人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

「クラシック・コンサート 2019年 マイベスト10」の発表です

2019年12月31日 07時44分22秒 | 日記

31日(火)。2019年=令和元年も今日で終わりです 月日の経つのが年々速くなっているような気がします 多分 気のせいではないのでしょうね

ということで、わが家に来てから今日で1919日目を迎え、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐる汚職事件で、収賄容疑で逮捕された衆院議員の秋元司容疑者に現金を渡したとされる贈賄側の中国企業「500ドットコム」側の3容疑者が、いずれも容疑を認めていることが関係者への取材でわかった というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     まだ表面化していない贈収賄が全国のIR候補地でやられてるような気がするなあ

 

         

 

息子が すき焼き用の「山形牛」をあらかじめ郵送してくれ、娘も仕事休みだったので、昨夕は「すき焼き」にしました お酒は山形の「初孫」です

 

     

 

     

 

デザートに山形土産のラ・フランスをいただきました 独特のソフトな食感でとても美味しかったです

 

     

 

         

 

2019年1月1日から12月31日までに聴いた全198回のクラシック・コンサートの中から独断と偏見で選んだ「マイベスト10」を発表します

なお、それぞれの公演についての詳細は、各公演の翌日のtoraブログに書いていますので、興味のある方はご覧ください

【第1位】テオドール・クルレンティス指揮ムジカエテルナ来日公演 ①チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」(Vn:パトリツィア・コパチンスカヤ)、②同「交響曲第4番」:2月11日 すみだトリフォニーホール

    

     

 

このコンサートは両曲とも良かったですが、特にコパチンスカヤを迎えたコンチェルトがアグレッシブで、いま生まれたてのベートーヴェンの曲のように響きました   無個性時代の超個性的演奏でした

 

【第2位】新国立オペラ プッチーニ「トゥーランドット」:大野和士指揮バルセロナ交響楽団、新国立劇場合唱団、アレックス・オリエ演出。トゥーランドット=イレーネ・テオリン、カラフ=テオドール・イリンカイ、リュー=中村恵理ほか。7月18日新国立劇場「オペラパレス」

 

     

 

この公演は、粒ぞろいのソリストと迫力のある合唱団、説得力のある斬新な演出により大成功を収めました

 

【第3位】読売日響定期演奏会 シェーンベルク「グレの歌」:シルヴァン・カンブルラン指揮読売日本交響楽団、新国立劇場合唱団。ヴァルデマル=ロバート・ディーン・スミス、トーヴェ=レイチェル・ニコルズ、森鳩=クラウディア・マーンケほか。3月14日 サントリーホール

 

     

 

2017年のメシアン「アッシジの聖フランチェスコ」も素晴らしかったですが、この「グレの歌」も充実した歌手陣、高レヴェルの合唱団とともに読響の歴史に残る名演だったと思います

 

【第4位】東京春祭ワーグナーシリーズ「さまよえるオランダ人」:ダーヴィト・アフカム指揮NHK交響楽団。オランダ人=プリン・ターフェル、ゼンタ=リカルダ・メルベート他。4月15日 東京文化会館大ホール

 

     

 

この公演は、ターフェル、メルベートをはじめとする歌手陣が圧倒的に素晴らしかったです

 

【第5位】ボローニャ歌劇場来日公演 ロッシーニ「セヴィリアの理髪師」:アルマヴィーヴァ伯爵=アントニーノ・シラクーザ、ロジーナ=セレーナ・マルフィ他。6月24日 オーチャードホール

 

     

 

この公演は、METライブビューイング「ドン・ジョバンニ」でツェルリーナを歌ったセレーナ・マルフィを聴きたくてチケットを買ったようなものです。期待通りのチャーミングなロジーナを歌ってくれました

 

【第6位】高関健指揮「がんばろう日本!スーパーオーケストラ」 ①ブラームス「悲劇的序曲」、②同「ヴァイオリン協奏曲」(Vn:木嶋真優)、③ドヴォルザーク「交響曲第8番」:3月1日 サントリーホール

 

     

 

このコンサートは、全国からチャリティーコンサートのために集まったプロ集団による、身体に風圧を感じるほど迫力に満ちた演奏が聴けました

 

【第7位】東京春祭「エリーザベト・クールマン 愛を歌う」:4月9日 東京文化会館大ホール

 

     

 

この公演はクラシックありシャンソンありの滅茶苦茶楽しいコンサートで、エリーザベト・クールマンの魅力全開でした

 

【第8位】新国立オペラ チャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」:アンドリー・ユルケヴィチ指揮東京フィル、ドミトリー・ベルトマン演出。タチヤーナ=エフゲニア・ムラ―ヴェワ、オネーギン=ワシリー・ラデューク、レンスキー=パーヴェル・クルガ-ティンほか。10月1日 新国立劇場「オペラパレス」

 

     

 

この公演ではタチヤーナを歌ったエフゲニア・ムラ―ヴェワをはじめ歌手陣が素晴らしく、悲劇の中に喜劇的な要素を加えたドミトリー・ベルトマンの演出が際立っていました

 

【第9位】新国立オペラ モーツアルト「ドン・ジョバンニ」:カーステン・ヤヌシュケ指揮東京フィル。グリシャ・アサガロフ演出。ドン・ジョバンニ=二コラ・ウリヴィエーリ、レポレッロ=ジョバンニ・フルラネット、ドンナ・アンナ=マルゴーナ・ケルケジ、ドンナ・アンナ=脇園彩ほか。5月17日 新国立劇場「オペラパレス」

 

     

 

この公演で一番印象に残っているのはドンナ・エルヴィーラを歌った脇園彩さんです 将来性があると見ました

 

【第10位】葵トリオ凱旋リサイタル ①ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第5番」、②マルティヌー「同第3番」、③メンデルスゾーン「同第2番」:5月1日 トッパンホール

 

     

 

葵トリオはヴァイオリン=小川響子、チェロ=伊東裕、ピアノ=秋元孝介の東京藝大出身の3人から成るユニットで、第67回 ARDミュンヘン国際音楽コンクール・三重奏部門で優勝を果たしています このコンサートではメンデルスゾーンがとりわけ素晴らしかったと思います

