メランコリア

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『天上の虹』

2009-01-24 15:43:20 | マンガ&アニメ
『天上の虹』里中満智子

派遣仲間のMKさんから借りたこの漫画を毎日夢中で読んでる。これもフシギな伊勢つながり。
いまのところ1~10巻まで読んだおおまかなあらすじを頑張って追ってみた。

舒明天皇の息子・中大兄皇子は中臣鎌足(のちの藤原鎌足)らとともに、政権を掌握していた蘇我入鹿を暗殺した「大化の改新」
叔父の軽皇子(かるのみこ)を孝徳天皇にたて、邪魔になりそうな者には謀反の疑いをかけて次々と殺してしまう。
(中には、妻・蘇我遠智娘(おちのいらつめ)の父・蘇我倉山田石川麻呂女や、孝徳天皇の息子・有間皇子もいる。)
遠智は発狂した後亡くなり、その娘・う野讃良皇女(うののさららのひめみこ。のちの持統天皇)は、
有間も慕っていたため「いつか父より身分が高くなってみせる」と心に誓う。

中大兄皇子は妹・間人皇女(兄妹で愛し合っていた?)を孝徳天皇の妻にし、遠智との娘である長女・大田、讃良を弟・大海人皇子(おおあまのみこ、のちの天武天皇)に嫁がせる。
孝徳天皇亡き後、母・宝皇女(皇極天皇・斉明天皇)をたてるが、母亡き後は、間人皇女が即位。
間人皇女も若くして亡くなり、ついに中大兄皇子は天智天皇として即位する。
弟の妻・額田王(ぬかたのおおきみ)を奪い、妻とする。

豪族から私有地をとりあげて国有地とし、その代わり政治に参加させたが不満も多く、
弟・大海人皇子の人気も高かったため、弟はいったん仏門に入ると見せかけ、讃良を連れて吉野に篭る。
兄には皇族を母に持つ息子がいない(跡取りになれない)ため、唐の最新文化にならって、
もっとも有望と思われる息子・大友皇子(おおとものみこ)を跡取りにたてるが、
日本古代最大の内乱「壬申の乱」で大海人皇子は圧勝、大友皇子は自殺。大海人皇子は天武天皇に即位する。
讃良は皇后となり、一人息子・草壁皇子(くさかべのみこ)を次代の天皇として育てつつ、
夫と高市皇子(たけちのみこ、天武天皇の息子)とともに専制政治を行う。

物語は次代にうつってきて、十市皇女(とおちのひめみこ、天武天皇と+額田王の娘)と高市皇子の引き裂かれる愛、
亡き姉大田の遺した子、大津皇子(おおつのみこ)、大伯皇女(おおくのひめみこ)らの跡取り争い、
加えて、新羅vs百済vs高句麗vs唐の油断ならない情勢は日本の運命をも深く関わっていて、
後半読むのが待ちきれない。


それにしても・・・・
父母が同じ妹と愛し合ってたり、娘を弟に嫁がせたり、現代じゃ想像もつかないくらい親子関係、親戚関係が上下乱れてぐちゃぐちゃだ
しかも、みんな10代の頃に嫁入りしちゃうから、そうとう物語が進んで「若いコはいいわね、未来があって・・・」て悩んでる十市皇女がまだ14歳って分かって、ええ゛っっ?!?
主人公・讃良にしても皇后になってまだ30歳なのに、もう達観してる感じ。
当時は政略結婚とはいえ、夫には何人もの妻がいて、何十人もの子どもがいて、本作でも描かれているけど
あらゆるタイプの女性、あらゆるタイプの生き様があるんだな。
この妻は身近なあの人に似てる、この女性はあの人に似てるかもなんて思いながら読むのも面白い。

伊勢つながりとしては、壬申の乱で勢いをつけたい大海人皇子が妻・讃良に天照大神が乗り移ったと演出し、
戦勝のお礼として、神宮を天皇家とのつながりを強調するためにも国内最大級の神社にしたこと。
天武天皇によって斎宮制度が確立されてからの初代斎王として、娘・大伯皇女が伊勢斎宮に下向したこと。
それから、まだ漫画には出てないけど、持統天皇は外宮で第1回の式年遷宮を行っているそうな。

今作には「万葉集」の歌が効果的に使われている。
里中満智子は史実だけじゃなく、歌から当時の様子、人間関係、人となりを想像して描いてるんじゃないかな。
額田王が元夫(大海人皇子)に詠んだ歌。
「あかねさす紫野行き 標野(しめの)行き 野守は見ずや 君が袖振る」
(紫草の生える野を、狩場の標(しめ)を張ったその野を行きながら、そんなことをなさって。
 野の番人が見るではございませんか。あなたが私の方へ袖を振っておられるのを。)
など、当時の恋愛、季節、事象を絵を見るように鮮やかに切りとった歌のかずかずは素晴らしい。


ほかにもこの時代を描いたマンガがあるとのこと。いつか読んでみたい。
▼長岡良子『古代幻想ロマンシリーズ・眉月の誓い』
▼『はいからさんが通る』、『あさきゆめみし』などを描いた大和和紀の『天の果て地の限り』は額田王の物語。


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