メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『自分でできるカウンセリング』(創元社)その2

2013-07-03 22:02:48 | 
『自分でできるカウンセリング 女性のためのメンタル・トレーニング』(創元社)
川喜田好恵/著

その1はこちら→here
本書は1995年発行の同タイトルのものを時代に合わせて大幅に変更・加筆したもの。
著者が実際、自治体の女性センターで相談・カウンセリングの現場で、
「楽になりたい」「自分らしく生きたい」という女性の訴えを見てきたことも反映されているという。

前半では、女性差別がまだまだ形を変えて残っていること、
その旧態依然な社会システム・商業ベースに絡め取られている背景に気づくことが大事と書かれていて、
後半には、より具体的に、じゃあどう対処すればいいかまで詳しく書かれていてとても参考になった。

書かれている事実は、だいぶ昔から気づいていたことだったけど、
男女ともに無意識に巻き込まれている状況で、女同士でも意見の相違が生まれることも多々あり、私はさらに深く傷ついていた。
母と娘のケースの話はとくに、これって自分のことを書いてくれたのか?って思われるほどリンクしっぱなし/驚
今、実行しているカウンセリングや、認知行動療法のことも出てきて、一人じゃどうしても理解できないことも
具体例でまたちょっと近寄った気もするが、やっぱり難しいことも多いなあ!


【内容抜粋メモ】

<part9 心の基本的人権>
きちんと自己主張ができてこそ、相手の主張を受け止められ、互いの関係調整が可能となる。
人と違っていることは、自分を否定することではなく、価値あること。
「和」を尊ぶ日本では難しい。日本では「90%が言えば善」になりがち。
「私は独身でも幸せ」といくら言っても信じてもらえない。自分の不幸は不問のままで。
「そういう人がいるんだ」と、社会的通念・過去の経験にとらわれず自己開発するのもねらい。
自己評価がきちんとできる人は、他人からの評価で動揺する度合いが少なくて済む。

【心の基本的人権】
自分の気持ちは変わってゆく
考えや生き方が変わってこそ、自分の可能性を切り拓いていける。何かを得れば、何かを失う。
人が成長するとは、変わることでもある。


感情に良い・悪いはない
「喜怒哀楽」の喜・楽は歓迎されても、怒・哀は責められる。
例:「あなたにイライラしている」と言えず、「あなたのためなのよ」とすりかえる。

「嫌い」という感情を正当化するために欠点を探したり、言い訳をしがち。
例:「腹を立てる自分は、人間ができていないんだ

感情を合理化する必要はない。自分の感情を認め、受け止めれば、表現の仕方はコントロールできる。
例:「あの人なりの良さがあるだろうけど、私とは合わない」で済ませれば良い。


不完全でもいい
完全主義の人は、「やるなら完璧に!」「自信がついてから」と思うあまり一歩踏み出せない。
「女は無知のほうが可愛い」という社会。「できませーん」と甘えるのは自分を下位にして保とうとする歪んだ関係。
知らないことは「知らない」と言えること。


取れる責任と、取れない責任がある
女性はとくに愛情関係において「取れない責任」まで取ろうとしがち。例:「私がやらなきゃ・・・」
主体的な決断が働くことには、親といえども責任は取れない。取ってはいけない


失敗をする権利
人は失敗を乗り越え、やり直しをしてレパートリーを増やす体験をしなくては成長できない。
「自分の人生に失敗は許されない」なら、生きることなど到底ムリ。
生きるとは、絶えず結果の分からない一歩を踏み出すこと。


「ノー」と言う権利
やりたくないけど「相手が困るから」「世の中のため」などつい「イエス」と言ってしまう人。
「ノーと断れば悪い感情を持たれるのでは?」「人間関係が不安になる」と思ってしまう。
いつも無理しなくてもいい。「できるかもしれないけどしたくない」もアリ(笑。そうだね


行動を起こす権利
いつも受け身でなくてもよい。
「私はここです!」と手を挙げるより、ひっそりといて、誰かが気づいてくれるまで待つというのが「女性の美学」とされてきた。
それは男性が気づきたい時しか気づかないというからくりが隠れている。
すると、相手に媚びたり、操作しようとなりがち。


