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明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1693)対米へつらい外交の直接の目的は安倍政権の延命、しかし自衛隊の攻撃的な部隊への再編も進行した・・・!

2019年05月29日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20190529 23:30)

トランプ大統領が日本でのすべての日程を終えて帰国しました。
安倍首相はいつにもましてひどい対米へつらい外交を続けましたが、マスコミが連日、安倍政権の意図に沿った「歓迎ムード」報道を続け、皇室もてひどく政治利用されて和やかムード演出に使われてしまいました。
今回のトランプ大統領訪日、問題点がたくさんあり、検証が問われます。安倍首相とトランプ大統領が目指したものは何だったのかという点から分析を行ってみました。

● 異例の長期滞在で至れり尽くせりの歓待・・・

まず今回の日程を再確認したいと思います。(首相と大統領の肩書を省略します)

25日、トランプ来日。都内に宿泊。

26日、安倍・トランプが千葉県でゴルフ。 夕方、両国国技館で大相撲千秋楽を観戦。 都内の居酒屋で安倍・トランプが非公式夕食会。

27日、安倍・トランプが皇居で天皇・皇后と会見。 迎賓館で日米首脳会談。 朝鮮による拉致被害者家族と面会。

28日、安倍・トランプが海自護衛艦「かが」に乗船。 自衛官と米兵に訓示。 トランプは米強襲揚陸艦ワスプにも乗船。 帰国。


時事コム 20190522より

安倍首相が狙ったのは外交の連続的失敗を隠しつつ軍拡(解釈改憲)を進めること!

この異例といえる「へつらい外交」で安倍首相が目指したものは何だったのでしょうか。
一番に指摘したいのは「相次ぐ外交の失敗を隠すこと」にあったに違いないという点です。アメリカとの「親密関係」の演出はそのために必要だった。もちろん選挙対策としてもです。
実際には安倍外交は失敗ばかりで、民間の社長なら更迭されても当然です。

一つ目はなんといっても原発輸出計画の総破たん。首相官邸肝いりで進められたこの政策、「トップセールス」とも言われましたが、アメリカ・台湾・ベトナム・リトアニア・トルコ・イギリスと連続して大失敗です。
二つ目に、朝鮮半島での劇的な和平の進展でも蚊帳の外に立ち尽くしている。「条件なしでの対話」へと転換しましたが、朝鮮は見向もしてくれない。拉致問題も解決とは程遠いし韓国との関係までも悪化するばかりです。
三つ目に、ロシアとの領土交渉にも完全に失敗し「北方領土返還」のめども立っていないし、四つ目にそもそもトランプ大統領にTPPから脱退され「復帰を求める」とか言ったものの全くできておらず、二国間交渉を強いられるありさま。


朝日新聞20181218より

理由ははっきりしています。国会をみれば分かるように他者に高圧的で傲慢、都合が悪いことは無視したり嘘でごまかす安倍首相に、外交能力などあるわけがないからです。
海外の要人は忖度などしてくれないし自民党内恐怖政治だって通用しない。だから何一つ成功しない。そもそも人を説得する態度が安倍首相には大きく欠けています。
この失態続きをを隠して生き延びるためのフィーバーが今回のへつらい外交の目的の一つだったのです。

ただ私たちは他者と対話のできない安倍首相が、よりアメリカの軍事体制への傾斜を強めたのが今回のへつらいの結果でもあったことを見ておく必要があります。
その点を明らかにするために、次にトランプ大統領の狙ったものについて分析していきます。


朝鮮に対して対話してはならないと強調する安倍首相 20170429 ロンドンにて 出典不明

トランプ大統領が狙ったのはアメリカ製品の売りつけと日米軍のさらなる一体化だ!

トランプ大統領は安倍首相の狙いに全面協力したわけですが、もちろん大きな見返りが得られるからです。大きなことは三つ。一つは農産物に対する関税を引きさげさせ自国産品をたくさん売り込むこと。
首脳会談後になされた「貿易交渉で大きな進展があった。7月の選挙後を待つ。大きな数字を期待している」とのツイートは支持者向けのアピールでもあったのでしょう。
もう一つは欠陥飛行機であるF35の購入継続の確約をとること。同盟国の多くが購入見直しを始める中で、同機が海に墜落しパイロットも機体も行方不明なのに、なんの文句も言わずに購入継続を表明する日本はアメリカにとって「極上の客」です!

ただ注意が必要なのはF35が欠陥機であることだけが問題ではないことです。むしろF35の導入により自衛隊が「専守防衛」をさらに踏み越えていくことになることが問題なのです。
この点の大きなポイントとして両首脳による自衛隊の護衛艦「かが」への乗船があったことを見ておく必要があります。「かが」はF35改型であるF35Bを載せるために改修中の艦船です。
「かが」は「空母化」を考えて作られたものの戦闘機を発進させるカタパルトがないし甲板の長さも足りない。ところがF35Bは短距離離陸や垂直着陸ができるので使えるのです。トランプ大統領にとってF35Bの絶好の売り込みの場でもあります。


