明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1785)強権発動に否定的な「専門家会議」―新型コロナの脅威を民主主義的に越えていこう!(2)

2020年03月30日 23時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200330 23:00)

専門家会議は緊急事態宣言などには否定的

にもかかわらず安倍首相を批判する人々が、専門家会議や医療界をも串刺しに批判し、「PCR検査を意図的に増やさず、感染拡大の事実を隠している」「新型コロナの死者数もごまかしているのでは」などと疑う人々がとても多い。
けしてそんなことはないことを、後に稿を改めて立証したいと思いますが、その前に専門家会議に集う方たちの語っていることに注目していただきたい。
例えば朝日新聞に3月18日に掲載されたインタビュー記事の中で、メンバ―の川崎市健康安全研究所所長、岡部信彦さんは特措法の下での「緊急事態宣言」の発動に反対し、理由を以下のように述べています。

「(緊急事態宣言の発動に反対なのは)新型コロナはそこまでのものではないと考えているからです。新型インフル等特措法に『等(とう)』を入れることには私も強く賛成しました。
新型インフルだけでなく、新しくて重症で広がりやすい病気の場合にも、応用として使えるようにしておいた方がいいと考えたからです。しかし、そこで想定した新感染症は、感染症法での1類感染症(エボラ出血熱など)並みの極めて危険なものです」
「緊急事態宣言を出せば、私権制限などで対策の幅が広がる半面、社会の日常的な活動を止めてしまうと副作用も大きくなります。致死率が5%、10%を超える1類感染症並みであればやむを得ませんが、新型コロナは指定感染症で2類相当とされました」

「コロナ、そこまでのものか」専門家会議メンバーの真意
https://digital.asahi.com/articles/ASN3L3D4DN3GUPQJ001.html?ref=opinion_mail

タイトルの「コロナ、そこまでのものか」には、少なくともこの病に対しては、強権を発動して、社会活動を封じ込めることは妥当ではないという思いが表現されています。
この専門家会議の方向性をぜひ支持し、後押ししたいです。


川崎市健康安全研究所所長、岡部信彦さん 朝日新聞より


社会経済機能をなんとか維持する「日本モデル」が目指されてい

さらに3月19日の専門家会議の記者会見で、北海道大学の西浦博教授が、「アメリカのようにバーの閉鎖などはしないのか、必要ないのか」という海外の記者からの質問に対して、およそこのように返答しました。

「アメリカではバーが閉鎖されています。研究者でも研究室や大学に行っているのは韓国と日本ぐらいです。それほど通常営業が止まっています。
それぐらい社会的規制を強く打つべきなのかどうか、私たちはそう考えていません。確かに接触をなくすことで二次感染が減ります。すでに一定の協力をしていただきましたが、みなさんとさらに話し合いたいと思っているのです。
アメリカのような状況が、長期間、持続可能かどうかということです。おそらくそうじゃないと思います。経済的インパクトがあまりにも大きすぎて、長く続けることができません。

ただ一定の期間、長く行動が変わらないと流行が拡大してしまいます。
今、私たちが何とかして日本モデルで活路を見いだそうと思っているのは、社会経済機能をなんとか維持し、無駄を省き、そのしわ寄せを受ける社会的弱者を助ける持続可能な道です。
長期間、持続可能なオプションをいま必死に考えていますが、国民のみなさんが簡単に譲歩できるものではないかもしれないので、皆さんで合意をするプロセスを専門家としても作っていかないといけないと考えています」

全国イベント自粛解除「慎重に」 爆発的な感染拡大を警戒 
専門家会議が見解(2020年3月19日) 

https://www.youtube.com/watch?v=t-LdtN5GrWM
1時間40分ぐらいから43分ぐらい


北海道大学西浦博教授 会見を報じたYoutubeより

みなさん。どう思われますか? 僕はとても感動しました!
専門家会議は、「社会経済機能をなんとか維持する日本モデル」で活路を見いだそうとしています。それはまた可能な限り自由を尊重することです。
「ぜひそのことをみなさんと話し合いたい」との呼びかけも素晴らしい。民主主義的な合意形成をとても大事にしている。

こうした専門家会議の努力にも関わらず、あるいは明日にも都市封鎖や緊急事態宣言がなされるかもしれませんが、そうであっても私たちはこうした民主主義的な志向性を強く示してくれている方たちと共に歩んでいきたい。
そのためにも、安倍政権と医療界をはっきりと分けて、前者への鋭い批判を続けながら、後者をみんなで支えていきましょう。

続く

この記事にご寄付をいただける場合は以下からお願いします!
金額は自由に設定できます。
なお「守田敏也」の名が「森田俊屋」になってしまっていますがご愛嬌です・・・。
https://www.paypal.me/toshikyoto/500JPY

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(1784)新型コロナの脅威を民主主義的に越えていこう!―(1)世界と日本の現状

2020年03月30日 18時30分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200330 18:30)