10か条のルールはただ1つ。
「自分にある権利は人にもあるし、人にある権利は自分にもある」

権利を増やしてもよい。 例:人の期待に応えない権利
相手も私の期待するように動くとは限らないという覚悟も必要。

「人はその人の思いで動く自由がある」と意識することで、相手の行動に動揺せずに関係を築いていくことができるし、
相手に対しても縛られる感じを与えずに付き合える

「辛い、苦しい」という弱さや本音を「頑張ればできる」と理性で説き伏せようとする人は、
自分に対してなかなかノーが言えない。
→「私は苦しくても頑張っているんだから、あなたも頑張って」というプレッシャーになる。
相手を傷つけたり、防衛的にさせずに、適切に自己表現する方法を知る。
意見や価値観の違いを認めた上で、相手と付き合う方法もある。


自己表現が出来ずに受け身だったり、自分を抑えて気持ちが言えなかったりする。
その対極は、自分の考え、感じ方を人に押しつけ、攻撃し、人を軽んじる。
1つの行動で相手の人格の全体を判断・評価すると、非常に攻撃的な態度になる。


「いつも○×だ」という一般化
一般化は、どんな口調でも十把一からげにするという意味では、攻撃的になり、人を傷つけ、束縛する。


主語をはっきりさせる
主語をはっきりさせないのは受け身の特徴。誰が、誰に向けて、何を言っているのか分からないと、
相手はたとえ気がついていても気がつかない振りをすることもできる。

日本にはそれとなく察しをつける文化がある。
本音が言えないのは、相手が傷つくんじゃないか、関係が悪くなるんじゃないか、という不安があるから。
意見を表明する権利は、それが通るかどうか、正解かどうかは別にして、表明すること自体に意味がある。
これが自己表現トレーニングのベース。


自分のことは自分で決める
他人に決定してもらうのは、他人に責任を取らせているということ。
それでは、付き合う人のほうが気が重くなる
「なんでもいいわ」と言われたら「じゃあ、あとで文句を言わないでね」と歯止めをかけるケースもよくある。
任せた側は結果に不平を言わないのが最低限のルール。


「小さなことだから」と我慢を重ねると、相手が疎ましくなったり、怒りや苛立ちがたまって、
なにかの拍子に爆発して、関係を断ち切ることになりかねない。
「次はこうしてくれたほうが、私はありがたい、嬉しい」と言うほうが、長続きする関係が築ける。


「イエス」「ノー」ははっきり言う
ノーと言いたい気持ちがあっても、相手にどう思われるか不安、自分の立場が不利になる危険を冒したくないと、
あいまいな返事をしていると、ノーと言いづらくなり、嫌々「イエス」と言うハメになる。
「ノー」と言うなら早い段階がよい。あとになるほど言いにくく、相手の期待は勝手にふくらむし、
引き伸延ばしている自分に負い目が増える、あとになるほど関係へのダメージも大きい


苦手な相手にもひとまず挨拶する
たとえ腹に一物あっても、相手の存在を認めるという意味で挨拶ができるのが大人。
それができない人は未熟。自分が思い悩むことはない。


相手を褒める、褒められたりできる
日本人はおせじは上手だが、褒めるのが下手。
協調性がない→一人でもちゃんとやれるという発想の転換が必要。


不要なへりくだりや、お世辞で人間関係を築かない
やたらに人の世話を焼いたり、尽くしすぎたり、自分を頼っていると思い込む→自己イメージが低い。
謙虚と卑屈は違う。


一般化・絶対化しない
ある事柄を拡大し、一般化・絶対化した言い方は、その表現自体が穏やかな感情論。
例:「だから女には任せられない」「子どもにはお母さんの笑顔が一番」
善意から出た言葉のようでも、自分を支えたい善意だとすれば「小さな親切、大きなお世話」。



<part10 自己表現のケースワーク>
具体的な暮らしの場面でどう自分を変え、他人との関係を変えていけばいいか?

自分を知る5つの窓
「いま、ここで」の自身の状態を十分に知り、相手に示して分かち合う姿勢が大事。

1.何を見ているか
2.何を感じているか
3.何を考えているか
4.何を望んでいるか
5.何をしているか

自分の言いたいことをはっきりさせると、相手にも分かりやすい。
「感情」と「考え」はよくごっちゃになる。

高圧的・権威的な人に弱い場合、声の調子に弱いのか、顔つきや表情に弱いのか等知ることで、
会うのはやめて電話で話すなど対応策が立てやすい。


自分の気持ちには案外気づきにくいもの
感情とは解釈によってずいぶんと違ってくるもの。
矛盾した感情を同時に抱くこともある。無理に整理せず、混乱している気持ちをありのまま認める。
過去の経験や、これまでの事柄をもとに思考を組み立てると「これはこうだ」とステレオタイプ化しやすい。


自分の望みをはっきりさせる
望み・意図を最初に相手に告げるとコミュニケーションがすっきりする。
コミュニケーションがこじれるのは、望みをわざと隠している時や、自分でも気づいてない場合。
例:「とにかく話を聞くだけ聞いてもらいたい」