護衛艦「かが」 日経新聞20190528掲載のweb動画より

しかしここには重大な問題が介在しています。日本政府はこれまで「他国への攻撃能力を有する空母保持は憲法違反」と言ってきたからです。「かが」へのF35Bの搭載はこれに反することになる。またしても解釈改憲です。
いやそれはF35そのものに言えることなのです。この機は攻撃力がこれまでのものより格段に高く、他国攻撃可能な巡航ミサイルも搭載できます。「専守防衛」のためとはとても言えな攻撃性を持った兵器なのです。
その点でトランプ大統領の狙いは、F35を多数売りつけて自衛隊の攻撃性を増し、米軍の補完部隊として実戦使用する道を広げることにもあったと言えます。その象徴として「かが」船内で両首脳による米兵・自衛官への演説が行われたのでしょう。


「かが」が改修されることで「日米両国が」より広い領域を守れると強調するトランプ大統領
日経新聞web上動画より

私たちはこの点をこそ批判しなくてはいけません。トランプ訪日でなされたのは、農家を危機に追い込む貿易合意、武器の爆買の継続合意とともに、自衛隊を米軍に差し出すことを前提とした攻撃力の増強=憲法のさらなる骨抜き化でもあったのです。
安倍首相の側から言えば、外交がまともにできないがゆえにこそ、ますますトランプ大統領にすり寄ったとも言えるでしょう。そのために自衛隊の攻撃的な軍への再編がますます進められつつあるのです。
こんなこと、まったくもって許せないし、もっと鋭い暴露を重ねてこの流れをひっくり返さなくてはいけません。さらに分析を続けます・・・。


「かが」で演説するトランプ 東京新聞20190528より

続く

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明日に向けて(1692)安倍首相はトランプ大統領との貿易交渉内容を選挙前に明らかにすべきだ!

2019年05月27日 09時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20190527 09:00)

トランプ大統領が来日しています。ゴルフ、大相撲、居酒屋と大接待が続いています。 ここで大変なことが公然と語られました。貿易交渉で安倍首相から大幅な譲歩を引き出したトランプ大統領が「参院選が終わるまで待ってやる」と言ったのです。 あまりといえばあまりにひどい。安倍首相は交渉内容をただちに明らかにして、選挙で信を問うべきです。

● 「夏の参議院選挙が終わるまでは妥結を急がない」の意味するもの

昨日の安倍首相とトランプ大統領の対談についてANNは以下のように報じています。 「トランプ大統領は、懸案の貿易問題で日本に対してアメリカ産の農産品の輸入拡大について確約するよう迫るものとみられます。 トランプ大統領:「きょうは安倍総理大臣と貿易と安全保障などについて話し合った。とても有意義な日だった。あすも同じように実り多い日となるだろう」 日米の貿易交渉について、トランプ大統領は夏の参議院選挙が終わるまでは妥結を急がない意向を示しています。 ただ、選挙の後には日本がアメリカ産の農産品の輸入を大幅に拡大することに期待感を見せていて、27日の首脳会談でも日本側に確約を迫るものとみられます。 一方、北朝鮮を巡っては拉致問題への協力や日朝首脳会談の実現に向けた日本政府の取り組みに理解を示すものとみられます。」

トランプ大統領 農産品の輸入拡大の確約を迫るか ANN 5/27(月) 5:57配信
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000155516.html

これどういうことでしょうか。 明らかに日本にとって、とくに日本で農の営みにいそしむ人々とその恩恵を受けている私たちにとって、大変、不利な約束をトランプ大統領が安倍首相に強いているわけです。 しかしその内容が明らかになると安倍首相が選挙で不利になることは目に見えているから「参院選が終わるまで待ってやる」と言っているわけです。 反対に言えば「待ってやるからそれなりのことをしてくれるだろうな」と恫喝していることにもなります。

● 安倍首相は会談内容を選挙前に明らかにすべきだ!

ある意味でこれはトランプ大統領の失言でもあります。だってこれ、植民地宗主国の主の発言のようなものだからです。 「選挙前には明らかにしない!」 つまり選挙までは国民を欺いていて、その後に日本に不利なことを通せとぬけぬけと語っているからです。 そもそも日本にとっても喜ばしいことなら安倍首相の方から選挙前に明らかにするはずです。
もしかするとこれはトランプ流交渉術なのかもしれません。「選挙前に言われたくないだろう?」と貸しを作り、それをあらかじめ公言してしまうことで、日本政府を逃れられない状況に追い込んでいこうというのかも。


しかしこれ、日本の政治家とマスコミへの重大な挑戦です。ものすごい侮辱でもあります。 明らかにトランプ大統領は交渉に選挙を使っている。いや常に外交交渉では相手の国の状況を「利用」はするでしょう。しかしここまで露骨に言うことなどそうあることではありません。 もやはこうなったら安倍首相はトランプ大統領に迫られている内容を選挙前に明らかにすべきです。野党とマスコミも「交渉内容を明らかにせよ」と追及して欲しい。だってトランプ大統領がこれだけ憶測可能な形でリークしているのですから。

