のインスピレーションとなった」としています

原田の指揮で演奏に入りますが、まさにミステリアスな曲想で、タイトルの通り音楽が揺らいでいます 特に印象的だったのは中間部におけるティンパニの強打です 何かを模索しているようにゆっくりと連打されます ただ、シベリウスの第7番との繋がりということで言えば、全体として薄かったと思います

2曲目はシベリウス「交響曲第7番 ハ長調 作品105」です この曲はジャン・シベリウス(1865-1957)が1924年に作曲、同年3月25日に作曲者自身の指揮によりストックホルムで初演された最後の交響曲です 単一楽章ですが、アダージョ ~ ヴィヴァーチッシモ ~ アレグロ・モデラート ~ ヴィヴァーチェの4つの部分から成ります

原田の指揮で演奏に入ります この曲ではトロンボーン、ホルン、トランペットといった金管楽器が素晴らしい演奏を繰り広げていました また、弦楽器もヴィオラを中心に渾身の演奏を展開しました

 

     

 

プログラム後半はラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 作品18」です この曲はセルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)が1900年に作曲、1901年にモスクワで初演されました 第1楽章「モデラート」、第2楽章「アダージョ・ソステヌート」、第3楽章「アレグロ・スケルツァンド」の3楽章から成ります よく知られているように、ラフマニノフは1897年の「交響曲第1番」初演の失敗により大スランプに陥っていましたが、神経科医ニコライ・ダーリ博士の暗示療法により作曲の意欲を取り戻し、1900年春に作曲したと言われています これについては高橋健一郎氏が「プログラム・ノート」に「当時、ダーリ博士の家に滞在していた女性エレーナにラフマニノフが恋心を抱いたとされ、むしろそれが曲のインスピレーションの源になったという説も存在する」と書いています 「事件の裏に女あり」だけでなく「作曲の裏に女性あり」といったところでしょうか このエレーナという女性、本当にラフマニノフの作曲意欲を引き出したとすれば 偉えな

ピアノ独奏のオルガ・カーンは1975年ロシア生まれ。第1回ラフマニノフ国際ピアノコンクールで第1位、第11回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール優勝 2017年よりマンハッタン音楽院教授を務め、オルガ・カーン国際ピアノ・コンクールの芸術監督も務める

協奏曲のためオケが12型に縮小します 金髪で赤の勝負衣装で登場したオルガ・カーンがピアノに向かい、彼女のソロで第1楽章に入ります ロシアの教会の鐘の音を模した和音が徐々に大きくなって会場に響き渡ります それからは分厚い弦楽セクションのサポートのもとロマンティシズムの極致をいく演奏が繰り広げられます 第2楽章では竹山愛のフルート、エマニュエル・ヌヴーのクラリネットがソリストのリリカルな演奏に華を添えます ここまでは特に大きな特徴のない演奏でしたが、第3楽章に入るとソリスト、指揮者 ✕ オケともに弾けました テンポが目まぐるしく変わり、ソリストとオケとの”競争曲”が展開します 原田が仕掛け、はたまたオルガが仕掛け、といったドラマテックな演奏です ソリストの力演とオケの総力を挙げた渾身の演奏によるフィナーレは圧巻でした

満場の拍手とブラボーが飛び交い、カーテンコールが繰り返されました オルガ・カーンはアンコールにプロコフィエフ「4つの練習曲」より「第4番」を超絶技巧で演奏、再び大きな拍手に包まれました すると、原田が彼女に「フィナーレもう一回やろうぜ」と半ば強引に促し、彼女が「えっ、マジ」と迷いながらも椅子に座り、原田の指揮で、今演奏したばかりのラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」より「第3楽章」のフィナーレをアグレッシブに演奏し、再び聴衆からヤンヤ ヤンヤの喝さいを浴び、会場の温度が2度上昇しました(個人の感想です)

こういうところは、”エンターテイナー”原田慶太楼を感じさせます

 

     

     

 

この日は開演前にサントリーホール前「カラヤン広場」で 桜が迎えてくれました 春ですね

 

     

 

     

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遅刻して 東京・春・音楽祭「ショスタコーヴィチの室内楽」を聴く ~ ヴァイオリン・ソナタ、ヴィオラ・ソナタ、チェロ・ソナタ:周防亮介、田原綾子、上野通明、北村朋幹

2024年03月30日 00時05分47秒 | 日記

30日(土)。わが家に来てから今日で3364日目を迎え、トランプ前米大統領が、愛国者向けに趣向を凝らした特別版の聖書を59.99ドル(約9100円)で公式販売していることに対し、「冒涜的」「異端」「限りなく侮辱的」といった声が寄せられている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプほど聖書から遠い存在もない どうせ売り上げは裁判費用に使うんだろうな

 

         

 

昨日、夕食に「鶏肉と白菜の蒸し煮」「生野菜サラダ」「大根の味噌汁」を作りました 「鶏肉~」は新聞の「料理メモ」を参考に初めて作りましたが、結構美味しかったです

 

     

 

         

 

昨夜、東京文化会館小ホールで「東京・春・音楽祭2024」参加公演「ショスタコーヴィチの室内楽」を聴きました プログラムはショスタコーヴィチ①チェロ・ソナタ  ニ短調 作品40,②ヴァイオリン・ソナタ  ト長調 作品134,③ヴィオラ・ソナタ  ハ長調 作品147です 演奏は①のチェロ独奏=上野通明、②のヴァイオリン独奏=周防亮介、③のヴィオラ独奏=田原綾子、①②③のピアノ演奏=北村朋幹です

 

     

 

さて、いつものように開演時間(19時)の30分前には会場に到着するようにJR巣鴨駅に18時ごろ着いたのですが、何と山手線が止まっています 車内アナウンスによると「恵比寿駅と目黒駅の間で異常な音が発生したため安全確認をしているので、しばらく車内で待ってほしい」とのことでした せいぜい20分程度だろうと思っていたら、結果的に1時間も車内で待たされることになりました 18時の時点で山手線を諦めて、地下鉄三田線で春日に出て、大江戸線に乗り換えて上野御徒町まで行き、歩いて上野の山を登り東京文化会館に行けば19時には余裕で間に合ったはずです しかし、実際には何分後に復旧するのかまったく分からないので判断が非常に困難です 結局、山手線が動いたのは19時=コンサートの開演時間でした JR上野駅に着いたのが19時16分。急いで会場に行くと、同じような遅刻組が2人いて、レセプショニストの女性が3人一緒に会場の上手側後方の入口に案内してくれました 中からチェロとピアノの演奏が聴こえてきます 当然1曲目「チェロ・ソナタ」が始まっています。演奏中なので、私はてっきり楽章と楽章の間に中に入れてくれるのかと思っていたら、なんと演奏の最中に会場内に案内され、最後方席に座るように言われました。演奏は第1楽章の途中でした 演奏終了後、2曲目の前に自席E列29番に移りましたが、その時、会場下手側の入口から20人以上の遅刻組がドドーっと入ってきました 彼らは1曲が終わるまで待たされたことになります 休憩時間にレセプショニストに訊いたら、山手線の遅延情報があったため開演時間を5分遅らせたとのことでした それにしても、演奏の最中に客を入れるのはどんなものでしょうか こちらは大変助かりましたが、すでに会場内で聴いている人たちにとってみれば、トンデモナイことではないか、と思うのですが

ということで、1曲目はショスタコーヴィチ「チェロ・ソナタ  ニ短調 作品40」です この曲はドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が1934年に作曲、同年レニングラードで初演されました 第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アレグロ」、第3楽章「ラルゴ」、第4楽章「アレグロ」の4楽章から成ります

チェロ独奏の上野通明(うえの みちあき)は1995年パラグアイ生まれ。2014年第21回ブラームス国際コンクール・チェロ部門第1位、2018年第11回ルトスワフスキ国際コンクール・チェロ部門第2位、2021年ジュネーブ国際音楽コンクール・チェロ部門優勝

ピアノの北村朋幹(きたむら ともき)は愛知県生まれ。シドニー国際ピアノ・コンクール第5位、リーズ国際ピアノ・コンクール第5位、ボン・テレコム・ベートーヴェン国際ピアノ・コンクール第2位

