玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

22.9.19 玉川上水にはフン虫がいるよ 6 舘野さん

2022-09-22 21:51:06 | イベント
ないと思います。今回は関野先生から「舘野さんが参加したいそうだよ」と聞いていました。ご存知の方も多いと思いますが、舘野鴻(ひろし)さんは昆虫の絵本の作者で、私も前から注目していました。対象とする昆虫がシデムシという死体を食べる昆虫やツチハンミョウという毒を持つ昆虫などユニークで、絵そのものが驚異的な緻密さで強い印象を残します。こういう本が幼児向けの絵本としてよく読まれているということ自体も興味深いことです。

舘野さんの作品

私は糞虫の分解者としての重要性に興味があって興味を持っていましたが、その話をしたら関野先生も大変興味を示され、一緒に玉川上水の糞中を調べたこともあります。ある集まりで私も糞虫の話をしたし、別のときには舘野さんも糞虫などの話をされたので、親しくなりました。糞虫を飼育して何年もかけて本を作る徹底ぶりで、子供に生き物や絵のことを教えたりもしている人なので、私の観察会に来られるとは驚きました。朝あったときに
「舘野さんがいるところで話をするなんて、ちょっとやりにくいんだけどな」
と言ったら笑っていました。

 有名な絵本作家なのに気取ったところは全くなくて、子供たちとしたしげに話をしていました。


私は一通りの話をした後で舘野さんに水を向けました。

絵本を紹介する舘野さん

舘野さんは最近、オオセンチコガネを対象として「うんこ虫を追え」という本を出版されました。その本の説明をしてくれました。この本では大きな装置でオオセンチコガネを飼育し、幼虫は実は糞を食べないで枯葉を食べることや、センチコガネとの比較など、これまた徹底的な調べをして、論文も書いておられます。

 それからりーさんが関野先生にも一言挨拶を頼みました。関野先生はグレーとジャーニーで知られる探検家ですが、舘野さん以上に気さくな人で今回も静かに同行されたので子供たちはもちろん保護者も「どこかのおじさん」と思っていたと思います。それはさておき、関野先生は今作っているユニークな映画のことを紹介されました。それは排泄物であるうんこにこだわる人で、舘野さん、伊沢さん(糞土師)、それに光栄なことに私が対象で、この観察会も被写体になりました。探検と言えば高山に登るとか、航海をするなどをイメージし、関野先生は実際にそういう探検もされたのですが、私が見るところ探検とは自分がおもしろいと思うことに突き進む精神で、それが肉体的強靭さを必要とすることもありますが、それだけではないはずです。誰もしたことがない、うんこを映画にするということ自体が探検精神に満ちたものです。


説明する関野先生

そういうわけで、図らずも舘野さんと関野先生の話も聞けるという大変充実した集まりになりました。

写真の多くは青木計意子さん撮影です。ありがとうございます。


22.7.2 花にくる虫しらべ 3 結果

2022-07-03 04:22:49 | イベント
野外での観察は こちら 
室内での説明は こちら

酷暑でしたので、作業は最低限で抑えましたが、皆さん熱心に観察してくださいました。
 記録してもらったのは花の前に10分間立って、その花に来た昆虫をチョウ、甲虫、ハチ、ハエなどのグループで記録してもらうというもので、選んだ花はオカトラノオ は全員(8家族)、アキカラマツが2、そのほかのタカトウダイ 、ノブドウ、ノカンゾウ、ノアザミは1例だけです。この日は暑すぎて熱中症の心配もあったので各班に2例だけ記録してもらいました。比較するには不十分だったので7月7日に私が3例を追加したものも補足しています。
 それを集計したのが表1で、この表では合計値を出しており、記録数が多い花は虫の数も多くなっています。これは平均値にすると記録数が多くても数が少なすぎる花があるためです。訪花昆虫の数が最も多かったのはオカトラノオで50匹、次いでタカトウダイが32匹、ノブドウ20匹、ヤマハギ16匹と続き、あとは少ないという結果でした。