いや野党だけではない。与党のみなさんにだってこれはあまりに侮辱的な行為なのではないでしょうか。「アメリカに都合のいいことを選挙が終わってからやれ」と言われているのですから。ぜひこの点を与党からも首相に問うていただきたいです。 こんなことを「はいはい」と聞くのであればそれはもう植民地そのものです。与党は植民地に据えられた操り人形でしかなくなってしまう。あまりにも屈辱的ではないでしょうか。 「慰安婦」問題や韓国元徴用工問題などではあんなに傲慢な対応をとるのに、アメリカに対してはここまで平身低頭していく。「恥ずかしくありませんか」「そんなことは嫌ではありませんか」と与党の方たちに問いたいです。

続く

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明日に向けて(1691)原発から命を守るために―7 安倍政権の原発輸出路線が完全に行き詰った!(「ようとく」用12月原稿から)

2019年05月17日 08時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20190517 08:00)

京都市左京区養徳地区で配られている月刊紙『ようとく』に連載中の「原発から命を守るために」の7回目をお届けします。昨年12月に原発輸出のとん挫が明らかになった時に書いた原稿です。 この後半で僕は「輸出のとん挫は安倍政権の終わりの始まり」と書きました。いま考えてみてやはりそうだと思います。みなさん、アベノミクスはボロボロで何一つ成功してない!だからいま、頑張りましょう!驕る平家は久しからず!

● トルコとイギリスへの原発輸出がとん挫

連載7回目を迎えた12月、喜ばしい報告が続けて入ってきました。 一つは日本政府と三菱重工がフランスの旧アレバ社と組んで行おうとしていたトルコ・シノップへの原発輸出が断念されたこと、もう一つは同じく日本政府と日立製作所が行おうとしていたイギリスのアングルシー島への原発輸出が断念されたことです。 理由はどちらも建設費が高騰して採算が合わなくなったこと。福島原発事故後に私たち日本の民衆を先頭に世界中で原発に反対する運動が高揚したため、安全対策を強化せざるを得なかったものの、それでもう採算割れに至ってしまったのです。 その意味でこれは私たち民衆の頑張りの結果です。私たち民衆が勝ったのです!


朝日新聞 2018年12月18日記事より


● アベノミクスの柱の一つが完全に折れた

同時に原発輸出のとん挫は安倍政権の終わりの始まりであることも捉えておきましょう。なぜかと言えば安倍首相が自らの経済成長戦略の大きな柱の一つとしてきた原発輸出計画が完全に行き詰ってしまったのだからです。 トルコ、イギリスでのことだけではありません。その前にリトアニア、台湾、ベトナム、アメリカと次々と原発輸出路線は暗礁に乗り上げていたのでした。 だからいま、私たちがより大きな声をあげれば、海外に輸出などとてもできない原発を、国内でもすべて止めていく展望も生まれるし、横暴を極める安倍政権を倒すことだってきっとできます。頑張りましょう!


アベノミクスの柱が折れたことを報じるテレビニュース ANN

続く

なお明日18日に舞鶴市で講演します。 詳しくは以下をご覧ください。

明日に向けて(1689)原発は地震に対して極めて脆弱。すぐに停めるべきだ!(18日舞鶴市でお話します) https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/15be82a7a3f36fc8d91414f08dbaeb12 https://toshikyoto.com/press/3266

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明日に向けて(1690)いまこそ被曝の危険性を捉え返そう!(6月1日に高槻市でお話します)

2019年05月16日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20190516 23:30)

6月1日(土)に高槻市でお話します。高槻市民放射能測定所6周年の集いにおいてです。午後2時から高槻市上牧の本澄寺本堂にてです。測定室を抱えてくれているお寺さんです! タイトルは「フクイチ8年の今、脱原発の課題」ですが「いま一番話したいことを話してください」と言ってくださったので福島原発事故から8年を踏まえ、かつ脱原発を進める上での最も重要な課題である被曝防護についてお話しようと思います。 今回はお話することの要点を述べたいと思います。

● 原発ゼロへの道をさらに進むために被曝と立ち向かおう!

福島の事故からの8年間でこの国の中では脱原発運動がとても大きく進みました。事故前に54基あった商業用原発は現在33基にまで激減。すでに21基を廃炉に追い込んでいます。(福島原発事故前から数えると24基) これとは別にもんじゅの廃炉も決まり「核燃料リサイクル」の道も完全に閉ざされました。原発産業の生き残りをかけてきた原発輸出政策も全部破産。私たちは確実に「原発ゼロ」への道を歩んでいます。 ただしまだ9基の原発が動いていて大事故の可能性があるし、他にも再稼働が狙われてもいるので楽観していいわけではありませんが、私たちは自分たちの力を信じつつ、さらに加速度をつけて歩んでいきましょう。

そのために必要なのは僕は放射線防護の観点をもう一度きちんと広げていくこと。放射線被曝をめぐる数々の嘘をきちんと解き明かし、反論し、打ち破っていくことだと思っています。 二つの理由があります。一つには原発だけでなく核兵器廃絶の道をもっと進む必要があること。他方で今後廃炉作業と向き合い、使用済み核燃料をはじめとした膨大な放射性廃棄物と向かい合っていかなければならないからです。 その点で被曝との対峙はまだまだ続きます。いま生きている私たちの世代が誰もいなくなってもずっと続きます。申し訳ないことながら人類は長きにわたって放射性廃棄物と向き合っていかなくてはならない。

