メランコリア

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『3万冊の本を救ったアリーヤさんの大作戦』(国書刊行会)

2014-07-06 12:26:26 | 
『3万冊の本を救ったアリーヤさんの大作戦』(国書刊行会)
マーク・アラン・スタマティー著 徳永里砂訳

図書館巡りで見つけた1冊。

【内容抜粋メモ】
2003年、イラクは独裁者サッダーム・フセインが支配していた。
主にアメリカ軍とイギリス軍は、フセインを政権から引きおろすために侵攻計画を立てていた。

アリーヤさんは、本を愛するバスラ中央図書館の主任司書。
昔読んだ歴史本の中で、1258年、モンゴル軍の侵略でバグダードの大図書館が焼かれ
多大な財産が失われたことに大きなショックを受けたことを思い出す。

「たった1つでも爆弾が落ちたら、図書館の本はすべて失われてしまう。バグダードの図書館のように・・・」不安が募った。

バスラ県庁の役人に「バスラ中央図書館から本を運び出す許可が欲しい」と頼むと、役人はまったく興味を示さなかった。


(お役人は、税金をもらって、市民の幸せを守るのが義務なのに・・・

その後1週間もしないうちに戦争がはじまった
図書館の屋上には、敵の飛行機に備えて対空砲を向ける政府軍がいた。



「フセインは歩兵隊を守るために図書館を利用しようとしている。
 あるいは、敵に図書館を爆撃させて、世界から非難されるよう仕向けるつもりだわ」

アリーヤさんは、ハンドバッグに入るだけ本を詰めて、外にとめた車のトランクに積み、それを繰り返した。
戦争で頭がいっぱいの役人は、女性司書が行き来していることなど気にかけなかった。
家に着くと、夫とともに本をタンスの中にきちんと積み上げた。その週は毎日続けた。



数日後、アリーヤさんの不安は的中。イギリス軍がバスラに突入した
やっとつながった電話では、守衛が「兵士も役人もみんな出て行った。外には泥棒がいる」



やっと図書館に着くと、これ以上盗めるモノなどないほど何も残っていなかった・・・本以外は!
アリーヤさんは、図書館の隣りでレストランを経営する友人アニースさんに事情を話し
アニースさんは知人に電話し、みんなで効率よく本を運び出し、レストランの中に高く積み上げていった。
日が昇る頃、地元の人たちが聞きつけて加わった。日頃、本をほとんど読まない人たちもいた。

数ブロック先で大きな爆発があった
その夜、図書館が火事だという電話が入った。

 
「私にとって図書館の本は、人と同じなの。生きてるし、呼吸もしてる、大切な大切な友だちなの・・・」

アリーヤさんは、過労とショックのために脳卒中で入院。
退院後、アニースさんから図書館から3万冊以上救えたことを聞いて喜ぶ。「それはたくさんだわ!

大勢の助けを借りて、レストランに置いた本を、種類別に知人の家に運んだ。
アリーヤさんは今、退職前に、新しい図書館の設計・建築の監督をしている。



【あとがき抜粋メモ】
イラクは、その昔、文字文化発祥の地だった。
紀元前3500年頃、古代シュメール人が粘土板にくさび形の印をつけた。「くさび形文字」

古代都市エブラ(現在のシリア)の王宮には、大きな書庫があり、1万5千点以上の粘土板文書が保管されていた。
紀元前2250年、アッカド人の侵入で滅びたが、1975年、考古学者が約1800点の完全な粘土板文書を発見した

エジプトのアレクサンドリア大図書館の50万点以上の文書のうち、焼き尽くされて、現存しているのは1点もない。
その理由は、パピルスという紙でできていたから。
しかし、粘土板文書は、火に焼かれることで、より固くなり、丈夫になった/驚

1258年のモンゴル軍の侵略では、総督フラグがたった1週間で、36の公立図書館のほとんどを破壊し、
伝説によると、ティグリス川にはおびただし数の本が投げ込まれ、そのインクで水が黒く染まったという
ムスタンスィリーヤ学院の図書館は残り、この図書館は世界で3番目に古い図書館として今日まで残っている。


【マーク・アラン・スタマティーさんについて】
ニューヨーク・タイムズに「常軌を逸した強烈さ、予測不能の大騒ぎ」と評価された絵本
『ドーナツなんかいらないよ』が代表作。読んでみたい!





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