世界で猛威を振るう新型コロナウイルス

新型コロナの猛威がヨーロッパを中心に吹き荒れています。WHOが29日に発表したデータによると、この病で亡くなったと報告されている方は世界で29,957人です。内わけと情報先を示します。
最多はイタリア10,023人、スペイン5,690人、中国3,306人、イラン2,640人、フランス2,311人、アメリカ1,668人、イギリス1,019人、オランダ639人、ドイツ389人、ベルギー353人、スイス235人、韓国152人
トルコ108人、インドネシア102人、スウェーデン102人、ポルトガル100人、ブラジル92人、イスラエル82人、オーストリア68人、フィリピン68人、デンマーク65人、日本52人、以下50人未満の国は略


Coronavirus disease 2019 (COVID-19) Situation Report-69 WHO

https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/situation-reports/20200329-sitrep-69-covid-19.pdf?sfvrsn=8d6620fa_2

なお30日午後2時時点では世界の死者数のトータルが33,997人に増えています。一日で約4千人の増加。
気になるのはスペインが1日で1,113人増えていること。またドイツも389人から541人へと急激に伸び始めていることです。
ともあれ世界中でそれぞれの努力が実を結び、感染がピークアウトを迎えて下火になっていくことを願うばかりです。またそれまでできるだけ死者を減らした。特にイタリア・スペインの死者の拡大が止まって欲しいです。


日本の現状をどう見るか

さてその中で日本は死者数が52名と今のところ各国と比べるとかなり低い数でおさまっています。もちろん52名の方が亡くなられたことは悲しいですが、しかし毎年の肺炎で亡くなられる方の数を考えてもとても低水準です。
しかも日本は中国や欧米各国と比べても、社会活動の制限がかなり緩い。往来の自由も保障されています。
もちろんここ数日、東京で急激に感染者が増えていて予断を許しません。緊急事態宣言や都市封鎖も近々出されるかもしれません。しかしここまでこれだけ自由を保障しながら、死亡数が低水準に保ってきているのは大きく評価すべきことだと思います。

厚労省ホームページより

しかし残念ながら評価の声は高くありません。森友、加計、桜問題で、安倍政権が不信の頂点にあり、退陣寸前とも言える状態の中で、新型コロナウイルスとの格闘が始まってしまったからです。
その意味で日本はいま「オオカミ少年」のような事態の中にあります。オオカミの正体=防がなくてはいけないのは、アウトブレイクのもとで医療崩壊が起こり、助けられる命が助けられなくなることですが、これが十分に伝わっていません。
とくに「専門家会議」を中心とする日本の医療界の方たちが、実に巧みに事態に対処し、アウトブレイクの芽を摘んでかなりの時間を稼いできてくれているのに、この意義が伝わってないように思えます。

その点で安倍政権の横暴と立ち向かってきた全国のみなさんに訴えたいです。安倍政権と、専門家会議・医療界をはっきりと分けて考えましょう。
安倍官邸は相変わらず無能です。首相会見などを聞いていても、そもそも事態の本質を理解できていないことが見えてしまいます。しかし専門家会議は、このどうしようもない政権をうまくコントロールしているのではないでしょうか。
この点をぜひきちんと評価しましょう。そもそも医療界は、新自由主義的な医療の「自由化」の流れに抗い、社会的共通資本としての医療を守ってきています。今回もそこで保ってきた力がいかんなく発揮されていると思うのです。

続く

記事にご寄付をいただける場合は以下からお願いします!自由に金額設定できます。
なお名前が「森田俊屋」になってしまっていますがご愛嬌です・・・。https://www.paypal.me/toshikyoto/500JPY

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

長崎県の放射線観測データ偽造の背景にあるものを動画で解説しました! 明日に向けて(1783)

2020年03月24日 22時30分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200324 22:30)

3月19日に長崎県環境保健研究センターが放射線計測データをきちんと分析せず改ざんしていたことが明らかになりました。2017年から2018年の2年間もです。
なぜこんなことがおきたのか。背景にある新規制基準の問題にまで踏み込んで解説しました。

もりもり解説 長崎県環境保健研究センターの放射線計測データ改ざんについて 
もりもりチャンネルvol.159 20200323
https://youtu.be/cCFmECq9Mrc

なおこの動画は以下の記事に基づいています。
使ったスライドも公開します。

明日に向けて(1782)長崎県の放射線観測データ偽造の背景に新規制基準による事故軽視がある!https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c01664309500018bcd06ec50a703f2d8

#放射線計測 #データ偽造 #長崎県環境保健研究センター #新規制基準 #玄海原発



***
記事にご寄付をいただける場合は以下からお願いします!自由に金額設定できます。
なお名前が「森田俊屋」になってしまっていますがご愛嬌です・・・。
https://www.paypal.me/toshikyoto/500JPY

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(1782)長崎県の放射線観測データ偽造の背景に新規制基準による事故軽視がある!

