玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

都庁水道局を訪問

2023-09-04 22:13:17 | 活動記録
都庁水道局を訪問 2023.9.1
高槻成紀

 私たちは小金井の桜並木の復活において樹林伐採が行われたことは問題があるとして関連団体とともに活動をしています。大きい問題は樹木の伐採が小金井だけでなく、玉川上水全体で進められていることで、砂防学や森林科学で定説とされている「樹木は土壌流失を防ぐ」こととは真っ向から違う樹林管理がされています。実際に松影橋近くでは樹木伐採の結果土砂崩れが起きました。
 こういう問題を委員会への質問という形でまとめ、資料とともに東京都水道局に持参しました。高槻と加藤嘉六さんが書類を持参し、都議の漢人あきこさんと岩永やす代さんが同道くださいました。しかし経理部用地担当課の武井豊課長は「委員には渡せない」と拒絶しました。
 高槻は「委員会は都民のためにあるはず、そうであれば都民がする質問が渡せないというのはおかしいではないか」と説明しましたが、課長は「委員会は局にアドバイスするためのもので、質問に答えるものでない」の一点張りでした。

説得する。 左より 岩永都議、漢人都議、高槻、武井課長

漢人都議が強くサポートしてくださり、心強かったのですが、結局態度は変わらなかったので、書類は一部を渡して引き取りました。


書類を渡す。 左より 岩永都議、漢人都議、高槻、武井課長

 その質問に答えるかどうかは委員が判断すれば良いので、手渡すことさえしないというのは東京都の態度として正当性があるとは思えないと感じました。


学習会「小平の玉川上水が危ない2」の記録

2023-09-04 22:02:48 | 活動記録
学習会「小平の玉川上水が危ない2」の記録

高槻成紀

 2023年8月20日に小平市津田公民館で学習会「小平の玉川上水が危ない2」を開催しました。今回は話題が2つでした。

 最初にリー智子さんから挨拶があり、講演が始まりました。

会場のようす

 福本さんは「遊び場としての雑木林~プレーパーク活動から~」と題して、中央公園東側のどんぐり林で、子供を遊ばせた経験を話されました。


講演する福本さん(加藤さん撮影)

 子供が遊ぶことは体力や考える能力を高めることに重要であることを強調されました。ケガをすることも、小さなケガであれば、そのことによって今後気をつけるようになるなど、その子の成長に役立つという話もありました。また河原に近づけない子に訳を聞くと、石がゴロゴロあるので平坦面のように歩けないからだと話したそうです。一方、林を子供が遊ぶ場所としてみた場合、木登りは子供が好きなので役に立つが、枝が高いと遊びにくいこと、イヌシデは枝が折れにくいので適しているなど話されました。林は密生していると枝が高くなるので、木登りには適さなくなります。孤立木は枝が低く、横に張り出すので木登りに適していますが、林にはそういう木はあまりありません。林業では材木を得ることを目的としますが、子供の遊び場として林を考えるというのは新鮮でした。泥の中で遊ぶ子どもたちや、テントの屋根に溜まった雨を落とすことで遊ぶ子どもたち、あるいは土に穴を掘って喜ぶ子どもたちの写真が印象的でした。
 子供が心身ともに順調に育つためには野外で遊び、少しはケガをしたり、ケンカしたりしながら、失敗を重ねることが不可欠です。それはどこでもそうですが、都会では自然の中で遊ぶ機会は限られます。それが小平の玉川上水沿いでは可能になっており、それに参加できた子供たちは幸せだと思います。そのことを福本さんたち大人も「失敗」を繰り返しながら追求してこられたことは素晴らしいと思います。

 私は「玉川上水の野草の価値」と題して、まず玉川上水花マップを作った時の話をしました。その調査では96区画を分担して、「今月の花」として選んだ植物の有無を調べて、充実したデータが取れて、四季の冊子を作りました。



 今はその発展として「花ごよみ」を調べており、その過程で種子植物だけで500種以上が確認されています。これは非常に豊かであることを意味します。こうした調査を通じて、玉川上水が武蔵野の野草が逃げ込むように生育する「レヒュージア」になっていることがわかりました。林に生育する植物の中には早春の限られた時期に開花し、林が暗くなる時には葉もからせてしまう植物があります。私はそれを「たまゆら草」と呼んだらいいと思います。