以上が今年の「マイベスト10」ですが、あらためて振り返って見ると10公演のうち7公演が声楽曲(うち5曲がオペラ)になっています 私は現在、N響、読響、東響、都響、新日フィル、東フィル(文京)、バッハ・コレギウム・ジャパン、新国立オペラの定期会員になっているので、圧倒的にオーケストラ曲を聴く機会が多いわけですが、聴いている時は良いと思っても、後で振り返った時に印象が残っているコンサートは数少ないように思います その一方で、オペラは 歌だけでなく舞台があり 衣装があり 演出があるので、観どころ 聴きどころ満載で、何かしら印象に残っていることが多いように思います   そういう意味では、もっとオペラを観る機会を増やしたいのですが、ネックはチケット代が高いということです とくに著名な海外オペラの引っ越し公演だと、1回分の料金で在京オケの年間会費の半分がすっ飛んでしまう計算です 来年も厳選を重ねることになりそうです

さて、皆さんの「クラシック・コンサート2019年マイベスト」はいかがだったでしょうか

今年1年間toraブログをご覧いただきありがとうございました お陰様で今年も1日も休まず書き続けることが出来ました 来年もモコタロともどもよろしくお願いいたします

 

          

 

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2019年の映画を振り返る ~ 「サタンタンゴ」「iー新聞記者ドキュメント」etc. / ジェフリー・ディーヴァー「煽動者(上・下)」を読む ~ キャサリン・ダンスの活躍を描く

2019年12月30日 07時21分32秒 | 日記

30日(月)。わが家に来てから今日で1918日目を迎え、トランプ米大統領が弾劾訴追されるきっかけになった「ウクライナ疑惑」を巡って、内部告発者はこの人だと実名を挙げるツイートを、トランプ氏が27日夜、100%トランプサポーターを自称する「ソフィア」名のアカウントのツイッターをリツイートして世界に拡散させたが、告発者を保護する法制度を大統領が揺るがす行為に対して、批判がわき起こっている というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     共和党員は 法律など物ともしない強いリーダーのもとで さぞ誇り高いことだろう

 

         

 

昨日、息子が夕食に「おでん」を作ってくれました 私が作るのと違って綺麗に美味しくできました

 

     

 

         

 

新聞各紙が今年1年の映画を振り返っています 日経は26日付夕刊で「映画 今年の収穫」という特集を組み、毎週「シネマ万華鏡」に映画評論を寄せている評論家の「心に残った3本」を掲載していま

中条省平氏は①サタンタンゴ(タル・ベーラ監督)、②幸福なラザロ(アリーチェ・ロルヴァケル監督)、③女王陛下のお気に入り(ヨルゴス・ランティモス監督)の3本を取り上げています 私はこのうち①と③を観ました

中条氏は①について「20年以上も前に撮られた作品だが、その根源的な映画の力は、すべてがデジタル化された今こそ、見る者の背筋を震わせる身体的な経験として突き刺さる ドストエフスキーやカフカに匹敵する現代の暗黒の寓話としても、記憶に重く残る出来映えだ」と高く評価しています ③については「英国の歴史を題材にとり、宮廷のレズビアン模様を、見事な撮影、インテリアを駆使して描き、極上の極楽絵巻物に仕立て上げている」と評価しています なお、村上匡一郎氏も3本のうち1本に「サタンタンゴ」を挙げています

 

     

 

①は上映時間7時間18分という長尺で、私がこれまで観た映画の中で最長の作品でしたが、「長いワンカット」と「雨のシーンの多さ」が強く印象に残っています 感想の詳細は10月4日付toraブログに書いています また、③については8月26日付toraブログに感想を書いています

 

     

 

渡辺祥子さんは①アイリッシュマン(マーティン・スコセッシ監督)、②テルアビブ・オン・ファイア(サメフ・ゾアビ監督)、③蜜蜂と遠雷(石川慶監督)を挙げています 私はこのうち③を観ました ①は来年1月に新文芸坐で観る予定です

渡辺さんは③について「音楽を映像にすること、音楽への深い思い、そこにある知的な表現力が素晴らしく魅力的だった」と評価しています 私は恩田陸さんの原作を読んだ後に映画を観ましたが、映画は原作に忠実に描かれており、演技する俳優陣も陰で演奏するピアニストたちも適材適所で選ばれているという印象を持ちました 感想の詳細は10月8日付toraブログに書いています

 

     

 

一方、朝日は12月27日付夕刊で「回顧2019 映画」を特集、「社会派作品の力 日本でも」の見出しにより今年1年の映画界を振り返っています 執筆者は編集委員の石飛徳樹氏です

石飛氏はまず、「2019年の映画界は光と影の色濃い年になった」とし、「光とは過去最高を記録することが確実な興行収入だ。東宝の試算によると、観客数は1億9千万人になる見込みで、これを超えれば1971年以来、48年ぶりになる」としています 興行上位は「天気の子」「アラジン」「トイ・ストーリー4」などのアニメのほか、「ジョーカー」が日本で50億円を超える大当たりとなった。その一方でドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマン監督「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」はナレーションも音楽もなく3時間25分の長尺ながらロングランを続けている、と解説しています また、藤井道人監督「新聞記者」は政治サスペンスだが、日本で政治映画は当たらないと言われる中 5億円のヒットとなった、としています これについては7月25日付toraブログに書いています

 

     

 

私は岩波ホールで「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」を観ましたが、公共図書館が単なる本の貸し出しだけでなく、講演会の主催や子どもたちへの本の読み聞かせなど、幅広い活動を日夜続けていることに感心しました これについては5月28日付toraブログに感想を書いています 

 

     

 

ついでに、「新聞記者」の原作者である東京新聞社会部記者・望月衣塑子記者を追った森達也監督「 iー新聞記者ドキュメント」の方がはるかに面白かったです これについては12月20日付toraブログに書いています

 

     

 

一方、記事は影の部分にも触れ、「出演俳優の逮捕が原因で公開が延期や中止になる事例が相次いだ」として真梨子哲也監督「宮本から君へ」を例に挙げています また慰安婦をめぐるドキュメンタリー「主戦場」について、川崎市が懸念を表明したことから新百合丘での上映が(一時)中止となった事例を挙げています

