メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1992.9~ part2)

2012-11-04 12:17:36 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part1からのつづき。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『スレッズ』(1984)
監督:マイク・ジャクソン 出演:カレン・ミーガー ほか
ん~~~キツイなあ。1984年イギリスでこんな撮影がされていたとすると。
それも自国UKに核爆弾が落とされたという設定で。
こんな克明な描写ができるのも、日本に実際落とされた記録があるからであって、
それよりもっと巨大な爆弾という設定だから、被害の様子もまるでゴミ溜めで撮影したんじゃないかってほどリアル。

キノコ雲の映像を見せられた時、私があすこにいたらどう思っただろう?と想像した。
世界最悪の兵器に希望も何もかも奪われ、何もなくなっても、
やっぱり人間は生きてゆこうと必死になり、新しい命をつないでいくのかもしれない。
もっとゴールデンタイムに流せば反響も大きく、皆で改めて真剣に考えられるのに。
これが作り話じゃなく、このまま何も変えなければ確実にくる未来の姿だと。

でも、私たちに一体何ができるかしら?
ほかにも地球自体危ないほどの大きな問題がいくつも残っているというのに。
毎日笑って楽しく生きてゆこうと努力すること以外に、一体何をしろというのかしら?
特別、未来を意識した背景にしていないところが、逆に今すぐにでも起こり得る事態なんだという現実感が出ていて、
ほかの似たような核戦争後の様子を扱った映画に見られるSFとは一線を画している。


『リトルショップ・オブ・ホラーズ』(1986)
監督:フランク・オズ 出演:リック・モラリス ほか
これぞ現代のコメディ・ミュージカル!同じ『ダウンタウン物語』でも訳が違う。
おおよそ売れてるコメディアンが勢ぞろい。
なんともサイコーなのは、ハイテンションで何でも壊して、痛めつけるのが好きな歯医者のスティーヴン・マーチン
その彼にいたぶられるのが堪えられない快感という患者のビル・マーレイ。
ほとんど一人芝居のDJ役にジョン・キャンディ等々、それぞれ持ち味を生かしてノビノビやってる感じ。
ラストは『ゴーストバスターズ』を思い起こさせる。
神出鬼没の下町の住民であり、妙な曲で盛り上げているコーラスの3人組もイイ。
なんとか、このどーしよーもない町と状況から抜け出し、低賃金・重労働、夢を夢見る生活から、
緑の芝生の庭つきの一戸建てを手に入れたいと願う下層階級の人々の訴えも聞こえてくる1作。


『デリカテッセン』(1991)

監督:ジャン=ピエール・ジュネ、マルク・キャロ 出演:ドミニク・ピノン ほか
どこか『未来世紀ブラジル』に通じるものを感じる。まさにデカダンス&アンティークな映像。
最初のスーパーから凝りまくった小道具の使い方、同じ核戦争後の世の中を描かせてもフランス映画だと全く違っちゃう。
とにかく1場面、1場面の影が占める割合はほとんど7割。
そこに様々な異様なライトを当てて、なんだか見世物小屋の中でも覗いているようなゾクゾク感。
世紀末の末の末。訳のわかんない住民のちょっと激しい描写が面白い。
一人も知った俳優がいないのがかえって新鮮。フェリーニ並の個性的な人選ばかりでイイ。
1シーン1シーンどんな隅っこも見逃せない凝った映像。


『ワイルド・アット・ハート』(1990)
監督:デヴィッド・リンチ 出演:ニコラス・ケイジ、ローラ・ダーン、ウィレム・デフォー、イザベラ・ロッセリーニ、ハリー・ディーン・スタントン ほか
『ツインピークス』を生んだ今や時の人、リンチ作品。
途中、交通事故でペシャンコの車といくつかの血まみれの死体に何度も出くわすが、ひどく生々しい。
可愛い顔してホテルの一室に嘔吐したまま、掃除もしないで2~3日そのままにしておくなんて信じられない話
火事の猛火と煙草に火をつけるマッチの炎のイメージも何度も繰り返し使われている。
何か考えようとすると出てくる魔女の映像も不思議で印象的。
『ブルーベルベット』に引き続いて使われているローラがすごいイメチェン、ロッセリーニもスゴイ。
一癖も二癖もある俳優でかためられて、油絵のような色調の強い映像の中で蠢く秘密めいた人の中で
セイラーとルーラの相手を互いに思い会う心だけが白いライトのように感じられる。


『殺人プレイバック』(1987)
監督:ヴァージニア・ライブリー・ストーン 出演:イヴェット・ナイパー ほか
一人暮らしの女性としては、大いに関係ありのこわーい話。
大きすぎる家ってのも問題だけど、これだけの豪邸で、ビバリーヒルズで、どーしてもっと防犯設備、
せめて鍵ぐらいしっかりしてないのか不思議。これじゃ誰でものこのこ侵入可能じゃない?
警部のいるところで犯人からの脅しの電話が入ったのに、
一緒にいてくれる警官が年寄り一人。それも、離れた部屋にいて、全くおかしな話だよ。
でも、もし本当に身近な人がとんでもない変体趣味野郎だったらどーしようって本気で心配しちゃう。
ところで、この原題を訳せば、逃げれるもんなら逃げてみろってとこかしら?←Run if you can