林の照度とアマナの開花時期


アマナの暮らし方

 これら豊かな野草について、訪花昆虫の調査をしたり、「玉川上水のオリジナル秋の七草」を選んだことなどを話しました。


玉川上水のオリジナル秋の七草

 ここまでの話が「玉川上水の野草の価値」です。しかしそのような牧歌的な態度ではいられないことになりました。
 前からあった328号線計画が、今年になって具体化するかもしれないということを聞いたのです。そこで、生態学者としてこの貴重な樹林が伐採されることの意味を示すべきだと思いました。


小平328号線と玉川上水の位置関係

 328号線の計画は1963年に立てられ、2013年に国が認可しました。その根拠になった「評価書」の生物関係を見ると、当時盛んに行われた「希少種の検討」が行われています。希少種だけに注目することは多くの生物が繋がりあって生きており、全ての生物をセットとして保護しなければならないとする現代保全生態学の立場からすれば間違いですが、その立場を取るとしても、評価する側からすれば希少種があることは不都合です。評価書には希少種としてキンランやニリンソウなどが挙げられています。そしてこれらは移植すれば良いとしています。しかしキンランは寄生植物であり、菌根菌によって樹木から栄養を得ているので、切り離して移植しても定着は困難であることは植物学が明らかにしています。


キンランの移植の説明図

 またニリンソウはレッドデータにあげられていないから「元々あったとは思えず、植栽したと考えられる」としています。しかし「武蔵野の植物」という本(檜山, 1965)にはニリンソウは武蔵野にあるとされているし、我々の花マップの調査でも開花個体だけでも3分の1ほどの区画で確認されており、この全てが植栽と考えるのは不合理です。


小平市におけるニリンソウの生育状態

 また評価書では、伐採による樹林面積の減少は全体の3%に過ぎず、周りに良い樹林が残るから問題は少ないとも書いてあります。しかし緑地の価値を面積だけで評価することも間違っているし、福本さんが紹介されたように、その場所に人の活動の歴史があることを無視しています。
 このような評価書に基づいて工事が認可されたことは大きな問題です。



 東京都が紹介する工事後の予想図では幅広い道路が玉川上水を横切っています。これを道路側から見れば、便利になることは間違いありません。しかし私はこれを玉川上水の側から見ます。そうするとこの道路がいかに甚大な破壊をするかがわかります。


 思えば、戦後の、我々の親世代から我々を含む日本人は、自然の側から開発を見たことがあるでしょうか。しかしこれからは、そういう見方は正しくないことに気づく人が増えるはずで、すでにその兆しは見られます。もしこの認可に基づいて工事進められたとすると、玉川上水の歴史に汚点を残すと思います。そうなれば、私たちはこれからの世代に失望を残すことになります。私は、それはすべきではないと思います。

++++++++++++++++++++
休憩を挟んで、意見交換に入りました。
 「工事を止められる可能性はあるんですか?」という発言がありました。これに対しては「残念ながらほぼない。関係部署に行って説明を聞いたが、この段階で覆った事例はないと言われた」と答えました。
 行政側の立場がわかるという方から、この工事は100%進められる、東京都は面子をかけて必ず道路をつけるという発言がありました。実際、町田まで開通し、埼玉側も同様だということです。可能性としては「条件闘争」として、できるだけ自然への影響が小さくなることを提言してはどうかと発言されました。そして建設の専門家などを取り込んだネットワークを形成してはどうかとの提案がありました。
 1964年の東京五輪の時に、「環7」の拡幅工事があり、問題なしと説明されたが、工事後は騒音がひどかったという発言もあり、その方は小平の玉川上水で撮影したというコノハズクの写真を持参され紹介されました。