私も「主戦場」を観ましたが、右も左も関係なく突撃インタビューを仕掛けるミキ・デザキ監督の姿は、原一男監督のドキュメンタリー「ゆきゆきて、神軍」の主人公、奥崎謙三に重なりました 映画の感想は10月4日付toraブログに書いています

 

     

 

今年は162本の映画(古い映画を含めて)を観ましたが、METライブビューイングを除いて、マイベスト3は「サタンタンゴ」「iー新聞記者ドキュメント」「カメラを止めるな!」あたりでしょうか

 

         

 

ジェフリー・ディーヴァ―著「煽動者(上・下)」(文春文庫)を読み終わりました ジェフリー・ディーヴァーは1950年シカゴ生まれ。ミズーリ大学でジャーナリズムを専攻。雑誌記者、弁護士を経て40歳でフルタイムの小説家となる。科学捜査官リンカーン・ライムのシリーズ、”人間ウソ発見器”キャサリン・ダンスのシリーズでベストセラーを連発している 本書はキャサリン・ダンスのシリーズの第4作です

 

     

 

ボディランゲージから嘘を見抜く”キネシクス”の天才キャサリン・ダンス捜査官は、尋問の末に無実と太鼓判を押して釈放した男セラーノが実は麻薬組織のボスに雇われた殺し屋だったことが判明し、責任を取らされ民事部に左遷されてしまう しかし、左遷先でダンスは、満員のナイトクラブ「ソリチュード・クリーク」にパニックを引き起こして一般市民を殺傷した残忍な犯人に立ち向かうことになる 民事部勤務のため拳銃を取り上げられたダンスは、群保安官事務所のマイケル・オニール刑事部長のサポートを得て”煽動者”を逮捕すべく奔走する しかし、オニール刑事は社会的弱者が関係する建物に対する破壊行為と、公用徴収権を行使した州に土地を収用された後に失踪した農場主の行方を捜査する案件を抱えていて、思うように操作がはかどらない

そうしているうちに、”煽動者”は講演会場やテーマパークで新たな事件を引き起こす 彼は口コミやSNSを巧みに利用し人々の不安を掻き立てパニックを引き起こす ダンスは恋人でコンピューターのエキスパート、ジョン・ボーリングの専門知識を借りながら、”煽動者”の特定を進め 追い詰める   その一方で、麻薬組織の殺し屋セラーノの行方を追う

 

     

 

この小説は、2つの事件を同時並行的に追うキャサリン・ダンスの活躍を描くとともに、彼女の長男ウェスの”ちょっとした冒険”と長女のマギーの”小さな挑戦”をミステリータッチで描き、さらには、恋人のボーリングと、仕事上で深い付き合いのあるオニール刑事部長との三角関係がからんできて、いったい何がどうなってしまうんだろう、と頭が混乱してきます しかし、そこはどんでん返しのジェフリー・ディーヴァーです。すべてを収まるべきところに収めます 一番大きなどんでん返しは、ダンスがキネシクスに失敗し民事部に左遷されられる最初のシーンに種が撒かれていたという驚きです 予想外の人物の逮捕劇に唖然とし、上巻の最初の「4月5日 水曜日 ベースライン」を読み直すことになります

上下巻で合計700ページに及ぶ大作ですが、面白さに一気読みしました。お薦めします

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朝日新聞「回顧2019音楽 クラシック ~ 国内オケ成熟 世界レベル」を読んで思うこと ~ ヤルヴィ親子、クルレンティスの評価はいかに? デュトワ、ドミンゴのセクハラ疑惑はどうなってる?

2019年12月29日 07時30分36秒 | 日記

29日(日)。昨日、池袋パルコ8階のスペイン料理Pでランチしました 息子が帰省したので家族揃って外食することにしたものです

最初は前菜です

 

     

 

続いてメインディッシュです

 

     

 

続いてパエリヤです

 

     

 

最後はアイスクリームとチーズケーキのデザートです どれもが美味しかったです たまにはスペイン料理も良いものだと思いました

 

     

 

ランチの帰りに、娘がパルコ内のデザイン・シャツ専門店で主に室内で着るシャツ(長袖)を買ってくれました 3日遅れのクリスマス・プレゼントといったところです 惑星と銀河鉄道をあしらった斬新なデザインは、自分では絶対に選ばない種類のものです。「これ、カッコイイよ」という言葉につられて買ってもらうことにしました 私から娘へのプレゼントは、品物が選べないので、気に入ったものを買って 後で請求してくれと伝えてありますが、まだ商品は決まっていないようです プレゼントは嬉しいですが、請求書が怖い   楽あれば苦あり

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で1917日目を迎え、国土交通省は28日までに、全国の鉄道で2018年度に発生した駅員や乗務員への暴力行為は670件に上がったと発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

                   駅員だって人間だ 殴られたら 殴り返せばいいんだ  ただし 後のことは知らないよ

 

         

 

26日の朝日夕刊に「回顧2019音楽」が掲載されていました 経済紙の日経と違い、朝日はかなりのスペースをとってポピュラー、ジャズ、クラシックを取り上げています クラシックについては、かつて評論家の吉田秀和氏が「音楽展望」とともに執筆していたコラムですが、現在は朝日新聞編集委員・吉田純子さんが書いています 記事の見出しは「国内オケ成熟  世界レベル」です

吉田さんは、まず読響を9年間率いて退任したシルバン・カンブルランと東響音楽監督ジョナサン・ノットを取り上げ、「日本の楽団全体のモチベーションを高めた」と評価し、「こうした海外の名匠たちの献身を得て、山本直純や小澤征爾が歯を食いしばって耕してきた日本のオーケストラ界が いよいよ贅沢かつ多様な実りの時期を迎えているとあらためて思う」と述べています

名匠たちの活躍として、ベルリン・フィルを指揮したズービン・メータ(ブルックナー)、NHK交響楽団を指揮したネーメ・ヤルヴィ(息子のパーヴォではない)、ヘルベルト・ブロムシュテット、マレク・ヤノフスキ(英雄交響曲)、レザール・フロリサンを率いたウィリアム・クリスティ(メサイア)、大坂フィルを振ったシャルル・デュトワ(幻想交響曲)、オーボエのハインツ・ホリガ-らを挙げています

