大野威研究室ブログ

おもにアメリカの自動車産業、雇用問題、労働問題、労使関係、経済状況について、最近気になったことを不定期で書いています。

日銀の出口戦略

2014年03月31日 | 日記

 フィナンシャル・タイムズ(3月24日)は、日銀が国債を大量保有することを警告する記事を掲載した。

 

 同紙によれば、現在、日本の銀行は買った長期債をすぐさま日銀に売却し、数ベーシスポイント(100分の数%)というわずかな差益を得ることを繰り返している。そのため、たとえば2月6日に発行された30年債は、その90%を日銀が保有している(注1)。

 

 この結果、日銀は長期債の80%を保有するまでになっているが、これは日本に先駆けて量的緩和を進めてきた米連銀の55%よりはるかに高い(注2)。

 

 このように指摘したうえで、同紙は、国債買い入れの縮小(出口)は困難なしごとになるだろうとしている。

 

 ちなみに現在、アメリカでは利上げ(緩和縮小=出口)が近いということで、新興株式市場(ナスダック)が軟調な動きを見せている。アメリカでは、これを1999-2000年のITバブル崩壊と重ねる人が増えている(1999年から2000年にかけて米連銀は金融政策を引き締めに転換し計6回の利上げ-計1.75%-をおこなっており、いまの状況に少し似ている)。実態経済が好調なアメリカでさえこの様子であるから、超緩和政策なしには経済の縮小(デフレ)が止まらない日本の場合、日銀が出口を示唆した時どのような反応が起こるか考えるだけでも恐ろしい。

 

 日本のメディアは追加緩和期待の話ばかりだが、こういう視点も必要だろうということで書いておく。

 

(注1)FTの誤り。2月6日におこなわれた第41回30年国債の入札金額は約5,000億円。一方、日銀の2月末時点での同国債の保有残高は4,032億円。ここからFTは、最新30年債の日銀保有率を90%以上としていると思われる。しかし、財務省に確認して私もわかったのだが、第41回30年国債は今年1月と昨年12月にも入札があり、それぞれ約5,000億円が発行されている。したがって最新30年債の日銀保有率は3割弱というのが正しい数字になる。

 

 (注2)何年以降のどの長期国債の数値なのかFTには記述がない。根拠不明な数値だといわざるをえない。ただ、日銀は長期国債を財務省から直接購入(入札)するだけでなく、銀行から市中で買い上げを行っているのは確かで、その結果、国債の保有比率がかなり高くなっているのは事実である。ちなみに昨年末から今年初めに発行された第332回10年国債(長期国債)の場合、(たぶん)計3回の発行合計が7兆2千億円に対し、3月末での日銀の保有額は3兆2,924億円となっており、単純に計算すると日銀の保有比率は5割に近いものになっている。ただこの計算では、流動性確保のため追加発行された分などを除外しているため、実際には日銀の保有比率はこれより低い可能性が高い。 



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