大好きな第2楽章「アレグロ」が聴きたかったので、間に合って良かったです 北村はベーゼンドルファーを弾きます 上野のチェロと北村のピアノの丁々発止のやり取りは、まるで強い意志を持った演奏家同士のバトルです この激しい演奏があってこそ、次の第3楽章「ラルゴ」の静謐な演奏が生きるのだと思います

2曲目はショスタコーヴィチ「ヴァイオリン・ソナタ  ト長調 作品134」です この曲は1968年に作曲、翌69年にモスクワで初演されました 第1楽章「アンダンテ」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「ラルゴ ~ アンダンテ」の3楽章から成ります

ヴァイオリン独奏の周防亮介(すほう りょうすけ)は1995年京都府生まれ。2016年ヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール入賞及び審査員特別賞を受賞

2人の演奏で静謐な第1楽章が開始されます。この曲でも第2楽章「アレグレット」がテンポの速い激しい音楽です 周防と北村のやり取りを聴いていると、「アレグレット」は「荒れ狂レット」ではないかと思ってしまうほどアグレッシブな演奏が展開します そして、第3楽章では静謐な世界が繰り広げられます

 

     

 

プログラム後半はショスタコーヴィチ「ヴィオラ・ソナタ  ハ長調 作品147」です この曲は1975年に作曲、同年レニングラードで初演されました 第1楽章「モデラート」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「アダージョ」の3楽章から成ります

ヴィオラ独奏の田原綾子(たはら あやこ)は1994年神奈川県生まれ。第11回東京音楽コンクール弦楽部門第1位、第9回ルーマニア国際音楽コンクール弦楽部門第1位

第1楽章では田原のエモーショナルな演奏が光ります 第2楽章ではショスタコーヴィチらしい諧謔的な世界が描かれます そして、この曲でも第3楽章は内省的で静謐な音楽が繰り広げられます

最後にこの日の出演者が勢ぞろいし、満場の拍手を浴びました 素晴らしい演奏でした

 

     

     

 

この日は、開演前から想定外のアクシデントにより遅刻してしまいましたが、ライブ・コンサートは事前・事後を含めて何が起こるか分かりません 自分に落ち度はないのに不利益を被ることは往々にしてあります 開演30分前までに会場に着くようにしているのを、1時間前までに着くようにしたとしても、想定外のアクシデントが起これば何の意味もありません まあ、人生なんてそんなもの、と思うしかないのかもしれません

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小澤征爾・村上春樹 著「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を読む ~ グレン・グールド、バーンスタイン、カラヤン、オーマンディの思い出とベートーヴェン、ブラームス、マーラーについて語る

2024年03月29日 00時01分02秒 | 日記

29日(金)。今日から3日連続コンサートなので、昨日は腰痛悪化を防ぐため家でベッドに寝転んで読書をして過ごしました

ということで、わが家に来てから今日で3363日目を迎え、小林製薬(大阪市)製の紅麹原料を含むサプリメントが原因とみられる健康被害が相次いでいる問題で、同社が本社を置く大阪市は27日、同社に対し、食品衛生法に基づいて紅麹成分を含む3製品の回収を命じたと発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     不健康の袋小路に迷い込む前に  紅麹原料の健康食品を摂取するのをやめましょう 

 

         

 

昨日、夕食に「サーロインステーキ」を焼きました あとは「舞茸の味噌汁」です(写ってませんが)。たまにはステーキもいいですね

 

     

 

         

 

小澤征爾・村上春樹 著「小澤征爾さんと、音楽について話をする」(新潮文庫)を読み終わりました 本書は平成23年(2011年)11月に新潮社より刊行され、平成26年7月に文庫化されるにあたり、新たに「厚木からの長い道のり」を加えたものです

 

     

 

本書は次のように構成されています

始めに ~ 小澤征爾さんと過ごした午後のひととき 村上春樹

第1回「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番をめぐって」

第2回「カーネギーホールのブラームス」

第3回「1960年代に起こったこと」

第4回「グスタフ・マーラーの音楽をめぐって」

第5回「オペラは楽しい」

第6回「決まった教え方があるわけじゃありません。その場その場で考えながらやっているんです」

あとがきです 小澤征爾

厚木からの長い道のり~小澤征爾が大西順子と共演した「ラプソディ―・イン・ブルー」 村上春樹

なお、各回のインタビューの間には「インターリュード」という短文が挟まれています

第1回の後「レコード・マニアについて」

第2回の後「文章と音楽の関係」

第3回の後「ユージン・オーマンディのタクト」

第4回の後「シカゴ・ブルースから森進一まで」

第5回の後「スイスの小さな町で」

「始めに ~ 小澤征爾さんと過ごした午後のひととき」の中で村上氏が語っている通り、小澤氏は2009年12月に食道がんが発見され切除手術を行ったため、音楽活動が大幅に制限されました 本書に収録されているインタビューは、療養とリハビリテーションが生活の中心となっていた2010年11月から翌11年7月にかけて、東京、ホノルル、スイスなどで、機会を捉えて行われたものです 小澤氏の療養生活がなければ、超多忙な小澤氏のインタビューは実現しなかっただろうし、小澤氏が過去の出来事を詳細に思い出すこともなかっただろうと思われます

本書の内容についてご紹介したいことは山ほどありますが、いちいち紹介していたらキリがない(そんなに 暇ではない)ので、私が興味を引かれた点に絞ってご紹介することにします

第1回「ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番をめぐって」では、最初にブラームスの「ピアノ協奏曲第1番」の演奏の話が出てきます これは1962年4月6日に開かれたグレン・グールドとレナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルの演奏会で、同曲を演奏する前にバーンスタインが聴衆の前に立って、「これは私が本来やりたいスタイルの演奏ではない ミスター・グールドの意思でこうなった」という弁明みたいなスピーチをしたという話です この時、小澤氏はレニー(バーンスタイン)のアシスタント指揮者として、その場に居合わせたそうです この時、彼は英語がよく聞き取れず、周囲の者に尋ねて大体のことが分かったとのことで、レニーのスピーチについて、小澤氏は「演奏の前にこんなことを言うのはあんまりよろしくないんじゃないかなと、その時僕は思いました。今もそう思っていますけど」と発言しています この間、二人はそのライブレコードを聴きながら会話をしていますが、第1楽章のグールドの演奏を聴いて、小澤氏は「異様に遅いんだけど、グールドがこう弾いていると、納得性がありますよね。ぜんぜん悪い感じがしない」と語っています

その時のスピーチと演奏はライブでCD化されています

 

     

     

 

また、カラヤンとバーンスタインのリハーサルのやり方の違いについて、小澤氏は興味深い発言をしています

「カラヤン先生は他人の言うことなんて聞きません もし自分が求めている音と、オーケストラの出す音とが違っていたら、何があろうとオーケストラの方が悪い。望む音が出てくるまで何度でもやらせる レニーの場合はね、練習中にみんながおしゃべりをするんです それは良くないなと僕はずっと思っていました だからボストンでは、練習中に誰かがおしゃべりすると、すっとそちらを見ていました すると私語は止みます でもレニーはそれをしなかった

第4回「グスタフ・マーラーの音楽をめぐって」の中では、暗譜について小澤氏が次のように語っています

「(暗譜で指揮をすることは)大事なことじゃないです。暗譜するから偉いとか、暗譜しないから駄目だとか、そんなことはまったくない ただ暗譜してていいことは、演奏者とアイコンタクトがとれることですね。とくにオペラの場合なんか、歌手を見ながら指揮して、目と目で了解がとれる

早朝に起きて集中して楽譜を勉強し、それを頭に叩き込んで、本番では暗譜で指揮をするーというのが小澤流の指揮法だと思っていましたが、必ずしもそういうケースばかりではないようです しかし、実際に彼の演奏に接した経験から言うと、オペラを除き暗譜で指揮するケースが多かったと思います

このインタビューは村上氏が小澤氏に質問をする形で進みますが、時に村上氏が主役になることもあります 第2回の後の「インターリュード2 文章と音楽の関係」で、村上氏は次のように語っています

「僕は文章を書く方法というか、書き方みたいなのは誰にも教わらなかったし、とくに勉強もしていません で、何から書き方を学んだかというと、音楽から学んだんです それで、いちばん何が大事かっていうと、リズムですよね 文章にリズムがないと、そんなもの誰も読まないんです。前に前にと読み手を送っていく内在的な律動感というか・・・。機械のマニュアルブックって、読むのがわりに苦痛ですよね。あれがリズムのない文章のひとつの典型です リズムのない文章を書く人には、文章家としての資質はあまりないと思う

