メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『愛しのインチキガチャガチャ大全 コスモスのすべて』(双葉社)

2016-09-03 20:10:06 | 
『愛しのインチキガチャガチャ大全 コスモスのすべて』(双葉社)
池田浩明/著 ワッキー貝山/編集

前回読んだ『駄美術ギャラリー』(マガジンハウス)をはるかに超える作品群の嵐w
『モヤさま』の1000円自販機にも通じるモノから、急に職人技で驚かされるモノ、
思わず「可愛い」と顔がほころび、欲しくなってしまうモノまで勢ぞろい!

商品自体、相当面白すぎるのに、それをさらに倍増させる文章の妙に爆笑

ガチャがまたブームになっているが、今のクオリティは別格だけど、
本書に載ってる「イレズミシール」など、先駆的なアイデアもある(それもどこかのパクリか?
'70~'80の高度経済成長期はとにかくなんでもありだな

でも、よく考えたら、小さい頃にガチャにハマった記憶はない気がする
なにかのキッカケで、数年前、アキバまでわざわざ行ったりしてからかも
地方だったからガチャ自体なかったのか?!

今は街のあちこち、駅の構内、デパート前でも、コーナーを作ったりしてるから、つい立ち止まってしまう
客層も子どもより、10代~女性客が多い感じ

単に面白い写真集だと思っていたら、巻末にある実際「コスモス社」で働いていた方のインタビューは深くて重くて、
しみじみして、感動してしまった。

ひと言でいえば「ブラック企業」かもだけど、社訓のパンフをよく読むと
モノやヒトへの愛情すらにじみ出ている
このモーレツワンマンヘンテコ社長さんのドラマをつくってくれないかなあ!


【内容抜粋メモ】

まえがき
最初はペニーという外国の会社の輸入からスタートしたが、コスモスは純日本製のガチャの元祖
1970後半~80年代にかけて店先を席捲した

20円、30円のもあり、100円のよりカプセルが小さい
「当たり」という概念があって博打的要素があった(こないだライヴ友さんから当たりのガチャの話聞いたな

中にはどうしようもない模造品・・・僕はオマージュと呼んでいますがwもあり、
みんなは「ハズレ」を捨てていた。
でも、今では入手困難で、ロッテの「ビックリマンシール」より、「ロッチ」のほうが高かったり。

粗悪品だからこそ匂いを感じる。消しゴムなら塩ビの匂い



それぞれ“ジャンル分け”?のタイトルも「アクセサリー部 第一課」なんて警察みたいで笑えるし、
短くまとめた副題にも愛と笑いが詰まっている


「髪留め金具をつければ、あれもアクセ、これもアクセ。」

“工具アクセサリー(売れ残りのヤスリ流用)”(「ピカント」のネジピアスなどを思い起こさせないかなw

「ポリヘッド」キャンディキャンディ

ポリプラスティックで頭だけ作った

「アニメ消しゴム」999風

もはや何のキャラなのか当てるクイズ 実物とのギャップを想像力によって能動的に埋めているにすぎない


(まことちゃんだ!

「イタズラ」
「イタズラにひっかかってあげるという、憐憫」

これは詐術だろうか?(これは水鉄砲だけど、パチンて指を挟まれるやつは持ってた! みんな知っててひっかからなかったけどw


「印刷部 第一課」

(お祭りの屋台にも、こういうエセキャンディがたくさんいたけど、自分のモノになると嬉しかったなあ!

これさえあれば999に乗れる!(すごーい!!



「ウルトラマン風消しゴム」
「イマジネーションに依存した消しゴムは、遥か昔の仏像の趣。」
海洋堂のようなフィギュアと呼ばれるものを造る造形師が運慶快慶であり、コスモスはそれ以前の仏像とパラレルである。

(完全に土偶の世界に見えます


「うんち」(妙にリアルでコワかった・・・

『セーラー服と機関銃』便器


「化学部第一課」
「スターの香り 近藤」


「コンセプトまちがい」「嘘」「やる気なし」「ありもの寄せ集め」四重苦を背負わされたこの商品を私たちは愛する。
「コスモス」という社名は、宇宙のすべてをカプセルに封じ込める壮大な計画に由来する