 残念ながら、時間切れのようになりましたが、積極的な発言があり、私たちの今後の活動に有益でした。

++++++++++++++++++
 アンケートの自由記述を読むと、多くの人が2つのことを書いていました。ひとつは花マップなど生物学的に正確なデータが蓄積されていることへの驚きと賞賛です。私は大きな声で主観的な主張をすることよりも、粘り強く事実を積み重ねることが力になると考えているので、そのことが評価されたことを嬉しく思いました。
 もう一つは、行政に明るい方の「道路は100%できます」という言葉へのショックです。そうではあろうと思いながらも、なんとか見直してもらいたいと思っている多くの参加者は、現実を突きつけられた気持ちだったと思います。ただ、その人は「東京都はメンツにかけて道路を通します」と言いました。では東京都のメンツとは実際だれがメンツを潰すことでしょうか。また、そのメンツのために樹木が伐採され、そこに生える野草やそこに住む野鳥などの生き物がいなくなるとすれば、生き物の側から物事を見るようにしてきた者からすると、まったく理不尽としか言いようがありません。

 協力いただいたスタッフの皆様に感謝します。





史跡玉川上水整備活用のための作業説明会 水口和恵

2023-09-04 21:57:27 | 活動記録
史跡玉川上水整備活用のための作業説明会(小平市・立川市域) 
記録メモ(水口)
日時:令和5年7月20日(木)19時~
場所:中央公民館視聴覚室
参加市民:5名+水口

次第:水道局境浄水場長挨拶
水道局、東京水道(株)、小平市(水と緑と公園課、文化スポーツ課)、立川市 自己紹介

1.樹木処理作業等について
 ・伐採は赤テープ、強剪定は黄色テープ、剪定は青テープを貼る。

2.史跡玉川上水整備活用計画検討委員会の設置について(*水口はここから参加)
 ・5月23日に第一回委員会を開いた。令和6年度から16年度が対象となる計画を策定する。
 ・水路、法面の保全、法面補修、サクラの保存と被圧樹木の処理、植生管理(ナラ枯れや、多様性に配慮した管理)、地元自治会との連携、などに基づく活用整備を規定する。

3.質疑応答
問:鷹の台自治会のユノキさん:新堀用水は小平市など、管理主体がいろいろでわかりにくい。どんな対応をしているのか。
答:昨年度は、中流部18㎞の環境調査や樹木医による樹勢調査をした。その結果、ナラ枯れの(?)被害木が800本あまりあり、今年度は、それらの樹木の根株の腐朽診断など詳細調査をしている。それらの調査に基づき、枯死した木や、不健全な木、周辺住宅等への影響、警察等からの連絡、などで樹木処理を行う。
問:江戸東京学び舎ユネスコクラブのクボタさん:月に1回、玉川上水の自然観察会をしているが、下草刈りで貴重な野草が刈られていることがある。専門知識をもたない人が刈っているのか。
答:小平市では、毎年11~12月に下草刈りをしている。貴重な野草があれば、具体的な場所を東京水道(株)か境浄水場に知らせてほしい。
問:鷹の台自治会の方:樹木の周辺住宅への影響に配慮してほしい。(スライドで紹介された)小桜橋下流では、緑道の桜が斜めになっていて危ないのではないか。台風対策の意味もあり、樹木の高さに気を付けてほしい。
問:近所で、枯れたナラの枝が路上に落下した。これで3回目。現在、ポールを立てて、伐採の方向で作業中だが、危ない枝は取り除いてほしい。
問:玉川上水での作業を示す黄色い看板は、美観上よくない。
答:作業期間のみの掲示で、すぐ取れるようなものにしている。
問:岩井さん:羽村から浅間橋まで歩いた。橋が105あり、橋から玉川上水の深さを赤外線で(?)測ったところ、小平区間が、5~7.5mで、他区間より深いにも関わらず、柵の高さが60㎝くらいでまたげる状態である。今年4月には、東小川橋のところで亡くなった方がいる。今日の午前中に、西部公園緑地事務所にも行ってきたが、他市区間の柵は、一部高さ80㎝のところもあるが、ほとんど110㎝ある。小平区間は、橋の上から水面が見えず、高さが感じられない。東小川橋では対岸も見えず、そのために発見が遅れたということもある。これまでも、年1回くらい落下事故がある。水面が見えない部分は、危険性を認識できるように刈り取ってほしい。
答:眺望の確保は、整備活用計画でもうたっており、刈ることは検討したい。
問:クボタさん:柵については、反対運動があったのか。小平市部分はなぜ低いのか。
答:水と緑と公園課:小平市部分の柵を設置した当時は、現在と基準が異なっていたのではないか。
問:クボタさん:安全管理には反するが、柵が低いから、例えば柵を乗り越えて昆虫をつかまえて子ども達に学習させる、などもすることができており、難しい面はある。
答:水と緑と公園課:小平監視所の下流部分は、高さ110㎝の柵になっている。状況を見て、都建設局が対応していくと思う。
問:鷹の台自治会の方:高さ110㎝にしても、越えようと思えば乗り越えられる。史跡であり、景観重視の観点から、自分は今のままの柵でいいと思う。100年先を見据えて残すようにしてほしい。
問:ユノキさん:台風が来た後に、樹木の調査をしている人がいて、聞いたら役所ではなかった。環境重視で、家の前の小さな木も切ることはできないのか。環境にうるさい人ではなく、住んでいる人の意見を聞いてほしい。環境重視で意見を言う団体があるのか。
答:水と緑と公園課:玉川上水の景観に配慮する団体はある。管理主体もいろいろだが、適切な管理方法を検討したい。
問:クボタさん:玉川上水のごみを市民で掃除して取ることはできないのか。
答:小平市部分は特に深くて危険。ごみを見つけたら、連絡してほしい。
問:岩井さん:八左衛門橋?のたもとあたりは、交通事故が起きそうなので、視認性を確保してほしい。山家橋?も、水路の中に木が生えていて、対岸が見えないので、対処してほしい。
答:視認性の確保は検討したい。