2020年03月23日 09時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200323 09:00)

長崎県で放射線観測データが2年間も偽造されていた・・・

3月19日の報道によると長崎県の環境保健研究センターが実施している大気中の放射線量などの測定で、1人でこの仕事を任されていた主任研究員(36)が測定データの分析結果を偽造していたことが明らかになりました。
データは九州電力玄海原発から30キロ圏内にある長崎県松浦市なで4市で、携帯型測定器を使って計測されたものの、この研究員が「データ分析がうまくできなかった」ことから、過去の数値を転用するなどして上司に報告していたそうです。
2017、2018年度の2年間で452件行われた測定のうち、312件の分析結果をねつ造があったとか。うちわけはサーベイメータによる空間線量率測定140件、空間積算線量64件、環境試料放射能分析156件だそうです。

どうしてこんなひどいことが起こったのか。直接的にはこの主任研究員があまりにモラルを欠いていたことが要因です。
しかしこの研究員は「計画的に仕事を進めるのが苦手だったので、途中で分析を放置し、急場のしのぎで繕ってしまった」と語っています。そんな「主任研究員」に計測と分析の全てを任せてチェックが入ってなかったことも大きな要因です。
不正の発覚も、データチェックからではなく、この人物が今年1月、出張の報告書に上梓の印鑑を勝手に押していたことが発覚したことからだそうです。仕事上の不正が重ねられ、今年になってようやくデータ改ざんが分かったのです。

明らかにそこに現れているのは、玄海原発30キロ圏内で放射線測定を行っていくことの意義が、センターそのものにきちんと把握されてなかったことです。
だからモラルを欠き、仕事もきちんとできない人物1人に、放射線計測と分析が丸投げされ、しかもデータ改ざんが本年1月まで発覚しなかったのです。
僕はそこには新規制基準のもとで起こりうる原発事故があまりに小さく見積もられこと、事故が軽視されていることが大きな影を落としてると思います。


データ改ざんを伝えるNBC長崎放送 20200319


新規制基準が生んだ事故軽視の影のもとで・・・

その点で思い出すのは川内原発が、およそ2年間続いた「原発ゼロ状態」に終止符を打つ形で、再稼働に漕ぎ着けた過程での、伊藤祐一郎鹿児島県知事(当時)が再稼働に同意した記者会見での発言です。(2014年11月7日)
伊藤元知事は新規制基準を非常に高く評価した上でこう言ったのです。「もし福島みたいなことが起っても、放出量は5.6テラベクレル。そして5.5kmのところは5μシーベルト。もう、命の問題なんか発生しないんですよね。」
ちなみに毎時5μの放射線はかなり危険なレベルですが、いまはそれは横におくとして、この発言の背景を読み解きたいと思います。

 (なお伊藤知事の発言については以下の資料を参考のこと。哲野イサクさんが会見動画を保存し文字起こしもしてくださっています。)
 <参考資料>川内原発再稼働“同意”記者会見 ―伊藤祐一郎鹿児島県知事 2014年11月7日
 http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/genpatsu/restart/sendai/restart_sendai_ito_20141107.html

2013年7月から適用された新規制基準は、この間、繰り返し述べているように「シビアアクシデント」=過酷事故を前提としたものです。放射性物質が原子炉から漏れて環境中に出てしまう事態を容認しているのです。
ただし漏れ出す放射性物質の量を減らしなさいとなっている。セシウム137だけで見積もっているのですが、福島原発事故で出たセシウム137を1万テラベクレルとした上で、その100分の1、100テラベクレル以下に抑えなさいと書かれているのです。
しかも「格納容器破損モードにおいて」と書いてある。放射性物質を閉じ込める最後の砦の格納容器が壊れたときに、漏れ出す量を100テラベクレル以下にせよと言うのです。

 (これは新規制基準の中の「実用発電用原子炉に係る炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策の有効性評価に関わる審査ガイド」14ページに書かれています。)
 https://www.nsr.go.jp/data/000213306.pdf

シビアアクシデントは、設計段階での想定を突破された事態です。しかしそのときの放射性物質の漏れを100テラにコントロールできるならそれはもう想定内です。
いや格納容器がどう壊れるかすら分からないのに対処できるとするのがおかしいし、さらにその量を福島原発事故の100分の1にできるというのはあまりに根拠がない。
そもそも福島原発はまだ放射線値が高くて内部に人が入れません。どこがどう壊れてだからどれだけの放射性物質がどのように出て行ったのか、実証できない段階なのです。それでどうして対策がたてられるのか。


関西電力による新規制基準の下での対応の説明(同社HPより)
これでどうして漏れ出す放射性物質を100テラ以下にできるのか、理解不能。

にもかかわらず九州電力は「5.6テラベクレルに抑えます」と言ったわけですが、一体なんの根拠があるのでしょうか。
しかしこれが独り歩きしだし、伊藤元知事の「もう、命の問題なんか発生しない」という発言につながったわけです。
「もう福島の事故の100分の1以下の事故しか起こらない」・・・この新たな安全神話が放射線計測の仕事を著しく軽視することにもつながっているに違いないと僕は思います。

分析を続けます!

