玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

新柵 要望書

2023-09-02 19:34:00 | 要望書
 2022年10月3日
玉川上水の柵設置についての要望書
東京都西部公園緑地事務所様

1. この要望書は玉川上水の小平市部分に設置された柵(写真1、本要望書ではこれを「黒柵」と仮称します)があまりにも景観的になじまず、威圧感があり、貴重な玉川上水の自然と市民の関係にとって問題が大きすぎるため、今後さらに増設することを見直してもらいたく、市民の声をまとめたものです。
2. いうまでもなく東京都は行政に都民の声を反映することを行政の基本精神としています。玉川上水の管理においてもこのことが大前提であると理解しています。
3. 東京都は「生物多様性基本法」に基づき、東京都の生物多様性の保全と持続可能な利用を重視してきました。そこには大都市ゆえの自然環境の劣化、人と自然の関係の希薄化、自然の価値・魅力の認識不足という背景があります(東京都環境局の「生物多様性地域戦略の改定に向けて」)。玉川上水は東京の都心部を流れる連続的水路・緑地として格別価値の高いもので、膨大な人数の都民に親しまれています。したがって、その自然を良い状態で次世代に引き継ぐことは我々の重大な責務です。
4. 2009年(平成21年8月)に策定された「史跡玉川上水整備活用計画」は基本的な考え方として、1)玉川上水を見せる、2)玉川上水への理解を深める、3)より多くの人に親しんでもらうことをあげています。しかし「黒柵」はこのすべてに全く反します。これを実際に見た小平市民は「これは柵ではなくて壁だ」、「これでは玉川上水の景観が台なしだ」、「玉川上水の植物を見ようにもこれでは見えない」、「市民が玉川上水に親しめない」、「自然観察をしてきたが、これでは観察がしにくく、市民に理解を深めてもらえなくなる」などの意見が噴出しています。
5.「玉川上水整備活用計画策定についての提言」のうち、「管理施設(フェンス)のデザインの規格化」には次の記述があります。「規格化に当たっては、フェンスの機能や景観との調和に加え、保安施設としての強度・耐久性、部材・製品の調達の容易さ(汎用性)をも考慮すべきである」。ここでは、景観との調和が最重要であるが、それだけでなく保安機能も重要であることと、具体的な材質にも言及しています。私たちも市民が玉川上水に転落するなどの事故は未然に防ぐことは不可欠だと考えます。景観を重視することと安全性はときにバランスの問題が生じ、そのバランスは玉川上水の場所によっても違いがあります。この「提言」にも「フェンスの外側の土地の利用状況(周辺環境)等はさまざまであり、それぞれフェンスが果たすべき役割や求められるデザインが異なる」とあります。実際、小平監視所よりも上流では水管理が特に重要であり、柵も高さ2メートル以上ありますが、小平地区では多くの場所で高さ1メートル程度となっています。小平市の小平監視所から小川水衛所までの間は樹木も豊かであり、状態の良い自然があるため、多くの市民が散策をする箇所です。
6. 以上の背景に基づき、以下に私たちの疑問と要望を記します。
1)崩落タイプ類型と柵の形状
①鷹の橋~久右衛門橋間
「玉川上水整備活用計画」9ページの図2は、中流域における法面の崩落タイプを「オーバーハング状」「直壁状」「傾斜状」「その他」に分類しています。一方、同計画の28ページでは、玉川上水のフェンスの高さについて、「公園施設設計施工基準」に準拠し、法面の状況に応じて、オーバーハング状又は直壁状法面の箇所には転落防止柵(高さ110㎝)とする、としています。「玉川上水整備活用計画」9ページの図2では、鷹の橋~松影橋間は、オーバーハング状でも直壁状でもない「その他」区間とされています。「その他」区間に該当する鷹の橋~久右衛門橋間は、転落防止ではなく立入防止柵としてください。
②新小川橋~鷹の橋間
この区間はオーバーハング状であり、西部公園緑地事務所は、危険であるために転落防止柵が必要としていますが、他の場所と比較して、特に危険であるとする理由が不明です。どういう危険性があるのかを明確にしてください。特に危険と言えなければ新設する根拠は弱いはずです。
また、区間を他の区間に優先させて柵を新設する理由も不明なので説明してください。例えば、幸橋~新橋左岸の柵は傾いており、「柵が傾いています。通行注意」の掲示があります。このような区間の方が優先度は高いのは理解できますが、水道局は、2022年7月14日の整備作業説明会で、新小川橋~鷹の橋の区間に計画したのは柵が古いからだろうと説明していましたが、その根拠は不明です。説明を求めます。
2)計画されている柵の形状などについて
小平監視所~西中島橋の左岸に新設された「黒柵」は非常に威圧感があり、整備活用計画の重要なポイントである玉川上水を市民に親しんでもらうという趣旨に真っ向から反しています。具体的には「黒柵」は縦棒が太く、その感覚が狭いため、斜めからみると柵全体が真っ黒に見えるため、強い威圧感があり、景観に馴染みません。自然観察をするものからすると、柵の向こう側が見えにくく、植物などが見にくいです。もし新設の必要があるなら、最重要である景観とのバランスがある別の形状のものにしてください。例えば兵庫橋~岩崎橋の左岸に設置されている太い横柵が3本並び、真ん中と一番下の横柵の間の裏に6㎝×10㎝の金属製網が設置されているタイプ(写真2)であれば、安全性も十分で、威圧感は小さく、向こう側をみることができるので、整備活用計画にかなり沿ったものになるし、安全上も問題がないと思われます。

7. 結語
開かれた行政として市民の声を聞いていただけることに感謝します。我々は必要な設置には反対するつもりはないのですが、現状では必要性に疑問があること、小平監視所~西中島橋に新しく設置された威圧感のある柵を延長することだけは受け入れがたく、この点を見直していただくことを強く要望します。

共同代表
リー智子・高槻成紀

付記:柵の下の部分の雨水止めのようなものは、生物の往来の妨げになる可能性がないか、生物への影響も十分に考慮して検討してください。