『アモーレ』(1948)
監督:ロベルト・ロッセリーニ 出演:アンナ・マニャーニ、フェデリコ・フェリーニ ほか
【第1話 人間の声】
別れようとする夫婦が電話のみでつながれ、女の側から撮られた映画。
監督自身は「女性の苦悶について描かれている」と言っている。
どうして別れることになったのかという過程を一切省いて、
若さが過ぎた一人の女性が部屋でひたすら元夫にすがるように電話をかける様子
部屋のあちこちにある鏡も重要なシンボルになっている。

【第2話 奇跡】
高い丘の上に建つ教会を目指してきつい坂を登り、羊がメエメエいいながら尾いてくるシーンは印象的。
子どもの父親らしい困った男役で若き日のフェリーニが一つのセリフもなしに出演している。なかなかハンサム。
今回初めて観るマニャーニの女を捨てた演技の熟練さが光っている。


『ぼくらの七日間戦争』(1988)
監督:菅原比呂志 出演:宮沢りえ ほか
久々の角川映画。薬師丸ひろ子、原田知世、渡辺典子の3大アイドル映画の時代から
今じゃすっかり元気ないなって思っていたけど、宮沢りえを器用していても、
アイドル映画ならぬ現代の若き学生たちのうっぷん晴らし作品になっている。

登校時の門を閉めてしまうシーン、“オン・ザ・眉毛”、体罰等々、
現実的問題としてもあり得る完全管理、規則づくめの学校。無関心な家族。
『Aチーム』のように、それぞれのエキスパートが揃っているところは映画らしい。
外に対して、自己に対しても得体の知れない怒りと叫びを常に持っている不安定な若者たち。
どんなに恵まれた何不自由ない環境で成長しても、心の中はどの時代の子どもより空虚で病んでいる。
好きな仲間同士の自由な空気、この一見不気味な都心に建っている工場が彼らのオアシスとして描かれている。


『アメリカン・ジゴロ』(1980)
監督:ポール・シュレイダー 出演:リチャード・ギア ほか
ボウイの『ジャスト・ア・ジゴロ』とは正反対。
どちらも魅力あふれる男性の一番輝いていた時代に撮られているのが素晴らしい。
ギア扮するジュリアンの場合はビジネス一本、でもどこか職人かたぎのプロ志向で、
実は理想の女性を求めるさすらいの貴公子だったってわけ。
平凡な生活に飽きた人妻って、扱いを間違えるとうすらこわーい。
いい暮らしをして、人気者の座にいた華々しいジゴロ生活から、
裏を返すと本当の友人や味方は誰もいなかったという厳しい現実に気づく。
今やロマンスグレーのギアは、かのトップモデルとやっと結婚。
互いに容姿や暮らしぶりに関係ない本物の愛を見つけることができたのかしら???


『特攻野郎Aチーム 地中海殴り込み大作戦』(1985)
監督:デヴィッド・ヘミングス 出演:ジョージ・ペパード ほか
高層ビル街から、山、地中海、イタリア等々、ありとあらゆるところへ乗り込んで救出作戦と追跡劇を繰り広げる。
今回は豪華客船上での変装からドタバタ騒ぎまであって、
私の好きなフェイスマンがちょこちょこ活躍してくれるから嬉しい第5弾。
口八丁手八丁でなんとか皆(特にブロンド美人)を言いくるめちゃって、
そのカッコ良さについつい信じちゃう気持ち分かるなあ。

本当に彼らみたい神出鬼没でなんでもこなしちゃう楽しいなんでも屋!?チームがいたらいいよね。
荒っぽいアクションや、車がひっくり返るシーンがあってもちゃんとみんな生きてて、
銃を使っても誰もかすり傷ひとつ負わない、アクション映画の中じゃ珍しいほど平和的?で皆で楽しめる。
これからもドシドシこんなスペシャル版を作ってほしいなあ。
監督のせいか音楽の使い方なんかも楽しい。


『パガニーニ』(1989)

監督・出演:クラウス・キンスキー 出演:デボラ・キンスキー、マルセル・マルソー ほか
芸術、バイオリン、中世、父と子。獣か悪魔か!?
はじめからおしまいまで特異なバイオリンの音で一貫している。
それも今まで耳にしたことのない、これがバイオリンの奏でる音なのだろうか?

世界各国を渡り歩き、着ているものといえば30年間同じ燕尾服。
地獄から這い上がってきたばかりのみすぼらしいおどけ者。
しかし彼がひとたびバイオリンを弾けば、人は勿論、動物たちまで踊りだす!
伝記映画なのに余分な説明を一切省いた、この映像、この構成。
全てにクラウスの異常なまでの執念が見えてくる。

キャストも完璧で、特にパガニーニの溺愛する息子とのシーンは、
本作品のもう一つの主題だが、味のある子役もそのはず、キンスキーの実子。
パガニーニが最期まで想いを寄せた女性も妻なのだから。
そして、その時代にありがちの天才鬼才を笑いものにする道化を見事に演じているのが
噂に聞いたマルセル・マルソー。本作ではメイクでほとんど素顔は分からないが。

まさに、キンスキーの怪演と見事な演出によって生み出された賜物。本当の芸術作品としての見応えあり。
こんな父親に育てられれば、やっぱりナスターシャのように世にも稀な美しさ、
ジャンルを越えるセンスの良さ、奔放さにあらわれているよね。
でも、ついこの間、彼はこの世を去ってしまった。
彼みたいな誰にも真似の出来ない異色のキャラを持つ俳優は、これからも永久に現れないだろうな。


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