ちょっとした表情もコミュニケーションに影響を与えるから、自分で気づくことも大切。
例:言いにくいことを言う時に目を伏せる、語尾を濁す等


ありのままの自分を受け入れる
「この人に意地悪がしたい」等、人にも自分にも受け入れにくい気持ちも、自分の意図に気づくことが大事。
力に差がある関係で起こると、弱者にとって破壊的になる。例:「モラル・ハラスメント」


相手を大切にする=相手の気づきを尊重する
自分の「気づき」がない人は、相手の「気づき」を受けとめにくい。


「アイ・メッセージ」:「私」を主語にした表現で話す
例:「私は嫌な思いをしている」

感情を伝えることは、感情的になることとは違う。
例:「ゲシュタルトの祈り」



<part11 カウンター・ムーヴ(対抗的な動き)への備え>
親子・夫婦のように長くて深い関係を変えるほうが案外難しい

不満な関係でとる2つの態度の不成功例
1.相手に説教、説得、挑戦、対決することで相手を変えようとする。
相手は怒って防衛的になり、エスカレートして言いすぎたり、自責の念に襲われる。

2.最初から諦めて、関係を断ち切る。
単に関係から逃げているだけ。


【ケース1】娘の自活に対する母のカウンター・ムーヴ例
1.「あなたの考え方はおかしい」

2.「今のままでいいじゃない」
ある意味では甘い誘惑(懐柔)。母を説得するのに息切れすると、振り出しに戻りもとの木阿弥。

3.「病気になったらどうするの?」等の脅し

これらは相手が卑劣とか、自分が至らないからではなく、家族というシステムの性質がある。

変化に対する、元へ戻そうという動き
システム=互いに有機的に関係している人間の集まり
その中の人が変わろうとすると、システム全体が影響を受けるから、できるだけ元の状態を保とうと働きが起こる。
新しい状況より、少しくらい不便でも慣れ親しんだ状況に留まろうとする。


カウンター・ムーヴには反応しない
カウンター・ムーヴが出た時は、それに気づいて、巻き込まれない、反応しないに尽きる。
母にそう言わせないよう食い止めることも無理。
大事なのは、自分の決意や行動は変えないこと。
そのことに自責の念は持たなくてもいい。

相手との間に情緒的な距離をおかず、温かくオープンな態度を取りつづける。
新しい状態を既成事実として積み重ねる→気持ちも変化に追いついてくる。


【ケース2】母が娘に兄と嫁が帰省しないと愚痴る、娘のとりがちなカウンター・ムーヴ例(全部体験済みだよ
1.母と一緒に兄を責める→兄妹の関係が悪くなる
2.「結婚したんだから当たり前」と兄をかばう→母を責める形になり、娘と母の関係が悪くなる(私はこう言っちゃったな
3.母と兄の仲介の立場をとる
→両方が娘に腹をたてるか、両方から無視される。仲介者の距離はとても難しい。「いい子志向」があればなおさら身動きできなくなる。
母と兄が自分たちで問題解決するチャンスを奪う。

4.ともかく母を避ける→心配な気持ち、怒りも引きずる。

どれも解決策にはならない。
(なんだか、どれも私のこと?てくらい当てはまる


「2人のことは、2人に任せるわ」
自分の気持ちまで同調させる必要はない。
「兄夫婦については、わたしが聞いても仕方ないし、聞きたくないわ」と言って付き合わないようにする。
「こうしてみたら?」というアドバイスもしない

上記の態度は、日本では「冷たい・水臭い」と思われがちだが、互いの感情に巻き込まれずに線を引くことが大切。



<part12 怒り・恐れの自己表現>
子どもの頃から怒りを抑えられると、自分の中の怒りの感情を自覚することすら諦めてしまう
→悲しみ、諦め、絶望、無力感に変わって心に積もり、病にもなる。


3種類の脅威
悪口を言われる、無視される、理不尽な要求をされる→最初に感じるのは脅威。

1.身体的脅威 例:大きな声をあげてテーブルを叩く
2.社会的脅威 例:変な噂をたてられる
3.精神的な脅威
例:政治家の不正(信念・価値観が揺らぐ)、飢餓で苦しむ子どもの写真(自分の無力さを見せつけられる)


脅威にあった時の反応パターン
1.泣く・すねる
幼い時に習い覚えたパターンの繰り返し。人の力で事態改善を期待する。
自分をかわいそうに思っている。「本当は自分は悪くない」という自己正当化もある。