たぶん、これは小説だけに限らないんでしょうね ブログの文章も同じだと思います

「天下の小澤征爾も 若かりし頃はこんなことをしでかしたのか」と思わず笑ってしまったのは、第3回の後の「インターリュード3 ユージン・オーマンディのタクト」です

カラヤンやバーンスタインばかりでなく、フィラデルフィア管弦楽団の常任指揮者ユージン・オーマンディも小澤氏のことを気に入ってくれて、同オケの客演指揮者として何度も招聘してくれたそうです 当時小澤氏はトロント響のシェフをしていましたが、給料が安かったそうで、ギャラの高いフィラデルフィア管に呼ばれるのは有難かったといいます 小澤氏は概要次のように語っています

「オーマンディは親切で、オフィスを自由に使わせてくれた 愛用のタクトを1本譲ってくれたが、オーダーメイドで使いやすかった 当時僕はそんなにお金がないからタクトのオーダーメイドなんてできなかった 彼のオフィスの机の抽斗を開けてみたら、その同じタクトが中にずらっと並んで入っていた。それで、少しくらいなくなってもわからないだろうと思って、黙って3本持ってきちゃった でもそれがバレちゃったんだよ(笑)。オーマンディの秘書をしている、すごい怖いおばちゃんみたいのがいて、数をかぞえていたのかな、『あんた、とったでしょう?』って後で僕を問いつめるから、『はい、すみません。もっていきました』と謝って(笑)」

これに対して、村上氏は次のように茶化しています

「オーマンディさんはあとでみんなに言い触らして、大笑いしていたんじゃないでしょうか オザワは昔、俺の机の抽斗からタクトを3本盗んだって(笑)」

私の想像では、ユージン・オーマンディは「小澤氏がタクトをくすねた日は月曜日だった」と考えたのではないかと思います

友人O(小澤)Monday・・・おあとがよろしいようで(よろしくない‼ )

誰にも受けないギャグが出たところで、この辺にしておきますが、本書を読むと、いかに小澤征爾という人がピュアな心の持ち主で、世界中の一流の音楽家から愛され、そのためにどれほど陰で努力をしていたか、そして如何に熱心に後進の指導に当たってきたかが分かります クラシック好きにとって、これほど面白い本はありません 強くお薦めします

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マレク・ヤノフスキ ✕ スチュアート・スケルトン ✕ ビルギッテ・クリステンセン ✕ NHK交響楽団による「トリスタンとイゾルデ」を聴く ~ 東京春祭ワーグナー・シリーズVol.15

2024年03月28日 00時03分14秒 | 日記

28日(木)。東京都交響楽団の公式サイトによると、東京交響楽団のコンサートマスターを2013年4月から2023年3月まで務めた水谷晃氏が、4月1日に都響のコンサートマスターに就任します これにより、都響のコンマスは矢部達哉、山本友重との3人態勢となります 水谷氏には心機一転頑張ってほしいと思います

ということで、わが家に来てから今日で3362日目を迎え、トランプ前米大統領が立ち上げた新興メディア企業、トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループは26日、特別買収目的会社との合併を通じて米ナスダック市場に株式を上場したが、初日終値から算出した時価総額は約80億ドル(約1.2兆円)となり、6割の株式を保有する前大統領の持ち分の資産価値は50億ドル規模になるとみられる  というニュースを見て感想を述べモコタロです

 

     

     新会社の資産は 提訴されてる4つの裁判で負けた際の 罰金に充てるつもりだろう

 

  昨日は午後3時からワーグナーの楽劇を5時間近く聴くため、娘の了解をとって夕食作りはお休みしました  

 

         

 

昨日、東京文化会館大ホールで東京春祭ワーグナー・シリーズVol.15「トリスタンとイゾルデ」(演奏会形式)を観ました 出演はトリスタン=スチュアート・スケルトン、イゾルデ=ビルギッテ・クリステンセン、マルケ王=フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ、クルヴェナール=マルクス・アイヒェ、メロート=甲斐栄次郎、ブランゲーネ=ルクサンドラ・ドノーセほか。管弦楽=NHK交響楽団、合唱=東京オペラシンガーズ、指揮=マレク・ヤノフスキ、音楽コーチ=トーマス・ラウスマンです

 

     

 

「トリスタンとイゾルデ」はリヒャルト・ワーグナー(1813-1883)が中世の悲恋物語トリスタン伝説に基づき、1857年から59年にかけて作曲した全3幕から成る楽劇です

コーンウォールのマルケ王の甥、騎士トリスタンは、アイルランドの王女イゾルデを王の妃として迎えに行く かつて愛し合ったことのある二人は毒薬で心中を図るが、侍女ブランゲーネの手により毒薬は愛の媚薬にすり替えられていた 二人の愛は燃え上がり逢瀬を重ねるが、密会の場面を王に見つかり、トリスタンは王の家臣メロートの剣により重傷を負う トリスタンは故郷の城でイゾルデを待ち、やっと到着した彼女の腕の中で息を引き取る イゾルデもまた彼を追い愛の死を迎える

 

     

 

自席は1階R5列2番、右サイド左から2つ目です 5列と言ってもすぐ前は通路で、見通しの良い席です。会場は5階席までかなり埋まっています

オケは14型で左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは外人の客演で、隣は郷古廉です

オケの後方に東京オペラシンガーズの男声コーラス40人がスタンバイします

演奏会形式なので特別な舞台づくりはありません 歌手陣は左右の舞台袖から中央に移動し譜面台の前で歌い、歌い終わると引き上げていきます

第1幕では下手でイゾルデ、上手でトリスタン、ブランゲーネが歌います

ヤノフスキの指揮で前奏曲が”トリスタン和音”で開始されます N響から出てくる音は重心の低いドイツ的などっしりした音です

トリスタン役のスチュアート・スケルトンはオーストラリア・シドニー生まれのヘルデンテノールです 米メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座、バイエルン国立歌劇場など世界各国の歌劇場でワーグナー等を歌っています 外観は巨漢ですが、声量豊富で高音部が良く伸び、騎士トリスタンに相応しい堂々たる歌唱で聴衆を魅了しました

イゾルデ役のビルギッテ・クリステンセンはノルウェー生まれのソプラノです オスロの国立音楽アカデミーで学び、チューリヒ歌劇場、ベルリン国立歌劇場などでモーツアルト、ヴェルディなどを歌っています 美しくも強靭な歌唱で、どんなに強く歌っても決して絶叫調になりません 第1幕と第2幕はほとんど出ずっぱりでしたが、手元に水のボトルを用意することもなく、第3幕のラスト「愛の死」まで強く美しいイゾルデを歌い上げました

マルケ王役のフランツ=ヨゼフ・ゼーリヒドイツ生まれのバスです ケルン音楽舞踏大学で宗教音楽を学び、バイエルン国立歌劇場、ウィーン国立歌劇場などでワーグナーを中心に歌っています 第2幕からの登場ですが、よく声の通る見事な艶のあるバスで、王としての存在感を示しました

クルヴェナール役のマルクス・アイヒェはドイツ生まれのバリトンです シュトゥットガルトやカールスルーエの音楽大学で学び、ウィーン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場と専属契約を結び、ワーグナーなどを歌っています 春祭ワーグナーの常連ですが、迫力のある歌唱で説得力がありました

ブランゲーネ役のルクサンドラ・ドノーセはルーマニア生まれのメゾ・ソプラノです 特にモーツアルトとフランスのオペラに定評があり、近年はドイツ・オーストリア系のドラマティックな役柄にも取り組んでいます 声に力があり美しい歌唱で聴衆を魅了しました

第1幕で特筆すべきは東京オペラシンガーズの力強いコーラスです 会場割れんばかりの大迫力で迫ってきました

全体を通して素晴らしかったのはヤノフスキ指揮NHK交響楽団の渾身の演奏です 通常のオペラではオケがピットに入るため音が薄く籠りがちになりますが、演奏会形式のためオケがステージ上に乗っているため、音楽がストレートに押し寄せてきます 特に木管楽器群が素晴らしい演奏を展開しました。第3幕冒頭では池田昭子のイングリッシュホルンによる「嘆きの調べ」が、胸を締め付けるような悲しみに満ちた演奏で素晴らしかったです