一方、新世代の旗手として、ムジカ・エテルナ+コパチンスカヤとのチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」を指揮したテオドール・クルレンティス、オランダ・バッハ協会管弦楽団の音楽監督に就任した佐藤俊介、ピアノの小菅優、葵トリオを取り上げています

予想外だったのは地方オケの活躍です 吉田さんは「鈴木秀美と山形交響楽団が古楽の手法で挑んだ『英雄』は、細部に刻印された若きベートーヴェンの直球の情熱を聴く者の胸先にぐいと突きつける快演。日本のオーケストラは今や、世界へと発信するに足る『日本の文化』である」と最大限の評価を与えています

また、今年死去したアーティストとして、アンドレ・プレヴィン、ラドミル・エリシュカ、マリス・ヤンソンス、ジェシー・ノーマンの名前を挙げています

上記の記事を読んで思うのは、吉田さんの指摘の通り、海外の評論家からも「日本のオケのいくつかは世界レヴェルに達している」と言われている現状です 「おやっ」と思ったのは、ネーメ・ヤルヴィについては「悠々たる諧謔のタクトに魔法の靴を履かされ、童心に戻ってフランス音楽の妙味に踊った」と評価している一方で、指揮するたびに熱狂的な反響を呼んでいる息子のパーヴォ・ヤルヴィについてはまったく触れていないことです まさか、彼がロシアのプーチン大統領に顔が似ているからという理由ではないと思いますが

シャルル・デュトワについては、クラシック界でさんざん騒がれたセクハラ疑惑はどうなったのでしょうか その後、何のニュースも流れないので実情が分かりません セクハラと言えばプラシド・ドミンゴは来年 予定通り来日するようですが、当初共演する予定だったMETの看板ソプラノ歌手ルネ・フレミングは急きょ来日が取りやめになり、代演が立つようです これもどうなっているのでしょうか

コパチンスカヤ+クルレンティス指揮ムジカエテルナによるチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」は2月にすみだトリフォニーホールで聴きましたが、今年聴いたうちで最も強く印象に残るコンサートでした 吉田さんによれば「一見放埓だが、己のアイデンティティーを礎に、作曲家の魂へまっすぐ向かってゆく素朴なエネルギーで、楽曲本来の魅力を解き放った」ということになります

なお、この記事には音楽評論家・東条碩夫氏の「私の3点」が併載されています

①ヘンデル「メサイヤ」:ウィリアム・クリスティ指揮レザール・フロリサン(10月14日・東京オペラシティコンサートホール)

②R.シュトラウス「サロメ」:シャルル・デュトワ指揮大阪フィル(6月8日・大阪フェスティバルホール)

③シェーンベルク「グレの歌」:ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団(10月6日・ミューザ川崎シンフォニーホール)

残念ながら、私はいずれも聴いていません さて、来年はどんなアーティストやオーケストラが活躍するのでしょうか

私の「クラシック・コンサート 2019年 マイベスト10」は12月31日付ブログで発表します

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ヤスミン・アフマド監督「タレンタイム 優しい歌」を観る ~ ドビュッシー「月の光」とバッハ「ゴルトベルク変奏曲」の「アリア」が流れる

2019年12月28日 07時26分03秒 | 日記

28日(土)。昨日の早朝、息子が山形県鶴岡市の単身赴任先から深夜バスで帰省しました 約7時間かかります。今回も山形の地酒とワインをお土産に持ってきてくれました

 

     

 

数日前に郵送された山形名物「ラ・フランス」です 大玉なので1個400グラムもあります

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で1916日目を迎え、米ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コムは26日、2019年年末商戦の世界での受注が「記録的な水準」になったと発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     宅配便の青年が「年末は勘弁してほしい」と嘆いていたほど記録的だったみたい

 

         

 

夕食は、息子が味噌鍋を作ってくれました 材料は豚バラ肉、鶏肉団子、キャベツ、シメジ、長ネギ、玉ねぎ、モヤシ、餃子です。身体が温まります

     

     

 

         

 

池袋の新文芸坐でマレーシアの女性監督ヤスミン・アフマド監督・脚本による2009年マレーシア映画「タレンタイム  優しい歌」(115分)を観ました

音楽コンクール「タレンタイム」(才能の時間=タレントタイム)が開催される高校で、ピアノの上手な女子学生ムルーは、耳の聞こえない送迎役のマヘシュと恋に落ちる しかし、二人は宗教上の違いから家族の反対にあう 一方、ニ胡を演奏する優等生カーホウは、成績優秀で歌もギターも上手な転入生ハフィズを嫌っていた マレー系、インド系、中国系といった宗教・民族を超えた彼らを迎えタレンタイムが幕を開ける

 

     

 

ロヘナ・ゲラ監督の「あなたの名前を呼べたなら」がインドの階級格差を扱っていたのに対し、この映画は多民族・多宗教国家としてのマレーシアにおける人々の葛藤を描いています

音楽コンクール「タレンタイム」の開催を呼びかけた女性の校長がコメディアンのようで面白い 体格も言動もほとんどマツコ・デラックスのような感じです

この映画の冒頭で流れるのはドビュッシーのピアノ曲「月の光」です   この映画のテーマ音楽のように劇中 何度か流れます また、ムルーとマヘシュが二人で居るシーンではバッハ「ゴルトベルク変奏曲」の「アリア」が流れます この監督、音楽のセンスは良いと思います

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「女性の 女性による 自由のためのオペラ」 ウィーン歌劇場150周年「オルランド」 / ロヘナ・ゲラ監督「あなたの名前を呼べたなら」を観る ~ 現代のインドにも残る階級格差を鋭く描く

2019年12月27日 07時38分42秒 | 日記

27日(金)。わが家に来てから今日で1915日目を迎え、政府の年金改革に対するストが続くフランスで24日、特別な年金制度を持つパリのオペラ座のダンサーがオペラ座前の広場でチャイコフスキーの「白鳥の湖」第4幕を披露した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     オペラ座は42歳定年で年金がもらえるけど マクロンは改悪しようとしてるらしい

    

         

 

