大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

量的緩和からの方向転換

2016年09月24日 | 日記

 日銀は9月21日に新たな金融政策の枠組みを発表した。これについては、金融緩和の強化であるとする理解と引き締め(テーパリング)への方向転換であると理解する立場が入り乱れている。

 個人的には、今回の日銀の決定は、すくなくとも金融緩和の強化ではないと思う。

 以前ブログに書いたように、年80兆円の国債買い入れを長く続けることは不可能である。日銀内でこの点について懸念が高まっているとする報道も多い。

 ではどうするか。IMFのワーキング・ペーパー(2015年8月)はいくつかの代替策を提示している。

 ひとつは、長期、超長期国債の買い入れの増額である。日銀の国債買い入れは、償還までの残存期間が短いものが多く、とくにこうしたもので日銀の保有割合が急速に高まっている。国債買い入れを続けるには、長期、超長期の買い入れを増やさなければならない。実際、日銀は2014年10月に、国債の平均残存期間をそれまでの7年程度から7-10年程度に、2015年12月にはそれをさらに7-12年に延長してきた。そしてついに今回、日銀は平均残存期間のさだめを撤廃した(ただし当面は、長期金利の上昇をめざすため、長期、超長期の国債の買い入れ額は減る可能性が高く、これまでどおりの規模で国債買い入れを続けた場合、短期国債で買い入れ限界が早まる可能性がでてきた)。 

 もうひとつは、2%の物価目標を実現する政策手段として金利に重心をうつすというものである。実際、日銀は2016年1月にマイナス金利の導入を決定。そして今回、あたらしく長期金利(10年国債利回り)0%をめざすとした。そしてこれが重要なのだが、日銀はこれに合わせ年80兆円という国債買い入れ額の枠組みをなくした。黒田日銀総裁は、これをテーパリングではないと言っているが、実際にはテーパリングを可能にする仕組みで、長期、超長期国債を中心に国債買い入れが減らされていく可能性が少なくないと思う。

 個人的には、現在の規模で国債買い入れを続けるのは不可能であり、その方向転換が必要だと思っている。その意味では、今回の決定は「正しい」方向転換だと思う。

 もっとも海外では、日銀は長期金利のコントロールが実際にできるのかといった疑問も出ている(おもしろいものでは、長期金利が下がりすぎたら日銀は国債を売るのかといった疑問もでていた-それはないと思うが)。いまは中央銀行の金融政策抜きに経済が語れなくなっている。専門ではないが、これからも日米欧の金融政策を注視していきたい。

2016/10/7追記

 2016年9月30日、日銀は長期、超長期国債の買い入れ額を月間約2000億円(年2兆円超)減らすと発表した。



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