表1. 訪花昆虫の記録


このうち数が多かった上位の4種について説明します。

<オカトラノオ>
 まずオカトラノオです。名前のトラノオ(虎の尾)は花が長くのびる(花序という)からです。そこに小さな花が100個くらいついて、付け根の方から開いています。

オカトラノオ

 一つの花は小さく、さまざまな昆虫が訪れます。

オカトラノオにハチ

オカトラノオにチョウ(セセリチョウ)

 一つの花を取り出して撮影してみました。そのきれいさにちょっと驚きました。

オカトラノオの一つの花

 その断面を見ると、花はくぼんでいますがそのくぼみは浅く、底の方に蜜があって舐めたらほのかに甘みがありました。これならハエのような短い口の昆虫でも舐められそうです。

オカトラノオの花の断面

<タカトウダイ>
 タカトウダイはトウダイグサというグループの1種です。トウダイというのは灯台ですが、海を照らす灯台ではなく、昔、部屋でロウソクを立てるのに使った灯台のことです。というのはこの花が平板な面になっているのが特徴的だからです。一つの花が平板の上にあり、それがいくつかあって合わさってそれも台の上にあり、そのだいがまた集まって茎から放射状に出るという複雑な作りです。

タカトウダイ 

花をよく見るとメシベがあって、蜜が出ているのがわかります。花の周りはよい香りがしていました。


タカトウダイの花

 こういう花ではアリやハエのような口が短くて蜜をなめる昆虫でも蜜が利用できます。実際アリが来ていました(ただし、この写真は別の時に撮影)。

タカトウダイの花にきたアリ

観察会でも32匹の昆虫のうちアリが19匹を占めていました。

<ノブドウ>
 次に多かったのがノブドウでした。ブドウの仲間ですからつる植物で、ススキなどの植物に絡まっていました。

ノブドウ

 まだ咲き始めでしたが、それでも昆虫20匹が確認され、一番多いのはアブでした。

ノブドウの花

この花も蜜が表面で舐められそうです。

<ヤマハギ>
ヤマハギは低木で高さが2メートルくらいになり、小さな花がたくさん咲いて綺麗なので、秋の七草にも選ばれています。

ヤマハギ

その花はマメ科の「蝶形花」と呼ばれ、複雑な形をしています。エンドウなどと同じ作りで形の違う5枚の花弁でできています。

ヤマハギの花

これを取り出してみました。左側の先が濃くなった花びら(舟弁)は舟のような形で、その上にピンクの花びら(翼弁)が2枚あり、中央に縦に立つ大きめの花弁(旗弁)があります。その奥に筒のようなものがありますが、舟弁はここから始まっています。


ヤマハギの花を横からみたところ

 その花の翼弁を外し、手前の花弁をとるとこうなります。長いおしべとめしべがあり、舟弁からはみ出しています。舟弁は左右に2枚あってそれが両手を合わせるようにくっついておしべ、めしべを包んでいます。こういう作りになっていますから、旗弁を目印によってきた昆虫は舟弁の奥にある蜜を吸うために舟弁にとまって口を伸ばします。多分その時に口の周りに花粉がつくのだと思います。


ヤマハギの花の内側

 実際にヤマハギにきたミツバチの写真を見ると、そのように見えます。

ヤマハギで吸蜜するミツバチ

<比較>
 そこでこの4種に来た昆虫の比較をしてみました(図1) 。オカトラノオ 、タカトウダイ、ノブドウの3種の花はいずれも「浅い」形なので、口が短くて舐めるタイプの昆虫でも利用できますが(説明はこちら)、実際の結果もそうなっていました。図1では長い口の昆虫を濃い青、短い口の昆虫を水色で示しましたが、これらの花にはどちらの昆虫も来ていました。それでもタカトウダイはアリが、ノブドウはアブが多いという違いがあり、オカトラノオは特に飛び抜けて多いものはないようでした。これも花の作りとの関係がありそうです。
 これらに対してヤマハギは筒型の花なので、口の長い昆虫でなければみつを吸うのは難しそうでしたが、実際ハチが多く、一例だけキチョウが来ました。


