玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

新設された柵の意見交換(2023.5.1)

2023-09-02 13:21:45 | 記録
5月1日に小平の西部に新設された柵を見て、意見交換をしました。こちら
いつも第2日曜日に行っている観察会を今月は1日に行いました。それは小平の西に今年の1月に新しい柵が作られ、それがこれまでのものより高く、縦棒の間隔が狭く、我々自然観察をするものにとってははなはだ好ましくないので、これに関連した集まりにすることになったからです。私もこれを見て強い違和感を感じました。



 このことを問題だと感じた水口さんはじめ関係者8人は緑地事務所に説明を聞きに行きました。それでわかったのは建設局は「史跡玉川上水整備活用計画」(2009)に基づいて設置したの一点ばりだということです。そして繰り返し言ったのは、安全を重視したものにし、水道局と相談して決めたということです。そして予算は確保できたので、新小川橋から東に向けて久右衛門橋まで延長し、今年の夏頃には発注したいということでした。
 その後、4月24日に関係者が集まり、今後のことを話し合いました。

 当日は、玉川上水に1時集合としました。いつも数人でのんびり歩くのですが、今回は初めての人も含め24人が集まりました。
 自己紹介が終わって歩き出しました。ニセアカシアの花が咲いていました。「小平にアカシア通りと言ってこの木がある通りがありますが、正くはニセアカシア通りです」笑

 ツルウメモドキの花が咲いていたので説明しました。そのほかニガナ、キンランなどが咲いていましたが、全体に花はさほどありませんでした。

 小平監視所のところで、松山さんにこれより上流の水とこれより下流の水が違うことを説明してもらいました。


説明する松山さん

 天気予報では夕方から雨が降るということでしたが、1時過ぎから少しパラパラときました。
 監視所の近くで玉川上水の水面まで降りてみることができる小平小橋があるのでそこにおりました。

 新しくできた柵は斜めから見るといかにも黒々として植物を見るのも難しいし、強い威圧感がありました。


新しい柵で説明

 しばらく歩いてから私から説明をしました。
「この柵のほか、この辺りには4つのタイプの柵があります。


これがここから小金井の間に次のように配置されています。擬木横柵が広い範囲に作られています。東がわの右岸に「金属低い」が、ところどころに「金属細い」が。小金井の右岸に「金属高い」があります。新しい黒い柵が西側の左岸(黒い線)に作られた訳ですが、これが久右衛門橋まで延長したら長いのでとんでもないことになりますね。


現在の久右衛門橋のところにある「金属細い」はまだ新しく見えるし、威圧感はないので取り替えて欲しくないです。これら四つの柵のどれと比べてもこの新しい柵は良くないものです」

 水口さんから4月19日の緑地事務所での話し合いの報告がありました。その要点は次の通りです。
「この黒い柵は平成28年から杉並の方から始め、今後統一していく。規格は整備計画に書いてある。幅はJIS規格。予算がついたので新小川橋から久右衛門橋まで延長する。」

 リーさんからは、
「これまで説明会があって市民の意見を聞きますが、聞くだけで実行されず、説明会をしたことがアリバイのようにされている。
所長は強引には設置をしないと言っていたから、対立ではなく協働を表明してくれたと思っている。今までにはありえなかったことなので、それを信じて働きかけたい。」
という発言がありました。

それから参加者から意見を聞きました。以下は要点です。

- 小学生に玉川上水のことを教えているが、この柵だと高すぎるし、縦棒の間隔が狭くて観察がしにくいのでとても困る。
- 場所により事情が違い、玉川上水の意味や機能も違うのに、同じ柵で統一するのは良くない。この柵は人々と玉川上水を隔離する感じがする。
- 玉川上水沿いには、柵と法面が近接して危険な箇所もある。そこを放置して、危険性が低いところに転落防止柵を付けるのはおかしい。まず水路の状況の調査をきちんとしてほしい。柵を付ける目的をよく考えてほしい。
- 小平市では玉川上水を訪れる人を誘致して観光に利用しようという動きもある。そのためにはこのような柵はマイナスとなるので良くない。市からも意見を言ってもらいたい。
- 行政が、予算がついたから実施するということがよくあるが、必要ないと思われるものも多い。もっと必要なことに使って欲しい。この柵もその例だと思う。
- 同じ緑地事務所が作った井の頭公園の柵は低い。足元に低い柵を作っていてこちらに高い柵を作るのは矛盾している。
- この柵は単価が安いのではないか。もっと高くて細い金属のような目立たないものにして距離は短くした方がよい。
- 子どもに意見を聞いてみたらどうだろうか。子どもが立ち入って危険ということなら、子どもに立ち入り防止のポスターを描いてもらって、柵に掲示するなどしたらどうか。三鷹には上の横棒が回転して立ち入りができないようにしたものもある。
- 本当に危険な場所には設置しないで、危険とも思えないところに設置している。玉川上水の調査をきちんとしてから設置場所を決めて欲しい。
- 柵というより塀のようだ。

