メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

notes and movies(1994.5~ part3)

2013-01-18 15:20:11 | notes and movies
過去のノートにある映画感想メモシリーズ。
part2からのつづきで紺色のノートでラスト。
若かりし頃のメモなので、不適切な表現、勘違い等はお詫び申し上げます/謝罪
なお、あらすじはなるべく省略しています。


『気狂いピエロ』(1965)

監督:ジャン=リュック・ゴダール 出演:アンナ・カリーナ、ジャン=ポール・ベルモンド ほか

「見つかった?」「なにが?」「永遠が。海が。太陽に溶けこむ」

ストーリーの細部はよく分からない。どのみち仏映は、ストーリーより流れる詩だ。
「私の運命線を見て。短いわ」「僕は君の腰の曲線が好きだ。僕の愛撫する線が」
ミュージカル映画にでもなったような長く歌うシーンはイイ。
逆に車を炎上させ、黒い煙が空気や空をいやおうなく汚してゆき、
気にもかけない男女のシーンには我慢ならなかった。

途中、画面全体を「人生」「シネマ」「ラスベガス」などとテロップでその場面を象徴させたり、
主人公の俳優にベトナム戦争でのアメリカ軍兵とベトナム女性の狂言を演らせるなど、
映画全体がとても新鮮で自由な作りになっているのがイイ。
まるで作品を貫いている純粋に美しい海と空の青さと同じ。

「信じるよ、嘘つきめ」

ここでも自由を得ようとする女は、誘惑をうながす魔女か何かのように翼をもがれるしかなかった。


『ルシアンの青春』(1973)
監督:ルイ・マル 出演:ピエール・ブレーズ ほか
ゲシュタポ
1933年、反ナチス運動の取り締まりを目的として創設された。ナチス‐ドイツの国家秘密警察。親衛隊の統轄下に置かれた。

ヌーヴェルバーグの傑作と言われる今作。『さよなら子供たち』では、
学校の子どもたちに焦点を当てた同じくナチ下のフランスを舞台にした作品だったが、
これはもっと当事者に近い若者の複雑な状況での恋愛を描いたもの。
関係が複雑で登場人物も立場上語らないため、なおのこと緊張感が伝わるが
政治や歴史に詳しくない者にはちょっと説明しにくい。
粗野ではあるが若さと無知のために嘘をつく口を持たず、悪に染まりきっていない主人公は、
最初、鳥をパチンコで殺すシーンでは好きになれなかったが、どこか憎めないところがある。
この時代もやはり女は犠牲者で、戦利品、虐げられている民族と同じく、言う口を持たず、考える意志も持てない。
特別な言葉も要らず、国境や人種の違いもない恋する男女の世界を純粋に真っ直ぐ描けるのは、
ルイ・マル自身が若く、そういう感覚をいつまでも保ち続けているためだろう。


『蘭の肉体』(1987)
監督:パトリス・シェロー 出演:シャーロット・ランプリング、ブルーノ・クレマー ほか
フランスのサスペンス映画で、ランプリングが主演だからなおのこと一筋縄じゃいかない。かなり込み入った話。
元サーカス団員で、今はプロの殺し屋の兄弟とは、仏映じゃ殺人鬼ですらどこか味わい深い。
暗い過去と謎を山ほど抱えた役を演らせればランプリングはまさにピッタリ。
男女の切羽詰ったギリギリの状況での短い関係が緊迫感たっぷりに描かれている。


『ポセイドン・アドベンチャー』(1972)

監督:ロナルド・ニーム 出演:ジーン・ハックマン、アーネスト・ボーグナイン ほか
パニック映画絶頂期のアメリカならではのスケールの大きさ、迫力、おそらく相当の費用と特殊技術、
フィルムが回っていないところでも、もう1つのストーリー(撮影、裏方等もろもろ)が存在しただろう。
かの『タワーリング・インフェルノ』と並ぶパニック映画の金字塔
これはもう娯楽以上に観客を引きこみ、心を動かし考えさせられるものがある。

背後から魔の手のごとくのびてくる海水、緊張の連続、素晴らしいパニック映画を観た後は
人間の生き残ろうとするすごいパワーと命の大切さ、人と人との愛情や憎しみ、
普段の生活では忘れかけていることが思い起こされる。

