明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(298)福島第一原発3号機の爆発は水素爆発か(後藤さん談)

2011年10月17日 23時30分00秒 | 明日に向けて(251)~(300)
守田です。(20111017 23:30)

東京電力福島第1原発事故について、政府と東電は17日に発表した改定
工程表で、原子炉の「冷温停止状態」の達成時期を年内に前倒しする方針
を盛り込みました。本当なのでしょうか。すでに多くの方が、とてもそん
な段階ではないのではと感じられていると思います。

しかしこれと軌を一にして、避難計画区域が解除され、南相馬市で閉鎖
されていた小中学校が再開されるなどの動きがあります。戻った生徒は
4割。多くの方が不安にかられて戻らない状態を反映していますが、政府
の宣言は、これに対し「収束」ムードを強調する狙いもあると思われます。

実際のところはどうなのか、またこうした事態をどうみたらいいのか。
このところ政府が余りにデタラメを繰り返すので、逐一、分析する気が
落ちてしまう面もあったのですが、それではいけないと思え返し、現状の
分析に向かっていたところ、実にタイムリーに、原子力資料情報室の
会見で、後藤さんが、水素の問題について解説してくださいました。

要点を述べると、現時点で福島第一原発は水素爆発の可能性を抱え続けて
おり、とても事故の収束に向かっているとは言えないということです。
また実はこうした水素問題は、加圧水型原発でも抱えており、今回の事故
の教訓を考えると、これらの原発でも、今回のような水素漏れが起こった
時に対応できる体制を備えてはいないと思われ、その点からも原発の運転
の放置は危険であると言えるということです。

現在の福島原発の状態に関するリアルタイムでの批判的観点を私たち
の側できちんと保持し続けていくためにも、この後藤さんの提起は重要
だと感じ、ノートテークしました。みなさま、どうかお読み下さい。
いつものように、守田がかく聞きとったという内容で、後藤さんが
話された言葉通りのものではありません。その点を加味してお読み
ください。

********

福島第一原発3号機の爆発は水素爆発か
後藤政志さん談 10月13日
http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=1214

(司会の方より、3号機の爆発について、海外で爆発音が入った映像が
流れたが、実際に映像を映したカメラはかなり遠くから撮影していおり
音は届いてなかった。なので音が無い方が正しいという指摘がなされた
上で、後藤さんの話に移った)

アメリカの研究者から、3号機の建物の上で起こった爆発は、1号機より
はるかに規模が大きいという指摘があった。これは水素爆発にしては
おかしいのではないか。爆燃という規模を越えて、爆轟になっていた。
その違いがある。1号機と3号機の違いは何なのか。

3号機は水素ではなくて、核的な、核反応が起こって爆発が起こったので
はないかという話がある。私はそれについて全面否定するというのでは
ないが、水素について、私の知っている基礎的な話をさせていただいて、
水素の問題については、3号機のことをいいたいのではなくて、本当は、
水素の爆発とは何なのかということと、現在問題になっているのは、配管
の中に、高濃度の水素が溜まっている。

配管の中にも溜まっている。これをどう考えたらいいのか。これは配管
の中の身なのか、格納容器の中の水素が出てきているのか。ここが問題
でなぜ問題なのかというと、水素爆発の危険性が懸念されるからだ。その
点から水素に関しての基礎的なことをおさえていきたい。

水素爆発についての話をしたい。水素の爆発は、水素と酸素が混じって
いて火がつくと、水素が燃える。水素と酸素が離れていると、その境界
でだけ、火がつく。ところが混ざっていて、ある濃度、水素が酸素に
対して4.65%あると火がつく。上限は93.3%ある。空気との混合比で
いくと、4.1%から74.2%。

普通は爆発する限界はもっと狭い。10%から20、30%で火がつくとか。
それ以上、濃すぎるとつかないことが多い。ところが水素の場合は、爆
発限界が大きい。ということは何が怖いかというと、もし水素が漏れて
きて最初に火がつけば、少ない%で爆発する。ところが大量の水素が
出て、濃くなって火がつくと、大きな爆発になる可能性がある。

そうなると1号機と3号機の爆発の違いは、水素の濃度の違いであったこと
もありうる。この点、きちんと分析しきれてないが、少なくともこうした
点を踏まえて論議をしないと誤ったものになってしまう。

これらの点から言うと、1号機は早く火がついたのではないか。3号機は
遅く火がついたのではないかと考えられる。また爆発のときに、建物の
横と上が抜けたかどうか。爆発は周りが抜けない方が強くなる。1号機を
見ていると横が抜けて、爆発が上にいかなかった。その分、弱く見える。

3号機の場合は、横に向けないで上に向かっている。そう見えるが、一つ
の仮説だが、水素の爆発については、相当に濃い水素が爆発した。先程
話したように、爆発には爆燃と爆轟がある。火炎の速度が音速以下だと
爆燃になり、音速を越えると爆轟になる。音速を越えると空気を圧縮し、
衝撃波がでる。ジェット機が音速を越えるときにでるものと同じで、その
衝撃波は周りを破壊する。