2.逃げる
3.怒る
4.落ち込む
怒りが自分に留まっている状態。自身に向かったり、卑下・自己否定・怒りに蓋をする。
感情的なエネルギーがすべて感情抑制に使われて、やがて喜びなど他の感情も感じなくなる。

怒りは本人と周囲に認知されればいろいろな対応の可能性をはらんでいる。


●怒りの受け止め方
女性が怒るのは「女らしくない」とされ抑制されてきたため、自分は怒っているという認知ができなくなっている。

1.怒りを感じる

2.怒りに気づく
「怒ってない。心配してるんだ」と周囲に受け止められやすい感情にすり替える。
→「なんだか押しつけがましい」と思われる。
伝えることは、ぶつけることとは違う。怒りと攻撃も異なる。

3.怒りを認める


怒りは小さいうちに伝えるのがコツ
「好きじゃない」「賛成できない」「あの人のあの態度が嫌い」「イライラする」
我慢していると怒りはたまって、小さなきっかけで爆発し、攻撃に変わる。
攻撃は相手を傷つけ、打ち負かすのが目的。相手も防御のため応戦してくる。


怒りの伝え方、6つのポイント
1.怒りは小さいうちに伝える
2.自分を主語にする
3.具体的に、はっきりと 例:「ああ言ったのはフェアじゃないと私は思うよ」
4.いつ、どこで言うか選ぶ。一般論でなく、自分の気持ちを話す。
5.言いっぱなしにしない
6.勝とうと思わない

暴力・暴言は生まれつきの性格ではなく、後天的に身につけた対人パターン。
「外で怒りを出せないから、家の中で吠えるのは仕方がない」と容認しない。



<part13 関係を育てるコミュニケーション>
「どうせ聞いてもらえない」、「聞いても分からないだろう」という経験が重なると、感じることも避けてしまう。

1.伝えたい内容:何について話すのか。自分は何が言いたいか
「私は言いたいことを言ってみたから、あなたはどう分かったのか話してみてくれない?」とフィードバックさせる。
ズレがはっきりし、追加・訂正箇所がつかめる。

2.伝える環境:どういうか、いつ、どんな場所で、どこまで話すか。
「ミニ・コントラクト(小さな契約)」:慌しい朝に、準備がない時に話され、応答の余裕もないと怒りにつながる。
「どう受けとられたか」は関係に影響する。
時間を限ったほうが良い場合もある。たまった気持ちを背負った2人がいつまでも話し続けてもうまくいかない。
家以外の場所を選ぶのも大事。家は感情的になるのを許すスペース。
「家庭療法」には、家族において優先するのはまず夫婦の連帯関係。

3.伝える態度:2人とも問題に真剣に取り組む気持ちをもっているか
「私の言ったこと分かってるの」は非難になる。
相手を大事にすることは、想像で気を遣ったり、気を回したりではない。
2人のうち1人がこだわっている問題は、2人の関係に影響を与える。「適当でいいよ」では十分ではない。
キャッチボールしながら、問題を2人の間で泳がせてみる。

コミュニケーションがうまくいってるなら、わざわざ意識にのぼらせる必要もないが、
うまくいってない時は、チェックしてみる。



<part14 子どもは授かりもの? 預かりもの?>

●子どもにたくさんの習い事をさせるべき?
遊ぶ時間を削って、人と競争する生活は、成長のためのエネルギーを使い果たしてしまう。
思春期にアイデンティティと取り組む時エネルギーが尽きてしまっている子どもが多い。
すべてには「時」と「当事者の状況」がある。


子育ては「投資・成果・経済論的発想」とは逆
英才教育がマスコミで取り上げられ、親にも多くの経済的見返りがもたらされると思われがちだが、
その背後には何十倍もの挫折があることも忘れない。
「お受験」などの背景には商業ベースもある。


親が未然に代わってやってしまうと、子どもは生活体験が少ないまま成長する。
→親・教師・マニュアル等、自分の言動をコントロールしてきた者がそばになくなると動けなくなる・動かなくなる。
欲求は完全に満たされてしまうと意欲が沸かず、動機づけが少なくなる
本音は、自分が自由に動ける範囲から外に出たくない。
子育ては、子どもが自分を守り、発揮できるような力を身につける手助けをすること。欲求を満たすばかりでなく我慢することも必要。


「子どもは自分のもので、自分の好きなようにしてもいい」と自分の経験で子どもの気持ちを推し量ったり、価値観を押しつけてもいいわけではない。
子どもはまったく別の1人の人間。18年ほど世話をさせてもらい、その後は社会に返す。

(つづく


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