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(1781)そもそもベントがある段階で原発はアウト 重大事故等対処施設などあってはならない 動画で解説しました。

2020年03月19日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200319 23:30)

3月16日午後1時に川内原発が停まりましたが、そもそも「特定」どころか「重大事故等対処施設」もシビアアクシデントが起こることを前提にしたもので安
全を保障したものではないのです。深刻な事故が起こりうることを前提にした原発など認められない。この点についてお話しました。

もりもり解説 そもそもベントがある段階で原発はアウト 重大事故等対処施設などあってはならない 
もりもりチャンネルvol.158 20200319
https://youtu.be/SZFh7KQTDUM

なおこの話はブログ「明日に向けて(1778)」の中から3番目の項目について解説しています。全体で3回の解説の最終回です。
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/7a8953bdfd8884c6c1e7ceadfc882e3c

#川内原発停止 #テロ対策 #特定重大事故等対処施設


コメント (2)
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(1780)特定重大事故等対処施設」は「テロ対策」以前のもの 動画で解説します!

2020年03月18日 17時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200318 17:00)

川内原発1号機が「特定重大事故等対処施設」が完成せず停まりましたが、この施設は「テロ対策」のものとされています。
しかしきちんと見てみるとそんなことはなくて、「テロ対策」の前の「重大事故=シビアアクシデント対策」のものでしかありません。
この点を動画で解説しました。

この内容は「明日に向けて(1778)」の2番目の項目です。全体で動画で3回の解説を行います。その2回目です。
今回も分かりやすく語れた自信があるのでどうかご覧ください。動画の中で使ったスライドも公開します。

もりもり解説 特定重大事故等対処施設は「テロ対策」以前のもの 
もりもりチャンネルvol.157 20200318
https://youtu.be/-EcpWkBESik

#川内原発停止 #テロ対策 #特定重大事故等対処施設

 

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(1779)川内原発1号機の停止は度重なる猶予を守れない中での理不尽なもの!動画で解説します!

2020年03月17日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200317 23:30)

川内原発1号機が「特定重大事故等対処施設」が完成せず停まりましたが、新規制基準(2013年7月)で決まったのに5年猶予されました。
ところが2018年7月でも完成せずまた延長に。その期限が17日で切れました。

なぜ停められたのか、他の原発はどうなるのかなどを動画で解説しました。
この内容は「明日に向けて(1778)」の1番目の項目です。全体で動画で3回の解説を行います。その1回目です。
分かりやすく語れた自信があるのでどうかご覧ください。動画の中で使ったスライドも公開します。

もりもり解説 川内1号機停止について
https://youtu.be/ZMSjOLGebBc





































続く

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(1778)川内原発1号機、明日(16日)停止予定、他の「特重施設」未完成原発も停めるべきだ!

2020年03月15日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200315 23:30)

川内原発1号機が停まります

鹿児島県薩摩川内市にある川内原発1号機が明日16日に停まります。「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の完成が「期限」の17日に間に合わないからです。
川内1号機だけではありません。川内2号機が5月20日、高浜3号機、4号機が8月2日、10月7日に停まります。
他の稼働中の残りの4基もこの施設を完成させておらず、いずれ期限を迎えます。玄海3号機、4号機は2022年8月24日と9月13日。大飯3,4号機も同年8月24日。裁判所の命令で停止中の伊方3号機も2021年3月22日が期限です。

稼働している原発はどれもとても危ないので川内1号機の停止は喜ばしいことですが、新規制基準で設置が決められたはずの施設が、福島原発事故後1つも完成してないのに稼働が続けられてきたことがあまりにひどい。
しかももともとこの施設は、新規制基準施行(2013年7月)後、すぐに設置されなければならないのに、5年もの猶予が与えられたものだったのでした。期限は2018年7月でした。
ところが電力会社がそれを守ることができなかったので、2016年1月に原子力規制委員会がさらに「本体施設工事認可後5年」と猶予を伸ばしたのでした。そこまでしたのにどの電力会社もこの施設を作らなかった。

このため原発はどんどん停まります。1年ぐらいは動かせない。関電は今になって停止後数か月で施設を設置して再稼働させると言い出しましたが、それならなんでもっと早く作らなかったのか。
ともあれ夏までに3基が停まります。玄海も3号機、4号機が9月と12月から定期点検に入り、大飯3、4号機も8~10月にかけて定期検査の時期を迎えるので、夏には全国の稼働原発は3基になり、秋に2基、その後、定検が長引けばゼロになる可能性もあります。
もともとこんな状態で、巨大会場でエアコンを効かせて東京オリンピックを行おうととしていたのですから、原発などまったくいらないことは誰の目にも明らかです。


川内原発1号機2号機 守田撮影 2018年1月


原子力災害対策への市民側からの取り組みを最も早くから行ってきた末田一秀さんと


鎌仲さん、岩田さんも一緒でした!