3号機のときは爆轟が発生しているが、飛んでいる放射性核種などのいろ
いろな条件からみて、私は核的な爆発が起こったとは断定できない、可能
性はあまり高くないと考えている。きちんとした議論をしなければいけ
ないし、全否定しているのではないので、この議論はこれ以上控え、今日
は水素がどのように怖いのかを押さえておきたい。

爆燃と爆轟というものがあるというのが一つだが、爆轟はいきなりボン
とはいかない。爆燃が始まり、ある程度いったときに爆轟が発生する。
これをD・D・Tという。爆燃-爆轟遷移という。テクニカルタームとしての
正確さについては、ちょっと自信がないが。こんな表現をする。ようは
爆燃から爆轟に遷移する。それがどれほどの濃度から起こるかの実験
などが行われ、それをもとに水素についての知見が得られている。

これらから、爆轟が発生すると、爆発による破壊力は飛躍的に増える。
3号機の原子炉建屋における爆発は水素爆発による爆轟であると推測
されると私は考えている。


水素問題について、まだ原子炉付近に残っているので爆発する恐れが
ある。どうしたらいいのかというと、酸素がない状態にもっていくのが
一番で、窒素を封入する。ところが配管などから水素が漏れて来ると
危なくなる。ましてや格納容器の中が今、どうなっているか。そこに
水素が高濃度であるとすると、格納容器の圧力が高ければ酸素は入って
こないが、今は外と圧が変わらないので、酸素が入ってきて、爆発する
可能性がある。

水素の発生原因はもともと燃料が露出して、水・ジルコニウム反応に
よって水素が大量に出ることだった。それだけはない。長期になると
放射線が非常に強く水を放射線分解して、水素と酸素が出てくる。初期
の段階では少ないが時間とともにこちらの方が増えてくる。それがどれ
ぐらいか。そこでは酸素も出てくるので、燃える段階に入ってくる。
それですぐに燃えるとは言わないが、慎重に対応する必要がある。

言いたいのは何かというと、今、事故収束が言われているが、水素の問題
一つとってみても不安定な要因がある。それが原子力の問題だということ
だ。しかも普通は圧力容器も格納容器もしっかりしていて、燃料も壊れて
いない。だから何かあってもその中で何かあっても閉じ込められるという
のが原子力の安全性だ。

それが全部突破されている。炉心溶融していて、格納容器が壊れていて、
水素もある。これほど危険なものはない。そういう状態の中でなんとか
それを押し込めているという認識をしないと判断を間違うと私は思う。
普通運転のときは、すべてが健全で、格納容器も漏れないことを確認して
それで運転して、万が一、0.5%以上漏れたら運転が止まる。これがあたり
前の安全設計だ。炉心溶融など関係ない。

ましてや今は、実際に炉心溶融が起こっていて、格納容器も壊れている。
だからそこには近寄れない。そうするとそういう中でできるのは、これ
から長時間冷やしてがまんするしかない。ずっとそうするしかない。
問題は、溶けた燃料がどこにあるか。それを取り出せるか。取り出せれば
まだ展望が見えるが、そうなっていないので、まだ収束もへったくれも
ない。まったく目処が立っていないというのが正直なところだ。

どうやったらいいのか。誰も分からない。少なくともトライはするだろう。
それが5年、10年という単位で行われる。それ以上になるだろう。そうする
と一体何をもって安定かといえるかというと、技術的に問題があって、
その中の一環として水素の問題もある。

沸騰水型においては、格納勇気の中に圧力抑制プールがあり、蒸気を凝縮
して閉じ込めることになっているので、格納容器が割と狭い。そのため
水素が大量に出てしまうと、圧力があがってしまう。それも考える必要
がある。爆発が怖いので、窒素が封入してあるから、初めのうちは爆発し
ない。しかしだんだん条件がかわってきて危なくなる。


続いて加圧水型について考えたい。加圧水型の可燃性ガス、水素が出た
ときの対策の変遷が書いてある。1979年にスリーマイル島事故が起こった。
このときは「設計ベースを超える大量の水素ガスの発生に対する対応策
について、原子炉安全基準専門部会のワーキンググループにおいて検討」
となっている。

1981年には「我が国の安全基準に反映させるべき事項」を決定。その中で
「加圧水型の格納容器については、現設計においても、かなしの水素発生
とそれに続く燃焼に耐えると思われるが、安全性を一層向上させるため、
格納容器は再結合器の設置を可能ならしめる設計であること」となっている。

再結合器とは水素をいれて戻して、水素を結合させて取り去る設備でそれを
つけると言われている。

ところが1985年から87年に「加圧水型電力共通研究において設計基準事象を
超える大量の水素発生に対して、外置可搬式再結合装置では大きな有効性が
認められないことを確認となっている。