その上で私から追加説明をしました。
「この柵はご覧のようにとても圧迫感がありますが、これを設置した緑地事務所は玉川上水整備計画に基づいて作ったと言いますが、その計画を見ると、安全のことだけでなく、重要なポイントが三つあるとしています。その三つとは1)玉川上水を見せる、2)玉川上水への理解を深める、3)より多くの人が安全・快適に利用し、親しめるようにする、です。この柵はこのどれにも反します。
 またこの整備計画は2009年に水道局が作ったものですが、この計画は2007年の「史跡玉川上水保存管理計画」に則っています。その中には以下のような文章があります。
『玉川上水は、貴重な土木施設・遺構であると同時に、水と緑の空間として都民に親しまれ、学校教材にも取り上げられるなど、郷土史を学ぶ上でも非常に重要なものと位置付けられている。しかし、近年では水路の法面崩壊、法面崩壊の要因となる樹木の巨木化等、維持管理上の課題が生じている。
また、玉川上水が 9 市 3 区を通過し、維持管理等に関係する団体も多いことから、保存管理を適切に推進していくためには、保存管理に関して関係機関が共通認識を持ち、 取組を推進することが必要である。本計画は、史跡「玉川上水」を適切に保存管理し、後世に継承していくための指針として策定されるものである。さらに、国民の財産である史跡「玉川上水」 について、多くの市民が理解し、活用できるよう、保存管理の方針・方法や整備活用の方向性について明らかにすることを目的とする』
これはとてもよく書かれています。もしこれが実行されていたらこういう柵にはならないはずです。」

それからアンケートを書いてもらいましたが、紙が雨に濡れて書きにくいので、後で送るという人もいました。こちらあ

 最後に挨拶を兼ねてまとめました。
「今日、色々意見をもらいありがとうございました。予算がついたという状況で中止や大幅な変更は難しいかもしれませんが、多くの市民がこの柵には悪印象を受け、これを延長して欲しくないこと、また決定のしかたにも納得できないことが確認できたので、これを背景にして、この決定の問題点を指摘し、強引には進めないように申し入れをします。その場合、小平市の意向も聞きたいし、水道局の考えも確認したいと思います」

として14:40くらいに解散としました。

* 写真の多くは豊口さんによるものです。


小平の新柵アンケート

2023-09-02 07:24:34 | 記録
5月1日の観察会で、小平小橋から西中島橋に設置された柵について意見交換をし、アンケートを取りました(こちら)。アンケート内容は次の通りで、記名でしたが、ここでは氏名を伏せて紹介します。なお、この柵を見た人はこのサイトの最下部にある「コメント」の欄から回答を送ることができます。意見が多いほど、この柵の見直し、延長抑止の力になりますので、ご協力ください。ただしアンケートの信頼性のため、記名が必要です。

++++++++++++++++++++++
回答者19名(5/18現在)

お住まいは小平市の人が多く、そのほかに小金井、東大和、三鷹の人がおられました。

質問1.上水小橋~西中島橋に昨年度新設された柵を見て、どう感じましたか。

(よい 0 よくない 19 どちらともいえない 0)

その理由の記述から意見分布を示しました。これは一人ひとつとは限りません。また「威圧感がある」と「景観を損なう」は同じことの別の表現と見ることもできます。個別の記述は下方をご覧ください。

よくないとして理由

一番多かったのは「威圧感を感じる、玉川上水とはなじまないから」という理由でした。また「自然観察がしにくいから」という意見も多くありました。

質問 2.上水小橋~西中島橋に新設された柵をさらに下流に広げることについてどう思いますか。

(よい 0 よくない 19 どちらともいえない 0)

