玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

玉川上水で調べる

2017-02-10 03:25:03 | 生きもの調べ

  私はタヌキの食性はすでに東京西部の日の出町でも、八王子市の高尾でも調べています。それらはいわば里山的な環境のタヌキといえます。正確に言えば日の出町ではお寺の裏にある雑木林にすんでいるタヌキで、周りには宅地もありますが、田畑もある土地です。高尾は原生的なよい森林が残る多摩森林科学園で、ここは里山というより、自然度の高い林というべきですが、周辺には雑木林が広がる場所です。これらはタヌキにとっては安住の地といってよいような場所です。
 これに比べると玉川上水は次のような特徴があります。玉川上水は広いところでは20メートルほどの幅がありますが、多くは10メートルほどの幅の狭いもので、対岸で話をすれば声が聞こえるほどです。多くの場所では少なくとも片側には車道が走り、しばしば自動車の量も膨大です。その両側は宅地で、ビルなどがある場所も少なくありません。要するにコンクリートに囲まれた細い緑地です。これを血管にたとえれば、実に危険がいっぱいの血管と言えます。北からでも南からでも道路が拡幅されたり、ビルが大きくなったりすれば緑が分断されてしまうようなあやうさです。というより、すでに玉川上水を分断する道路はすでにたくさんあり、現在も新設されています。
 そのような細い緑ですから、タヌキにとってはつねに危険と隣り合わせです。センサーカメラの調査によれば、かなり広い範囲でタヌキの生息が確認されていますが、いないところももちろんかなりあります。
 このように、「危険がいっぱい」の環境にありながら生き延びているタヌキのことを知るのは、希少動物を調べるのとは別の意味で価値があると思います。それは人が生活する場所に生き延びる野生動物とおりあいをつけてよい関係が築くことはすばらしいことだということです。原生林を守り、人が立ち入りをしなくするという守りかたも必要ですが、現実の狭いわが国土では、人をシャットアウトすることで守るよりも、人も暮らしながらしかもそこに野生動物も許容するという守りかたのほうが普遍性があります。その意味で同じタヌキを調べるといっても、それを玉川上水で調べることには特別な意味があるといえると思います。
 野生動物の保全をするにあたっては、相手のことをよく理解して、それにふさわしい守りかたをする必要があります。私たちが調べたことがそれに役立てばうれしいことです。

つづく

最新の画像もっと見る

コメントを投稿