 

     

 

満場の拍手とブラボーの嵐が吹き荒れました 世界レベルの素晴らしい演奏でした カーテンコール時の写メが許されているので、記念に撮影しました

 

     

 

イゾルデ役のビルギッテ・クリステンセンです

 

     

 

マルケ王役のヨゼフ・ゼーリヒです

 

     

 

ブランゲーネ役のルクサンドラ・ドノーセです

 

     

 

クルヴェナール役のマルクス・アイヒェです

 

     

 

なぜかトリスタン役のスチュアート・スケルトンの撮影時にシャッターが切れなかったので、手でハートマークを作っているお茶目なヤノフスキと一緒のシーン(右から2人目)です

 

     

 

イングリッシュホルンを吹いた池田昭子さんです 右の奏者が持っているのは第3幕で船の到着を告げる「ホルツトランペット」か

 

     

 

最後は1階席総立ちのスタンディング・オベーションです

 

     

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東京春祭チェンバー・オーケストラ ✕ 高木綾子でモーツアルト「フルート協奏曲第2番」「交響曲第41番”ジュピター”」他を聴く / フェスタサマーミューザ2024 ⇒ ラインナップ決まる

2024年03月27日 00時19分56秒 | 日記

27日(水)。ミューザ川崎シンフォニーホールの公式サイトに「フェスタサマーミューザ2024」のラインナップが発表されました オーケストラの公演を中心にご紹介します

7月27日(土)15時開演 東京交響楽団(オープニング)指揮=ジョナサン・ノット ①チャイコフスキー「交響曲第2番」、②同「第6番」

7月30日(火)18時半開演 洗足学園音楽大学(バレエ公演)指揮=秋山和慶 ①グラズノフ:バレエ「ライモンダ」、②同「四季」

7月31日(水)19時開演 読売日響 指揮=沖澤のどか、ピアノ=阪田知樹 ①リスト「ピアノ協奏曲第2番」、②サン=サーンス「交響曲第3番」他

8月1日(木)19時開演 東京都交響楽団 指揮=小泉和裕 ①モーツアルト「交響曲第40番」、②ブラームス「交響曲第1番」

8月2日(金)15時開演 新日本フィル 指揮=井上道義 ①マーラー「交響曲第7番」※トーク付

8月3日(土)19時開演 真夏のバッハ

8月4日(日)16時開演 NHK交響楽団 指揮=沼尻竜典、ヴァイオリン=戸田弥生 ①ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」、②同「ピアノ四重奏曲」(管弦楽版)

8月5日(月)19時開演 兵庫芸術文化センター管弦楽団 指揮=佐渡裕 ①シェーンベルク「交響詩:ペレアスとメリザンド」他

8月7日(水)18時半開演 昭和音楽大学 指揮=梅田俊明 ①モーツアルト「交響曲第35番」、②ブルックナー「交響曲第7番」

8月8日(木)15時開演 神奈川フィル 指揮=園田隆一郎 ソプラノ=木下美穂子 ①團伊玖磨「夕鶴」から他

8月9日(金)15時開演 日本フィル 指揮=広上淳一、ヴァイオリン=服部百音 ①メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」、チャイコフスキー「交響曲第5番」

8月10日(土)15時開演 東京フィル 指揮=角田鋼亮、チェロ=北村陽 ①ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」、②同「交響曲第9番」

8月11日(日)15時開演 東京シティ・フィル 指揮=藤岡幸夫、ピアノ=務川慧悟 ①ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」、②ホルスト「惑星」

8月12日(月)15時開演 東京交響楽団(フィナーレ)指揮=原田慶太楼、ヴァイオリン=川久保賜紀 ①伊福部昭「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲」他

なお、チケットの発売は、①友の会先行発売(セット券)=4月12日(金)10時から、②友の会先行発売(1回券)=4月14日(日)10時から、③Web先行発売(セット券・1回券)=4月17日(水)10時から、④一般発売(セット券・1回券)=4月23日(火)10時からーとなっています

各公演のチケット料金、セットの種類と内容、プログラムの詳細などについてはミューザ川崎シンフォニーホールの公式サイトでご確認ください

ということで、わが家に来てから今日で3361日目を迎え、ニューヨーク州の裁判所は25日、トランプ前米大統領が一族企業の不正で巨額の支払いを命じられていた民事裁判の判決について、トランプ氏が必要な保証金を集めることは事実上不可能だとし減額を求めたのに対し、控訴に必要な保証金を1臆7500万ドル(約264臆円)と従来の額から2臆7900万ドル減額した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     流石は”ディール”のトランプだ 保証金をマケさせるんだもんな ナニワ商人顔負けだ

 

         

 

昨日、夕食に「タラのアクアパッツア」「生野菜とアボカドのサラダ」「ワカメの味噌汁」を作り、鯵の刺身と一緒にいただきました 魚も食べないといけませんね。美味しかったです

 

     

 

         

 

昨夜、東京文化会館小ホールで「東京・春・音楽祭2024」参加公演「東京春祭チェンバー・オーケストラ 」公演を聴きました    プログラムは①グリーグ:組曲「ホルベアの時代より」作品40,②モーツアルト「フルート協奏曲第2番 ニ長調 K.314」、③同「交響曲第41番 ハ長調 K.551 ”ジュピター”」です   出演は②のフルート独奏=高木綾子。ヴァイオリン=堀正文、青木尚佳、枝並千花、北田千尋、城戸かれん、戸原直、外園萌香、荒井章乃、武田桃子、水野琴音、ヴィオラ=佐々木亮、高梨瑞紀、柘植藍子、チェロ=佐藤晴真、河野明敏、藤村俊介、コントラバス=赤池光治、オーボエ=古部賢一、沖響子、ファゴット=水谷上総、佐藤由起、ホルン=日橋辰朗、山岸リオ、トランペット=佐藤友紀、尹千浩、ティンパニ=清水太です

 

     

 

オケは6型で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバスという並び。指揮者とコンマスを兼ねるリーダーは堀正文(元・N響コンマス)、隣は青木尚佳(ミュンヘン・フィルのコンマス)です

1曲目はグリーグ:組曲「ホルベアの時代より」作品40です    この曲はエドワルド・グリーグ(1843-1907)がL.ホルベアの生誕200年を記念して1884年から85年にかけて作曲しました    第1曲「前奏曲」、第2曲「サラバンド」、第3曲「ガヴォット」、第4曲「アリア」、第5曲「リゴードン」の5曲から成ります

この曲は弦楽だけの演奏ですが、堀リーダーのリードで緻密なアンサンブルが展開します 特に印象に残ったのは第4曲「エア」で、哀しみに満ちた透明感のある弦楽合奏が心に沁みました また最後の「リゴードン」では、ピッツィカートに乗せて演奏される堀コンマスとヴィオラ・トップの佐々木との掛け合いが楽しく聴けました

2曲目はモーツアルト「フルート協奏曲第2番ニ長調K.314」です    この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)がフランスのド・ジャンの依頼により1778年に作曲しましたが、自身の「オーボエ協奏曲」を編曲した作品です    第1楽章「アレグロ・アぺルト」、第2楽章「アンダンテ・マ・ノン・トロッポ」、第3楽章「ロンド:アレグロ」の3楽章から成ります

高木綾子が黒を基調とする淡いピンクの花模様の春めいた衣装で登場、堀のリードで第1楽章に入ります この曲は私のクラシック音楽入門曲なので、冒頭の演奏を聴くとワクワクします 素晴らしいテンポ感です 高木の明るく快活なフルートが入ってきます 終盤のカデンツァは見事でした よくあれだけ息が続くものだと感心します 私はバカさあふれる若い頃、ヤマハ音楽教室で1年間だけフルートを習いましたが、とてもじゃないけど、あんな完璧な演奏は出来るものではありません 第2楽章でも、高木は長いフレーズを何の苦もなく歌い上げます そして第3楽章では愉悦感に満ちた天翔ける演奏を繰り広げ、堀リーダー率いる小編成オケがピタリとつけます テンポ感の良い素晴らしい演奏でした

 

     

 

プログラム後半は「交響曲第41番ハ長調K.551”ジュピター”」です    この曲は第39番、第40番とともに1788年に作曲されました   第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」、第3楽章「メヌエット:アレグレット ~ トリオ」、第4楽章「モルト・アレグロ」の4楽章から成ります