「神は忙しい。だから自分の力、自分の内なる神を信じ、自分で戦うことだ」
「いつか誰かが助けてくれるだろう」「祈ってさえいれば神は助けてくれる」
という人々は死を待つのみで最初から生命に対して負けていた。
助かった人々は誰かの助けより、自分たちの力で、時に補い合いながら自力で生き残ったのだといえる。
それぞれの愛する者を失い、その後の人生を続けてゆくのは生き残るゲームよりもっと大変なことだろうが。

牧師役のハックマンの役割は特に素晴らしく、この映画にしてこの俳優
作品中に何度も訪れる選択肢。それは生か死か自分が決める選択であって、
もし自分が同じ船に乗り合わせていたら・・・
きっと最初に船が逆さになったショックで死んじゃってるだろうなあ・・・


『SOSタイタニック』(1956)
監督:ロイ・ベーカー 出演:ケネス・モア、ロレンス・ネイスミス ほか
世界中にショックを与えた豪華客船の処女航海における沈没事故。
確かな原因はいまだに不明だけど、生存者の証言等の協力を得て、極力事実に忠実に再現したのが今作。
なんといっても印象に残ったのは、階級の差がなんとも大きいことだ。
労働者、富豪らの船室の違い、応対もまるで天と地の差がある。イギリスという国の縮図そのものだったわけだ。
生と死の瀬戸際にも上流階級が先、ボートに乗った婦人は「これ以上乗せないでくれ。我慢出来ない」と言った。

「人には上も下もない。命の尊さに貧富の差はない」というメッセージも強く訴えている。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』にあらわれる牧師と子どものシーンを思い出さずにはいられない。
海水面に対して船首から垂直になるまで船にしがみつく者、凍るような海水に落ち、
なにか浮くものにつかまり、他人をおしのけて自分だけ助かろうと必死になる様子などはまさに地獄絵だ。
2千人中、約半数しか生き延びることができなかったという事実。
この悲劇は教訓とさまざまな思いを後世にずっと残し伝えてゆくことだろう。


『美しき諍い女』(1991)
監督:ジャック・リベット 出演:ミシェル・ピコリ、エマニュエル・ベアール ほか
1時間版を観たけど、やはり4時間版もチェックすべき。時間の工面に勇気がいるけど
諍い女=ケンカっ早い女という意味らしい。
マリアンヌに「顔を描かせるのは断ったほうがイイ」と忠告するが断られる。
なぜ顔なのか? 先日TVで写真家が「ヌードを撮っても結局は顔になる」と言っていた。
ベアールのヘア問題より、久々ジェーン・バーキンが見れることに期待した。
いつもは人騒がせな役は彼女が演っていたが、今作では画家である夫に
全身全霊吸い取られたかのような無気力に生きる妻を演じている。

今作では画家がまるで神のごとく描かれている。モデルを裸にし、人形のように扱うのは
同性として面白くないが、途中からマリアンヌ自身の動き、時間、場所で演じたのはよかった。
描かれた本人が見るべきではなかった絵とは一体何だったのだろう。
偉大な画家は大勢いるが、彼らが描き出すもの、芸術とは?その目的とは?
大きすぎる疑問が残った。その疑問を問いかけているという点では観てよかった。


『グランド・ツアー』(1991)
監督:デヴィッド・トゥーヒー 出演:ジェフ・ダニエルズ ほか
未来の観光者は、町に巨大隕石が落下する瞬間を見に来た「災害見物ツアー」客だった。
雪の上を駆ける馬の美しいシーンから、一瞬で悲劇になるシーンは鮮やかだが恐ろしい。
いくつもの流れ星が落ちる景色も美というよりどこか異常。
「もしあの場所、あの時間に居合わせなかったら?!」被害者なら誰しも思うことだろう。
事故や病気だけでなく感情まで失ってしまった今作の未来世界は、
どうやらそれほど「グランド(ステキ)」ではなさそうだ。
自然災害や文明がもたらす災いの悲劇は、悲惨極まるものだが、
それにも「バランスをとる」というプラス面もあるのかも知れない



【読書感想メモ】
「シンデレラ・コンプレックス」コレット・ダウリング


【歌詞をメモした曲】
♪Where do we go from here?/J.R.Robertson
♪4% Pantomime/J.R.Robertson, V.Morrison
♪Stage Fright/J.R.Robertson
♪Across the Great Divide/J.R.Robertson
♪It makes no difference/J.R.Robertson
♪AMERICA/P.Simon
♪The only living boy in New York/P.Simon


コメント    この記事についてブログを書く
« 海外ドラマ『ヘイヴン』(全1... | トップ | notes and movies(1994.5~ ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。