図1. 4種の花へ訪れた昆虫の数

 今回は酷暑条件の中でできることが限られましたが、私がヤマハギの追加調査をして花の形と昆虫の訪問とに関係がありそうだということは示せたように思います。「花の前に立って10分観察する」ということはやればできることです。ぜひ近所で試みて、報告してください。
 花の前で昆虫がくるのを待つという体験が、子供たちに「生き物を調べること」の記憶として何かを残してくれたらいいなと思いました。

*写真の一部は「玉川上水花マップ」のものを使わせてもらいました。





スタッフ・参加者の感想

2022-01-16 18:42:52 | イベント
リー智子(主催者)
主催者からの感想。
 今回は、玉川上水の生物多様性、生き物のつながりについて、今まで講座に参加したことのない子供たちに伝えたいと思い、たくさんのチラシを近隣の小学校に配布しました。そのおかげで、あたらしいこどもたちが参加してくれました。 

チラシ

 高槻先生は、麻布大学の元教授であり、いのちの博物館創設に関わられた科学者です。最も大切なこと・専門的なことを、簡単な言葉で教えることができます。一回一回が貴重な機会なので大切に企画しています。
 今回は、環境の変化に適応して食べ物を変えていくフクロウのことを、巣に残された残骸から調査していくという調査の一部を子供達と一緒に行いました。子供達は、緊張しつつも楽しく、骨掘り出し作業に没頭していました。わずか数ミリの歯を見つけたのには驚きました。
 フクロウの音の出ない羽の秘密、林と原っぱにいるネズミの歯の違いは食べ物によること、耳の穴がずれていることで獲物の位置を正確にとらえる能力など、いろいろと学べました。
 展示物、お土産、フクロウ博士認定証の授与など、工夫満載で、楽しさ倍増、満足そうに帰っていく子供達を見送り、コロナ禍でも少人数で行えたのは良かったなと思います。引き受けてくださった高槻先生、集まった子供たち、スタッフの方達に感謝しています。

歯の違いを実際に見れたのが、私には収穫でした。
アカネズミの歯とその説明イラスト

ハタネズミの歯とその説明イラスト

*************
坂本有加(スタッフ)
 観察会から数日後、「えのき茸」と明太子の和え物を食べていたときに、「えのき茸」が「先っちょぼうず」にそっくりだということに気付きました。特に小さい「えのき茸」で傘が閉じているのがネズミの骨と同じくらいの大きさで、色も白くてよく似ています。もしも、この骨のことを「大腿骨です。丸い部分は大腿骨頭と呼びます。」と教わったら、きっと「えのき茸」を見ても骨のことを思い出さなかったと思います。高槻先生のスライドで骨に顔と腕がついている絵を見て、かわいいあだ名を覚えて、小さなネズミの骨を沢山見て、完全に「先っちょぼうず」がインプットされていたため、意外なところで思い出してクスリと笑ってしまいました。
 前半に座学の時間があり、子供も大人もスライドを見たりお話を聞くのに集中している姿が印象的でした。以前のフクロウ講座の時も(その時はもっと広い教室にもっと大勢が来ていたと記憶しています)、皆さん真剣に聞き入っていました。そうさせるのは、高槻先生のスライドと話術の力はもちろんありますが、フクロウの持つ、人を惹き付ける魅力なのかなと思います。
 今回は初参加の方が多かったと聞きました。フクロウのお話を聞いて標本も見るけれど、実際にはネズミの骨を調べている時間が長く、ネズミを知ることで捕食者であるフクロウを知る時間になっていたと思います。生物調査は巣材や糞や足跡等、生き物そのものではなく痕跡を調べることも多いですから、「生き物を調べるって、こういうことなんだな」と理解が深まる機会になったら、携わる者として嬉しいです。スタッフとして参加すると自分の知識不足を反省することもあるのですが、皆さんから質問もたくさん出て、楽しそうに過ごしている姿を見て嬉しかったです。


+++++ 参加者 +++++
今田絵眞(中1)

