Marice in Wonderland

日々読んだ本の感想を綴る
基本的には休日更新。

西澤保彦『麦酒の家の冒険』

2014-09-14 16:35:12 | ミステリ


ビールの美味しい季節なので、再読。
と言っても、話の筋や結論を殆ど忘れていたのでほぼ初読のようなものですが・・・

「タックシリーズ」のため一連の作品を未読だとピンとこない部分もありますが
一連の作品を読んでいてもあまり覚えていない私が読んで楽しめたので、いきなり本作を読んでも恐らく大丈夫。

ある高原に旅行に来たいつもの四人。
高原の滞在を楽しみ、山道を帰る途中で車が燃料切れとなり、彷徨するはめに。
ほぼ遭難ともいえる状況の中で、空き家を発見。
藁にもすがる思いで侵入したそこには、ベッド以外の家具はなにもなかった。
しかし、探索するうちに、クローゼットのなかに隠されたように置かれた冷蔵庫を発見。
その中には、キンキンに冷えた大量のエビスビールが詰まっていた・・・

空き家で大量に冷やされたビールという意味不明あシチュエーションを、妄想と推理で説明していくミステリ。
ああでもないこうでもないと仮説をたてては棄却、たてては棄却・・・
白紙のジグソーパズルを解くかのような手さぐり感。
それが少しずつ完成(のように思える説)に向っていく様がとても面白い。

それにしても、本当に美味しそうにビールが描かれているんですよねぇ。
ビールを飲みながら読んだらもっと面白いと思います。

冲方丁『マルドゥック・ヴェロシティ 1』

2014-08-31 18:08:40 | SF


『マルドゥック・スクランブル』の前日譚。
『スクランブル』では主人公を容赦なく追い詰めてきた悪役ボイルドが主人公。
本作ではまだボイルドとウフコックはパートナーの関係におり
一体何が起こって決別することになってしまったのか・・・という状態。

他にも様々な能力を持つ登場人物がわんさか出てきて
まさにSF版忍法帳といった様相。

このシリーズはアクションシーンが格好良くて大好きなので続きも楽しみ。

櫛木理宇『ホーンテッド・キャンパス 雨のち雪月夜』

2014-08-24 15:50:02 | ミステリ


人気シリーズ最新作。
安定して面白い。
青春オカルトミステリというジャンル分けは、改めてみてみるとなんだそりゃという感じですが
まぁそうとしかいえない内容。

焦点とされる主人公の恋愛模様は順調の様子。
最近どうもそちらばかりに目が行きがちですが
収録作『よくない家』は、久々?にそれが関係しないしっかりしたホラー。
後味の悪い、いや~な感じが素敵。

シリーズはこの進行速度のまま円満に終了していきそう。
たまにはもっとえげつないホラーも混ぜ込んでほしいです。
多分そういった話も書けるはず。

小林泰三『天体の回転について』

2014-08-17 14:07:05 | SF


SF短編集。
全8編で、SFをあまり読まない自分でもついていきやすいテーマが多かった印象。

特に好みの作品は表題作『天体の回転について』
軌道エレベータによる。星間旅行のお話。
そこに迷い込んだ青年は、ホログラムのガイドへ恋心を抱いてしまう。
美しくも荒涼とした宇宙空間で、決して触れることのできない彼女とまだ見ぬ星へ旅立つ。
不安と期待と切なさを感じる、青春SFと言えるのでは。

あとは『時空争奪』
自らがごく普通に暮らし、学んできた歴史と時空に異変が起こるというお話。
周囲の物に少しずつ変化が生じる。
周囲の人との会話が少しずつかみ合わなくなる。
どこかがおかしいと思った時には、もう間に合わない。
名状し難い恐怖が擦り寄ってくる感覚がとても良い。

驚愕の展開などはないですが
どれも面白く読みました。

宮内悠介『盤上の夜』

2014-07-30 21:33:05 | SF


囲碁、将棋、麻雀、チェッカー・・・
人間が考え出した数々の「盤上遊戯」をめぐる物語をまとめたSF短編集。
これは面白い。

ゲームとは何か。
ゲームは何故生まれたのか。
ゲームに終わりはあるのか。
ゲームを行う人智に限界はあるのか。

チェッカーにおける無敗の王とコンピューターの対決を描いた『人間の王』が特に好き。
麻雀のルールを詳しく知らないですが『清められた卓』も面白かった。
ある宗教組織の教祖的存在との麻雀対決。
牌が見えているとしか思えない勝ち方を続けるその秘密とは?
麻雀ができればもっと面白く読めたと思いました。残念。

ゲームを単なるゲームとしててでなく、それを自身が生きる世界として捉える。
それによって、世界を変えるものとして捉える。
盤上の極限を目指し到達する人たちには、一体何が見えているのでしょうか。