 この理由としては、この場所は特によい林が残っていることもあって観察会などが盛んに行われているので、同じ規格の柵にしないで観察がしやすくしてほしいというものでした。また現状でも老朽化しているとは思えないし、安全性にも特に問題はないので、よくない柵にするのに大きな予算を使うのは税金の使い方としてもよくないという意見もありました。

東側に延長するのはよくないとした理由

+++++ 以下は理由の欄に書かれた個別の記述です +++++

質問 1.上水小橋~西中島橋に昨年度新設された柵を見て、どう感じましたか。

(よい 0 よくない 19 どちらともいえない 0)

その理由
- 見た目に威圧感があり、色・高さ共に自然との協調(調和)がされてないと感じる。子どもの安全性も大切だが子どもが柵に頭を突っ込む事故は、実際にあるがもう少し、なじむものにした方がよい。

- 威圧感。植物観察が出来にくい。緑の回廊でなくなる

- 活用計画に基づいたとしても、もっと生物多様性に配慮して欲しい。間隔が狭すぎる。

- 黒は威圧感があるのでほかの色に。観察のためにカギを付けて入れる場所をつくれないか。キンラン、ギンランがとられないように。

- 威圧感があり、市民が玉川上水に親しむことにマイナス。自然観察がしにくい。

- 威圧感がある。自然観察がしにくい。
- 中がみえづらい。景色の中で違和感がある。
- 背が高く、プラスチックの光沢が目立つ柵が自然になじまないと感じた。少し斜めから見ても連続する黒い壁ができたようで、威圧感があった。さまざまな種類の木があって紅葉の美しい区域に調和しない柵が設置されてしまって残念だ。
柵の縦棒の間隔が狭く、柵の中が観察しにくいのを実感した。写真も撮りにくい。
柵の下があいていないので、小動物等の移動を妨げるのではないか。
転落防止柵は、玉川上水での転落事例を調べ、実状に合わせたものか。乗り越える意志があって乗り越える場合、足場がなく、背が高い柵のほうが、乗り越える際にバランスを崩して危ないように感じた。
- 近くで見るとさほどでもないが、遠くから見ると「黒い壁」のようで威圧感があり自然環境にそぐわない。もっと低くして、色や柱の間隔をあけて自然環境に融合した柵にして頂きたい。上水内に侵入されることの防止が重視されすぎていて、あまりにも人間不信を感じる 。防止は告知などを工夫して誰が見ても納得のできる温かみのある方法を考えてもらいたい。
- 玉川上水が分断されていると感じましました。カモやタヌキやカエル等、自然の生き物が出入りできなくなるのは問題だと思います。
- まるで川から拒絶されているような、非常に威圧感を感じます。このような柵を前にして、人は、玉川上水に対して親しみや愛情を感じられるのでしょうか?せめてもっと細い柵ならば、中の植物をゆっくり見ることも出来るかもしれません。また、この幅の狭さでは、タヌキも通れないだろうなぁ…とも思いました。 
- 景観の破壊になっているから。美しい景観を安全管理を考えながらより美しくする原則に反しているから、人と自然を分断する壁にしか見えないから。
- 子どもの目線レベルで見てみると黒壁が立ちはだかっているようになり、小学生の植物観察、郷土史などの学習教材資源としてふさわしくないから
- 景観を壊してしまう。自然を大切にする気持ちが見られない。
- こちらのゾーンにこの柵が現れてから、ウチの年寄りには大変不評です。
景観上、黒を使うべきではありません。土の色、緑に溶け込む色でないと柵が主役になってしまいます。尚、役所が黒を採用したのは最近の建築の流行色だからと思われます。
- 身長150?cmの者には高過ぎて中が見え難いです。縦棒の間隔ももっと広くして欲しいです。誰が決めたのか知りませんが110 cm以上という規定があるそうで、計ってみたら110 cmでした。
- 安全管理上、この高さが必要な所もあるかもしれませんが、安全な所もこの形状なのは困ります。

質問 2.上水小橋~西中島橋に新設された柵をさらに下流に広げることについてどう思いますか。

(よい 0 よくない 19 どちらともいえない 0)
その理由

- 自然を親しむことがしにくい

- この場所以外に増やしてほしくない。工事計画の見直しを

- 親しみのある景観を楽しめるものとしたい。先生が言われた縦割り行政問題にも共感しました 水口さんの活動も共感しました。緑地事務所への意見を伝える活動。
市境でデザインを統一性をもたせるのは大事