その際、安全管理のために最も大事なのは、放射線被曝の危険性をきちんと把握することです。それは未来世代への責任をかけた行いでもあります。 しかしいま「被曝はどれぐらい危険なのか」という点について、社会的にはものすごく大きな開きがあり、脱原発を唱える民衆の間ですら違いがあります。 なぜそうなのかの考察を6月1日は話しの中心にすえたいと思います。被曝影響から目をそらさせるために作られた文科省発行の『放射線副読本』なども見すえてです。


「原子力発電所の現状」20190315 経産省資源エネルギー庁HPより これだと稼働なのうなのは36基になるが未完成ないし未稼働の大間・東通・島根3号が入っているため。

● 被曝影響を捉える上で一番大事なのは原爆被害から考えることだ!

ここでポイントとなることを書いておきます。被曝影響について社会的見解が大きく分かれているのはなぜか。答えは核エネルギーの使用が原爆から始まっていること、放射線と人体の影響の考察もそこから始まっていることの中にあります。 民間人の大量虐殺という明らかなる戦争犯罪の中で「放射線と人体」の影響の研究は進んできました。原爆を落とした加害者であるアメリカが被害者である被爆者を調べたことがデータの基礎になっています。 このことの中にたくさんの大事な点が含まれています。本来こんな調査はあってはならないものだったからです。加害者が戦争犯罪のもとの加害事実を誠実に記すことなどあり得えない。むしろ調査は加害行為の隠ぺいを目的にしていたのでした。

テクニックは割とシンプルです。爆心地にいた人々が大量の放射線で急性障害を起こして亡くなったことは否定できないので、この被曝は認め、それ以外の被曝被害をほとんど認めないことでした。 より詳しく言うと原爆が破裂した時に中性子線とガンマー線が激しく飛び出しましたが、これらが1分以内に地表に到達したものを「初期放射線」と呼び、これに多くの人々が「外部被曝」させられたことは認めたのです。 しかしアメリカはこの放射線の影響を「半径2キロ圏までだった」と言い張りました。2キロ以遠の人々を調査せず、被害事実を無視して記録しなかったことによってでした。

実はこれが「被曝量100ミリシーベルト以下では放射線障害は確認されない」という説の根拠にもなっています。初期放射線の量は爆心地からの距離に反比例して少なくなりますが2キロ弱、正確には1.9キロで100ミリシーベルトが記録されていたからです。 アメリカはこれ以外に「残留放射線」の影響も認めています。中性子があたった土などが放射性物質に変わり、放射線を出すようになったからです。これからも外部被曝がもたらされました。 これ以外に原爆によって生じた死の灰=放射性物質が降下した影響が甚大だったわけですが、アメリカはその影響をまったく認めませんでした。半径2キロ以内の外部被曝を認める代わりに内部被曝による被害を一切無視したのです。


「放射線の影響について」と題されて厚生省のHPに載せられている図。被曝を外部被曝に限定し距離で大きさを捉えている。ただし多くの問題をはらんでいたため一部の文言がその後に削除された。

なおこの図に関しては以上の記事により詳しく説明を書いています。ご参照ください。
明日に向けて(1322)内部被ばくを無視したICRPと政府は被ばく被害を過小評価している(東京シンポ発言より)下
https://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/65ec8887a9895adaed4ce7db060b4869

● 核戦略のために被害を隠したアメリカから真の意味での独立を勝ち取ろう!

アメリカはなぜ内部被曝を無視することで、被曝影響を小さく見積もったのでしょうか。先にも述べたように加害事実をできるだけ小さく見せるためでしたがより大きな目的がありました。 アメリカ国民を含む全世界の人々に被曝を強要し、核戦略を受け入れさせるためだったのです。核戦争を進めるためはたくさんの死の灰を降らせる核実験が必要だったからです。 さらにアメリカは核戦争にアメリカ国民を動員するためにも被曝被害を隠し、核攻撃を受けたら「ダック&カバー」=丸くなって頭を引っ込め手でカバーすることで防げると指導しました。被害を隠すことで核戦争への国民協力を作りだしていたのです。

私たちが捉えなければならないのは第二次世界大戦以降、アメリカが嘘を重ねて全世界の民衆を騙し続けてきたことです。もちろん旧ソ連も同じでした。核を使うことに対し実は東西対立はなかったのです。 私たちはこの大いなる騙しから脱却しなければなりません。そのために今一度、原爆被害に立ち戻り、内部被曝による何十年にもわたる命への圧迫、世代を越えた苦しみの強要のすべてを解き明かし、世界に告発しなければなりません。 これは戦後にアメリカに占領され、いまなお一部で占領を続けられている日本の民が、本当の意味での独立と自立をかけてすすめるべきことがらです。

核をめぐる問題の根っこにあるのはこのことです!私たちは核の戦後を捉え返さないといけない。 全土を爆撃され、沖縄に地上戦をしかけられ、二つの原爆を落とされたアメリカに、常に追随し続け、そうして朝鮮戦争でしこたま儲けて復興し、ベトナム戦争でしこたま儲けて高度経済成長を実現してきた情けない歴史を越えないといけない。 そのためにもアメリカが作りだし、日本政府が長年にわたって担ってきた放射能をめぐるウソをひっくり返す必要があります。6月1日にお話したいポイントはここにあります。


「カメのようにうずくまり頭を抱えれば核攻撃を凌げる」とアメリカ国民をも騙した・・・。
Source: Federal Civil Defense Administration [1951] 2005.  