「ツクダオリジナル」もとんでもなくやっかいな会社につきまとわれたものだ。
 “スライム”“ルービックキューブ”を一生懸命開発し、版権を取ったヒット商品を片っ端からパクられた

“スライム”も流行ったなあ! ベタベタ、ヒヤっとして、ただ気持ち悪いだけなのに・・・


「火薬系」

男の子は、なぜ銃とか、爆弾、戦艦、戦車とかが好きなんだろう・・・

「ガンダム風&ダンガム」
言葉では言い尽くせない悲しみを宿しているのはなぜなのだろう。「違和感」のためであるww

「キン肉マン風消しゴム」
コスモスは決して口を割らない。これを「ジャンボ人形」と言い張る。


「キーホルダー」

「この商品は食べられません」と、特にリアルでもないのに、言わずもがなの注意書きまで添えて(フツーに可愛い

「世界は青木だけでできていない」



「金属部第一課」
材料費数円のものをかき集め、よくもこの完成度のものを作り上げたと感心する
「無用の用」という言葉がある。本当に役に立たないものなど存在しない、という老子の言葉である

分度器

(かあいい!!


「光学部第一課」
(クルクル回すとフィルムが回転してテレビが観れるっていうオモチャも持ってた!
 あれも「キャンディキャンディ」のOPだったなあ!

「ミニ商品」
(リアルなカップ麺のキーホルダーは今でもあるんじゃない?
 中に“消しゴムの粉”の入った洗剤消しゴムは、リアルで可愛いけど、“消しゴムの粉”って何!?爆


「水素爆弾」

ネーミングが不謹慎と抗議を受け、「ドカーン」に名称変更。どっちにしても不謹慎


「スーパーカー消しゴム」
77年の大流行がコスモス発展の礎となった(台紙に「業界最大の商品開発力」て書いてある


「第一精密部第三課(組物)」

(こういうのウチにもあったような/懐

「ギロチン」(すごいファンシーなのにギャップ凄すぎ



「タレント消しゴム」

(まさかの文太さん&寅さんの並び


「あの人が描いた台紙」
「名も無きイラストレーターが担った、イメージ戦略の屋台骨」
 

台紙とはガチャの窓ガラスの内側に貼ってある看板みたいなもの
ハッタリ、水増し、煽り、大げさなど、あらゆる誇大広告の手法を使い、
小銭さえ入れさせてしまえば、あとは野となれ山となれ
派手派手しい色使いは、“あの人”の起用
テレビ音楽界におけるキダタローの業績と匹敵するのではないだろうか。
「株式会社ユウ」は、コスモスの社名変更後の後継会社

(小さく“イラストと商品に多少の違いがありますのでご了承ください。”てちゃんと書いてある!


「子供銀行」
(これも流行ったけど、これはやけにリアルで、ちょっと偽造ちっく/驚

「ドリフ風」
競ってヒゲダンスをやり倒していた頃、ドリフのヒゲが本当にほしかった。
(実家にヒゲダンスのEP盤があって、ヒゲついてた!


「ビックリマン」(ロッチ)


ロッチの首謀者がついに逮捕され、ショックだった。
社会と自分がつながっていて、犯罪の余波が確実に自分に押し寄せてくると、少年期に実感したからだ。
当初のロッチは本物を買ってきて写真撮りしただけの粗雑さだったが、キラキラの特殊印刷も可能になり、
本物が1枚30円のところ、100円で5枚ゲット。


「バッジ」

これを付ければ3年B組の生徒になれるのだろうか。もう中年だが。
(高校の校章もあって、自分が持ってるのとソックリでビックリ!

「ピンクレディー」

言われてみればそうである気がしてくる。「空耳アワー」の幻視バージョン(爆
コスモスにおいては、あらゆる境界が動揺する。合法と違法、ゴミとおもちゃなど
(ピンクレディーの模造品もあふれてたなあ! それだけ人気がすさまじかったってことだ


「ファミコン&ゲームウォッチ」

レンチキュラーというのか、角度をかえると絵柄もかわる印刷をほどこされたシールを貼っている
ゲームウォッチが買えないための代償。だが、本物との激しすぎる落差があまりに耐えがたく、悲しい


(そうそう、こういうピクトさん的な人を動かす単純さが好きだった


「プラスチック」

番号も名前も個人情報をそのまま複製(ええ!?誰のを???


「プロレス&スモウ」

馬場の特徴を思い切り封じてきた。二頭身にされている。長身だからこそ馬場なのに(爆


「野球グッズ」
「サインボールだがサインじゃない。そもそもサインとは何かという問い」

なにかおかしい。「長島一茂」が微妙である(爆)筆っぽい活字で書いて曖昧模糊にしてある

「野村フォトフレーム」

コピーのコピーでぼやけ、顔がよくわからない


「ロボット」

どう考えてもカッコよくないものをあえて変身させる

「蛇口」

(これ、すごくない?


「筐体」
赤いガチャガチャが日本各地に10万台!
普通の自販機のように電気は通じていない。
商品もカプセルに代わって、箱になった


「カプセルインカプセル」
「コスモスが辿り着いた極地」

最後のワンピースを封入してしまったからなのか、もうコスモスはない



コスモスproject
売り上げの一部を東日本大震災の義捐金にしている(2013年発行時点


コスモスという時代
コスモスは堀口商会を母体に生まれた。1988年に倒産。コスモス新社に引き継がれている
(まだあるじゃん/驚

ワッキー4649.com
(ワッキーさん自身も芸人なのか???
 紹介文には、“コミックソング、アニメソングにも造詣が深い”とある

 この年表はいいなあ!
 1977~1988までのおもちゃの流行、アニメ、テレビ、映画、マンガがコンパクトにまとめられている


阿部茂氏インタビュー~コスモス所長までやり、その後反旗を翻し、今もガチャ業を営む男。その愛憎の歴史

入社3年後にもう所長
キン肉マン消しゴムは、朝1軒売り切れを補充すると、夕方にはもう空っぽ

コスモス社長の脳みそは宇宙に飛んでたw
弟の昭平さんが専務で、社長代理として全国行脚に来ることもあった。

そのうち、「独立してくれ」という話がきた
それぞれフライチャイズになって、本体の何十億の借金のうち、
私は26歳で8000万円の借金ができた


儲けのからくり
当時、私は本社に47%払わされていた
お店にキックバックを20%
残り33%が取り分

新しい商品は東京で試す
売れ残りは東北とか地方へ回す。だから売れる商品はこない
関東と東北には、販売まで1ヶ月のタイムラグがあり、
流行が沈静化してダブつき始めた頃に届く

コスモスと戦争
私はコスモスと縁を切り、弁護士を立てて、フライチャイズ契約の解除を求めた
総額1億円の借金をかぶったけど、うちは隠れて別の会社からも仕入れていたから5年で返しました

製造現場の実態
現場はおじちゃんおばちゃんの徹夜作業、24時間フル稼働
型から起こさなきゃならないものは時間がかかるから、いくらでも稼げるのは印刷物
アイデアもないから、ライバル会社のバイキン消しゴムから金型作ってた。だから造形が甘い

シェア80%の秘密
店があれば置く
起案、金型、製造と全部やってたから、ブームへの対応が他より早く、臨機応変だった

営業マンの胸先三寸
どれだけ「当たり」を入れるかは営業マンの裁量
冬は売り上げが1/5になるので、夏場にがっちり稼いでました。

ガチャ黄金時代
当たりとハズレがあると、子どもの「射幸心(思いがけない利益や幸運を望む心)」も煽る

コスモスの赤い車がくると、子どもが群がってきた
今は商品を交換してても通り過ぎていく。同じ子どもとは思えない

「スプリング」(遊んだなあ!)を見ても遊び方が分からない。今は工夫して遊ばないもん
昔は徒党組んでいたけど、今の子はずっと親といる

昔の子どもは5円玉にヒモつけて引っ張ったり、セロテープ貼って100円玉の大きさにしたり
今はそんなイタズラは皆無

商品を補充する時、機械を斜めにして、先に当たりを入れて、その後でハズレを入れると
外側に当たりだけ見えて、中はハズレになる(なるほど・・・


鈴木暁治~ヤマトコスモス会長 中心人物として栄枯盛衰を感じてきた男の回想、この人のほうが面白いなあ!