特重施設はほとんどが「テロ対策」ではなくシビアアクシデント対策用施設だ

ところでマスコミは原発停止の理由を「テロ対策で設置を義務付けられた特重施設の完成が間に合わないため」と報じていますが、大きな間違いです。原子力規制委員会による「詐欺に近い言い換え」と言った方がいい。
この点を説明します。九州電力の図が分かりやすいので使いましょう。下に示したPDの2ページを見て下さい。黄色いところが「特定重大事故等対処施設」です。

玄海3,4号機の特定重大事故等対処施設の設置について
2018年1月25日 九州電力株式会社https://www.pref.saga.lg.jp/kiji00359890/3_59890_82783_up_ugje486o.pdf


このうちの「テロ対策」施設は「緊急時制御室」のある黄色い囲みのところです。テロで中央制御室が使えなくなった時の備えとされています。これももともと「免震重要棟」といって、震度7クラスの地震でも倒壊しない指揮所を作れということから始まっているので「テロ対策」というより自然災害などによる重大事故対策なのです。
とくに「フィルターベント」は、地震などで原子炉が壊れ、格納容器内の圧力が高まって限界を越えそうなときに、放射性物質を含んだ内側の気体をフィルターをごしに外に出す装置のことです。「テロ」以前の重大事故対策施設なのです。「窒素ボンベ」も本体内に置かれたもので「テト対策」とは言えません。
実はこのうちの「フィルターベント」が「テロ対策」とされているのは「加圧水型原発」だけのこと。福島原発と同じタイプの「沸騰水型原発」ではフィルターベントは「テロ対策」に入っていません。

ではなぜ「テロ対策」に組み入れたのか。理由は単純。福島原発と同じタイプの沸騰水型はすぐには動かせないので、西日本に多くある加圧水型から動かすためです。
原発がテロを受ける可能性を人々がそれほど感じてないことにつけこみ、「テロ対策なら伸びても仕方ないか」と思わせて、対策までに大きな余裕をあたえるためでした。
ところが肝心の電力会社が一向に対策を進めませんでした。それで新規制基準施行後5年の猶予(2018年7月まで)のはずが、2016年1月に「工事申請から5年」に代えられてしまいました。

これまたひどい伸ばし方で、工事申請をすぐにしない方がかってより猶予ができる。このため最初に申請した川内1号機が明日停まることに対し、最後に申請した玄海、大飯は2022年夏まで動かせるとされているのです。
「詐欺に近い言い換え」です。要するに加圧水型原発は、福島原発事故の前の旧規制基準のまま動いているのです。新規制基準など適用されていない。
あまりにひどい。新規制基準を守ってないすべての原発をいますぐ停止すべきです。


そもそもベントがある段階で原発はアウト!

それではベントがあればいいのか。否。ベントがある段階で原発はアウトなのです。何度も述べてきた重要ポイントです。元東芝の格納容器設計者、後藤政志さんに教わりました。
原子炉の中には「圧力容器」があります。その中でウランの核分裂が行われ水を沸騰させて、タービンで発電しています。
この圧力容器を格納容器が包んでいます。その役割は、圧力容器内で事故が起こり、圧力が高まった時に放射性物質を含んだ気体を格納容器内で受け止め、封じ込めることにあります。環境を守るためです。

ところがベントの役割は、その格納容器を守るために放射性物質を含んだ気体を外に抜くこと。完全な自己矛盾なのです。このため後藤政志さんはこの装置を「格納容器の自殺装置」と呼びました。
要するにベントは格納容器が技術的に確立してないことの象徴なのです。社会的常識から言えばこんな設備のある施設は建設審査をクリアできません。だからアメリカで原子炉が開発されたときにはベントはついていなかったのです。
ところがたくさんの原子炉を売って使われだした後で、コンピューターシミュレーションで格納容器が崩壊する可能性のあることが明らかになり、後付けでベントがつけられはじめたのです。

本来、原子力産業はこの段階でアウトだったのですが、後付けのベント装置でごまかして生き延びてきたのです。
そのベントが始めて使われたのが福島第一原発事故でした。ところがベントは成功しなかった。電源を失っていてバルブが開かなかったからです。それで1号機と3号機は圧縮ポンプで空気を送るなどしてこじあけました。
ところが2号機は最後までバルブが開かず、最後までベントができなかったのです。ではどうして格納容器が大爆発しなかったのかというと、実は思ったほどの強度がなくて、下部のどこかで裂け目ができて、内部の気体が漏れ出したからでした。

その点では格納容器は二重三重にポンコツだったのです。そのために大爆発しなくてすみましたが、放出された放射性物質の9割は2号機のこの裂け目から出てしまいました。
ベントは成功などしなかった!ベントがあるだけで格納容器が未確立な原発は動かしてはいけないのですが、さらに後付け装置のベントなどうまく働く保障などないのです。
恐らくは電力会社が一番そのことを知っているから設置を渋ってきたのでしょう。しかしそれなら危険な原発を停めることこそが電力会社の責任です。

シビアアクシデント対策ができていないの「テロ対策」と言い換えているのもひどいことなら、そもそも「シビアアクシデント」を起こしうる施設を運用していることそのものがおかしい。
「原発を即時停めよ!」という声を大きくしていきましょう。

ベントのことなどを後藤政志さんと対談
2015年8月14日
https://www.youtube.com/watch?v=tQEaAEaBNHE

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(1777)大震災と原発事故から9年、私たちはたくさんの原発を止め、大いなる変革の礎を築いてきた。さあ前に大きく足を踏み出そう!