続く

 

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明日に向けて(1689)原発は地震に対して極めて脆弱。すぐに停めるべきだ!(18日舞鶴市でお話します)

2019年05月15日 12時00分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20190515 12:00 0619 22:00改訂)

18日に舞鶴市でお話します。舞鶴健康友の会の総会での講演で舞鶴市林業センター(市役所西支所3階)にて午後3時からです。  テーマは「教えて原発災害から命を守るには…災害時の備えについて」です。この日、伝えたいことの一部を記しておきます。

原発は地震に対して極めて脆弱!

5月10日朝に宮崎県沖の日向灘でマグニチュード6.3の地震が発生し、「南海トラフ地震のトリガーになるのでは」との憶測が飛び交いました。 気象庁は「直ちに南海トラフでの巨大地震につながるものではない」と声明しましたが、地震学者の中から「確実はことなど言えない。常に大地震がありうると考えて備えるべきだ」との批判が上がっています。 僕もこの地震はいつか必ず来るのだから対策を重ねておかねばと思いますが、今回、お伝えしたいのはもっと小さな地震でも、直下で起これば多くの原発が壊れてしまうかもしれないことです。


MBC放送ニュースより 20190510

このことを分かりやすく伝えてくれたのは、元福井地裁裁判長の樋口英明さんでした。2014年に大飯原発の運転差止判決を出された方です。 樋口さんが指摘したのは、大飯原発の設計基準動は建設当初は405ガルに設定されていたこと。新規制基準のもとでの補強のもとでも856ガルにしかならないことです。 これまで確認されている最も大きな地震動が4022ガルもあったにもかかわらずです。2008年の岩手・宮城内陸地震においてです。


2月に大津市で講演する樋口英明さん 守田撮影(20190223)

大飯原発の耐震設計は新規制基準の下、補強された今でも856ガルでこの地震の約五分の一しかない。 つまりこの原発は巨大地震ではなく、もっと小さな、日本の中で毎年頻繁に起こっているクラスの地震でも耐えられないのです。 だからとにかく早く停めて、危険な燃料プールにある核燃料を早くより安全な状態に移すことを目指すべきです。


原発はどれもあまりに耐震性が弱い!『世界』2018年9月号樋口論文より

なぜ耐震性の弱い原発を作ってしまったのか

答えは二つあると思います。一つには本気で地震に強いものを作ろうと思ったら経費が膨らみすぎるため「採算に見合う」ように設計されたからでしょう。 このことは福島原発事故を踏まえて、各国が原発の安全性をいままでより強めたら、ただそれだけで経費高騰で建設がストップしてしまったことにもよく表れています。 日本が輸出しようとしていた原発もすべてダメになりました。原発は少し安全性を高めただけでたちまち採算に合わなくなるものでしかなかったのです。


朝日新聞 20181218より

もう一つには地震学が未確立で未知の領域が多く、原発を作る前に起こった地震の揺れもほとんど把握できていなかったためです。 日本で最大の揺れを記したのが2008年の岩手・宮城内陸地震だったことを紹介しましたが、そもそもこの記録は阪神大震災以降にやっと測られ始めた中でのもの。 1990年代後半からGPS機能が発達してそれまでより揺れを正確に測れるようになり、それではじめて4022ガルが計測されたのです。だから過去にもっと大きな揺れがあった可能性も十分にあります。

読売新聞 20160416より

日本のすべての原発は、この新しい知見が生まれる前、正確に地震の揺れが測られだす前に作られてしまったのです。 しかもできるだけ安上がりにするため、想定される地震を小さく見積もりました。そのため実測されるようになった地震の揺れにまったく追いついていない甘い設計基準動が採用されてしまったのです。 原子力推進派はその後も「ほとんどの原発の下には活断層はない」という理屈で運転を強行してきましたが、しかし「活断層」が確認されていないところでも、これまで何度も激しい地震が起こっています。


樋口さん講演会(既に終了)のチラシ。「よくできている」と樋口さんが活用


地震のことは多くが分かっていないが、規制委員会は分かってきたことも無視している!