月刊誌『EX大衆』(2010年6月号)掲載のインタビューを読んでほしい

「なめ猫」とかは印刷もんだから、近所で猫つかまえて写真撮って。簡単

当たり1個を表から見えるように糸で結んでテープで貼っておく

「スライム」なんか、うどん粉こねて作ったら、夏になったら腐って、臭くて

集金に行くと、葉っぱしか入ってない
1円玉に葉っぱを巻いて、みんな出しちゃう
ガチャって硬貨と大きさと厚さが合えば回るから、子どもでも偽造できる


【社訓 内容抜粋メモ】
朝晩の営業マンが出社、帰社する際、(車の)窓ガラスを拭くこと

1.部下の仕事に思いやりをもち、感謝の意を表すため
2.安全運転のため
3.部下に教えるため
4.車内点検のため また対話することも部下と気持ちを通わせる意味で大切
5.モノを大切に扱うことによって仕事への愛着を自他共に植え付けるため

年功序列にとらわれず、シビアに人材をセレクションし入れ替える


「兵隊」「部隊」と呼ぶ、平営業マンの仕事
1.集金、商品の補充
2.ガチャ機械の設置

コスモス黄金期
鈴木の出世物語は日本の高度経済成長と軌を合わせ、コスモスの爆発的成長とパラレルである
最盛期には、日本から10円玉が消えたという

業者へ400万の支払いを10円玉でやろうとしてたw
10円玉で100万円分ももってきたら日本銀行に怒られた

独裁者と兵隊たち
軍隊的なノリ 「おまえはクジラじゃありません!メダカです!」て言われたら「はい、メダカです!」

没落の理由
日本全国にガチャが行き渡っちゃうと売れない
事業を広げると、管理も難しい 不正も出るし


著作権
世間に「著作権」という概念が浸透すると、海賊商売も難しくなった
象徴的なのが1988年の「ロッチ事件」

コスモスなんて、落ちこぼれしか来ないんだから人間模様がある
みんな人生に失敗して入ってくる
ハングリーなのもいれば、シャブ中もいる、それを社長も認めるんだからよ

知られざるクーデター
レッサーとイトマンはつるんでた
手形が出て、いっちゃん(社長)を追い出すことでイトマンと話をつけた

鈴木は自ら3つのフランチャイズのオーナーをして、全国のフランチャイズの接待をし、コスモスからの離反を防ぐ役割を担っていた

1999年、脳溢血で倒れてコスモスを辞めた

今のガチャには夢がない
ジュースの自販機と同じ。夢も希望もないよ

ワ:夢と言えば聞こえはいいが、欲望に突き動かされる同じ穴の狢。自分を笑いたくなってくる

頭上の神棚に黄色い50円機2台があった
「当たり前だよ。オレはガチャガチャに食わせてもらったんだから」



あとがき~ワッキー貝山
なんでハズレまでこんなに集めてるんだ なんで子ども時代にあれだけ執着したのか
親が離婚して、おばあちゃん子だったから

当時は模造品もたくさんあったけど、小学校低学年でも手の届く範囲で、キン肉マン消しゴムも集められた。
貧乏といえば貧乏だけど、だからイマジネーション豊かになった

きっと、コスモスという宇宙の全体像は誰にも分からない



解説 都築響一(写真家・編集者)
「とにかくカプセルに入れれば商品と言い張れる。倫理はないけど悪意もない」

日本がアジアだった頃という感じがする
タイやベトナムの雑貨屋なんかに、子どもがこういうもので遊んでいます
こんなモノで1日遊べる子どもがいて、それを作る大人もいる牧歌的な時代

どこかの時点で、日本人は、他のアジアの国とは違うというプライドを持ち始めた
高度経済成長が極まって「一等国」の仲間入りをしてしまった

コスモスの商品は、「点取り占い」に似た感じがする(そーだ!
僕は「点取り占い」をつくる会社を取材したら、社長と奥さんと従業員が勝手にフレーズを考えている

マーケットリサーチなんてしない。
みんなで話し合うと「許諾を取らなくていいのか」とか言い出す人が出てくる
広告代理店や、フィギュアの造形師は、そうやって作る
でも、合意から生まれるモノは、ほとんどつまらない。

子どもにリサーチすること自体が間違い
コスモスの商品は、社長の無茶さが出ているから面白い
会議でできたら、ただの“懐かしおもちゃ”になっていたと思う




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