- 小平市の鷹の台辺りはよい自然があり、散策者、観察者も特別多いので絶対やめて欲しい。場所ごとに玉川上水の意味も違う。

- 今の柵の方が玉川上水がよく見えて楽しめる。
- 野草を見て散歩する人の楽しみを損ねる。今の柵に問題があるとは思えない。老朽化しているという根拠が知りたい。
- 鷹の台周辺は、観察する人も保全活動も活発で、歩きに来る人も多い。自然に親しみやすい環境を第一に考えてほしい。
玉川上水全域で同じ柵に統一する必要はないと思う。地域ごとに利用の仕方も異なる。住民や利用する人たちの意見を聞いて、地域ごとに決めてほしい。今年度設置予定の新小川橋〜久右衛門橋左岸では、柵から法面までスペースがあり、転落防止柵の設置の必要性に疑問に感じる。転落防止柵は転落のおそれがあるような箇所のみにとどめるべき。
中央公園南側の鉄の柵は観察しやすく、老朽化を感じない。予算の使い方として、まだ十分使える柵を撤去して新しい柵を設置するのでなく、柵の老朽化等の調査を行い、必要なところから取りかかるべきではないか。
- 一律にこの柵をひろげることには不賛成。各地域に即してそこに応じたふさわしい柵を考えて頂きたい。またその柵にした理由なども掲示して歩行者が納得して理解を深めるような工夫をしてもらいた。
- 観察会をしている方がおっしゃっていたように、小さな人などが、草花や虫や他の生き物を目にする機会を失ってしまうと感じます。これ以上、広げないで欲しいと思いました。出来れば、今現在あるプラスチックの黒い無粋な柵を撤去して欲しいと思いました。
- このような威圧的な柵がさらに広がっていくと考えると恐怖すら感じます。出来ればすでに設置されたこの柵も作り直してほしいくらいです。安全性のためとはいえ、ここまでにする必要はないのでは?これまでの柵の形態でどのような不都合があるのか理解できません。もっと深く検討する必要があると思います。
- 西中島橋上流(新しい柵)からこの橋の下流(従来の柵)へ歩を進めた時風景が一変するのを感じました。それは視野が一挙に広がったからだと思います。邪魔な柵が無くなったからだと思います。
- 柵のデザインを一律に統一するのではなく、危険度の高い場所、公園的要素のある場所などを考慮して実施してほしい。
- 柵ではなくオリの中となってしまう。

史跡玉川上水整備活用のための作業説明会(大塚) 2022.7.9 

2023-09-02 07:16:48 | 記録
7月8日18時30分から20時、三鷹市井の頭コミュニティセンターで、史跡玉川上水整備活用のための作業説明会がありました。参加者は30名前後、昨年の説明会より参加者は少なかったですが、活発な質問や意見などがありました。
 はじめに富永境浄水場長から、上水は地域ごとに植生が多様であり、維持管理に理解協力を願いたいというご挨拶がありました。次に三鷹市緑と公園課1名、水道局からは、施設管理、経理部用地担当、経理部管理課、浄水部、小平事業所10名ほどの自己紹介がありました。維持管理の小松さんもいらしていました。
 次に例年どおり、樹木処理作業、法面整備箇所についてスライドをみながら水道局からお願いがありました。また、三鷹市の法面整備予定箇所は、東橋から長兵衛橋、宮下橋と説明がありました。次に昨年度の説明会における質問への回答がありました。
 そして、質疑応答に入りました。出席した方の10名以上半分近くが意見や質問をしました。まず、鈴木さんが、昨年行った質問「崩落量の調査を行っていますか」について回答「崩落量調査は行っていないが、測量を行い、その結果で対策箇所・範囲を決めている」それについて、鈴木さんが異議を唱えました。水道局は、8年で1メートル後退している東橋を整備箇所に決めたそうですが、鈴木さんが何箇所も法面を1年調べた結果、1ミリも後退はしていなかったそうです。
 私も東橋が気になっていたので、状況を伝えました。ヒノキの大木の伐採した後に崩落量は増える。どの箇所も大木を伐採したあとに法面崩落がおき法面整備になる。法面整備は幅が広いほど環境へ影響あるし、お金もかかる。狭くてすむよう植生管理はできないか。東橋は周辺の竹林から上水内に入っていたが、ヒノキ伐採後に竹林が拡大した。竹林は法面に影響あるので抑えたほうがよいと小平事業所に伝えてある。これについては、現地確認するそうです。また、外堀浄化の取り組みで施設整備や伐採は必要だが、多く続くと生物多様性の確保や水路の生物、カモ、トンボ、カメなど減っている。モニタリングもないので、それらが見られる環境であるようにと伝えました。
 皆さん、それぞれ熱い思いを行政に伝え時間が足りないほどでした。