そもそもいまの地震学では予想はかなり難しい。「ここでは絶対に地震が起きない」などと断言をできるわけがない。 この点が分かる図があります。地震調査研究推進本部が2005年に発表した地震予測地図です。色の濃いところが震度6弱以上の地震が起こる可能性が高いところとされていますが、2007年新潟県中越沖地震(M6.8 )、2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2)、2011年東日本大震災(M9.0)、2016年熊本地震(M7.3)、2018年北海道胆振東部地震とほとんどの大きな地震が予想外のところ、可能性が低いとされていたところで起きています。

 
全国地震動予測地図2005年版 地震調査研究推進本部作成

これに対し、地震学の新しい知見として「ひずみ集中帯地震」が起こっているとする説が大きくなってきています。 南海トラフ地震などの海溝型地震は、日本列島が乗っているプレートの下に海から来たプレートが潜りこみ、その際巻き込まれた陸側プレートが力がたまって跳ね上がることで起きるとされています。 それまでの間に日本列島が押されることでひずみがもたらされる。その力が集まったところが「ひずみ集中帯」でここで地震が起きていると考えられています。この間起こった多くの地震がこれに分類されています。


主なひずみ集中帯地震 守田まとめ

紹介した図中にある内陸型地震もすべて「ひずみ集中帯」地震。この後、昨年9月に起きた北海道胆振東部地震もです。 そうすると決定的な事実が浮かび上がってくる。「ひずみ集中帯」の上に多くの原発が建てられていることです。実際に柏崎刈羽原発は直下型地震の直撃を受け、大惨事寸前に陥りました。 より恐ろしいのは福井の「原発銀座」と呼ばれる地帯が「ひずみ集中帯」に入っていることです。にもかかわらずこの新たな知見が無視されている。危険すぎます。


ANNの報道より


原発を停める努力と原子力災害への備えをパラレルで進めよう

原発と地震の関係を見た時、耐震設計の脆弱な原発など即刻、停めるべきであることは明らかです。 同時に原発が動いている限りは原子力災害対策を重ねる必要があります。重ねながら原発の危険性を訴える必要があります。 やっかいなのは原発は停めたからといってすぐに安全にはならないこと。核燃料の放射線値が下がり熱が冷めるのを待ってからでないと燃料プールからすら取り出せない。しかもその後の保管場所も安全管理の方法すらも未確立です。

 
(出典)電気事業連合会「使用済燃料貯蔵対策への対応状況について」(2017年)

原子力災害対策は、廃炉が進み、安全性が確保される日まで続けられなければなりません。 「原子力災害対策を進めることは再稼働を利することにつながる」と述べる方がおられますがその方にこう問いたい。「あなたは明日、原発が事故を起こしうる事実を避けていませんか?どこかで安心してませんか?」と。 そうなのです。私たちの目の前に本当に危ないものが存在している。だから対策を重ねなければならないのです。


篠山市(現丹波篠山市のハンドブック)

同時に原子力災害に備えることは災害対策全般に対してもプラスになります。重なることが多いからです。 その点でこの対策はあらゆる災害に強い町づくりにつながります。その意味で私たちに問われているのは、東日本大震災の教訓に本当に学び、災害の複合的発生に備えていくことです。 原発からもあらゆる災害からも命を守るための活動を一緒に重ねていきましょう!

2月16日に行われた綾部市のヨウ素剤配布会。京都市でも本年中の開催を予定中。

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明日に向けて(1688)市民と野党の共闘をもっと広く深く進めよう!(11日に京都市右京区でお話します-1)

2019年05月10日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20190510 23:30)

明日11日午前10時から右京区のラボール京都第8会議室にて、市民と野党の共闘(チラシでは共同)についてお話することになりました。 ぜひお越しください。以下にチラシなどを示しておきます。



● 新たな市民と野党の共闘は福島原発事故をきっかけに始まった

私たちが市民と野党の共闘を考えるときに、福島原発事故の前までこの国の社会運動は全体としてバラバラになっていたことを見ていく必要があります。 原因はいろいろあげられますが、ともあれいま言えるのは私たち民衆は大きく分断され、対立させられていたということだと思います。互いをリスペクトし「山の登り方は多様にある」と他者を認めることがなかなかできなかったのではないでしょうか。 福島原発事故後、このの対立が大きく溶けはじめました。いろいろな立場で社会問題と向き合っている人々が「原発をなんとかしなければ」という共通目標を持ち、そこから壮大な出会い直し、つなぎ直しを始めたのです。画期的なことでした。


2011年6月11日の各地のデモ 郡山・東京・岐阜・熊本・広島・福岡

この流れを初めに作ったのはもちろん原発の危険性を指摘してきた人々の存在が第一ですが、それに続いて原発事故避難者の方たちだったのではないでしょうか。 中心だったのは子育て世代、とくに女性たちでした。どの政党も革新的と自認する団体も「危険だ。避難せよ」とは言ってくれなかったのに、たくさんの人々が危険地帯から飛び出した。 僕はここでいう「避難者」の中にその場にとどまって命を守ろうとした人々も含めたいです。この中から例えば市民放射能測定所もどんどん作られました。放射能から命を守るための輪がどんどん広がっていったのです。


京都原発賠償訴訟原告団(率先避難者たち) 2018年守田撮影

この流れが全国に共感を生み出しさらなる女性の活躍につながりました。各地で政治に関わりにくい子育て世代の女性たちが子どもを放射能から守ろうと動き出しました。 脱原発の行動を大きくしようという思いはやがて東京の首相官邸前での金曜抗議行動や、全国の電力会社の本店支店前、鉄道の主要ターミナルなどでの金曜行動にとつながっていきました。そこににどんどん新たな人々が参加してきてくれた。 さらに化学変化が重なりました。新たに運動を始めた人々は社会運動内部の対立のいきさつなんて知らないから双方を気軽に誘ってしまう。対立の当事者は初めは「うっ」となったけれど「考えてみればお互い苦労してきましたね」なんて話が咲きだしました。