堀リーダーのリードにより第1楽章が開始されます 弦楽器が小編成であるせいか、後方の管楽器が良く聴こえます とくに水谷上総(N響)のファゴットが奏でるフレーズが良く聴こえてきます 前半でソリストを務めた高木綾子がフルートを担当していて、その巧さが際立っています 元・新日本フィル首席の古部賢一のオーボエも良く歌います 第2楽章では弦楽セクションのアンサンブルが美しい 日橋辰朗(読響首席)のホルンも素晴らしい 第3楽章はフーガ風のメヌエットが心地よく響きます 第4楽章では弦楽セクションを中心とするフーガの演奏が推進力に満ちて素晴らしい 清水太(東響)のティンパニが心地よいリズムを与え、オケ総力を挙げて輝くフィナーレを飾りました

会場いっぱいの拍手に、モーツアルト「交響曲第40番ト短調K.550」から第3楽章「メヌエット」をデモーニッシュに演奏、再び大きな拍手を浴びました

スマホによるカーテンコールの写メが許されているので、記念に撮影しておきました

 

     

     

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熱殺蜂球 ~ 数多くの二ホンミツバチが一斉に1匹のスズメバチに襲いかかり蒸し殺す / 岩淵悦太郎編著「悪文 ~ 伝わる文章の作法」を読む~悪文をさけるための50か条

2024年03月26日 00時08分10秒 | 日記

26日(火)。昨日の日経朝刊オピニオン欄のコラムで同紙論説フェローの芦川洋一氏が「政治の2024年問題を解く  野党が大連合に動くときだ」という論考を寄せていました 乱暴なまでに超略すると次の通りです

「派閥の政治資金パーティー問題をめぐり右往左往、自民党政治の方向蛇が失われている 野党各党ともチャンス到来と意気込んでいるものの、現状では自民党にとって代わるだけの力がない 自民党に危機感を抱かせ、政治に緊張感を持たせるには、次の衆院選で敗北、下野するかもしれないと思わせる状況をつくるしかない かつての8党派による細川連立政権も政治改革だけでつながっていた 自民・社会・新党さきがけの3党による村山連立政権は、水と油の自社が組んだ理屈も何もない政権だった よしあしは別として、政権を交代させようとすればそんな荒技も時には必要になる 以前、野田佳彦元首相から聞いたミツバチとスズメバチの話を思い出した ミツバチは天敵である大きな体のスズメバチに、1対1なら食べられてしまう。ところが二ホンミツバチには、スズメバチから身を守るための特有の行動がある 『熱殺蜂球』というそうだ。数多くの二ホンミツバチが一斉に1匹のスズメバチに襲いかかり、胸の筋肉をふるわせて熱をおこし、集団でスズメバチを蒸し殺す 蜂球の内部は47~48度になる。致死温度はスズメバチが45度。二ホンミツバチは50度近く。最初にかみ殺される十数匹以外は生き残る 野党が二ホンミツバチになりひとつの塊となって、自公スズメバチを追い込む熱殺蜂球に出るチャンスのはずだ。野党が大同団結に動けば政治は一気に引き締まり、動く

さて、現在の野党各党に 熱殺蜂球となって自民党に闘いを挑む意思と情熱はあるだろうか

ということで、わが家に来てから今日で3360日目を迎え、民事訴訟の保証金などをめぐりドナルド・トランプ前米大統領が資金繰りで窮地に立たされており、トランプが保有する不動産が差し押さえられる可能性がある  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     差し押さえられる不動産を持っているとは さすがはトランプだ いよっ元大統領!

 

         

 

昨日、夕食に「ビーフカレー」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました ビーフはいつもの牛バラ肉を使いましたが、とても美味しかったです

 

     

 

         

 

岩淵悦太郎編著「悪文 ~ 伝わる文章の作法」(角川ソフィア文庫)を読み終わりました 岩淵悦太郎は1905年福島県生まれ。国語学者。1930年、東京帝国大学文学部卒業。国立国語研究所所長、国語審議会委員等を歴任。「現代の言葉  正しい言葉づかいと文章」他著書多数。「岩波国語辞典」の共編著者を務めた。1978年没

 

     

 

本書は日本評論社から1979年に刊行された「第3版  悪文」を改題し、2016年10月に文庫化したもので、岩淵悦太郎氏をはじめ8人が分担執筆しています

本書は次の項目から構成されています

〇悪文のいろいろ

〇構想と段落

〇文の切りつなぎ

〇文の途中での切り方

〇文の筋を通す

〇装飾の仕方

〇言葉を選ぶ

〇敬語の使い方

〇悪文をさけるための50か条

 各項目について、それぞれの視点で悪文を"添削"しています    例文のどこが悪いのかを指摘し、どうすれば改善できるのかを具体的に提言しています

本書の要点は、最後の「悪文をさけるための50か条」に集約されています それは次のように整理されています

〇文章の組み立てに関するもの・・・「読み手に何を訴えようとするか、その要点をはっきりさせる」「長い文章では、小見出しを活用する」など。

〇文の組み立てに関するもの・・・「長すぎる文は、適切に区切る」「主語と述語との間は、なるべく近くする」「受身形をなるべく少なくする」など。

〇語の選び方に関するもの・・・「意味の重複した表現や、あいまいな用語を整理する」「相手に誤解されるような不正確な語は使わない」など。

〇敬語の使い方に関するもの・・・「できるだけ平明・簡素な敬語を使う」「『お』をむやみにつけない」「謙譲語を、誤って尊敬語として使わない」など。

それぞれの項目について、例文を掲出したページを表示してあるので、索引的に利用することもできます。例えば「長すぎる文は、適切に区切る」には13-20,81-85,101-103,106とページが表示されているので、そのページを参照すれば悪文の例示と改善した後の文が紹介されているというわけです

本書の唯一の欠点は、あまりにも例文が古いということです 例えばこんな具合です

「美智子さまはすでに生まれてくるお子さまのケープやハダ着、くつ下などはほとんどご自分で作られ、なかでもガーゼのハダ着は皇太子さまが生まれた時に使った残りを皇后さまから贈られて縫い上げられていた」(新聞)

文中の「美智子さま」はもはや「皇后」を経て「上皇后」となっており、「皇太子さま」は「天皇陛下」を経て「上皇陛下」となっています これはあまりにも古すぎる しかし、逆に言えば、それほど長い間改訂せずに広く読まれてきたロングセラーであるとも言えるわけです それを承知の上でお読みになれば、文章を書く上で役立つこと間違いなしです

ところで、本書とは直接関係はありませんが、「悪文」ということで思い出すことがあります

評論家の小林秀雄の評論やエッセイは大学入試の問題として出題されることが多いことで有名でした(今はどうなんだろう?)。うろ覚えですが、たしか学生時代に読んだ彼のエッセイに、次のようなエピソードが書かれていました

「娘が『この文章の意味が難しくて分からない』と言って国語の教科書を持ってきた。その文章を読んでみたら意味が分からなかった。『なるほど悪文である』と思った 出典の著者名を見たら『小林秀雄』と書かれていた

つまり、超一流の評論家である小林秀雄が過去の自分の文章を読んで「悪文である」と認めたという話です 悪文とはいったい何なのでしょうか

 

     

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マウリツィオ・ポリーニ死去 / ジュスティーヌ・トリエ監督「落下の解剖学」を観る ~ 山荘で男が転落死した。これは事故か、自殺か、殺人か? 先が読めない2時間半

2024年03月25日 00時08分24秒 | 日記

25日(月)。昨日の朝日新聞朝刊によると、イタリアのピアニスト、マウリツィオ・ポリーニ氏が死去しました(去年82歳)。記事を超略すると次の通りです

「1960年にショパン国際ピアノ・コンクールで優勝し、審査委員長のルービンシュタインが『審査員の誰よりもうまい』と絶賛した逸話が残る たびたび来日し、2002年には東京都内で1か月間に9回の演奏会を行うプロジェクトを展開。レパートリーは古典から現代音楽まで幅広く、録音にも積極的に取り組んだ

ポリーニの演奏はLPでもCDでも何枚か持っていますが、代表的な演奏を数枚ご紹介します

ポリーニの録音の中でマイベストはモーツアルト「ピアノ協奏曲第23番&第19番」(カール・ベーム指揮ウィーン・フィル)です これは23番の演奏でのマイベストでもあります