高槻先生、楽しい授業をありがとうございました。聞いていて凄く面白く、興味深いお話でした。もとから生物には興味があったのですが、また新しく知識の枠を広げることができ、行って良かったと思っています。この度は本当にありがとうございました。機会があれば、また楽しい授業を宜しくお願いします。

****************
今田晴志郎(小2)
こんなに骨が集まるとは思わなかったです。骨に、ひとつひとつに名前をつけておもしろいなと思いました。「歌うおじさん」がいちばんおもしろかったです。嬉しかったことは、おみやげがあったことです。いっぱい教えてくれて、ありがとうございました。

****************
今田亜矢子(母)
 今回子どもが学校からチラシを持ち帰った時に、生物が好きな子どもたちとフクロウ好きな私は、これは参加しなければ!と飛びついて、早速申し込みをさせていただきました。
 楽しみに待った当日でしたが、実際先生の講義を受けると本当に面白くて、色々なことを知ることが出来、大人の私でもワクワクしながら楽しい時間を過ごすことができました。そして身近にある自然のことを、今までよりももっと知りたくなって、家に帰ってからも、先生に質問してみたいあれこれを思い付いてしまうくらいでした。また機会があればぜひ高槻先生のワークショップなどに参加したいです!沢山子供たちの質問にも答えてくださり、本当にありがとうございました。

****************
・子ども
 とても楽しかった。骨を探すのは、宝探しみたいでわくわくした。骨の名前が面白かった。「先っちょぼうず」の骨と、「歌うおじさん」の骨は組み合わさって動くんだ。骨のことも勉強になった。

****************
・保護者
 スライドや標本を使っての説明が分かりやすく、子どもも興味深くお話を聞いていました。骨を探すのは初めての体験で、子どもだけでなく、大人も真剣に取り組んでいました。貴重な体験で、受講してよかったです。ありがとうございました。この度のイベントではお世話になりました。高槻先生のブログも嬉しく拝読しました。ご紹介下さったいのちの博物館、今は平日のみ開館のようですので、春休みに子どもと訪れたいと思っております。

****************
清水柊弥
 今回でネズミの細かい骨格や、フクロウの羽の形などを知ることが出来ました。ふくろうが夜に狩りをすること、首の可動域が広いことは知っていましたが、リンゴ畑でネズミの駆除に活躍しているとは驚きでした。勉強になりました。

****************
清水柊弥の母
 貴重な体験でした。高槻先生、スタッフの方々、丁寧にご対応下さり大変ありがとうございました。学生(四半世紀前…)に戻ったような気持ちになり、私自身もとても楽しかったです。

****************
熊田宇里(小5)
骨に興味があって、骨の人体模型を持っていたからそれに当てはまる骨が沢山あって面白かった。フクロウが夜は目が見えなくて音で見ることや、ネズミが思っているより小さいのでびっくりした。

****************
熊田真弓(母)
小さい骨を拾う小さい視点から、環境のことや生態系のことなど広い視点までを、あだ名をつけたり子供にもわかりやすく説明してくださったので、親子で共に楽しめました。ありがとうございました。

****************
新村家族
今日はフクロウの会ありがとうございました。今回は色々なご配慮の中、参加出来たことに感謝です。感想を送ります。

****************
・新村(父) 
フクロウの出した物から、こんなに多くのネズミの骨がでるとは驚きでした。人間とネズミの骨の形の違いがみれて面白かったです。骨の形の特徴を子どもにあわせて教えてくれて分かりやすかったです。また参加したいです。

****************
・新村そうすけ 「バイオリン」、「歌うおじさん」、「坊主あたま」とか名前が面白かった。ピンセットで歯を抜いた。毛がいっぱいあった。貰えるとおもってたから残念だった。

****************
・新村(母)
お勉強会後のご報告ありがとうございます。参加出来なかった母も、おかげさまで勉強になります!

****************
巣の中からあんなにも骨が出ることと、思ったよりもネズミの骨が小さく驚いた。
顎の骨の形でネズミの種類がわかることが理解でき、住んでいる地域で骨の出方が異なることが理解できてよかった。