2020年03月13日 08時30分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です(20200313 08:30)

この9年、私たちはたくさんの原発を止めてきた!

昨日11日で東日本大震災と福島原発事故から9年が経ちました。
あらためて大震災と原発事故でお亡くなりになられたみなさまに心からの哀悼の意を捧げます。
ご遺族のみなさま、近親者のみなさまにもお見舞い申し上げます。

事故の収束のため、放射線防護のために奮闘してきたみなさま、率先避難者として危険地帯を飛び出されたみなさま、さまざまな形で事故と格闘してきたみなさまに心からの感謝を捧げます。
さらに僕自身を含んでこの9年間、奮闘してきたすべてのみなさまにエールを送ります。
私たちはよく頑張ってきた!僕はそう思います。その頑張りは、日本のあり方を深い所から変える大きな動きに連なりつつあります。

こう書くと、安倍政権のあまりの酷さに憤り続けている方たちから「日本はこんなに悪くなっているのでは」という指摘が聞こえてきそうです。
お気持ちは分かります。確かにそういう側面もたくさんあります。でも「原発」を視座に見た場合、戻しようのない大きな変化があります。
私たちは2011年3月の時点で54基あった原発を次々と停め、廃炉に追い込み、21基(もんじゅを入れれば22基)も削減してきたのです。

大震災後の気仙沼を訪れて 2012年1月18日 守田のカメラにて撮影

原子力行政にもはや未来はない!

この点を詳しく見るために資源エネルギー庁ウェブサイトの「我が国における原子力発電所の現状」を参照しましょう。
日本で作られた原発は全部で59基。このうち、ふげんともんじゅをのぞいた商業原発は57基で、東海原発と浜岡原発1,2号機の3炉が老朽化して廃炉が決まっていました。
その後に私たちが廃炉にしたのは21基なのでこの表には24基と書かれています。しかし本当はここにもんじゅとふげんも加わります。とくにもんじゅの廃炉決定は、事実上、核燃料リサイクルの未来を閉ざしたことなのでとても大きい。
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/001/pdf/001_02_001.pdf

現在稼働中(定期点検で停止中も含む)の原発は9基と書かれています。川内2、玄海2、伊方1、高浜2、大飯2です。
しかし伊方原発は裁判で停止命令が出ましたから当面、動かすことができません。さらに川内1号機は「特定重大事故等対処施設」の建設が間に合わないので3月17日夜に止まります!動かせるのは実質7基しかないのです。
しかもそれらも今後、同じく「特定重大事故等対処施設」が間に合わないため、停止が不可避な状態にあります。

どうしてこうなったのか。私たちが頑張って脱原発を叫んで行動してきたために、国が規制を強化せざるをえなくなり、それだけでコスト高になって立ちゆかなくなったからです。
さらに大飯原発運転差止の画期的な判決を出した福井地裁(樋口英明裁判長)をはじめ、原発の運転を認めない判決が幾つか重なり、経営リスクがさらに大きくなったからです。
そんな中で原発輸出も難しくなり、アメリカ・ベトナム・台湾・リトアニア・英国・トルコへの輸出がすべてとん挫しました。アベノミクスの柱の一つが折れ、原発メーカーの東芝が事実上倒産しました。


「我が国における原子力発電所の現状」資源エネルギー庁ウェブサイトより


率先避難者を中心とする原発事故サバイバ―こそがこの地平を切り開いた!

これらはすべて2013年に政権を民主党から「奪還」した安倍自公民政権が、圧倒的に議席を占有している中で実現されてきたことも特筆に値します。
その点でみなさん、選挙以外の活動、デモやさまざまな行動の持つ大きな意義に着目してください。
私たちがアクティブに動いてきたからこそ、国会の中がどうであれ、たくさんの原発が廃炉になったのです。

この民衆の力の源泉となったのは、原発事故でもっとも苦しんだ福島や東日本の人々の奮闘でした。
とくに僕が讃えたいのは率先避難者として日本中に飛び散った方たちです。一方で福島で、東北で、関東で、家に籠城するなどして放射線防護を行ってきた方たちも僕は大きなエネルギーをくださったと思って尊敬しています。
みなさんの声が本当に日本中にこだました。その中でこそ、大きな脱原発運動が起こったのです。この運動の根底の力となったのはどこでも避難者、被災者の方たちなのです。

すべての政党のみなさん、進歩的と自負している団体のみなさん、ぜひこの点にご着目ください。
残念ながら既存の組織の中で、避難の必要性を叫んだところはどこもなかったのです!避難者たちはそれを自ら乗り越えて動き、新たな可能性を作りだしてくれたのです。
東日本大震災と福島原発事故から9年、僕は率先避難者と被災者のみなさんに心から拍手を送りたいです。


原発賠償京都訴訟に集った率先避難者のみなさん 守田撮影 講演用スライドから


日本は、世界は、大変革期に入った!