 

     

 

ポリーニはショパンも得意中の得意でした 下のCDは練習曲集です

 

     

 

ストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」からの3楽章は、明晰な演奏として発売当時大きな話題を呼びました

 

     

 

ポリーニがショパン・コンクールで優勝した時のライブ録音です

 

     

 

心残りは彼の演奏を生で聴けなかったことです  あらためて故人のご冥福をお祈りします

ということで、わが家に来てから今日で3359日目を迎え、22日夜にモスクワ郊外のコンサート会場で武装グループによる襲撃事件が発生し多くの死傷者が出た事件について、イスラム国(IS)が犯行声明を出したが、プーチン大統領はウクライナが関与していることを示唆した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     テロが起きるとウクライナのせいにして 徴兵強化するのは プーチンの常套手段だ

 

         

 

昨日、TOHOシネマズシャンテでジュスティーヌ・トリエ監督による2023年製作フランス映画「落下の解剖学」(152分)を観ました

人里離れた雪山の山荘で、視覚障害をもつ11歳の少年ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)が、血を流して倒れていた父親サミュエル(サミュエル・セイス)を発見し、悲鳴を聴いた母親サンドラ(サンドラ・ヒュラー)が救助を要請するが、父親はすでに息絶えていた 当初は転落死と思われたが、その死には不審な点も多く、前日に夫婦喧嘩をしていたことなどから、妻であるベストセラー作家のサンドラに夫殺しの疑いがかけられていく 弁護士にヴィンセント・レンツィ(スワン・アルロー)を立てて、必死に自らの無罪を主張するサンドラだったが、事件の真相が明らかになっていくなかで、仲睦まじいと思われていた家族像とは裏腹の、夫婦の間に隠された秘密や嘘が露わになっていく

 

     

 

【以下、ネタバレ注意】

裁判では、サンドラが「夫は薬を飲んで自殺未遂をしたことがある」と証言したのを息子のダニエルが法廷で聞いて、過去のある出来事を思い出して証言したことをきっかけに、サンドラは無罪になりますが、真相は必ずしも明らかではなく曖昧のままです

この映画の凄いところは、法廷闘争における検事と弁護士の激しいやり取りです 二人の攻防戦が凄まじく、どちらの言い分も説得力があり、息つく間もない緊張感を強いられます とくに検事役のアントワーヌ・レナルツの迫真の演技には圧倒されます こんな検事に追及されたら、つい「私がやりました」と自白してしまうのではないかと思ってしまうほどです

この映画は2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞していますが、先がまったく読めないまま2時間半引っ張る脚本の素晴らしさと、主人公サンドラ役のサンドラ・ヒュラーの迫真の演技をみれば、当然の受賞だと思います

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NHK-TV「小澤征爾~日本人と西洋音楽」を観る / クロード・ルルーシェ監督「愛と哀しみのボレロ」を観る ~ ヌレエフ、カラヤン、ピアフ、グレン・ミラーをモデルに描いた大作ドラマ

2024年03月24日 00時09分54秒 | 日記

24日(日)。昨夜11時からNHK-Eテレで「ETV特集選 小澤征爾~日本人と西洋音楽」(1993年放送)を再放送していたので観ましたが、すごく面白かったです 当時、小澤は58歳で、すでにベルリン・フィルの定期を振って25年、ボストン響の音楽監督になって20年のキャリアを積んでいました インタビューの中で彼が繰り返し強調していたのは、「ベルリン・フィルと比べて日本のオーケストラは最初から実力差が付いているから、どうやっても敵わない」と考えることは間違いだ、ということです 指揮者としての小澤は、ドイツ人でもなくフランス人でもなく、中国生まれの日本人であるにも関わらず、世界的な指揮者として活躍していることを考えれば、説得力のある発言だと思いました 「斎藤文法」と呼ばれる指揮法(斎藤メソッド)についても熱く語っていました インタビューの場所がベルリンだったことからか、バックに流れていたのはブラームスの「交響曲第1番」だったり、カール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」だったりしましたが、最後に流れたのはドヴォルザークの「交響曲第8番」でした NHKもやる時はやるじゃん、と思った番組でした

ということで、わが家に来てから今日で3358日目を迎え、ロシアのぺスコフ大統領報道官は、長期化するウクライナ軍事侵攻について「我々は戦争状態にある」などとロシアメディアが22日に公開したインタビューで述べた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     「特別軍事作戦」から「戦争」に変えたのは 危機感を煽って徴兵し易くするためね

 

         

 

まだ腰痛が完治したわけではありませんが、かなり良い方向にあるので、少しずつ行動範囲を広げようと思っています ただし 外出する際に腰痛用ベルトを着用するのはこれまで通りです

ということで、さっそく昨日、TOHOシネマズ新宿でクロード・ルルーシェ監督による1981年製作フランス映画「愛と哀しみのボレロ」(185分)を観ました

この映画はルドルフ・ヌレエフ(バレエダンサー)、エディット・ピアフ(歌手)、ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮者)、グレン・ミラー(音楽家)という4人の実在の人物をモデルに、運命の糸で結ばれた2世代4家族の物語を中心に描いた大作ドラマです モスクワ、パリ、ベルリン、ニューヨークを舞台に、1930年代の第二次世界大戦から1980年代へと至る中で、芸術家たちのドラマティックな人生模様が描き出されています

ルドルフ・ヌレエフをモデルとしたバレエダンサー、セルゲイ・イトビッチ役をジョルジュ・ドンが演じています

エディット・ピアフがモデルの歌手エブリーヌ役をエブリーヌ・ブイックスが演じています

ヘルベルト・フォン・カラヤンをモデルとした指揮者カール・クレーマー役をダニエル・オルブリフスキーが演じています

グレン・ミラーがモデルの音楽家ジャック・グレン役をジェームズ・カーンが演じています

 

     

 

この映画を観るのは3回目か4回目です 観ているうちに、あのシーン、このシーンを思い出しました まず最初は冒頭のジョルジュ・ドンの踊る「ボレロ」です パリのエッフェル塔をバックに、赤い円卓の上でしなやかに そして優雅に踊ります 振付はモーリス・ベジャールです。4日前に観た上野水香の踊る同じ振付による「ボレロ」を思い出しました このベジャールによるボレロの振付は、日本で初めてパフォーマンスとしての「知的財産権」を獲得しています 従って、許可なく踊ることはできません。「ベジャールのボレロ」はこの作品をきっかけに人口に膾炙しました

この映画の中でジョルジュ・ドンの踊るバレエはもう一つあります  パリのオペラ座で踊るベートーヴェン「交響曲第7番」の第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」です 彼の踊るバレエは躍動感にあふれ爽快感に満ちています ボレロの「静」と第7番の「動」が対照的です。どちらも圧倒的なパフォーマンスです

 

     

 

カール・クレーマーはヒトラー総統の前でベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第14番”月光”」を弾いてピアニストとしての名声を得ます 戦後、彼は指揮者に転じ、凱旋門の頂上でリスト「前奏曲」を指揮します そして、チケットが完売となったコンサートでブラームスの「交響曲第1番」を指揮することになりますが、幕が開くと客席には2人の評論家が座っているのみで、ガラガラでした カールは悔しさを指揮にぶつけ渾身の演奏を展開します 演奏が終わると天井からたくさんの紙片が降ってきます。それはカールがヒトラーと一緒に笑顔で写っている写真でした チケットはユダヤ人が買い占めたうえ、コンサートに来なかったのです

ところで、カールを演じたダニエル・オルブリフスキーは「0011ナポレオンソロ」のイリヤ・クリヤキン役として活躍したデヴィット・マッカラムによく似ていて、最初に観た時は彼かと思いました

 

     

 

ロシアのバレエ教室のシーンでは、ボレロをはじめ、ショパンのノクターンなどに合わせてバレエが躍られていました

アメリカのグレンを主役とした物語では、ミュージカル仕立てでストーリーが展開し、歌も踊りも素晴らしい この映画の音楽を担当しているのはフランシス・レイとミシェル・ルグランなので、その素晴らしさは言うまでもないかもしれません