大塚 惠子


玉川上水整備に関する説明会 2022.7.8 鈴木浩克

2023-09-02 07:12:28 | 記録
7月8日に井の頭コミセンで三鷹市区域の玉川上水整備に関する説明会があったので内容を報告します。
鈴木浩克

管理者側参加者
水道局9名、東京水道(株)2名、三鷹市1名(三鷹市緑と公園課)、

境浄水場場長の富永さんの挨拶があったあと、スライド映写で今年度の整備の説明が始まりました。
昨年までは整備活用計画の中身を説明し「それに添って整備します」というような形でしたが、今年は整備活用計画は説明せず、下記の3点を方針として説明しました。

1:台風や強風で倒れた樹木の除去、枯死している樹木の除去
2:成長により周辺住宅、歩行者、車両に影響を与えている樹木の管理
3:警察や道路管理者からの指示による管理

この3点に関して、現地の写真を映写して説明がありました。これまでと同じですが、家屋との接触、歩行者や車両との接触、標識や信号が見えない箇所など、これらの管理は妥当なものと思います。
そして、管理のお知らせは橋に近いところに掲示板を設置して1か月前に告知するとのこと、対象の樹木には赤テープ(伐採)、青テープ(剪定)を巻き、これも1か月前に巻いて知らせるとのこと。
昨年、市民の方からも「告知をもっと徹底して欲しい」という意見が出ていたので、掲示方法などを改善していただいたようです。

去年までは整備活用計画にある『高木は危険だから除去』『法面を壊すから除去』『眺望の確保のために除去』というのを管理の理由として挙げていましたが、今年はその説明はありませんでした。現在の整備活用計画は、玉川上水を文化財として保存することを主目的にしていて、自然の保存は二の次にされている内容です。ところが過去の新聞記事でもわかるように、文化財としてだけでなく『岸辺の雑木林ともども永久保存』というのが本来の玉川上水の保存目的です。こういった過去の経緯が明らかになってきたことや、三鷹市議会や三鷹市長から要望書が出たことも影響して改善していただいていると感じました。

続いて、法面補強の計画がまた出ました。今回は幸橋新橋ではなく、宮下橋上流右岸の20メートルと東橋長兵衛橋間の130メートル(左岸)、135メートル(右岸)で法面補強工事を行う予定とのこと。

宮下橋上流20メートル・・・高密度ポリエチレン工法(重機不要で人力でできる)
法面平坦部と法肩は良い状態(過去に段々にする工法をしてある)なので、法面中部から法尻にかけて施行する。
法面中部と法尻はかつて玉石が積まれていたのが崩れている。
ポリエチレンでハチの巣状の枠を組んで、中に客土して法面を補強し、その上に植生シート(肥料と在来種の種入り)のものを被せる。
法尻は水による浸食を防止するため擬木杭と擬木板をあてる。
このカバー工法のために3本の樹木を伐採する予定。
 
東橋長兵衛橋130+135メートル‥‥連続繊維補強工法
この箇所は垂直面が多く、土壌流失が多く、補強が必要。
ポリエステル繊維と砂を混ぜて法面に吹付け、法面と結合させ崩落を防止する。
その後の植生カバーと法尻の擬木は宮下橋の工法と同じ。
要するに井の頭橋~松影橋間でやったのと同じ工法です。しかし、この工事では樹木の伐採は0本でやる予定とのこと。

井の頭橋~松影橋のように、現存する樹木のほとんどを伐採したうえでカバーを掛けることに比較すれば、伐採本数を0本にして計画していることは評価できるものだと思います。しかし、130メートルもの距離の法面が、本当に補強する必要がある状態なのか?は疑問が残ります。
木を切らないとしても石綿のような化学繊維と化学物質の素材を吹き付ければ、多少の草木は生えてきますが、自然環境としてはマイナスになると思います。

続いて昨年出た質問への回答がありました。

1:整備活用計画は当面延長としているが、当面とはどのくらいか?
A:大型台風への対応や法面の補強が必要な箇所があるので整備活用計画は続ける。『当面』はとく期間を定めていない。
 