みなさま。奇しくも今年の3月11日、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスがパンデミック(世界的流行)になったと宣言しました。
世界が揺れていて株価がどんどん下落しています。ウイルスだけでなく恐慌によっても多くの人が命を落とすかもしれない大変な事態に向かいつつあります。
しかし実はこうした大きな変革の予兆はこれまでもあちこちで語られていました。きっかけはウイルスの流行ですが起こってることは、あまりにも歪んで爆走してきた資本主義のどんづまりです。

この大きな混乱の中で新たな道を切り開くために、実はこの間、大きな出会い、新たなつながりの醸成がものすごい規模とスピードで進んできました。そんな話をあちこちで聞いてきました。
僕もその何かに押されてヨーロッパにいき、アメリカにいき、日本各地を歩いてたくさんの人々と交わってきました。
昨年後半から年始にかけて京都市長選に奔走し、これまで出会ったことのなかったたくさんの人々と協働を共にしたのも、僕にはその一環だったという皮膚感覚ともいうべき実感があります。

そうなのです。現代資本主義は矛盾の限界点を越えた!世界は大きな変革期に入った。そう思います。
この2020年を私たちはこの9年の大奮闘の中で迎えました。だから僕はいま必ず大きな変革を私たちの手で実現できるという実感があります。だから僕もいま大きく飛躍します!
みなさま。世の中を良くしましましょう!未来を切り開きましょう。人類史上に残るであろう大きな転換点です。事故から9年。そこで起こったすべての苦しみ、悲しみ、嘆きを、引き受け、背負い、力に変えて、進むべき時です!

頑張りましょう!
僕はこれからの奮闘を、野蛮な争いに明け暮れてきた人類前史を閉ざし、愛と友愛に基づく人類後史の扉を切り開くことにつなげたい。
あなたとともにです。ぜひ一緒に歩みましょう!


ポーランドでの反核国際会議にて 2014年10月 これがヨーロッパ反核サマーキャンプの取り組みにつながった

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明日に向けて(1776)新型コロナウイルス感染拡大を抑制し「医療対応の限界」を越えさせずに危機を乗り越えよう!

2020年03月10日 13時00分00秒 | 明日に向けて(1701~1900)

守田です。(20200310 13:00)

初めは甘かった政府の認識

新型コロナウイルスに関する続報です。この問題に対し議論が錯綜している面があるので、整理のために時系列に沿って振り返ってみました。

この病は12月8日に中国で発見され、武漢市を中心に感染が拡大。医療崩壊が始まる中、政府が1月23日に武漢市を封鎖、全国から医療者を派遣し治めようとしました。
このとき厚生労働省はこう国民に呼びかけました。
「国民の皆様におかれましては、過剰に心配することなく、マスクの着用や手洗いの徹底などの通常の感染症対策に努めていただくようお願いいたします」
中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎について 
令和2年1月23日版
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09065.html

これらを通じて「新型コロナウイルスは季節性のインフルエンザと同じようなもの」という認識が広がりました。首相官邸も「過剰に心配することなく」という厚労省の医師たちの言葉に安心してしまい、武漢からの渡航に警戒しただけで、中国が1月27日より

自国民の海外旅行を禁止するまで観光客もほとんど制限しませんでした。
1月30日に「対策本部」を立ちあげ、3月7日まで18回会合を開いたものの毎回10分か15分。小泉環境相など、大臣が次々欠席するなどやる気がないのは明らかでした。
こんな中で、2月3日からのダイヤモンド・プリンセス号への関わりも認識が甘く、感染者の拡大を防げず、10日135人、17日454人、26日705人と増やしてしまいました。

ただ2月の中旬ぐらいのまでは政府だけでなくマスコミの多くも危機の本質を捉えることができなかったのではないか。申し訳ないですが僕自身もそうでした。この頃はまだ何が危機かよく分かっていませんでした。


武昌病院の劉智明院長(51歳)の死去を報じるANN 2月18日


政府が認識を変えだしたけれど・・・

その後、政府のトーンも変わりはじめました。10日にイベントでの注意を勧告。17日に風邪気味の症状がある方はすぐに来院せずに4日目以降に・・・という受診の仕方の目安が出されました。さらに2月20日により強いイベントの自粛要請が打ちだされました。

認識の変化がはっきりと印象付けられたのは2月24日に「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」が見解を表明し、感染を防ぐために「今後1~2週間が瀬戸際」として以下の点を提言したことによってでした。
「感染が急速に拡大しかねない」「全ての人に新型コロナウイルスの検査をすることは有効ではない」「風邪や発熱などの軽い症状が出た場合には自宅で療養を」「すぐに医療機関を受診しないで」「感染拡大のスピードを抑制し重症者の発生と死亡を減らす」

26日には安倍首相によって自粛要請のトーンが強められ、27日に小中高の休校要請も出されました。しかしあまりに唐突で、しかも専門家会議への諮問も経ていなかったことで大混乱がおきるばかりでした。

