271828の滑り台Log

271828は自然対数の底に由来。時々ギリシャ・ブラジル♪

角度と勾配(補遺1)

2010-01-05 04:57:37 | 幾何学
アクセス解析をチェックしておりますが、殆ど毎日読まれる記事が何本かあります。そのひとつが2008年5月31日に書いた「角度と勾配」です。滑り台の滑走角度をどの様に決定したかを記述したのですが、角度と勾配の違いについて書かれた記事が少なかったために読者に支持されているのでしょう。それで図版を一部新しくして自社のサイトに掲載しました。ブログに掲載した記事は編集することも出来ますが、そのまま残すことにしました。
しかし自社のサイトを見た読者から質問が寄せられたので、ここで再び「角度と勾配」について書くことにします。質問はこれです。
「しかし大工の世界では角度ではなくて勾配が使われて来ました。この伝統的な分野には『角度概念が存在しなかった』これが私の推測です。」

角度を測るとは何を意味するのでしょうか?上の図で半径1の円弧を考えます。OA=OB=1です。角度を測定するとはブルーの円弧AB/半径OAの比を測定することに他なりません。つまり曲線長を直線で測っているのです。
一方、勾配を測定するのはグリーンで示した高さBCを半径OBで測定しているのです。測るもの同士が直線なのです。滑り台の場合は、赤く示したADを測るのです。

冒頭の画像は岩波文庫版の『塵劫記』(じんこうき)で、同書の167ページには「こうばいののびの事」と題して、半径一尺を規準とした勾配の図があります。一寸毎の斜辺の伸びと、その上に短冊状の五分の数値が書かれています。直角2等辺3角形の斜辺の伸びは「四寸一分四り二毛一糸」と読めます。
同書の校注者の大矢真一さんもここで「わが国には角度の概念がなかった。したがって傾斜は水平に一尺進む間にどれほど高くなるかで表した。すなわち勾配である。ここでは、各勾配ごとに斜面がいくら余分になるかを表した。」と注をつけています。私の推測が当たっていたのです。
この『塵劫記』にはファクシミリ版も公開されておりますが、私には読めません。達筆だからだけでなく変体仮名で書かれているからです。

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2 コメント

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角度と勾配 (渡辺規夫)
2010-01-12 21:20:33
私のブログにコメントをありがとうございました。
興味深い記事を読ませていただきました。角度の概念がなかったとは驚きです。角度はスカラー、勾配はベクトルではないでしょうか。江戸時代に勾配をベクトルと認識していたとは思いませんが。今後もブログを読ませていただきます。
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スカラーとベクトル (271828)
2010-01-14 04:30:31
渡辺さん コメントありがとうございます。
勾配というと「3尺行って1尺上がる」という運動のイメージが伴いますが、勾配もスカラー量です。長さを長さで割っているのでそもそも無次元量なのです。ベクトル量とスカラー量の違いは座標変換によって表現が異なるか、不変かの違いですね。長さ、質量、エネルギーは典型的なスカラー量です。

さて「3尺行って1尺上がる」直角三角形の斜辺は√10尺になります。約3.16尺ですね。この316が『塵劫記』で言う円廻法(円周率)です。
『塵劫記』はもう古書でしか手に入らないかと思っていたのですが、まだ岩波文庫の新刊が買えます。あまりのめりこまない程度に目を通しておくことは有用ですね。
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