最後は、登場人物たちが見守る中、再びエッフェル塔をバックにジョルジュ・ドンが「ボレロ」を踊るシーンです ジョルジュ・ドンはしなやかでノーブルです

何回観ても飽きないどころか、また観たいと思います 3時間5分があっという間でした 掛けがえのない素晴らしい映画です

 

     

 

     

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片山杜秀「小澤征爾らしさ ~ バッハとラグビー”調和”の力」を読んで ~ 朝日新聞のエッセイから / 奥田英朗著「コロナと潜水服」を読む ~ 5つのスピリチュアルな奇跡の物語

2024年03月23日 06時49分23秒 | 日記

23日(土)。昨日の朝日新聞朝刊文化欄のコラム「片山杜秀の蛙鳴梟聴(あめいきょうちょう)」のタイトルは「小澤征爾らしさ バッハとラグビー”調和”の力」でした 片山氏は冒頭、次のように書いています

「想像力が疾走して『てにをは』が追いつかない 小澤征爾さんの話をうかがっていると、目まいがした 佐々木小次郎の燕返しもびっくりだ。でも、結局はとてもよく分かるのだ。身ぶりのしなやかさと声色の豊かさが、足らざる言葉を補って渦を巻くがゆえに 驚異のコミュニケーション力。ああいう日本人を他には長嶋茂雄さんしか思いつかない そう、スポーツである 小澤さんは成城学園中学時代、ラグビーにのめり込んだ。並行してピアノを東京音楽学校(現東京藝大音楽学部)の教授だった豊増昇に習う 『夕方までグラウンドで泥だらけになって』から豊増邸に通う 『練習が長引いて銭湯に入る行く暇がないと、泥だらけのままレッスンに駆けつけることもあって、先生のピアノの鍵盤や椅子の白いカバーを汚したり』する 小澤さん自身の回想だ。『ピアノの巨人 豊増昇』(小澤征爾・小澤幹雄編著、小澤昔ばなし研究所)に載る

ラグビーとピアノに関するエピソードは昨日ご紹介した小澤征爾著「ボクの音楽武者修行」にも登場します 彼は同書で次のように書いています

「ぼくはピアノのレッスンに行っているのだから、指を大切にしなければいけないというので、うちでは、なるべくラグビーをしないようにと言われていた ところが仲間があの勇ましい格好をしてラグビーに出ていくと、ぼくもついやりたくなってしまう そしてあるとき、母にはないしょで、成城、成蹊、学習院、武蔵の4校対抗定期戦に出て思い切り走り回った そして顔や手や腕にものすごい傷をいっぱいつけてしまって、家に帰ったらさっそく母にみとがめられてしまった ぼくは、「柱にぶつかったんだい」と言って、その場をうまく逃れたつもりでいたが、これはのちのちまでもわが家のお笑いになってしまった

やんちゃな小澤のエピソードですね

片山氏の話に戻します

「師匠・豊増のレパートリーは広かったが、小澤少年に与えられる課題は必ずバッハだったという たくさんの声を常に生き生きと調和させる術を自力で発見するには、後世の余計な注釈の入り込んだ楽譜でなくオリジナルで弾くのが一番。豊増が小澤さんに叩き込んだことだろう 小澤さんはそのようにバッハを学びながらラグビーをやっていたのだ。ラグビーは力感あふれる無限の流動。しかも個人技では成り立たない。15人の動きを如何に均衡させつつ、龍のように変幻自在に動いて生気を保ってゆけるか。豊増の考えるバッハと似ている 小澤さんは、ラグビーで手の指を骨折した。豊増に指揮への転向を勧められ、名教授、斎藤秀雄に学ぶようになった 斎藤は元々チェリスト。指揮台からの鳥の眼だけでなく、ひとりのプレイヤーとしての虫の眼があった 大交響楽団を工場や軍隊のような機能的組織ととらえるべからず。弦楽四重奏や木管五重奏のような室内楽が大きくなったと思え。大切なのは個人。その力と技を相乗させ、大調和を創り出すのが指揮者の本懐だ 『俺の芸術』を押し付けるのは邪道。斎藤の美学だろう。みんなの声を聴き、機敏に相乗させ、溌溂たる大均衡を作り出す。小澤らしさは『豊増+ラグビー+斎藤』で生まれたのではないか 小澤らしさは、組織として硬直しがちな老齢の楽団よりも、メンバーの個性の生き生きとした、まだ若めの団体や、お祭り的に季節ごとに手練れの集まるオーケストラでこそ最大化した たとえばサイトウ・キネン・オーケストラや水戸室内管弦楽団のような。小澤征爾亡き後、世界の調和の夢をいったい誰が担えるというのか

スポーツと音楽ということでは、これも昨日のブログでご紹介しましたが、小澤の「ボクの音楽武者修行」に、指揮者になる人へのアドヴァイスが書かれています

「何より、柔軟で鋭敏で、しかもエネルギッシュな体を作っておくこと また音楽家になるよりスポーツマンになるようなつもりで、スコアに向かうこと それが、指揮をする動作を作り、これが言葉以上に的確にオーケストラの人たちには通じるのだ

「体力作りこそ音楽をやる上で大切である」ということですが、さらに言えば、同じスポーツでもラグビーのように複数のプレイヤーで相手チームよりも多くの得点を入れることを競う競技の方が、「大均衡・大調和」を作り出して勝利するという意味では意義が大きい、と言えるのかもしれません

ということで、わが家に来てから今日で3357日目を迎え、欧州連合(EC)は21日の首脳会議で、ロシアの連結資産から生じる利子や配当をウクライナ支援に活用することで合意し、早ければ7月にも最初の資金をウクライナに提供することになった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     主権国家から強奪・破壊・誘拐したロシアの資産の果実を賠償金に充てるのは当然

 

         

 

昨日、夕食に隔週金曜のローテにより「鶏の唐揚げ」を作りました いつものように外カリカリ内ジューシーに仕上がりました

 

     

 

          

 

奥田英朗著「コロナと潜水服」(光文社文庫)を読み終わりました 奥田英朗は1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライター、構成作家を経て、1997年「ウランバートルの森」で作家デビュー 2002年「邪魔」で第4回大藪春彦賞を、2004年「空中ブランコ」で第131回直木賞を受賞するなど受賞多数

 

     

 

本書は「小説宝石」2019年11月号から20年11月号までに掲載された短編小説をまとめ2023年12月に文庫化したものです 「海の家」「ファイトクラブ」「占い師」「コロナと潜水服」「パンダに乗って」の5つの短編小説から構成されています

「海の家」は、ひと夏、家族と離れて神奈川県葉山町の一軒家で暮らすことになった49歳の小説家・村上浩二の身に起こった小さな奇跡の話です

「ファイトクラブ」は、早期退職を拒み、工場の警備員へと異動させられた家電メーカーの中高年社員たちに起こったボクシングをめぐる不思議な出来事の話です

「占い師」は、プロ野球選手・田村勇樹と付き合って4年目の浅野麻衣子が、田村が人気が出てきて自分から遠ざかるのを怖れて、どうすべきか占い師に相談に行ったことから起こった騒動の話です

「コロナと潜水服」は、5歳の息子には新型コロナウイルスを感知する能力があるらしいことが分かった35歳の会社員・渡辺康彦がとった大げさな行動の話です

「パンダに乗って」は、55歳の広告会社の社長・小林直樹が2台目の車として購入した初代ファイアット・パンダをめぐる不思議な話です

いずれもスピリチュアルな内容のストーリーで、あの世に旅立つことのできない霊や、超能力によって小さな奇跡が起こります どれもが奥田英朗らしく、ちょっぴり笑ってしまい、読後感が爽快で温かい気持ちになります 個人的に一番面白かったのは「占い師」です 女性が何かで迷った時に占い師を頼るというケースは少なくないようですが、主人公の悩みは「あるある」で、問題が解決したら解決したで、今度は反対のことを望むようになる・・・という悪循環が可笑しい 寒い冬には暑い夏を恋しがり、暑い夏になると冬を恋しがるようなものでしょうか

気軽に読める短編小説集としてお薦めします

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小澤征爾著「ボクの音楽武者修行」を読む ~ ギターをかついで日の丸を付けたスクーターにまたがり 欧州に単身乗り込んだ小澤征爾の若き日のエッセイ