東京都北多摩北部建設事務所 訪問記録メモ 水口和恵

2023-09-04 21:11:53 | 活動記録
東京都北多摩北部建設事務所 訪問記録メモ(水口)
 日時:2023年7月14日
 参加者:小口、加藤、高槻、松山、リー、水口、竹井都議
 対応:中田和範(工事第一課長)、柘植憲彦(同課長補佐)、吉山順一(同工務担当)、中川恵一(用地第一課長)、池田昌弘(同専門課長)

(1)小平328号線計画の進捗状況について
・用地取得状況は7割とのことだが、今後の見通し
 現在、土地の買収は7割程度になっている。事業に反対している人や移転先が見つからない人など、難しい案件が残っているので、今後、買収のスピードは停滞する可能性がある。

・今年度に設計を行う予定か
 今年度に予備設計を行いたいと考えている(予備設計の次は、詳細設計)。設計者は、一般競争入札で決める。今年度に予算は確保している。
・玉川上水緑道部での地質調査の結果は
 玉川上水に橋をかけるにあたって、構造上問題はないか、設計するために地盤の固さなどを調べた。史跡の調査も兼ねている。地下15mまで、直径10㎝の穴を開けて、土の状況をみた。15mまで地下水にはあたらなかった。結果は今年度中にまとめ、開示請求されれば開示する。
 
(2)小平328号線計画の今後の予定
・地質調査の結果が出たら、史跡への影響を審査する委員会を立ち上げる予定か。
 委員会立ち上げは考えている。国分寺328号線のときの例を参考にする。委員会の会合は、半年から1年間くらいかけて、2.3回行う。非公開。委員は、学識経験者、本庁の担当者、市の文化財担当者など、10名前後になる。
質問:非公開の理由は? 
回答:これまでも公開していないため。


・国分寺328号線と同様に、小平328号線計画沿道30m内の住民が参加する話し合いの場は設定されるのか。
 国分寺328号線のときを参考に、検討している。両側10mずつの環境施設帯をどのようにするかについて話し合う。まだ決まっていない。
・今後、市民が意見を言える場はあるか
 問い合わせいただけば、北北建で対応する。

(3)国分寺328号線の状況について
・用地取得ができていない部分が数か所残っていると聞いていたが、その現状は。
 3か所が残っている。そのうち2か所は、北北建が対応し、1か所は道路整備保全公社の管轄になる。現在、交渉中である。
・2027年度に完成予定か。
 工事がまだ残っており、未定。全部が開通するまで2~3年はかかる。
・2017年4月に開通した部分の事後アセス(交通量調査)の実施状況
 開通直後以外、交通量調査はしていない。東京都環境局が、騒音、振動、大気汚染などについて、アセスを行い、基準オーバーがあれば、改善措置を行う。

質問:建設局がつくった道路が、たとえば環境影響評価で基準値を超えるなど問題が生じた場合はどうなるか。
回答:環境局が是正措置を求める。)