つまりここで分かったのは、スリーマイル島事故で、水素の問題が分かって
再結合器が必要だと言う検討に入った。しかし85年から87年に分かったのは
水素再結合器は有効ではないということだった。それで1990年の安全設計
基準指針改定では、「再結合器の設置を可能ならしめる設計であること」
については、「反映されず」となっている。有効でないことが分かったので
反映しないとなった。

ではどうなったのか。1992年には例のシビアアクシデントが出てくる。
「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアク
シデントマネージメントについて」を決定。これはシビアアクシデント、
炉心溶融事故が起こった時は現状であるものを使って何とか対処する、
これがアクシデントマネージメントと言われている。

今回では津波がきたあとに、電源がなくなったから電源車を持ってくる
とか、ポンプ車を持ってくるとかした。それがアクシデントマネージ
メントだ。「共通問題懇談会で得られた知見として、設計基準事象を
超える大量の水素ガス発生に対しては水素再結合方式は適さないとの
見解。」また加圧水型は二つあって、ドライ型というのがある。圧力
抑制プールを置かないので格納容器が大きい。それに対してアイス
コンデンサ型格納容器がある。これはアイスコンデンサという冷やす
設備がついている。容積を数分の一にする。

その「加圧水型のアイスコンデンサ型格納容器への水素燃焼装置の設置は、
フェーズⅡのアクシデントマネージメントの一部として有効な対策と
なりうるとの判断」がなされている。フェーズⅡとは炉心損傷のときだが
ドライ型の格納容器の場合は容量が大きいのでいいと言っていたけれども
アイスコンデンサ型は容量が小さい。それで水素燃焼装置を付けるという。
漏れていたらできるだけ早く火をつけて処理をして、水素を減らしていく。
これが有効であると言っている。

これはどういう意味か。アイスコンデンサ型は危ないから、水素の燃焼
装置をつけるということだ。これが今の加圧水型の格納容器の設計概念だ。
この場合、気にしているのは、加圧水型の大型のものは、燃焼限界に
達しないから問題はないとされていることだ。これは30日ぐらいの事故
について危なくないと判断している。では40日、あるいはそれ以上では
どうなるのか。水素はどんどん増えてくる。処理はできない。

そうなったら電源の問題と同じだ。8時間までだったら対応できる。それ
までに何とか電源は復旧するでしょうと考えられていた。それとまったく
同じ論理になっている。つまり何日間かと切ってここまでくれば大丈夫と
考えている節がある。そういうものの見方をしたときに、本当に大丈夫
なのかという問いかけを私はしている。

大型のドライ型の場合に、水素の問題は大丈夫だと言っているが本当に
そうなのか。過酷な条件は考えているのか。それを問わないと本当に
危ないことになる。それはなぜかというと、スリーマイル島で水素の問題
が大問題になって対応をしてきた。それで窒素を封入して大丈夫になった
と思われてきた。ところがこれが建屋の外では爆発するし、今また、水素
が残って心配になっている。ではこれが加圧水型で起こったらどうなのか。


このように格納容器の水素問題一つとっても、厳しい状態にある。原子力
が厳しいのはこう言う問題がいくつもあることだ。水素問題はそのうちの
主要な一つになるが、どうも字面でみていくと、大型の格納容器では
水素の問題は大丈夫だと読める。

もっと言えばここでの表現がおかしい。ここには燃焼装置、イグナイター
が有効であると書いてある。こういう発想がおかしい。そういうことを
言うのではなくて、こういうところは対策とはいっているけれども、
アイスコンデンサ型では危険があるので、何らかの対策が必要であること
が分かった。それで燃焼装置をつけることにした。それが真実だ。そういう
表現をとるべきだ。

私が心配するのはその先で、燃焼装置の性能はどうかということだ。燃焼
はうまくいくのか。イグナイターというのは少なくともどこかで燃焼され
るのだから、どこかで火をつけて減らす。しかしうまく機能しないで水素
がどんどん出ていって何かの折り合いで着火したらむしろ自爆装置に
なってしまう。そういう可能性はないのか。

事故というのはだいたい、まさかそんなことはおきないだろうと思った
ことが、機械の故障や人のミスが重なって、実際に起きるという形になる
ことがいっぱいある。今回の福島でもそうだ。ミスもあるかもしれないと
思っている。そういうものなのだ。

ここでもイグナイターというものは、多重故障でそれが働かないとその
まま水素濃度があがっていく。今回、冷却もそうだった。そう考えると、
私が言いたいのは、基本的な安全装置として有効であるか、その基本的
な対応ができているのかという点が心配だということだ。

水素についてはどうなると爆発するかの研究はされている。それが他の
要因で突破される可能性を考えいるか。ストレステストではそういうもの、
あるものが働かない状態で事故にいたる可能性が生じて、それにどれだけ
耐えられるかを見ていく必要がある。それが現時点でプラントの安全性を
考える上で非常に重要であると考えている。

以上、水素の話についての提起を終えたい。


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