2024年03月22日 00時26分21秒 | 日記

22日(金)。わが家に来てから今日で3356日目を迎え、トランプ前米大統領の選挙陣営は20日、ニューヨーク州のジェームズ司法長官に提起された民事訴訟で 州内に所有する資産が差し押さえられる恐れがあるとして、100万人の支持者に献金を呼び掛けた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプのことだ  献金しない支持者は”裏切り者”として報復の対象になるんだろう

 

         

 

昨日、夕食に「厚揚げのチーズ焼き」と「生野菜とアボカドのサラダ」「大根と人参の味噌汁」を作りました 「厚揚げ~」は良い感じに焼けて美味しかったです

 

     

 

         

 

小澤征爾著「ボクの音楽武者修行」(新潮文庫)を読み終わりました 小澤征爾は1935年 中国・奉天生まれ。桐朋学園で齋藤秀雄に指揮を師事。1959年に渡欧しブザンソン国際指揮者コンクールをはじめ各地の指揮コンクールで優勝。1960年からカラヤンに師事。その後、バーンスタインにも認められ、61年にニューヨーク・フィルの副指揮者に就任。ボストン交響楽団の音楽監督を29年務めたほか、ベルリン・フィル、ウィーン・フィルをはじめ世界有数のオーケストラを指揮。2002/03シーズンからウィーン国立歌劇場の音楽監督を9シーズン務めた。師の名を冠したサイトウ・キネン・オーケストラの創設と活動にも力を注いだ。2024年2月6日逝去。享年88歳

 

     

 

本書は1962年(昭和37年)4月に音楽の友社から刊行され、1980年(昭和55年)に新潮文庫として出版されました

本書の大きな特徴は、1961年、当時26歳だった若き小澤征爾によって書かれたことです 小澤がいくつかの国際指揮者コンクールで優勝し、ニューヨーク・フィルの副指揮者に就任したばかりの時期にあたります。したがって、これからどうなるのか全く分からない状況の中で、当時何を考えどう行動したかが記されている点で貴重な記録になっています

本書は次のような流れで書かれています

日本を離れて

棒振りコンクール

タングルウッドの音楽祭

さらば、ヨーロッパ

日本へ帰って

本書を読んで、興味を引かれた点に絞って以下にご紹介することにします

「日本を離れて」の中で、若き小澤は指揮者になろうとしたキッカケについて次のように書いています

「指揮者になりたいと思ったのは、日比谷公会堂で、レオニード・クロイツァーがベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番”皇帝”を、自分でピアノを弾きながらオーケストラを指揮したのを見てからであった

そして彼は「外国の音楽をやるためには、その音楽の生まれた土、そこに住んでいる人間、をじかに知りたい」と思い、スクーターに乗って単身ヨーロッパへ渡る計画を立てます 彼はスクーターかオートバイを借りるため何軒も訪ね歩き、ついに、富士重工でラビットジュニア125ccの新型を入手することに成功します その時、富士重工から出された条件は、①日本国籍を明示すること、②音楽家であることを示すこと、③事故を起こさないことーの3点でした 彼はこの条件を満たすため、白いヘルメットにギターをかついで日の丸を付けたスクーターにまたがり、欧州行脚に旅立ったのでした この格好は行く先々で人々の注目を集めることになります

「棒振りコンクール」の中で、小澤は指揮者を目指す人のためのアドヴァイスを書いています

「何より、柔軟で鋭敏で、しかもエネルギッシュな体を作っておくこと また音楽家になるよりスポーツマンになるようなつもりで、スコアに向かうこと。それが、指揮をする動作を作り、これが言葉以上に的確にオーケストラの人たちには通じるのだ ぼくが外国に行って各国のオーケストラを指揮して得た経験のうちで、一番貴重なのはこれである

どうやら、アーティストとアスリートは丈夫な身体づくりという点で共通しているようです

同じ「棒振りコンクール」の中で、師である斎藤秀雄の指揮法について語っています

「斎藤先生の指揮のメトーデは、基礎的な訓練ということに関してはまったく完璧で、世界にその類をみないと、ぼくは今でもそう思っている 具体的にいうと、斎藤先生は指揮の手を動かす運動を何種類かに分類して、たとえば物を叩く運動からくる『叩き』とか、手を滑らかに動かす『平均運動』とか、鶏の首がピクピク動くみたいに動かす『直接運動』というような具合に分類する そのすべてについていつ力を抜き、あるいはいつ力を入れるかというようなことを教えてくれた その指揮上のテクニックはまったく尊いもので、一口に言えば、指揮をしながらいつでも自分の力を自分でコントロールすることができるということを教わったわけだ 言い方を変えれば、自分の体から力を抜くということが、いつでも可能になるということなのだ・・・それと同じようなことを、言葉は変わっているが、シャルル・ミュンシュも言っていたし、カラヤンも、ベルリンでぼくに教えてくれたときに言っていた だからここでもう1回はっきりと、ぼくは斎藤先生、あるいは桐朋学園の音楽教育というものは基礎的な面でたいへん優れているということを、身に染みて感じた

世界に通用する「斎藤メソッド」ですね

「タングルウッドの音楽祭」の中で、バーンスタインの活動の素晴らしさについて語っています

「バーンスタインは音楽の万能選手である 彼がしている仕事になかで、ぼくが特に感心したのは、年に4回CBSのテレビでやる、青少年向きのテレビ・コンサートである 約1時間のプロだけれども、その1回の1時間のなかで、彼は指揮をし、解説もしゃべる。その解説の中で、例題として自分でピアノを弾く そして、プロデューサー、解説者、演奏家、指揮者という役割をぜんぶ一人でしょって、その1時間のプロを担当する その1時間のために費やす時間というものは、まったく莫大なもので、二月も前からその台本を書き出し、テレビのカメラの移動その他、全部の筋を自分で作る ・・・いままで音楽に親しみがなかった小さい子どもたちが、音楽が好きになるという非常に好ましい現象が起こっているということで、評判をとっているらしい

バーンスタインのこの活動は「ヤング・ピープルズ・コンサート」というもので、私もレーザーディスク(10枚組だったと思う)で持っていました 残念ながら再生機の故障で観られなくなってしまい、ディスクも売り払いました いま思い出しても、素晴らしいレクチャー・コンサートです

「さらば、ヨーロッパ」の中では国による演奏家気質について語っています

「フランスのオーケストラは、練習をしているときに、ぼくがなにか演奏のなかで注文をつけようと思って指揮を止めてしゃべろうと思うと、必ず誰かがおしゃべりを始めてぼくの声が通らなくなるので、ついデカい声を出してしまう ところがドイツのオーケストラにいくと、これはベルリンのオーケストラでも、あるいはもっと小さい町のオーケストラでも、指揮棒を止めた瞬間にみんなシーンとして、指揮者がなにを言うかを聞くための態勢になる いわゆる団体としてのお行儀がすこぶるいい。フランスのオーケストラは行儀が悪いのだ だからと言って、フランスのオーケストラが指揮者に対して非常に不まじめであるとか、指揮者に対して反抗心が強いというようなことでもないと思う

フランスのオーケストラの楽員の気質については、クリスチャン・メルラン著「オーケストラ」(みすず書房・全540ページ)でも詳細に触れていて、かなりいい加減な奏者もいることが分かります。この本はオーケストラ全般について知るためには面白くて参考になるのでお勧めです

 

     

 

本書を書いた時26歳だった小澤征爾の、その後の62年間の世界的な大活躍を見るとき、壮大なエッセイを残すことが出来たでしょう 残念ながらそれは叶いませんでしたが、彼の音楽に接した人々の心の中に小澤征爾は生きているのだと思います

一つだけ思い出を書きます あれはいつどこの会場だったかはっきりとは思い出せませんが、小さなホールの指揮者なしの室内楽コンサートだったと思います どなたかが亡くなられた日の夜のコンサートでした。開演前に「亡くなられた〇〇さんを偲んで、バッハ『G線上のアリア』を演奏します。演奏が終わっても拍手はなさらないでください」という場内アナウンスがあり、ステージと客席の照明が落とされました。ステージの照明が最小限の明るさで灯されると、中央に一人の人物が浮かびあがり、彼の指揮で演奏が始まりました 演奏が終わると再び照明が落とされ、暗いなか 彼は静かに舞台袖に引き上げていきました そのシルエットはまさしく小澤征爾その人でした。しかし、そのことについて一切アナウンスはありませんでした。小澤征爾という人はそういう人でした

コメント (4)
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