このとき僕も「この要請はあんまりなのではないか」と指摘しました。この頃、明らかになっていたのは「この病は8割は軽症や無症状ですむ、若年層で重篤化することはまれ、リスクが高いのは高齢者と既往症のある方」という点だったからです。
安倍首相は「子どもを守る」としか言わなかったので「これでは誤解が広まる」と危機感を持ち、「明日に向けて(1774)」の記事を書きました。

このウイルスについての僕の基本認識はこのときと今も変わりません。この点は社会的にも大きく共有されています。3月7日付の東京新聞でも専門家会議に参加している日本感染症学会理事長の舘田一博・東邦大教授の次の言葉が紹介されています。
「(この病は)季節性インフルエンザと同等か、少し強いぐらいだろう。ただ、高齢者で肺炎の合併症が高いことには注意しなければならない」。

ただそれではなぜ学校を休みにしたり、イベントを自粛したりする必要があるのか、多くの人々にはよく見えにくい。その後僕は、恐れるべきはアウトブレイクに伴う医療崩壊だと気が付きましたが、この点が政府からいまもきちんと説明されてない。多くの人の議論が錯綜しているのはこのためです。

専門家会議の提言 2月24日


目的は感染拡大を止めることではなくスピードを遅らせ「医療対応の限界」を越えないようにすること

この点で極めて象徴的な二つの図を紹介します。専門家会議が出したものですが、1枚はNHKでの解説で使われ、1枚は厚労省の「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)」に載せられています。
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/view/
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html#Q1

NHKで使われたものは2月24日ニュース7で報道され、専門家会議の尾身茂副座長の解説動画の中で示されました。


急激に感染が拡大する山と緩やかな山が示され、「感染拡大のスピードを抑制すること」が目的とされていますが、これだけではなぜスピードを遅らせなければならないのかが十分に見えてこない。NHKは大事な点を省いてしまっていました。

厚労省のHPに載ったものには重要な書き込みがあります。山を横切っている点線で「医療対応の限界(例:病床数)」と書いてあります。

一つ目の山はこれを突破してしまっていますが目指すべき二つ目は少し上回るにすぎない。「医療対応の限界」を越えないことが核心なのです。

点線は上に押しあげて「体制強化」にいたることが目指されています。感染症病床を増やし、ワクチンを開発することですが、ここまでの時間稼ぎが必要なのです。
新型コロナウイルスは、感染した軽症者・無症状者が無自覚に出歩き、発症前から感染させてしまうので防ぐのが難しい。だから一気に患者が増え「医療対応の限界」を越える可能性があるのです。

さらに指摘したいのは、長年の経費削減の中で感染症対策費が削られ、力がそれほど高くないこと。病床も少ないことです。東京都124床、全国1758床しかない。それがクルーズ船対応でも多数使われている。
感染症指定医療機関の指定状況(平成31年4月1日現在)―厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou15/02-02.html

政府は病床を5千まで増やし、一般の病院にも「指定感染病」患者を受け入れてよいと通知しましたが、感染症対策がなされていないと院内感染が起こってしうのでそう簡単には増やせない。


みんなで医療を支えて新型コロナウイルスの試練を乗り越えよう!

医療費削減策によって日本の感染症対策は強くない。しかし医療全体は切り縮められてはきているものの、まだ世界のトップクラスです。
感染症病床は少なくても、病床全体としては1月末の武漢(1108万人)が病床1万床だったことに対し、人口が少し多い東京都(1394万人)は、高度急性期病23563床、急性期病院46372床があり、回復・慢性期病院も持っています。(感染症病床は124床)
その上、日本の医療は水準が高く、かかりやすく、安い。平等に同じ医療が受けられます。

多くの国と比較すると日本は医療天国です。救急車がやってくる速さも世界トップクラス。しかも多くの国が有料なのに日本は無料。ただしこの良好な医療を保つために、医療者たちの過労状態も世界トップクラスなのが日本の医療の現状です。
今も約60人の重篤な方に人工呼吸など高度医療を施して救命してくれている。素晴らしい。諸外国と比べても多くの救命に成功している。何としても守るべきはこの体制です。
東京都における医療機能ごとの病床の状況(許可病床)―東京都福祉保健局(2017年) http://www.byosho.metro.tokyo.jp/2017/index.html

専門家会議が「心配だからとすぐに医療機関にこないでください」「全ての人に新型コロナウイルスの検査をすることは有効ではありません」と語ったのももっぱらこのため。ところが政府が説明しないまま安倍政権への不信が重なって「なんで検査をどんどんやらないんだ」という怒りの声も高まっています。
もちろん医師が必要と判断しても検査が受けられなかった当初の混乱はただす必要がありました。保険適用によって保健所を介さず医師の要求で検査ができるようになったのは進歩です。

しかしこの病は「指定伝染病」なので陽性となったら軽症でも14日間も隔離しなくてはならない。すると感染症病床が少ないのですぐ埋まってしまうのです。一般病院で感染症病床を増やそうにもまだ時間がかかる。だから感染が急激に拡大し、患者が一気に増える事態を防がなくてはいけないのです。

いかがでしょうか。守るべきものが見えたでしょうか。
みんなで頑張っていきましょう!

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする