Marice in Wonderland

日々読んだ本の感想を綴る
基本的には休日更新。

海羽超史郎『STEINS;GATE 円環連鎖のウロボロス 2』

2011-04-29 21:42:20 | SF


最高!傑作。

物語が急展開を迎えながらも終了した前巻の続き、かつ完結編。
漸く作品全体として評価できるようになりました。

凄い。当然のことながら、全てが計算され尽くしている。
1巻冒頭の意味不明でちぐはぐなやりとり、展開の真相が明らかに。
更にはそれさえも・・・ああ、これ以上は言えない!
行動全てに意味があり、全てが繋がっている。
この伏線のばらまきと回収は途轍もない。

2巻終盤からの熱さも素晴らしい。
細かい設定やら整合性なんかもうどうでもいいやと思わせる熱さ。王道的展開万歳。
エンディングも感動。ページ数に見合った密度の長旅をしてきた、それ故の感動が。

タイムトラベル(タイムリープ)モノ
青春モノ(非常に広義の・・・w)
厨2病モノ
が好きな方は読んで損なし。大満足。


島田荘司『御手洗潔の挨拶』

2011-04-24 18:51:50 | ミステリ


古めの作品ながら、楽しめました。

某古書店で御手洗潔シリーズが100円で多数売り出されていたので、つい確保。
久々のシマソウです。
一昨年だったか、『占星術殺人事件』を読みましたが、何せ結末をアレのせいで知ってしまっていたために・・・
20代の方々は概ねオチを読めてしまうのではないでしょうか。アレの罪は深い。

よって、ある意味では初シマソウとも言える訳ですが、面白かったです。
トリックは結構ガチで、それどうなのよと思うものもありましたが・・・
よく考え付くものです。これを読むと、『占星術~』が凄まじ過ぎたことを改めて感じます。

探偵役の御手洗潔に不思議な魅力があります。
嫌味な奴と思う人もいるでしょうが、妙にカリスマティックで、カッコイイ。
助手?の石岡との絡みも軽快で心地良い。
このあたりの面白みも人気の理由のひとつなんでしょうね。
腐女子が大勢つくのもよく分かる・・・

もっと御手洗を見ていたいと思わせる。他の作品も買っておいて良かった。
今更感もありますが、やはり通っておきたい道(シリーズ)のひとつ。

海羽超史郎『STEINS;GATE 円環連鎖のウロボロス 1』

2011-04-20 22:42:25 | SF


とても面白い!

主人公は狂気のマッドサイエンティスト「鳳凰院凶真」を自称する厨二病大学生、岡部倫太郎。
彼は、「機関」と戦うために様々は発明をする「未来ガジェット研究所」を設立。
その実はサークル活動のようなものながら、ある日「電話レンジ」なるものを完成させます。
電話とレンジを組み合わせたこの機械では、物がゲル状になったり、何故か冷凍されたりと不思議な現象が多発。
そこで、原因を色々調べていくうちに、「電話レンジ」は一種のタイムマシンであることが判明し・・・

ゲームのノベライズということですが、ネタびっしりの密度の高いSFです。
ネタびっしりと言っても、設定やSFにありがちな専門用語が満載ということではなく・・・
ネット・ゲーム・アニメのネタがびっしり。
特に、登場人物が口癖としている某巨大掲示板のスラング群が面白い。
まさにレスを読んでいるようで、著者も相当なユーザーか、取材したのか・・・
よくこれだけ詰め込んだものです。
舞台が秋葉原ということで、作品全体の雰囲気がアキバな感じ。

主人公の厨二病っぷりも凄まじい。笑えます。
が、幼馴染のまゆりの発言からは、昔の普通な主人公に戻って欲しいという思いも読み取れ、妙に切ない。
主人公に何かあったのか、二人の関係はどうなるのか、等気になる点が多々。

で、肝心のSF部分ですが、これはまぁリアリティを感じさせるような精密に作り込まれたものではないですね。
キーワードを繋げて、無茶苦茶しているようなものです。
が、ロマンが!タイムトラベル・タイムリープはロマンの塊なのです。
SERN、ジョン・タイターなどアヤシイ要素も大量に盛り込まれていて、ワクワクが止まらない。

青春SFとしてもとても楽しめました。
季節は夏。扇風機や蝉、青空の描写がとても好き。
喧噪から離れた、暑いながらも静かなラボ。・・・
よく出てくる表現に「扇風機のかたかたという音が~」というものがありましたが、これ好きです。
それだけ静かだということがよく分かりますし
同時に暑さやむわっとした空気の感触も伝わります。
ガヤガヤ感、静寂感、ギャグ、シリアス等対立する場面や流れが巧く配され、使われていて
情景がより鮮やかになっているように感じます。巧い。

さて、タイトルに1とあるように、物語が急展開を見せたところで最終巻でえある2巻へと続いていきます。
もう2巻も出ているので、すぐ読みたいと思います。
果たしてどう収拾をつけるのか・・・

真藤順丈『地図男』

2011-04-14 22:32:06 | エンタメ


たくさんの楽しみが詰まった、なかなか面白い一冊。

映画製作をする主人公が出会った浮浪者のような男。
彼は、大きな地図帳を抱えていた。
ただの地図帳ではなく、夥しい量の書き込みが加えられた地図帳・・・
地図に書き込まれた不思議な物語。
そんな物語を生み出し続けるこの「地図男」はいったい何者?

主人公が地図男の語る物語に惚れ込み、追い掛け回すうちに彼の謎に迫っていく。
物語はそれぞれが独創的で、面白いです。
普通に考えたらないだろうけど、でも、ありそうな、不思議な物語。
古川日出夫や舞城王太郎を思い出しました。これだけで充分な短編小説。
もっと続きを読んでみたいと思いました。

で、地図男とはいったい何者なのか、何故物語を生み出し続けるのか?
クライマックスに向かう一連の流れは結構好き。
哀愁とふわっとした余韻が良い。

発売当初相当プッシュされ、大絶賛みたいな空気でしたが、そこまでではないかな、
しかし、他の作品も読んでみようかなと思うに足る魅力がありました。


真梨幸子『弧虫症』

2011-04-10 01:04:22 | ミステリ


うへぇ、エグい・・・

何年か前から「気持ち悪い」「読まなきゃよかった」との評を耳にしていた本作。
先日古本屋で発見したので手に取りました。

関係を持った男が次々と全身を瘤で覆われ死んでいく・・・
このあらすじだけで既に鳥肌モノ。
どのようなオチが待っているのかと思えば・・・予想以上に様々な要素が詰め込まれた力作でした。

タイトルに「虫」と入っていることからも推測できますが、「寄生虫」が重要なポイントです。
で、ホラーに分類されるのかなぁと思いながら読み進めていると
物語の背後に潜むドロッドロな悪意が見えてきました。
すり硝子の向こう側、真っ黒なかたまり。
あからさまには行われない、しかし強烈な悪意を持ってなされる行動の数々。
それが引き起こす悲劇。とにかく怖い、怖すぎる。
読了後、何故か『告白』を思い出しました。

何の根拠もないですが、この手の悪意ドロドロ小説の書き手は女性が多いように感じます。
勿論男性作家もそうしたモノを書くと思いますが、その粘り気が違う。

気持ち悪い、怖い、不快。
でも、面白かった、一気読み。

***
寄生虫博物館に行きたくなりました。