玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

はじめに

2023-12-31 23:10:52 | はじめに


 玉川上水は17世紀の中頃に作られた水路で、江戸市民の生活用水に、また流域の農業用水の動脈として機能してきました。長い年月を経て変化もしてきました。中でも昭和になって杉並以下が暗渠になったこと、小平より下流が上水の機能を失ってしばらく空堀になったことは大きな変換点でした。1986年の清流復活によって水流は戻りましたが、この水は処理水で水量も少なくなりました。上水機能の制約に伴い、戦後は上水沿いの緑地の木々が育ち、今では樹林帯となっています。そこにはかつての武蔵野の雑木林を思わせる樹林があり、野鳥が住み、林の野草も豊かです。そして多くの人々がその自然に親しんでいます。
 私たちはこの玉川上水の自然を良い形で未来の世代に引き継ぎたいと願っています。しかし、心配なこともあります。例えば小金井ではサクラを残して樹木が皆伐されました。また玉川上水全体で多くの樹木が伐採され、雨や冬の霜柱のために岸の土壌流失が起きています。さらには玉川上水を横切る道路が計画されてもいます。このようなことを考えると、このままでは玉川上水の自然がどうなるか気がかりです。
 そこで同じ思いも持つ人々と手を取りあい、行政によりよい管理のあり方を求める活動をすることにしました。そのために私たちは、自然のことを調べ、客観的なデータに基づく提言をしたいと思っています。

+++ 第3回学習会(12月3日) +++
2023年12月3日(日)に第3回学習会「小鳥もこんなにいる!」を開催します。この時、高槻著『もう木を伐らないで』(彩流社、税抜2200円)を税抜価格で販売します。



+++ 「もう木を伐らないで」の出版 +++
玉川上水での野草観察の楽しみ、小金井の桜並木のための伐採、小平の328号線の計画など、玉川上水の樹木ば伐採されることについて、行政との交渉や、動植物の調査に基づく玉川上水のすばらしさの発見などを力を込めて書きました。ぜひご一読ください。またご近所の図書館に希望を出してもらえるとありがたいです(高槻)。


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もくじ (準備中)




小平の玉川上水の自然が危ない 学習会3の記録

2023-12-03 10:22:09 | イベント
2023年12月3日に学習会3を開催しました。

小平市の中央公園の東側 を南北に走る道路の計画があり、開通すると中央公園と 玉川上水の樹林が伐採され、多くの動植物が失われることになります。私たちはたくさんの人にこの場所の価値を知ってもらうために、学習会を始めました。第1回は道路問題を考えることを、第2回は野草をテーマにしました。そして第3回として野鳥を取り上げることにしました。
ここには80種あまりの鳥類がいることが確認されました。この数は明治神宮や皇居の森に匹敵します。また小平市の鳥であるコゲラも、玉川上水のうち、小平で一番多く見られます。今回はこの小平の玉川上水沿いで⻑年鳥類 調査をしてきた大出水幹男さんのお話と、玉川上水の4カ所で樹林調査と野鳥調査をした調査結果についての高槻成紀さんのお話を聞くことにしました。

以下は発表者からの要旨です。

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小平の玉川上水の鳥類を調べて
大出水幹男
玉川上水の野鳥観察を通年150日から200日記録している大出水幹男と申します。
なぜ、観察するようになったかと言うと、この東京の緑少ない中で、細い河岸の緑地帯を散歩していると四季の移り変わりがよくわかり、都会の雑踏を忘れさせてくれるからです。
 樹木の豊かな、この玉川上水での、留鳥はどのぐらい暮らしていて、季節の野鳥は何がいるんだろうと考えるようになりました。早朝5時半から6時の間、40分程度、中央公園から一橋大学脇までの往復を繰り返して観察し確認できた数と種別を記録してデータにしています。玉川上水で出会った野鳥は、おおよそ90種確認できています。今日は、林で出逢った野鳥のことを交えてお話します。

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玉川上水の樹林管理と鳥類
高槻成紀
以下の共同研究の紹介をします。
高槻成紀・鈴木浩克・大塚惠子・大出水幹男・大石征夫. 2023. 玉川上水の植生状態と鳥類群集. 山階鳥類学雑誌 (J. Yamashina Inst. Ornithol.), 55: 1-24. こちら

<論文要旨>
玉川上水の樹林管理は場所ごとに違いがある。本調査は 2021年に玉川上水の樹林管理が異なる4カ所(小平,小金井,三鷹,杉並)で鳥類の種ごとの個体数の調査と樹林調査を実施した。鳥類群集は上水沿いの樹林帯と周辺の樹林も豊富な三鷹と小平で豊富であった(図1)。


図1. 玉川上水4カ所の鳥類のタイプ別個体数

緑地が両側を交通量の多い大型道路に挟まれた杉並では,鳥類の種数と個体数が少なかったが,オナガ,ハシブトガラス,ドバトは比較的多かった。サクラ以外の樹木を皆伐した小金井では鳥類群集は4カ所中最も貧弱であった。とくに森林性の鳥類が少なく,都市環境でも生息するムクドリ,スズメなどがやや多いに過ぎなかった。これらの結果は,玉川上水の鳥類群集が植生管理の影響を強く受ける可能性を示唆する。
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高槻はこれに続けて以下の点に触れました。

 小平の玉川上水樹林はは玉川上水全体で見ても状態が良く、そのおかげで鳥類の種類も個体数も最も豊富で、特に樹林性の鳥が多いということです。一方、小平市はコゲラを「小平市の鳥」に選びました。このコゲラも小平市が4カ所中最多でした(図2)。


図2. 玉川上水4カ所のコゲラの個体数

ここに大型道路がつくことは、自然破壊という点で極めて重大で、失うものは計り知れません。それは小平市におみならず東京都にとっても大きな損失になります。その意味で私たちはこの道路計画を見直してもらいたいと強くのそみます。

 これで発表は終わり、意見交換をすることにしました。今回は参加者が少なくおよそ20人ほどでした。鳥について大手水さんに質問があり、鳥の中で好きなものはなんですかという質問にはカラスという返事で、カラスは大手水さんのことを識別していて、育雛期には攻撃してくることもあるということで、会場には笑いがもれました。オオタカのことフクロウのことなども話題に上がりました。
 今年が暑かったことについても樹林との関係で話題があり、高槻は秋の結実がよくないのは暑すぎて花の生育に不順があったのではないかと答えました。
 最後に水口さんが、2013年の署名活動のことに触れて、その時も自然を守りたいという動機で活動したが、その時には鳥類も植物も情報が限られていたが、今ではいくつか論文にもなったので、状況が変わってきた。今後、これらに基づいた署名活動をするつもりなので協力をいただきたいと締めくくりました。
 アンケートはこれまでと同じものを配布して回収しましたが、数が少なかったので、次回、まとめて報告します。