質問:温度は評価しないのか。 
回答:温度は、アセスの項目になっていない。

(4)小平328号線に係る予算・決算の状況(添付ファイル参照)
・令和2年度以降の決算額と、令和3年度以降の予算額
 本庁の所管課に請求してほしい。

(5)交通センサスの実施状況
・平成27年度以降の実施状況と、府中街道の交通量
 平成27年度秋と、令和3年度に実施しており、府中街道津田塾大学前の1日往復交通量は、平成27年度が19,824台で、令和3年度が19,313台で、あまり変わっていない。

(6)小平328号線を地下あるいは高架にする場合の課題
・用地取得への影響等
 地下にする場合、地下に入る部分は、現在の36m幅よりも両側5mずつくらい広げる必要がある。都が土地を購入した後、予定地の外側に自宅を再建した人もおり、そこを再度広げるとなれば、説明が必要で、合意を得るのは難しい。

質問:地下あるいは高架に変えた例はないのか。 
回答:用地買収に入っている段階で変えた例はない。)

質問:玉川上水で自然観察会をしているが、変形菌が20種以上いる。そのように多くの種類がいるのは珍しく、玉川上水の生物の多様性が豊かであることがわかる。残すべきではないか。 
回答:ここに橋をつくってほしくない、という意見もあるが、早くつくってほしいという意見もある。)

東京都建設局北多摩北部建設事務所での話し合 高槻

2023-09-04 21:09:32 | 活動記録
東京都建設局北多摩北部建設事務所での話し合いのメモ(高槻)


 2023年7月14日、水口さんのご尽力により東京都建設局北多摩北部建設事務所工事第一課を訪問し、話し合いをしました。多くは水口さんが事前に準備した質問に答える形でした。これについては水口さんからの報告をご覧ください。
 私としては「建設局の予測が基準値を超えたら、環境局が是正を求めるという形がとられる」ということが聞けたのが最大の成果でした。私は次のように質問をしました。
「東京都が道路工事の計画を立てます。そのことについて東京都が予測し、開通後に測定するのですね?」
「はい」
その時第1課の側から
「東京都と言われますが、実際には工事をするのは建設局、評価をするのは環境局と別の局なのです」
 私は心の中で「しめた」と思いました。評価書を読む限り、全くの「お手盛り」で、工事をすると決めたら調査をして、どんな結果が出ても「問題ないと予測される」と書いてあったので、これでは無意味だと感じていたのに、そうではないと言ったからです。
 例えば排気ガスが環境基準を上回ったら、環境局が是正を求めることもあるというのです。これは、きわめて健全な姿勢です。
そこで、例を考えてみます。お地蔵様などが拡幅工事によって移動を余儀なくされ、「重要な物なので壊すことは良くないから移動した」をこれまで「仕方ない」としてきました。しかしよく考えたら、歩道の脇にあって人が自然に頭を下げたお地蔵様を交通量の多い道路の脇に移動したのは、ほとんど破壊に近いと見ることもできます。このことを、「高度成長期には、お地蔵様を移動することは問題視されなかったが、現在の基準からすれば大きな問題があった」と反省することはごく自然なことです。
 もし「工事によって過度の問題が生じれば戻さなければならない」ということが本当なら、「工事によって自然が破壊されたら、永遠に失われて取り返しがつかない」ことが立証できれば、工事の強い抑止力になるはずです。生物現象は人の浅知恵で予測できないことが多いことは、多くの保全生態学の成果が示しています。その評価が高度成長期と今では違うことを論理と生態学の成果で説明することは十分可能です。そのような考えに立曲して、私は次のような主張をすべきだと考えます。
 「高度成長期に立てられ、認可された道路工事は、当時の社会の価値観から自然に対する配慮が欠けていた。その後社会は生物多様性の重要性を認識し、保全生態学において長足の進展があった。そしてSDGsつまり「持続的発展のゴール」は現代社会の重大な課題とされるに至った。これは人類が地球資源を利用する上では、破壊的ではなく、持続可能な形で利用しなければ人類の未来はないという考え方であり、20世紀の開発優先の考え方を根本的に改めなければならないというものである。この視点からすれば、高度成長期に立てられた計画のうち、自然に対する配慮の部分の問題点を見直すことは、現代社会にとっての必要不可欠な重要な課題である。」