Marice in Wonderland

日々読んだ本の感想を綴る
基本的には休日更新。

五十嵐貴久『土井徹先生の診療事件簿』

2011-08-27 23:28:00 | ミステリ


ジャケ買い。ミステリとしてはやや物足りないかも。

敬愛する中村佑介先生が手がけたジャケット。これは買うしかない。
著者の本は数冊読了済み。やり過ぎ感はあったものの『RIKA』は面白かったし、『FAKE』も良かった記憶があります。

本書は、弱冠二十四歳の女性警察署副署長と、動物と会話できる獣医によるミステリ短編集。
色々な謎や問題に、様々な動物が何らかのかたちで関わっています。
それが犯人?であったり、或いはそれからヒントを貰ったり・・・
派手さはないものの、地味に「なるほど」と思うことが多かったです。

ミステリ部分よりも動物に関する雑学の方が印象に残っています笑
特に「猫が何故笑ったように見えるか」は興味深く、大変面白かったです。
ミステリ部分ともしっかり噛み合っていて見事。
今度実家の猫で試してみようと思いました。

あ、動物と会話できるという設定はあまり活かされていないような・・・
この設定って、一見面白いですが扱いが難しそうです。
他の人は動物に証言能力は認めないわけですし、犯人は油断して一部始終を見せるかもしれない。
それを動物が見ていたなら、何があったか聞いて終わりですからね。
でも、「動物が言ってました!」なんて他人には説明できないし・・・何にせよ少々難しい。

この著者はミステリよりもエンタメ作品の方が面白いかもしれない。
サスペンス・ホラー系の、ハラハラ感漲る作品がまた読みたいです。

三津田信三『生霊の如き重るもの』

2011-08-21 20:50:41 | ミステリ


怪奇と論理が同居する、怪異蒐集家刀城言耶シリーズ最新作。なかなか。

怪異譚に目が無い作家、刀城言耶。
本作は、『~の如き』シリーズで活躍する彼の、学生時代の活躍を描いた短編集です。
内容は作家時代のそれと同じようなものですが・・・落ち着きや推理力も変わらないように見えますし。
登場人物が違うだけという感じ。

どの作品も、全て論理が方が付くのではなく、何処かに怪異の匂いを残して終わる点が印象的。
この作風は、著者のメッセージ?
余韻があって好きですけどね。

足跡や密室等、扱われるテーマは古典的ですが、トリックは一捻りあって面白いです。
怪異の仕業としか思えない出来事たち。
それらに対し、自らの推理を自ら潰し、可能性を消していく推理で迫る様が心地よい。
表題作は、それによる最終盤の展開に驚かされました。

最初から三作品連続で足跡の謎が出てきた時は
「まさか全部コレ?」とハラハラしましたが、そんなこともなく。

ヒヤッとする怖さと、切れ味の良い論理が気持ち良い一冊。

***
ついに長期休暇も終わり・・・また週末更新に戻ります・・・嗚呼、嫌だ・・・


喜国雅彦『本棚探偵の冒険』/横溝正史コレクションについて

2011-08-20 14:16:58 | エッセイ


古本蒐集家のエッセイ。著者の本業は漫画家ながら、その情熱は凄まじい。

横溝正史の推理小説がブームだった時代。
消費税導入に合わせカバーを替えなければならないため、それらは書店から一斉に姿を消したそう。
目の前から無くなると欲しくなる・・・そこから始まった著者の古本蒐集生活。
その苦労、面白さ、悲しさ等々あらゆる感情が詰まった一冊。

古本の中でも、特に戦前のミステリを蒐集している著者。
私も古本屋は好きだし(アルバイトしてた位ですからね)本を並べる楽しさもよ~く分かる。
そんなこんなで、「あるある!」と共感しながら楽しみました。
たま~に「イラッ」とする部分もありましたけど。
(概ねネタだと思いますが・・・本当だったら結構性格悪いなぁと思う)

また、共感はしたものの、客観的に見てみると「古本蒐集」の世界はかなりキモチワルイ。
少しコアなマニアになると、異常だなと感じることもあります。
それでこそのマニアなのかもしれないですが。

面白いエッセイ。
ミステリ好き、古本好きは是非。
(続編も既に買ってしまった・・・)