昨日、夕食に「鶏のクリームシチュー」と「生野菜サラダ」を作りました 寒い夜はシチュー、カレー、鍋料理が食べたくなりますね

 

     

 

         

 

昨日の朝日朝刊「文化・文芸欄」に「女性の 女性による 自由のためのオペラ ~  ウィーン国立歌劇場150周年『オルランド』」という見出しによる高橋牧子編集委員の記事が載りました 超訳すると、

「ウィーン国立歌劇場では今月、同劇場初の女性作曲家(オルガ・ノイビルト)による新作オペラ『オルランド』が上演された 劇場の150周年記念公演で、演出や脚本、衣装にも女性を起用、原作は英国の女性作家バージニア・ウルフが1928年に発表した同名の小説だ 衣装はコムデギャルソンの川久保玲が担った 保守的とされるウィーンのオペラ界では異例の作品だ 同劇場で初めて女性作曲家を起用したことをマイヤー総裁は『女性だからではなく、一流だから選んだ ウィーンのオペラは時代遅れとは言われたくない』と語った。ノイビルトから衣装担当の申し出を受けた理由を川久保玲は『150年の歴史の中で一度も女性作曲家を起用しなかったことに驚いたから』と語った 現地紙は各紙とも今作が意欲的であることは認めながらも『内容を詰め込み過ぎ』との評もあった

記事の最後で、高橋編集委員は次のように締めくくっています

「近年、『#MeToo』運動など女性が声を上げる機運が世界で盛り上がっている それでも今回の公演は、私たちが、まだそれほど進んでいないことを証明するようだった

まったくその通りだと思います 「女性初の~」という言い方は何十年も前から世界中で言われてきた言葉ですが、オペラの世界も例外ではなかったのです 「女性だからではなく、一流だから選んだ」というマイヤー氏の言葉は、ウィーン国立歌劇場総裁の言葉だからこそ重みがあります これからも性別に関係なく一流かどうかの基準で選んで欲しいと思います

 

         

 

昨日、池袋の新文芸坐でインド・ムンバイ出身の女性監督ロヘナ・ゲラ監督によるインド・フランス合作映画「あなたの名前を呼べたなら」(99分)を観ました

経済発展が著しいインドのムンバイで、農村出身のラトナ(ティロタマ・ショーム)はファッション・デザイナーを夢見ながらメイドとして働いていた   結婚して4か月で病気の夫を亡くしたラトナは建設会社の御曹司アシュヴィン(ビベーク・ゴーンバル)の新婚家庭で住む込みで働く予定だったが、婚約者の浮気が発覚して直前に破談となってしまった    ラトナは広い高級マンションに一人暮らしとなった傷心のアシュヴィンを気遣いながら彼の身の回りの世話をすることになる ある日、ラトナはアシュヴィンに裁縫を習うため毎日午後の2時間だけ外出したいので許可して欲しいと頼む。それをきっかけに二人は少しずつ接近していく 自分に尽くしながら夢を実現するために一生懸命なラトナの姿に惹かれたアシュヴィンは、ある日 愛を告白するが、身分違いの結婚は彼の親や世間が許さないとして断られる ラトナはマンションを出ていき 結婚した妹の家に同居することになる。一方、傷心のアシュヴィンはアメリカに赴く

 

     

 

ロヘナ・ゲラ監督はインドのムンバイ出身ということですが、ヨーロッパでも活動しているだけに、インドを内側からと同時に外側から見る目を持っています 近代化が進んだ現代においても、インドでは、こと”結婚”に関しては富豪の息子とメイドというような階級が異なる男女間の結婚は、本人同士は良しとしても周囲が許さないことを表しています

この映画の原題は「Sir」です。言うまでもなく「Sir」は男性に対する呼びかけの丁寧語です この映画で言えばラトナがアシュヴィンに呼びかける「旦那様」に相当します。映画の中で、二人が少し打ち解けるようになった時、ラトナが「旦那様」と呼びかけると、アシュヴィンが「いつまで旦那様と呼ぶんだ」とイラつく場面があります。アシュヴィンとしては「Sir」ではなく 自分の名前で呼びかけて欲しいわけです でも、ラトナにはそれさえ出来ません。いずれ 自分自身はもちろんのこと、アシュヴィンも苦しむことになるのを知っているからです

アシュヴィンの陰の力添えによって、ファッション・デザイナーになるというラトナの夢が叶うラスト・シーンは、身分違いの二人の愛の結末における せめてもの救いです

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日経「クラシック・コンサート 今年の収穫」を読んで思うこと ~ オペラ夏の祭典「トゥーランドット」を中心に / 1日遅れのコンサート会場のクリスマスツリー紹介です

2019年12月26日 07時18分12秒 | 日記

26日(木)。昨日は娘の誕生日(兼クリスマス)だったので、朝から大忙しでした 朝、整骨院で右手の治療をしたあと、「フレンチ・パウンド・ハウス」に注文済みのバースデーケーキを引き取りに行き、帰りがけに花を買って、ローストビーフ用の牛肉ももブロック(500g)と、赤ワインとシャンパンとパンを買いました

 

     

 

台風19号の時、バルコニーの隣家との仕切り版(石膏ボード)が暴風雨で飛ばされ壊れてしまい、2か月くらい前から修理の依頼をしていたのですが、マンションの管理会社から24日午後に連絡が入り、今年は25日の午後2時からしか修理工事の日程が取れないと言ってきました 「おいおい、昨日の今日かよ」と苦情を言いたくなりましたが、これを逃すと来年になってしまうので、来てもらうことにしました したがって、昨日の午後は工事の立ち合いのため(何をするわけでもないのですが)時間を拘束されました

娘がローストビーフとオニオンスープを作ってくれたので、シャンパンとともに美味しくいただきました

 

     

 

食後、時間を置いてからバースデーケーキをいただきました。せっかくホールケーキを買ったのに、写真を撮る前に切ってしまい、インスタ映えを狙っていた娘から冷たい目で見られました 大失敗の巻でした

 

     

 

ということで、わが家に来てから今日で1914日を迎え、カジノを含む統合型リゾート(IR)を巡り、参入を目指していた中国企業側から現金370万円相当の賄賂を受け取っていたとして、東京地検特捜部は25日、元内閣府副大臣で IR 担当だった自民党の衆院議員、秋元司容疑者を収賄容疑で逮捕した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     カジノ解禁前に370万円も賄賂を受け取るとは よほどギャンブル好きな議員だな

 

         

 

24日付日経「夕刊文化欄」に「音楽 今年の収穫」が掲載されていました クラシック、ジャズ、ポピュラーが扱われていますが、クラシック関係は3人の音楽評論家がそれぞれ「1019年のベスト3」を選んでいます

山崎浩太郎氏(オペラ)

①英国ロイヤル・オペラ「ファウスト」(9月:東京文化会館)、②マリインスキー歌劇場「マゼッパ」(12月:サントリーホール)、③オペラ夏の祭典「トゥーランドット」(7月:東京文化会館)

江藤光紀氏(クラシック)

①ヤニック・ネゼ=セガン指揮フィラデルフィア管弦楽団(11月、東京芸術劇場)、②辻彩奈(ヴァイオリン)&ジョナサン・ノット指揮スイス・ロマンド管弦楽団(4月:東京芸術劇場)、③チョン・ミュンフン指揮東京フィルハーモニー交響楽団(2月:東京オペラシティ)

藤野一夫氏(関西)

①沼尻竜典企画「ジークフリート」(3月:びわ湖ホール)、②飯守泰次郎指揮関西フィルハーモニー管弦楽団(3月:ザ・シンフォニーホール)、③古楽最前線!「ピグマリオン」(12月:いずみホール)

まことに残念なことに、上記9公演のうち私が聴いたのは「オペラ夏の祭典『トゥーランドット』」のみです このオペラは、東京では東京文化会館と新国立劇場「オペラパレス」で上演されました 山崎氏は次のように論評を加えています

「歌手の豪華さや大がかりな舞台など、現代の日本では得がたいものだった。指揮の大野和士は、他にもさまざまな公演で大活躍の年だった」

限られたスペースの中で公演の重要ポイントを書き記すのは非常に困難だと思いますが、この「トゥーランドット」に関しては、確かにイレーネ・テオリンのトゥーランドット、テオドール・イリンカイのカラフ、中村恵理のリューをはじめとする歌手陣は充実していましたが、それにも増して重要だったはアレックス・オリエによる斬新な演出だったのではないかと思います 「トゥーランドット」が未完に終わった事実を踏まえると、もしプッチーニがこのオペラを完成させたなら、オリエの解釈による演出で幕を閉じることも考え得るのではないか、と思うほど説得力を持っています

この公演については今年7月20日付toraブログに感想を書いていますので、興味のある方はご覧ください なお、「今年のマイベスト10」については12月31日のブログで発表しようと思っています

 

     

 

         

 

1日遅れましたが、コンサート会場のクリスマスツリー&イルミネーションをご紹介します 最初はサントリーホールです

 

     

 

次はサントリーホール前のカラヤン広場です

 

     

 

次は新国立劇場「オペラハウス」です

 

     

 

次は東京オペラシティです

 

     

 

次は東京芸術劇場です

 

     

 

東京芸術劇場前のグローバルリングです

 

     

 

次はNHKホール前です

 

     

 

次は紀尾井ホールです

 

     

 

近くのホテルニューオータニです

 

     

 

最後はミューザ川崎です 

 

     

 

今年もあと1週間を切りました さあ、どうしよう

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諸井誠「クラシック名曲の条件」を読む ~ ”傑作”は数多くあるが”名曲”は少ないという著者の理論とは?

2019年12月25日 07時21分54秒 | 日記

25日(水)。昨日は大掃除第2弾としてレンジ周り+キッチン、床の雑巾がけをしました 例年 面倒なのは 油まみれになったガスレンジ・フードの掃除です   今回も散々苦労しました。ただ、一日中良い天気だったので第2弾としては はかどりました

ということで、わが家に来てから今日で1913日目を迎え、ボルトン前米大統領補佐官は23日、トランプ米政権の対北朝鮮政策について「北朝鮮の核保有は認められないと言うが、実際の政策を考えると、きれいごとを言っているようだ。政策は失敗している。米国が北朝鮮に最大限の圧力をかけているというアイデアは、残念だが事実ではない」とツイッターで表明した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     トランプに解任されたから文句を言ってるのではないと思う 実際その通りだから

 

         

 

昨日、夕食に「とん平焼き」と「野菜とハムのスープ」を作りました   昨夕はクリスマス・イヴということで多くのご家庭では”にわかクリスチャン”になって「鶏もも+ケーキ」でお祝いしたのではないかと思いますが、わが家では、娘の誕生日が12月25日なので、今夜 誕生祝いを兼ねてお祝いします

 

     

 

         

 

諸井誠著「クラシック名曲の条件」(講談社学術文庫)を読み終わりました 諸井誠(1930-2013)は東京生まれ。作曲家。1952年、東京音楽学校本科作曲科を卒業。翌年、ベルギーのエリザベート王妃国際音楽コンクール入賞 国際現代音楽協会世界音楽祭に3回入選。作品に「ピアノ協奏曲第1番」等がある

 

     

 

本書は 1982年に中公新書から「名曲の条件」として刊行された著書を原本に文庫化されたものです

著者は「名曲の条件」を次のような章立てで解説しています

1.プロローグ ~ モーツアルトに名曲を求めて

2.英雄の条件 ~「英雄交響曲」と「英雄の生涯」

3.名曲が認められるまで ~ チャイコフスキーの2大協奏曲

4.編曲の魅力を捉える ~ ドビュッシーとラヴェル

5.「雨だれ」の構造 ~ ショパンの省略法について

6.「指環」の構図 ~ ヴァーグナーのライトモチーフとは

7.「トロイメライ」をめぐって ~ 情緒か、構造か

8.改作の意味を探る ~ ブルックナーの交響曲をめぐって

9.三つの未完成交響曲 ~ シューベルト、ブルックナー、マーラー

10.形式のコンプレックス ~ 「第九交響曲」を解剖する

11.エピローグ ~ マーラー「復活の歌」

以上のすべての章をご紹介する訳にはいかないので、特に興味を惹かれた章や気付いた点をご紹介したいと思います

「1.プロローグ ~ モーツアルトに名曲を求めて」の中で筆者は、モーツアルトの交響曲を取り上げながら、「名曲として称揚される限りにおいては、何よりもまず『一度聴いたら忘れられない』何かがなければいけない」「(名曲とは)一聴しただけでそれと判り、番号を言われただけで調性を思い出し、第1楽章冒頭を聴いただけで各楽章のテーマが思い出せるような曲である」とし、「モーツアルトだからといって、ことごとくが『名曲』というわけではない」と述べています その上で、彼が「名曲」として挙げているのは第40番 ト短調、第41番 ハ長調、第25番 ト短調の3曲のみです 第35番 ”ハフナー”、第36番 ”リンツ”、第38番 ”プラーハ”はかなりの”傑作”ではあっても”名曲”ではない、と断定しています

個人的な感想を言えば、モーツアルトの ある曲の第2楽章を聴いて、「ハフナー」か「リンツ」か「プラハ」か判別がつかないことがあるので、筆者の考えも理解できるところがありますが、その反面、なぜあれほどの名曲 ”第39番 変ホ長調” が入っていないのか不思議だと思います

「2.英雄の条件」でいう「英雄交響曲」とは、言うまでもなくベートーヴェンの交響曲 第3番であり、「英雄の生涯」はリヒャルト・シュトラウスの交響詩です

「3.名曲が認められるまで」でいう チャイコフスキーの2大協奏曲とは、ピアノ協奏曲 第1番とヴァイオリン協奏曲とのことです 両曲とも作曲当初は認められず、後になって世界的に演奏されるようになった点で共通しています

「9.三つの未完成交響曲」でいう未完成とは、シューベルトの「第7番 ロ短調」(この本では第8番となっています)、ブルックナーの「第9番 ニ短調」、マーラーの「第10番 嬰へ長調」を指しています 筆者は「名曲の条件を考える時、かなり上位の優先順位で『完成度』と『完結性』が問題になりそうだが、この3曲の未完成交響曲が存在し、ひときわ強く光彩を放って、作品の永遠性を誇っているので、完成度と完結性は『名曲の条件』としての効力をほとんど失ってしまうかのように思える とはいえ、これらの三大『未完成』交響曲のために、本来重要に考えられるべき条件を取り下げてしまうのは本末転倒ではないか あくまでも未完成作品は例外として、『番外の名曲』と認識するべきだろう」と述べています

上に挙げた曲のほか、ピアノが弾ける方には「5.『雨だれ』の構造 ~ ショパンの省略法について」と「7.『トロイメライ』をめぐって ~ 情緒か、構造か」が面白いと思うし、ワグネリアンには「6.『指環』の構図 ~ ヴァーグナーのライトモチーフとは」が参考になると思います ただし楽譜がふんだんに出てきますが

自分が好きな曲は諸井氏のいう「名曲の条件」に当てはまっているのかどうか、考えてみてはいかがでしょうか

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スコット・クーパー監督「荒野の誓い」、マイケル・ノアー監督「パピヨン」を観る ~ 新文芸坐

2019年12月24日 07時18分10秒 | 日記

24日(火)。わが家に来てから今日で1912日目を迎え、韓国東部地方検察庁は23日、ユ・ジェス釜山市前副市長の収賄事件をもみ消した職権乱用の容疑でチョ・グク前法相の逮捕状を請求したというニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     証拠の名簿をシュレッダーにかけたりしてる日本政府だって 他人事じゃないよね

 

         

 

昨日、夕食に「野菜と挽肉のドライカレー」を作りました 何度も作った私の定番料理です。とても美味しかったです

 

     

 

         

 

昨日、池袋の新文芸坐で「荒野の誓い」と「パピヨン」の2本立てを観ました

「荒野の誓い」はスコット・クーパー監督による2017年アメリカ映画(135分)です

舞台は1892年、産業革命により急速に開拓地や街へと変貌を遂げつつあるアメリカ・ニューメキシコ州。インディアンとの戦いの英雄となり、現在は看守を務めるジョン・ブロッカー(クリスチャン・ベール)は、かつての宿敵だったシャイアン族の酋長イエロー・ホークと彼の家族をモンタナ州の彼の生地へ護送する任務を与えられる 道中、コマンチ族の虐殺によって家族を失った過去を持つロザリー(ロザムンド・パイク)と出会い、彼女も旅に加わることになる 一行は何とか厳しい辺境地を乗り越えたが、ある地点でお互いの協力なくしては生き残れない危機的な状況に追い込まれる ジョンは酋長の鎖を解き、コマンチ族の襲撃に対抗する。そしてモンタナ州の酋長の生地に到達するが、土地の所有を主張する白人が立ちはだかる

 

     

 

「西部劇」と言えば、ジョン・ウェインの数々の名画を思い出しますが、ヒーローは決して涙を流すことはありません ヒーローはあくまでも強くなくてはならないからです しかし、この映画の主人公ジョーは、仲間を失うとすぐに涙を流し、弱い面をさらけ出します ある意味、人間的なヒーローを描いています。彼は過去に何人ものインディアンを殺して英雄的な存在になっていますが、彼は「それが仕事(任務)だから」と言い切ります スコット・クーパー監督は、「軍隊はいつも時代も『それが仕事(任務)だから』敵を殺すのだ」と言いたのかも知れません。殺したくて殺しているのではない。仕事だから殺しているのだと。その思考がベトナム戦争に繋がり、イラク戦争に繋がっているのではないかと

ジョンとの別れを惜しむロザリーを乗せた蒸気機関車が駅を離れて行こうとするとき、ジョンは反対の方向に歩き出します。「それって、カッコよすぎじゃないか」と思っていると、彼は向きを変え汽車に乗り込みます。このラストシーンは素晴らしい 何人も死人が出て後味が悪い雰囲気のまま終わるのではなく、未来に希望を繋げました

 

         

 

「パピヨン」はマイケル・ノア―監督による2017年アメリカ・セルビア・モンテネグロ・マルタ合作映画(133分)です

胸元に蝶の刺青をしていることから「パピヨン」と呼ばれる金庫破りの男(チャーリー・ハナム)は、身に覚えのない殺人の罪で終身刑を言い渡され、南米ギアナの絶海の孤島にある刑務所に投獄される 苛酷な強制労働と横暴な看守たちからゴミのように扱われる毎日を送るうち、パピヨンは脱獄を決意する 彼は、紙幣を偽造した罪で逮捕された男ルイ・ドガ(ラミ・マレック)に目を付け、ルイを守ることと引き換えに逃亡資金を稼ごうとする やがて二人はお互いになくてはならない存在になっていく パピヨンは脱獄をしては捕まり、独房に監禁され、また脱走をしては捕まる しかし、彼はついに海への脱出に成功する

 

     

 

この作品は、作家アンリ・シャリエールが無実の罪で投獄された実体験をもとに、13年間の脱獄劇を執筆した小説をもとに映画化したものです

「パピヨン」と言えば、主人公をスティーブ・マックイーンが、ルイをダスティン・ホフマンが演じた1973年製作のオリジナル映画を思い浮かべます あの映画で忘れられないのは、牢獄に閉じ込められたパピヨンが、食べるものに困り、獄中にいたサソリを殺して食べるシーンです あれは鮮烈でした 今回の映画では、ゴキブリが這いまわるシーンはありましたが、食べるシーンはありませんでした 虫はたんぱく質が豊富だそうですね

よくよく考えてみると、パピヨンとルイの信頼関係がなければパピヨンの最後の脱獄劇の成功はなかったのだと思います それにしても、13年もの間、投獄されては脱獄することを繰り返した根性には頭が上がりません 「無実の罪で不当に投獄された」ことに対する強い怒りがあったからこそ、「絶対に生き残って 生きたいように生きてやる」という強い意志が続いたのだと思います

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私の手帳活用法 ~ 来年のコンサート日程を手帳に書き込む

2019年12月23日 07時18分48秒 | 日記

23日(月)。昨日は午前中、風呂とトイレの掃除をしました 例年恒例の大掃除第1弾です。かなり綺麗になりましたが、終わったら汗びっしょりでした 掃除をしている最中は気にならなかったのですが、終わった後に右手首が痛み始めました。腱鞘炎が治らないのです そのため、今日はあまり書けません。悪しからず

といういことで、わが家に来てから今日で1911日目を迎え、米下院によるトランプ大統領の弾劾訴追決議案は賛成多数で可決されたが、共和党からの造反者は一人も出なかった という記事を読んで感想を述べるモコタロです

 

     

       米国ファーストでなくトランプ・ファースト  共和党でなくトランプ党じゃね?

 

         

 

いま 新しい手帳に来年のコンサート日程を書き込んでいます   手帳は毎年、日本能率協会の NOLTYクレスト1(商品番号1801)を使っています。「月間予定表」には①コンサート名②開演時間③会場名を記入します

なお、26日が空欄になっていますが、これから確実にチケットを購入する予定のコンサートが入ります

 

     

 

「週間予定表」には左ページに①②③を記入、右ページにプログラムと演奏者名を記入します これによって、予習で何を聴いておけばよいかがすぐに分かります

 

     

 

なお、予定はピンクのマーカーで塗りつぶしていますが、これが「コンサート」の予定を意味します 映画の予定が入る時は、コンサートと同じように日時と会場を記入して黄色のマーカーで塗りつぶします

読書については、あらかじめ予定が立たないので、本を読み終わった日の欄に、柚木裕子『あしたの君へ』読了 というように記入し、赤のボールペンで囲んでおきます

コンサート予定の記入は使いたくない右手を使うので、まだ3月までしか書き込みが終わっていません 今日も作業が続きます

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西加奈子「 i アイ 」を読む ~ あらためて”生きている喜び”を教えてくれる小説

2019年12月22日 07時24分18秒 | 日記

22日(日)。わが家に来てから今日で1910日目を迎え、米国のキリスト教福音派の有力誌「クリスチャ二ティー・トゥデー」が、同派の多くの信者が支持してきたトランプ大統領を上院での弾劾裁判で罷免すべきだとする論評を掲載した という記事を見て感想を述べるモコタロです

 

     

     この動きが "蟻の一穴" となって トランプが苦シチャンになるか?  答えはイエス

    

         

 

西加奈子著「 i  アイ 」(ポプラ文庫)を読み終わりました 西加奈子は1977年 テヘラン生まれ、カイロ・大阪育ち。2004年に「あおい」でデビュー。2015年に「サラバ!」で直木賞を受賞しています

 

     

 

アメリカ人の父と日本人の母を持つワイルド曽田アイは、高校生になって初めての数学1の授業で教師が言った「この世界にアイは存在しません。二乗してマイナス1になる、そのような数はこの世界には存在しないんです」という言葉に愕然とする   まるで自分の存在を否定されているように感じたのだ    アイは1988年シリアで生まれたが曽田夫妻に養子として引き取られた。彼女は自分だけが裕福な家庭に迎えられ 幸せに暮らしていることに罪悪感を感じている アイは世界中で起こる事件や自然災害などで亡くなった死者の数をノートに書き留め、なぜ自分ではなく彼らだったのか、と考える そんなアイに性格が正反対のミナという親友が出来る。そして大学生になったアイは 運命の人=カメラマンのユウと出会い、家族から祝福されて結婚する アイは妊娠するが結果的に子供は授からなかった。一方、親友のミナは悩みながらも想定外の出産を決意する。流産したアイは親友から生まれようとしている新しい命を祝福する。そして自分自身もしっかりとこの世界に存在していることを宣言する ー 私はここよ

この本の巻末に又吉直樹と西加奈子の対談が掲載されています その中で西さんは「アイは  Ⅰ で、ミナはALL(皆)で、ユウはYOU」と種明かしをしています そう分かったうえで、振り返ってみると、この小説は読者を含めた社会、あるいは世界で起こり得る普遍的な出来事を書いているのだな、と理解できます まず自分自身のことを、次に相手の誰かのことを、そして、次に社会や世界のことを考えることーそれが大切なのではないか。私あってのあなたであり、あなたあっての私である、愛をもってお互いを尊重することが大切だ、ということです

この作品に限らず、西加奈子さんの小説を読むと、辛いことも少なくないけれど、世の中 そう捨てたものではない と思います

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