首相官邸前行動 ネットより


関西電力京都支店前金曜行動 守田撮影

● 沖縄が民衆連帯の可能性を切り開き安保法制反対運動が広がった

原発をなんとかしようと始まった新たな日本民衆運動は2012年末に安倍政権が誕生する中で、だんだんとこの政権の反憲法的なあり方や、戦争に向かおうとするあり方への批判と結びつくようになりました。 まず大きな運動となったのが2013年10月に安倍政権が閣議決定した「秘密保護法」に対する反対運動でした。ここに学生の一団が参加してくるようになりました。「特定秘密保護法に反対する学生有志の会(SASPL)」です。 SASPLの運動は爽やかでかっこ良かった。「魅せ方」へのこだわりがあり、説得力につながっていました。運動に新しい息吹が通いだしました。


国会前に集った人々 朝日新聞 20131206


SASPLのチラシ 20141025 秘密保護法から1年

さらに全国の最先頭で安倍政権と対決してくれたのが沖縄の人々でした。戦争への傾斜を強める安倍政権が辺野古基地建設を強行することに対し、自民党など政府与党側だった一部の人々が野党側に合流、オール沖縄の運動が生まれ、抵抗が広がったのです。 このもとに辺野古基地を主な争点に2014年11月に沖縄県知事選が実施され、翁長雄志さんが約36万対26万で仲井真知事(当時)を破って当選。日本の民衆が歩むべき方向性が彷彿とするような成果でした。 「沖縄に続こう」という思いが全国に広がる中で、2015年に入ると安倍政権が「安保関連法」を持ちだし「集団的自衛権行使は違憲」という政府与党の見解をくつがえしました。自衛隊を戦場に送ろうとする安倍政権に対し大きな抵抗が始まりました。


当選を祝って 沖縄タイムズ20141126 

脱原発首相官邸前行動は秘密保護法反対運動を経て反安保国会行動へつながりました。5月にSASPLを引き継いだ若者たちがSEALDsを結成。7月には「安保法制に反対するママの会」が起ちあがり、これまでになかったセンスの新たな運動がさらに広がりました。 この流れが国会内に波及していきます。国会を取り巻く民衆運動のうねりに国会の中から野党議員たちが呼応するなかで、安保法制を許さない野党の共闘が促進されはじめ、国政選挙に市民が関わるようになったのです。 かくして2016年に行われた参院選では32の1人区で野党統一候補が生まれ、少数派に極めて不利な選挙構造を突き破って11人の野党候補が当選しました。その前の参院選での野党の勝利が2議席だったことに比べて画期的でした。


SEALDsとママの会(ネットとホームページより)


続く

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明日に向けて(1687)「令和」のはじまりに際し心の底から天皇制反対を表明します!-連帯を求めて孤立を恐れず!

2019年05月01日 22時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20190501 22:30)

民主主義に反する天皇制に反対します!

昨日、2019年4月30日をもって前天皇が退位し本日、新天皇が即位しました。元号が「平成」から「令和」に代わりましたが、これに際して僕は心の底からの天皇制反対を表明します。
「連帯を求めて孤立を恐れず」とサブタイトルをつけたのは、日本の与野党、および国会議員の中で天皇制に反対する党と人士が誰もいない状況で天皇制反対を表明するからです。
とくに本日、日本共産党の志位委員長が即位した新天皇に対して祝辞を述べたとを聞きましたが、僕は今回の統一地方選で日本共産党を全力を尽くして応援し、自分事として選挙を担ったがゆえに「それは大きな間違いです」と表明します。

天皇制に反対する理由は大きく二つあります。一つに制度としての天皇制は差別の元凶であり、民主主義と相いれないからです。二つにかつてのアジア侵略戦争は天皇制のもとで行われたのであって、その体制のそのままの存続に反対だからです。
このうち一つ目について言えば、現天皇制では女性に皇位継承が認められないなどさまざまな女性差別がまかり通っています。「日本国民」の象徴と言われているのにです。
一方で天皇家には参政権もなければ職業選択の自由もない。あらゆる意味で著しく人権が制限されています。それが「日本国民」の象徴だと言うのです。これまたあまりにおかしい。

そもそも根拠なく「貴い」とされる人がいる世の中では、根拠なく「賤しい」とされる人が作られてしまう。これを封建的身分制というのです。それが民主主義と合いいれないのは明らかです。
その点で僕は現憲法第一条に「天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は主権の存する日本国民の総意に基く」とある点にかんがみて、「天皇制反対」を掲げ「主権の存する国民の合意に基づく天皇制の廃止」を目指します。
その際の僕のスローガンは「民主主義の実現を。身分制の廃止を。天皇家に人権を」です。天皇家の人々が失語症になってしまうほどのプラバシー侵害すら容認されている権的あり方も変えたいです。