2:整備活用計画を見直さないのか?
A:現段階で見直しの段取りは無い。整備をすすめながら検討していく。

3:枯木や倒木が放置されている
A:放置しているつもりはない(でも放置されてるけど)

4:法面の崩落量を実測しているのか?
A:やっていない。しかし法面補強工事をする際には測量し、過去の測量データと比べることで崩落量を把握できる

5:土圧やN値の測定を工事前にやっているのか?やっているなら数値を出せ
A:仮設構築物指針にしたがって測定などやっている

10年計画の「整備活用計画」はもう期限が切れています。そして計画の内容が文化財保存に偏っていること、文化財保存としても科学的にマイナスな内容になっています。この計画を見直さずに「当面続ける」「続けながら検討する」と進めば、文化財の保存も自然の保存も失敗に終わると思います。
計画の見直しは今後も求めていかなければならないと思います。

ここから参加住民からの質問コーナーになりました。

トップで私が質問したのは
私:施行前に測量によって流出量を把握していると説明したが、今回の東橋130メートル区間など、どれくらい流出していたのか?
A:多いところは8年間で1メートル後退していた。
私:私は法面を写真撮影して比較したが、1年経過して流失はほとんど認められなかった。8年間で1メートル後退した箇所は、何か特殊な現象があった箇所だと思う。130メートルの区間が一律1メートル後退しているのか?
A:ほとんど後退していない箇所もある
私:1メートル後退した箇所は130メートルの計画区間の中で何メートルくらいあるのか?
A:それはちょっと把握していない
ということでした。

そのほか市民の皆さんから
●環境局が協議会をネットでやったが、今日環境局が来ていないのはおかしい。
●行政職員は異動があるので話しあいが生かされない
●鈴木都政で清流復活してからは土壌流失していない
●過去に法面補強について住民の詳しい人がアイデアを出すと、検討して実施してくれていた。木製の自然素材とシダを生やすなどで法面を守ろうとしていた。
●上水は人工の構造物だから自然というより適正な管理が必要(里山的な)
●新橋~松影橋のクズの大繁茂はひどい。左岸の竹藪もひどい。
●東橋の崩落箇所は大木のヒノキを伐採した箇所だと思う。いままで大木を伐採するとその周りの崩落が進行していた。何が原因で流失したのか?を正しく把握して欲しい。
●生物のモニタリングなどもして、できる限り小規模に、少しずつやって欲しい。
●大木の根が民地に侵入していると話がある。民地へ伸びている根を調査しているのか?
●私が子供のころはこんなに木々は生い茂っていなかった
●投げ入れられたごみをなぜ放置する?住民も手伝うからごみ掃除しないか?(会場拍手)
などの意見がありました。

市民意見の中でも、上水として運用されていたころを知っているご高齢の方は、ひたすら昔の姿が正しいと感じているようです。一方、近年に玉川上水近辺に家を建てた方は自然環境の良さに魅力を感じて家を建てているので、環境を大事にしたいと思っている方が多いです。市民意見も様々です。
もっと樹木を切って手入れをして欲しい方々からは『行政のみなさんは専門家でプロなんだから、いちいち反対しないでプロに任せればいい』という発言もあり、それには『まったくプロじゃない、ひどい管理だから意見してる』『予算があるから過剰に切っているだけ』というような住民間での不規則発言の応酬も多少ありました。

最後に私が『東橋でカバーするのは何メートルなのかだけ、最後に教えてください』と質問すると
A:まだ具体的にはこれから検討なので言えない
というこということでした。

化学繊維や化学物質を混ぜたものを吹き付けてカバーするのが1メートルなのか?、100メートルなのか?で大きな違いです。私はもし法面の流失が著しい箇所があれば、その原因を特定し、適切な補強工事は必要だと思います。しかし、流失していないならカバーを掛ける必要はありません。私が「カバーする距離を言えないようでは、工事を説明したとは言えない』と発言したら、会場の方々が拍手してくれました。

三鷹市長が要望で『法面補強や樹木などの伐採等を実施するにあたっては、時期、方法などについて、地域の住民や自然保護団体から事前に意見を聴く場を設け、また、十分な周知や説明をするなど、丁寧な対応をお願いします。』と要望しているのだから、今後も「カバーする必要がなるのか?無いのか?」市民が納得できるまで説明して欲しいと思います。

井の頭自然の会
鈴木浩克