***
ところで、著者の古本蒐集のきっかけとなった横溝正史の文庫本ですが、実は私も集めています。
著者が集め始めた理由は「新刊書店になくなったから」でした。
(主要な作品は消費税込の値段がついたカバーのものを並べたそうですが、他の作品は、そのまま返本したそう。そのため、手に入らなくなったとか)
私の理由は「表紙絵が好きだから」です。

例えば、現在の『悪魔の手毬歌』はこんな表紙。


何の面白みも無いです。
一方、こうなってしまう前の表紙はこんな感じ。


最高じゃあないですか。想像力をかきたてられる、不気味過ぎる表紙。素晴らしいです。
私はこのイラストの魅力に完全に打ちのめされ、古本屋では常にこのシリーズを探します。
結果、これ位集まりました(上段左は古めの講談社文庫なだけで、関係ありません。昔の講談社文庫も表紙絵はかなり不気味・シュールで大好きですが)


まだ数十冊足りませんが、大手の古本屋では見つからなくなってきました。
宝探し気分でちょくちょく集め続けようと思います。

好きなジャケットで記事書いてみるのも面白そうですね。装丁コレクション。

エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿 Ⅱ』

2011-08-19 20:01:18 | ミステリ


幽霊・悪魔の仕業としか思えない怪奇現象を、論理で解決していくオカルト探偵シリーズ。

シリーズ二作目。
(既に発表されている未訳の作品を選び短編集としているので、上記の表現が正しいか分かりませんが・・・)

宇宙飛行士たちが、謎の電撃により次々死んでいく・・・これは宇宙からの復讐か?
吹くと死ぬというラッパを吹いた女性が死んだ・・・これは、呪い?
といったオカルト~な事件に立ち向かうサイモン・アークの物語。

悪魔を探し二千年以上旅をしていると噂されるサイモンの、オカルト知識に裏付けされた推理が見どころ。
ではありますが・・・

事件の内容が変わるだけで、解決に至るパターンが毎度毎度同じような気がします。
奇妙な事件が起きる→実地調査と推理→犯人を待ち伏せする→捕まえる、みたいな。
犯人を現行犯で捕えるパターンが多い。
トリック自体もそれ程凄いものは無い印象。

が、オカルト話としてはどの作品も面白いです。
トリックよりは物語を楽しむシリーズかなぁ。

彩坂美月『夏の王国で目覚めない』

2011-08-17 23:29:36 | ミステリ


ジャケット+タイトル買い。が、これは収穫。とてもとても良いミステリでした。

カルトな人気を誇る作家、三島加深。
選ばれた者のみが入室を許可される、秘密のファンサイトが存在するらしい。
主人公はそのサイトに辿り着き、選ばれたファン達と交流を深めていく。
そんなある時、主人公は管理人の「ジョーカー」より、加深の未発表原稿をかけた仮想推理ツアーへ招待される。
所謂ごっこ遊びの推理ツアー。しかし、現実に参加者が消えていく。
参加者達を消していく犯人は誰なのか?何が目的なのか?

ジャケットがとても綺麗でつい手に取った一冊ながら、非常に楽しめました。
新人作家さんのようですが、隅々まで丁寧に創られた作品で、クオリティは凄く高いと思う。

面白い構造をしたミステリで、同じ時間軸でふたつのシナリオが並行して進みます。
A:仮想推理劇。ある別荘で死んだ女性の謎を探る。
B:仮想推理劇を演じている自分たちを消し去っていく犯人は誰なのか、探る。
Aの謎を解明しながら、現実に起こりつつある危機を打開しなければいけない。
緊迫感溢れるシーンが続き、一気読み。
Aには、普通のミステリとしての面白みがあり
Bには、何処かに潜む犯人に消されないようルールを守りながら、仮想推理劇ツアーを続けるという、殺人ゲーム脱出ミステリ的面白みがあります。
このAとBが有機的に絡み合い、独特の面白みが生まれています。

どのような結末になるのか想像がつきませんでしたが・・・お見事。
終盤地味に○○○○○○連発で、想像以上にガチなミステリだと実感。
タイトルも、読了後深く心に残ります。

今後に期待。さすがハヤカワ。
良質なミステリを出してくれそうです。