朝日新聞社が「豪華記念写真集」を出版

侵略戦争の総責任者だった昭和天皇の免責が戦後のこの国の歪みの元凶

さらに現天皇制は第二次世界大戦の戦争責任を曖昧化し、多くの戦犯を許し、庇護し、戦後社会への復帰を許した大きな位置を持っています。例えば僕はこれまで旧日本軍「慰安婦」問題の解決を求めて行動してきましたが、問題を起こしたのは「皇軍」です。
皇軍は大元帥である天皇のもとに統率されていたのだから、皇軍が行ったアジアの人々の大量虐殺、そして「慰安婦」問題など、さまざまな戦争犯罪に当然にも天皇は大きな責任を負っていました。
それだけではありません。膨大な日本民衆および統治を受けていたアジア民衆が皇軍に徴兵、徴用されました。その多くがまったくひどい扱いを受けた上に悶絶死していきました。兵士たちは天皇のために他者を殺し、自らもまた死ぬことを強いられたのです。

だからどう考えたって昭和天皇の責任は重大なのに、日本を「反共の防波堤」にせんとしたアメリカの思惑によって天皇は赦免され、自らも一度も謝りませんでした。そしてこのことが日本政府のさまざまな侵略行為への居直りや戦後の歪みにつながりました。
天皇と共に侵略の実行者が大量に戦後に赦免されて公職復帰し、自らへの訴追につながる戦争犯罪の捉え返しや真の意味での民主化を阻んだからです。例えば福島原発をかの地に強引に誘致した当時の木村守江知事は元は南京に突入した皇軍軍医将校でした。
「満洲国」に君臨し、東条英機などと強制連行を伴う国家総動員体制を作りだしたのは岸信介元首相であり、「俺が慰安所を作ってやった」とうそぶいたのが中曽根康弘元首相でした。奴隷的な徴用を行った会社を調べると「麻生鉱業」が含まれています。

なんのことはない。天皇が戦争責任を免責されることにより、天皇の家臣だった多くの戦争犯罪人が同じく責任を赦免され、公職復帰し、この国を牛耳ってきたのです。
その中には戦前に、当時の日本共産党員をはじめ天皇制と戦争に果敢に反対して捕まった人々を拷問し、殺害した特高警察のメンバーすらもたくさん含まれます。なんと戦後に54名もが国会議員になっています。(『しんぶん赤旗』調べ)
これらのことが日本の民主主義を大きく歪めてきました。その中心にあるのが日本民衆が侵略戦争の総責任者である天皇に謝罪させることができず、その家臣たちの戦争犯罪の多くを裁けなかったことにあります。


天皇は日本軍の総司令官だった

「昭和」から「平成」そして「令和」と過ちは正されないまま継承されている

平成天皇は父である昭和天皇や侵略戦争を行った戦犯たちのあり方にかなり批判的であり、戦争犠牲者に心を痛め続けられたと思います。しかし昭和天皇の戦争責任には一言も触れず、謝罪も行わないままに新天皇への継承が行われました。
しかし僕は平成天皇だけを責めているのではありません。私たち民衆自身が、かつて私たちの父や母、祖父や祖母が侵略戦争に動員され、悪行の片棒を担がされたことを十分に反省しきれてこれなかったのではないでしょうか。
そしてこの限界は、この国の朝鮮戦争特需による経済復興、ベトナム戦争特需による高度経済成長で一層強められてしまったのではないか。そこにあったのは血塗られた経済成長だったのに多くの人々が丸め込まれてきたのではないでしょうか。

その点で平成天皇だけでなく日本民衆の中からも侵略戦争の十分な捉え返しは十分には生まれてこなかったのです。朝鮮半島や満洲の植民地化の反省も不十分だった。
ではなぜ日本民衆はあの侵略戦争に動員されてしまったのでしょう。例えば関東大震災の時に民衆自身が朝鮮人虐殺に手を染めてしまったように、明治以降の歴史の中で、日本民衆の中にもアジア蔑視や差別思想が染みとおっていたからだと僕には思えます。
そしてそのことがあれほどの悲劇であった「朝鮮戦争」に対する特需でこの国が復興すること、続けてベトナム戦争特需でぼろ儲けすることも許してしまったのではないか。そこでは戦前の過ちが経済的に繰り返されていたのです。

僕はこの民衆史の中の負の遺産を越えなければならないと思います。そのために軍部の横暴が語られるたびに繰り返されてきた「天皇も利用された。騙された。強いられた」という言葉も越えなくてはいけないと思います。
なぜなら日本民衆もそれに「自分も利用され、騙され、強いられたのだ」と重ねて自己免責してきたと思うからです。しかし騙されようと侵略は天皇と家臣が命じ、多くの民衆が実行したのです。それぞれで責任をとらなければならないし、子孫である私たちはそれを継承しなければならないのです。
そしてその先につまり主体的な反省の先に、誰にとっても素晴らしい世の中が開けると僕は思っています。もちろん皇室の方々も人権を得てです。その点で天皇制を越えることには日本民衆の自己変革がかかっている。僕はこの道をあなたと共に歩みたいのです!


連帯を求めて孤立を恐れず 東大闘争のときに安田講堂の壁に書かれた言葉

#天皇制反対 #身分による差別反対 #民主主義の実現を #身分制の廃止を #天皇家に人権を

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