明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(299)あいた口がふさがらない・・・東電の「試算」に接して

2011年10月18日 11時00分00秒 | 明日に向けて(251)~(300)
守田です。(20111018 11:00)

昨夜、政府と東電による「改訂工程表」で、「冷温停止」の前倒しの
実現が発表されたことに対し、原子力資料情報室で行われた後藤政志
さんの講演を紹介し、水素爆発の可能性ひとつとってもみても、事故
は収束への階梯とはほど遠い段階にあることことをご紹介しました。

ちなみに一部の方へのメールで情報が抜けてしまいましたが、後藤
さんの会見が行われたのは10月13日。「改訂工程表」が出される数日
前のことです。しかし非常にタイムリーな指摘であったと思います。

ところがさらに東電が、「再び福島第一原発発電所の1号機から3号機
で炉心損傷が起こる確率」なるものを試算し、5000年に1回という数値
を発表したことを知り、あいた口がふさがらないというか、唖然とする
というか、本当にあきれ返ると同時に、強い怒りを感じました。

問題の発表では、今後起こる可能性として、注水停止が20時間起こり、
それで炉心損傷が起こりうるが、5千年に1回の確率だとされています。
これに対して記事を掲載した読売新聞は、事故前には炉心損傷の確率
が1000万年に1回とされていたので、2000倍になったと指摘しています
が、これもかなりトンチンカンな指摘です。

そもそも現在、炉心は激しく損傷していて、しかも誰も近づけず、
その実態すら完全につかめてはいません。また後藤さんが指摘して
いるように、水素が溜まって大変危険な状態が続いています。さらに
大規模余震も懸念され続けており、福島原発はまだまだ安心・安全と
は程遠い段階にあります。

そんなときに、今後の可能性は5000年に1回などと、どうしてそんな
ことを言い出すことができるのでしょうか。現実のあらゆる危険因子を
排除したシミュレーションを行ってこうした数値を出したのでしょうが、
僕は今の時期にこうしたことを言い出すこと自身が、もはや犯罪的で
すらあると思います。

こんな誰にでも分かるようなデタラメな試算を出す東電に、まともな
事故対処などできるわけがない。またこれを批判できない新聞社に
まともな記事が書けるわけがないと僕は思います。現に水素爆発の危険
性を排除できていないのに、「注水が止まる」ことを想定して、5000年
に1回だとうたっている。科学性はもちろん、技術者としての良心の
のかけらもない試算だと言わざるを得ません。

そんな「試算」を行う予算があるのなら、原発事故被災者の方たちへの
賠償にまわすべきです。あるいはそんな余剰人員がいるのなら、被災地
にでてがれきの一つでも運びなさいといいたい。一体、どれだけたく
さんの人々を傷つけ、今なお、避難などでどれほどの苦しみを人々に
与えているのか東電は分かっているのでしょうか。まったく分かって
いないのです。何の痛みも感じてないことが強く伝わってきます。

その点で、僕はこの発表は九州電力の「やらせメール」調査報告書と
同じ位相にあるものだと思えます。九電も、東電も、こんなことをして
国民・住民が怒らないと思っているわけです。いわんや詫びる姿勢など
まったく無い。何より僕はそこに強い怒りを感じるし、捨て置けないと
感じています。

これらのことは、こんなにひどい事故を起こし、もの凄くたくさんの
人々を傷つけながら、東電が潰されず、ただの一人の逮捕者も出て
いないことによってもたらされているのではないか。そのことが東電
のあまりに傲慢な体質を温存させているのではないか。そのことと
事故に今持ってなお、東電が真剣に向き合おうとしていないことが
絡まっていると思えます。

私たちは今、東電に対する追及の声をもっと強くしなければなりません。
事故の責任を追及し、一刻も早くしかるべき額の賠償をすること、また
必要な避難の措置などを東電が率先してとっていくことなど、さまざまな
ことを求めなくてはいけない。そしてあのような人災を引き起こした東電
を、解散に追い込まなくてはいけないし、責任者の処罰を求めねばなり
ません。

もちろん国の監督責任は重大です。枝野経済産業大臣は今、九電を前に、
正義派の顔をしていますが、その枝野元官房長官こそが、もっとも重大な
時期に「安全宣言」を繰り返し、国民・住民が被曝から自らを守る機会を
奪ったことを忘れることはできません。やらせメール事件より、枝野大臣
が犯した罪の方が甚大なのです。

ともあれ私たち国民・住民はもっと怒らないといけない。こんな試算を
のうのうと出されて黙っていてはいけないと思います。

・・・怒りを胸にしつつ、頭は適宜クールダウンしながら、情報ウォッチ
を続けます。

***************

注水停止20時間で炉心損傷、確率5千年に1回
読売新聞 2011年10月17日22時43分

東京電力は17日、福島第一原子力発電所1~3号機で再び炉心が
損傷する確率は、約5000年に1回とする試算結果をまとめた。

同日、経済産業省原子力安全・保安院に提出した施設運営計画に盛
り込んだ。事故前の試算では1000万年に1回としており、
2000倍も高くなった。

試算は、安定化の目標である「冷温停止状態」を維持するため、施設
運営に生かす。損傷確率の計算は、原子炉の注水系統の故障、外部
電源の喪失、大津波など7項目を想定。それぞれの原因で、1~3
号機の一つに約20時間にわたる注水の中断が起き、炉心損傷が起きる
1200度に達する確率を合計した。

炉心損傷に至る確率が最も高かったのは、大津波が原因で注水機能が
回復できないケース。大津波そのものの頻度は700年に1回と
見積もっている。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20111017-OYT1T01099.htm

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